エンベデッドシステムスペシャリスト 試験の特徴と難易度


2021-08-05 公開

エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、組込み系システムの開発をしている人向けの資格です。対象システムがバラエティに富んでいるところがポイントで、昨今の IoT の進展に合わせて注目度が高まることが期待されています。

受験者層

エンベデッドシステムスペシャリスト試験の受験者は、過去の統計情報によると、エンベデッドシステムの開発に携わっている “経験者” は約 3 割です。実際には、その統計情報には “無記入” もあるので、もう少し高くなるとは思いますが、一定量の “経験者” が受験します。

日頃、実務で組込み系システムの開発に携わっている人のキャリアを情報処理技術者試験の体系で見ると、次のようになります。

プログラマ
基本情報技術者試験
応用情報技術者試験
エンベデッドシステムスペシャリスト
上流工程を担当しているシステムエンジニア
システムアーキテクト
プロジェクト管理も行っているシステムエンジニア
プロジェクトマネージャ
超上流工程を担当している IT コンサルタント
ITストラテジスト

したがって、経験者の場合、最初に受験する高度系区分が … このエンベデッドシステムスペシャリスト試験になるケースが多いと思われます。

一方、未経験者の場合は “最後の最後” に回す人が多いのではないでしょうか。未経験者は、いわゆる “エンタープライズ系” のシステム(企業で使う業務システム)を担当している人が多く、その場合、普通は他の受験区分を優先するからです(筆者もそうでした)。

そう考えれば、(未経験者の受験層は)他の高度系区分の保有者(しかも複数区分)が多いと思われます。

難易度

エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、結構、特殊な試験区分です。

難易度が高いわけではないのですが、開発対象システムがバラエティに富んでいるため、例え経験者だとしても、自分の経験から大きくかい離した問題が出題された時などは経験が活かせないケースもあるそうです。経験で培った知識がそのまま活用できるかどうかは問題次第のようです。

一方、未経験者にとっても難易度が高いわけでは無いのですが、こちらも、開発対象システムがバラエティに富んでいるため、市販されている参考書があまり当てにならないのです。筆者も、この試験区分だけは未経験分野になるので、参考書選びにかなり苦労しました。最終的には、試験対策本ではなく、高校の物理の教科書や電気・電子関係の本、過去問題で学習した記憶があります。

合格に必要な対策の概要

この試験の最大の特徴は、開発対象のシステムがバラエティに富んでいるところでしょう。ドローン、冠水防止システム、自動運転、スマート工場、競りシステム、観光案内用ロボット、カメラ付き防犯灯、病院内資料配送システム、スマートグリッド、駐輪場管理システムなど、かなり広範囲です。したがって、この観点から考えれば、組込み系システムの開発に従事している IT エンジニアでも、自分の経験したシステムが出題されることは少ないと言えるでしょう。

 

そのバラエティに富んでいることに起因して、有効な参考書が無いのも大きな特徴の一つです。筆者が情報処理技術者試験の全区分に合格したのは平成 21 年春なのですが、実は、リーチ(残り 1 区分)をかけたのは、その 7 年も前のことです。他の試験区分は、ほとんど初回、遅くとも 2 回目には合格していたのですが、最後のエンベデッドシステムスペシャリスト試験だけは 7 回もかかりました。その合格できなかった要因は、テキストが無かったからです。市販されているテキストだけで勉強しても、実際の試験問題はそこからは全く出題されなかったのです。もちろん RTOS やタスク間通信など対象システムに左右されない設問は確実に得点したのですが、それだけでは点数が足りなかったのです。最終的には、高校の物理や電子回路や電気、モータの専門書などを揃えて対応できました。新試験になって簡単になったのも大きかったと思うのですが。

また、最近では、 DX 推進という国の方針に沿って、午後Ⅱを中心に “IoT” の問題が重視されています。ちなみに、組込み系の問題が出題される他の高度系区分( IT ストラテジスト、システムアーキテクト)でも IoT の問題が出題されています。今後の必須テーマだと思います。

 

そして最後の特徴が、計算問題のパターン(種類)が多いことです。モーターの回転数を制御したり、時間を計算で求めたり。計算問題は、答えが一意になるだけではなく、一つのミスで連鎖的に失点してしまう可能性もあるので注意が必要です。

これまでの情報処理技術者試験のキャリアが活かせるか?

最後に、これまでの情報処理技術者試験のキャリアが活かせるかどうかを説明しておきます。情報処理技術者試験を “点” ではなく “線” で考えている人は参考にしてください。

過去の受験区分 合格しやすさとおススメ度
(1)
AP応用情報技術者

(合格しやすさ:★★おススメ度:★★★

組込み系の経験者の場合、おススメ度は星三つになります。というより一択だと思います。受験者層のところにも書きましたが、組込み系の経験者の場合は王道です。
とはいえ、応用情報技術者試験で培ったノウハウが、どこまで役に立つかは疑問です。あくまでも個人の経験とそこで培った知識が活用できるというレベルなので、しっかりした準備は不可欠でしょう。

(2)
STITストラテジスト

(3)
SAシステムアーキテクト

(合格しやすさ:★★おススメ度:★★★

ITストラテジストとシステムアーキテクト試験の受験者が、その後、組込み系を受験するケースも少なくありません。と言っても両試験を「組込み系」で受験した人限定ですが。
但し、組込み系の経験者でなく「エンタープライズ系」で受験した人は、両試験で培ったノウハウは全く役に立ちませんので注意しましょう。その場合は、合格しやすさもおススメ度も星一つになります。

(4)
FE基本情報技術者

(合格しやすさ:おススメ度:★★★

レベル 2 の基本情報技術者から、応用情報技術者試験を飛ばしてエンベデッドシステムスペシャリスト試験を受験するのも、プログラミングやアルゴリズムが得意な人は、アリだと思います。
午前Ⅰ試験対策が必要な点、午後Ⅱの超長文を時間内で処理する対策が必要な点、記述式へ対応しないといけない点など険しい道ではありますが、プログラミングやアルゴリズムを得意とする人が、ロジカルな思考が得意な間に取得しておくのもいい戦略だと思います。

(5)
NWネットワーク

(合格しやすさ:★★おススメ度:★★

エンベデッドシステムスペシャリスト試験の場合、他の試験区分で得た知識が活用できるのは、原則、少ないのですが、強いてあげるとすれば、このネットワークスペシャリスト試験で得た “ネットワーク” の知識だと思います。 IoT 関連では低消費電力の通信、無線通信、近距離通信技術などが絡んできます。
もちろん、情報処理安全確保支援士の方が関連度は高いのですが、もう取得済みの人はこの試験区分も十分選択肢の一つになるでしょう。

(6)
ESデータベーススペシャリスト

(7)
SC情報処理安全確保支援士

(8)
PMプロジェクトマネージャ

(9)
AUシステム監査技術者

(10)
SMITサービスマネージャ

(合格しやすさ:おススメ度:★★

これらの試験区分で培ったノウハウや知識は、残念ながらエンベデッドシステムスペシャリスト試験では、あまり役に立ちません。一から、別の試験を準備すると考えておいた方がいい順番になります。フルスタックを目指して、全然別の知識を身に着ける目的がある人にはおススメです。

(11)
SG情報セキュリティマネジメント

(合格しやすさ:おススメ度:

難易度のレベルも上がりますし、何から何まで違うので厳しいでしょう。不可能に近いと考えられます。

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