2023年10月から情報処理安全確保支援士と高度情報処理技術者試験の組込み分野はどう変わる?


2022-12-28 公開

先日( 2022 年 12 月 20 日)、 IPA のサイトで下記が発表されました。

IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理安全確保支援士試験及び情報処理技術者試験(高度試験の組込み分野)における出題構成等の変更について

12 月 20 日は、令和 4 年秋期試験の応用情報及び高度系区分の午後の解答例が公表されるタイミングで、かつその 2 日後の 22 日には応用情報及び高度系区分の合格発表が予定されている時期でした。 令和 4 年の秋期試験を受験した人をはじめアクセス数が最も多くなるこの時期を狙っての発表だったのでしょう。

変更の対象となる試験区分と適用時期は次のとおりです。

試験区分 適用時期
情報処理安全確保支援士 令和 5 年度 秋期試験
( 2023 年 10 月)から
エンベデッドシステムスペシャリスト
システムアーキテクト 令和 6 年度 春期試験
( 2024 年 4 月)から
IT ストラテジスト

次回試験(令和 5 年度春期試験、 2023 年 4 月)は従来通り実施されて、その次の試験からですね。

令和 5 年度春期に開催される “情報処理安全確保支援士” 、 “システムアーキテクト” 、 “ITストラテジスト” の三つの区分は、ひとまず従来通り実施されるので、今現在準備をしている方は何も心配することはありません。

では、その後はどうなるのでしょうか? ひとつづつ整理していきましょう。

情報処理安全確保支援士

試験センターが公表しているのは次の通りです。

looks_one 午後Ⅰ試験と午後Ⅱ試験を午後試験に統合

swipe表は横スクロールできます

変更前 変更後
午後Ⅰ
試験時間
90 分
出題形式
記述式
出題数
3 問
解答数
2 問
午後
試験時間
150 分
出題形式
記述式
出題数
4 問
解答数
2 問
午後Ⅱ
試験時間
120 分
出題形式
記述式
出題数
2 問
解答数
1 問

 今回の SC の改訂は、出題構成を変更するもので、試験で問う知識・技能の範囲そのものに変更はありません。

IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理安全確保支援士試験及び情報処理技術者試験(高度試験の組込み分野)における出題構成等の変更について より引用。 以降も引用元は同じ

試験センターが狙っているのは受験者の増加です。 そのために、時間短縮と問題の選択の幅を増やしたということのようです。

まず、この変更は妥当な判断だと思います。 筆者も、これまで午後Ⅰと午後Ⅱの違いがよくわかりませんでした。 午後Ⅰはシンプルで、午後Ⅱは詳細になっているぐらいだという認識です。 記述式と論述式とかはっきりと別の能力を試すのなら分ける意味もありますが、そうでもないですからね。

では、受験する側は、この変更をどう捉えればいいのでしょうか?

150 分で 2 問解答を求めていることから、 1 問あたりに使える時間は 75 分です。 現在の午後Ⅰは 1 問あたり 6 ページの問題を 45 分で解くことが求められ、午後Ⅱは同じく 13 ページの問題を 120 分で解答することが求められています。 そこから考えれば、現行の午後Ⅰ試験よりもやや多めだけど、午後Ⅱほどではない分量になると思います。 ページ数にすると 8 ~ 9 ページぐらいではないでしょうか。 ひょっとしたら、 7 ページぐらいの可能性もあります。 1 問 7 ページなら、問題文の冊子は 32 ページに収まります。 印刷する時は 16 の倍数が最も無駄なく紙を使えるので 32 ページに押さえる可能性もゼロではありません。 世の中 SDGs ですからね。 ただ、いずれにせよ、時間的な余裕は出てくる可能性は高いと思います。

内容は特に変わらないようですし、午後Ⅱ自体が 120 分で 13 ページの問題文を処理する構成だったので、それ以上に難しくなることもないと思います。

以上より、試験対策も、特にこれまでと変わったことはしなくても構いません。 そもそも、この試験区分は知識の絶対量で合否が決まりますから、特に午後問題を解く時に、時間の戦いになったり、読む時間や書く時間を短縮するために解答テクニックを使う必要もありませんでした。 従来通りの対策で、特に変える必要はないと思います。

エンベデッドシステムスペシャリスト

試験センターが公表しているのは次のような変更です。

looks_one

企画・要件定義やビジネス視点に関する知識を評価するために、中分類 18 ~ 20 を午前Ⅱ試験の出題対象に追加

中分類 小分類、知識項目例(抜粋)
18 システム企画 システム化計画、要件定義(ユーザーニーズ調査、利害関係者要件の確認ほか)、調達計画・実施(調達リスク分析ほか) など
19 経営戦略マネジメント 経営戦略手法(競争戦略、コアコンピタンスほか)、マーケティング、ビジネス戦略と目標・評価(ビジネス環境分析ほか) など
20 技術戦略マネジメント 技術開発戦略の立案、技術開発計画 など

looks_two

IoT ソリューションの適用対象の事業ドメインが多様化している中で各工程に対する受験者の専門的な実務能力及び経験を評価するために、午後Ⅱ試験を論述式の出題形式に変更するとともに、企画・要件定義分野を出題範囲に追加

