情報処理技術者試験の応募人数は前年比 112 %。コロナ前からすると ・・・


2021-09-15 公開

2021 年 9 月 15 日、情報処理技術者試験 2021 年度 秋期試験の応募者数が公表されました。コロナ禍における 3 回目(旧春試験としては 2 回目)の開催です。

令和3年度秋期
応募者数
令和2年度10月
応募者数
前年
同期比
情報処理技術者試験 合計 74,452 66,387 112.1%
応用情報技術者試験 48,270 42,393 113.9%
高度試験 合計 26,182 23,994 109.1%
プロジェクトマネージャ試験 10,184 9,672 105.3%
データベーススペシャリスト試験 10,648 9,468 112.5%
エンベデッドシステムスペシャリスト試験 2,798 2,504 111.7%
システム監査技術者試験 2,552 2,350 108.6%
令和3年度秋期
応募者数
令和2年度10月
応募者数
前年
同期比
情報処理安全確保支援士試験 16,354 16,597 98.5%

IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:新着:令和3年度秋期情報処理技術者試験及び情報処理安全確保支援士試験の応募者数について より抜粋

値上げの影響は無かった?

この数字を見ると、情報処理安全確保支援士を除き … 軒並み前年度よりも応募者数は増えていましたね。今回から受験料が値上げ( 5,700 円 → 7,500 円)されたのですが、その影響は無かったようです。元々 IT エンジニアの方々って、自分自身の価値向上に対する投資を厭いませんからね。年 2 回だけということもあって … 「値上げをしたから受験なんかしない!」という人は少なかったのでしょう。実際、筆者の実施している試験対策講座やオンライン添削サービスでも、受講者数はコロナ前と特に変わっていませんし。

コロナ前の水準には、まだほど遠い

しかし、コロナ前の水準には、まだまだ戻っていません。

コロナ禍 コロナ前
令和3年度秋期 平成31年度春期
応募者数 平成31年比 応募者数
応用情報技術者試験(AP) 48,270 98.9% 48,804
プロジェクトマネージャ試験(PM) 10,184 57.9% 17,588
データベーススペシャリスト試験(DB) 10,648 63.3% 16,831
エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES) 2,798 57.6% 4,858
システム監査技術者試験(AU) 2,552 61.1% 4,175
情報処理安全確保支援士試験(SC) 16,354 73.7% 22,175
上記試験の合計 90,806 79.4% 114,431

応用情報技術者試験はほぼコロナ前と変わらない水準まで戻ってきましたし、情報処理安全確保支援士試験も約 8 割と減少比率も少ない水準で推移しているのですが、その他の高度系はまだまだです。コロナ前の 6 割前後にすぎません。

応募者数が戻らない要因は?

この要因は何なのでしょうか?

事情はそれぞれで個々人によって異なるとは思いますが…次のようなものではないでしょうか?

  • まだまだ感染リスクがあるから(自発的に断念している、もしくは会社から止められている)
    仕事はリモートワークなのに、受験は会場なので … 仕事よりもリスクは取れない
  • 忙しすぎる(慢性的な人手不足、リモートワークによる生産性低下他)
  • モチベーション低下(それどころじゃない)

筆者も、毎回、申し込んではいるものの … 過去 2 回は、丸 1 日会場で過ごさなければならないため、感染リスクを考慮して断念しています。先日ようやく CBT の情報セキュリティマネジメント試験を受験したところです。午前も午後もそれぞれ 90 分のところ、 30 分で退出しましたが。

それに、コロナ禍になっても忙しすぎます。

顧客企業の基幹系システムの更改(収益認識基準対応等)、移転、テレワーク対応、セキュリティ対策など、ただでさえ人手不足なのに案件も増えている印象です。

もちろん、詳細なアンケート調査を行わなければどういう理由が多いのかはわかりませんが、それは今後 IPA がやってくれるとして … 何らかの偏りがあるのかどうか、公開されているデータで検証してみました。

応募者の年齢は?