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変更前 変更後
午後Ⅰ
試験時間
90 分
出題形式
記述式
出題数
3 問
解答数
2 問
出題範囲
設計・開発分野
午後Ⅰ
試験時間
90 分
出題形式
記述式
出題数
2 問
解答数
1 問
出題範囲
主に設計・開発分野
午後Ⅱ
試験時間
120 分
出題形式
記述式
出題数
2 問
解答数
1 問
出題範囲
設計・開発分野
午後Ⅱ
試験時間
120 分
出題形式
論述式
出題数
3 問
解答数
1 問
出題範囲
企画・要件定義分野及び
設計・開発分野

この変更の意図や狙いは、公表されている資料を読んでください。 端的に言うと 2 点あり、ひとつが「この試験の対象とする工程を企画・要件定義まで広げた」というもので、もうひとつが「 IoT をこの試験に集約した」という点です。

そうした変更のもと、試験構成上の最も大きな変化は午後Ⅱが論述式になった点です。 合格するためには論文対策が必須になります。 実際、筆者にもそういう話がきています。

出題内容に関しては、今後の公表に期待しながら、現段階では次のようになると予想しています。

1 問
企画分野の問題で、現行の IT ストラテジスト試験の問 3 相当
1 問
要件定義と設計の問題で、現行のシステムアーキテクト試験の問 3 相当
1 問
IoT の業務システム側の企画や要件定義・設計の問題、あるいは IT ストラテジストやシステムアーキテクト試験とは無関係の(詳細設計・プログラム設計よりの)「開発分野」の問題

したがって、具体的な論文対策としては、平成 21 年から令和 5 年までの IT ストラテジスト試験とシステムアーキテクト試験の午後Ⅱ問 3 の過去問題を使ったものになるでしょう。

午後Ⅰ試験は、 2 問出題され、そのうちの 1 問を 90 分で解答するということから、午後Ⅱ試験の問題を数ぺージ少なくした感じだと思います。 1 問がハードウェアよりで、もう 1 問がソフトウェアよりという点も変わらないのではないでしょうか。 対策としては従来通り、午後Ⅰ・午後Ⅱ対策と同様に進めればよいと思います。

こうした変更点から、プログラミング寄りの技術者からは敬遠されるかもしれませんが、その分、上流工程を担当している人や業務寄りで IoT ソリューションに関係している人の受験が増えると思います。 受験者の減少にストップをかけられるかどうか、興味深いですね。

IT ストラテジスト / システムアーキテクト

試験センターが公表しているのは次のような変更です。

looks_one

午後Ⅰ試験、午後Ⅱ試験それぞれにおける組込み分野の出題を ES に集約

swipe表は横スクロールできます

変更前 変更後
午後Ⅰ
試験時間
90 分
出題形式
記述式
出題数
4 問
解答数
2 問
午後Ⅰ
試験時間
90 分
出題形式
記述式
出題数
3 問
解答数
2 問
午後Ⅱ
試験時間
120 分
出題形式
論述式
出題数
3 問
解答数
1 問
午後Ⅱ
試験時間
120 分
出題形式
論述式
出題数
2 問
解答数
1 問

この二区分に関しては、受験者の属性によって影響が異なります。

  1. 業務系だけを勉強して受験する人
    元々業務系だけを想定して学習していた人、つまり、午後Ⅰの問 4 と午後Ⅱの問 3 を無視していた人には、何の影響もありません。 従来通りの対策で何ら問題はありません。
  2. 組込み系がメインだった人
    問題は組込み系がメインだった人です。 午後Ⅱは問 3 で準備し、午後Ⅰは問 4 から解くという人です。 その人は、主戦場がエンベデッドスペシャリスト試験に変わったということです。 IT ストラテジスト試験、システムアーキテクト試験を狙うなら、業務系の勉強が必要です。
  3. 業務系と組込み系の二刀流の猛者
    両方ともいけるくちで「問題を見てから、より高得点が取れる問題を優先して選択する」と考えていた人にとっては、若干不利になるかもしれません。 しかし、そういう猛者なら、業務系だけでも十分勝負できますから、エンベデッドスペシャリスト試験、 IT ストラテジスト試験、システムアーキテクト試験を全部合格するつもりで頑張ってください。

以上が、今回公表された変更点に対する私見です。 年末の忙しい時に急な話だったので、筆者の周りでも結構バタバタしていました。 実際、情報処理安全確保支援士試験の参考書を出している出版社からは「年明けにどう対応するか打ち合わせをしましょう」という話がありますし、来年の秋の試験対策講座を「どういう形で実施しましょうか?」と相談されています。 この記事もそうです。

ただ、技術が変われば資格試験の構成も内容も変わるのは仕方ありません。 むしろ、変わらないとおかしいのです。 我々、資格制度を利用する側は、それが時代の変化だと理解して、真正面から向き合うとともに、余裕をもって追随できるようになっておきたいですね。

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