最初にチェックしたのは “年齢” 別の減少度合いです。と言っても、今回の年齢別の応募者数は未だ公表されていないので、前回(令和 3 年)の春試験と、コロナ前の令和元年秋期試験で、年齢別の応募者数を比較してみました。その結果は次の通りです。

試験の略称と試験名
AP: 応用情報技術者試験
NW: ネットワークスペシャリスト試験
ST: ITストラテジスト試験
SA: システムアーキテクト試験
SM: ITサービスマネージャ試験
AP、SC、NW、ST、SA、SM の 6 区分合計の年齢別応募者数

全体としては、 25 才から 44 才くらいのボリュームゾーンで大きく数字を落としています。 30 代の減少率が大きいようにも見えますが、そのあたりはどうなのでしょう?

各試験区分ごとの年齢別応募者数を比較したグラフは、それぞれ次のようになります。

AP の年齢別応募者数
SC の年齢別応募者数
NW の年齢別応募者数
SA の年齢別応募者数
SM の年齢別応募者数
ST の年齢別応募者数

これらを見る限り、年齢が高くなるにつれて回避しているのではなく、どの試験区分でもボリュームゾーンの落ち込みが激しいことがわかります。

一般的に、ボリュームゾーン内では “温度差が大きい” ことが知られています。 “ブーム” になっているときって、よく “猫も杓子も” と言いますよね。本気で合格を目指している人だけではなく、「同年代の人が受けるから … 」とか「年齢的に … 」とか「ダメもとで … 」という感じで受験する人もいるでしょう。

しかし、コロナ禍になって様々な行動について考えなければならなくなりました。

なので、コロナ前に気楽に申し込んでいた人が、コロナ禍できちんと考えるようになり … 結果、回避したのかもしれません。仮にそうなら、コロナだろうが関係なく “本気” で合格を目指す人たちの戦いになるので、より激戦になることが想像できます。

そこで、合格率の推移をチェックしてみたのですが … 特に合格率が極端に高くなったわけではありませんでした。ということは、これもあくまでも推測にすぎませんが … 合格レベルにある人も、同じくらいの比率で受験しなかったのかもしれません。筆者の知り合いでも、知識の劣化を防ぐために毎回必ず受験していた人が、コロナになって受験を控えています。だとしたら、少なくとも “激戦” ではないのでしょう。

令和 3 年春試験との比較

では、半期前の今年(令和 3 年)の春期試験や、その前の 10 月試験はどうだったのでしょうか?

コロナ前 コロナ禍
令和元年秋期
応募者数
令和2年10月
応募者数
令和3年春期
応募者数
令和3年秋期
応募者数
応用情報技術者試験 50,440 42,393 41,415 48,270
情報処理安全確保支援士試験 21,229 16,597 16,273 16,354
高度 4 区分合計 39,329 23,994 26,866 26,182
上記試験の合計 110,998 82,984 84,554 90,806

年 2 回開催の応用情報技術者試験、情報処理安全確保支援士試験の推移はコロナ禍においても、それほど変動していません。応用情報技術者試験は、通常、春期試験よりも秋期試験の方が応募者数は多くなるので、例年通りと言えば例年通りです。しかも、コロナ前の数字に戻りつつあります。

高度 4 区分だけを見ても、応用情報技術者試験とは逆のパターン(春期より秋期で応募者数は減少)になることから令和 3 年春期よりも減少していても違和感はありません。それよりも、これらの 6 区分の応募者数の合計値が徐々に増えてきているのは興味深いところです。

徐々に戻りつつあるということですね。

以上の傾向から推測できるのは、ただ普通に、コロナの感染リスクを考慮して受験を断念している人が一定数いるだけなのでしょう。年齢別でみると、 30 代、 40 代前半の方々です。仕事もかなり忙しいはず。ちょうど、会社では主戦力で、家庭では子どもがいるような年齢ですね。ワクチンもまだの人が多い年代です。会社にも家族にも迷惑はかけられない、そんな風に考えている人もいるはず。

だとすれば、今後、ワクチン接種が進んで重症者数も減ると、次の 2022 年春期試験には受験者は戻ってくるのかも知れませんね。

label 関連タグ

『定額制』
高度試験対策研修 KOUDO 初公開!

定額制だから、
どの区分でも何名でも
受け放題!!

label情報処理技術者試験』の [ 人気 / 最新 ] 記事 label 著者

ご案内

高度試験対策が
どの区分でも
何名でも
受け放題!

人気記事

タグ一覧