応用情報技術者試験〔午後〕経営戦略 対策 令和 4 年度版 「頻出分野をおさえる」


2022-07-21 公開

応用情報技術者試験の午後問題の問 2 は「経営戦略分野」の問題です。 問 2 から問 11 はすべて選択問題で配点は 20 点で、高度系の最高峰だと言われている「 IT ストラテジスト試験」に通じる分野です。

これまでの出題内容

経営戦略分野の過去問題(平成 16 年春~令和 4 年春)を、さらに詳細に分類してまとめたのが次の表です。

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分野 年度 問題
番号
問題で取り上げられている
企業の業種、出題内容
財務・簿記関連知識 財務分析 (1) H 22 1 外食チェーン
財務分析 (2) H 26 2 電子部品の製造・販売
財務分析 (3) H 29 2 電子部品会社
原価計算 H 21 3 電子部品メーカ
投資評価( NPV ) H 25 1 製造業、財務分析、 DCF 、資金調達
M & A(のれん) H 24 1 飲料事業
工事進行基準 H 21 1 ソフトウェア受託開発会社
事業戦略策定 SWOT 分析 H 21 3 フィルム製造
H 23 1 家具の製造販売、アウトソーシング
H 30 2 スーパー、クロス SWOT 、ポジショニング
3C 分析 R 03 2 食品会社、プロモーション、ブランド
PEST 分析 R 02 2 IT 企業
ファイブフォース分析 H 31 2 ホテル
H 25 1 料理教室チェーン
バリューチェーン分析 R 03 2 機械部品メーカ、情報システム戦略、強みと弱み
BSC H 29 2 コーヒーチェーン、財務分析
H 22 3 生命保険会社
ロジカルシンキング H 24 1 婦人服小売業
成長戦略 R 01 2 スマートフォン製造・販売会社、成長マトリクス、投資評価
ゲーム理論 R 04 2 化粧品メーカ、事業戦略案
マーケティング マーケティング戦略基礎 H 21 1 食品スーパー
4P H 28 2 コンビニ
販売戦略 H 22 1 旅行会社
価格戦略 H 23 1 家電量販店
ブランド戦略 H 27 2 冷凍食品専業メーカ
R FM 分析 H 26 2 輸入雑貨
BCP H 23 3 外食産業
H 28 2 家電部品メーカ
その他 業務改善 H 24 3 建設会社
発注方式 H 22 3 家電製造・販売
リスク分析、対応計画 H 25 3 電子メール
システム実現方式 H 24 3 CRM
EA H 23 3 合併
QC 7 つ道具 H 30 2 レストラン

大別すると、財務・簿記関連知識、事業戦略策定、マーケティング、 BCP 、その他に分類できます。 上位の IT ストラテジスト試験に比べて、財務・簿記関連知識の出題が多いのと、個々の重要ワードに特化した問題が多いのが特徴です。

したがって、 IT ストラテジスト試験の合格に向けて「基礎知識を固める」には、かなり有益です。 視点を変えると、ひとつの重要ワードに対して 3 ~ 4 ページで説明しているわけですから、とてもいい参考書だといえるでしょう。 IT ストラテジスト試験を受験される方も、よく知らないワードがあれば見直すことをお勧めしたいぐらいです。

選択するか?しないか?

経営戦略分野を選択するメリットは、かなり大きいと思います。

午前問題での同分野(ストラテジ系)の出題比率は約 4 分の 1 ( 80 問中 20 問)なので、午前対策と午後対策を効率よく学習できますし、この分野に強くなれば合格にも近くなります。

それだけではありません。 経営や業務知識に強くなれば、データベース分野、情報システム開発分野、システム監査分野でも有利に進められますし、さらに高度系に挑戦する時にも、 IT ストラテジストは当然のこと、システムアーキテクト、データベーススペシャリスト、システム監査技術者などの区分でも “強み” となるので学習効率が高まり、合格に近くなることが期待できます。

したがって、次のような人は選択の優先順位を上げて、しっかりと対策しておいた方が良いでしょう。

  • 文系出身で、経営や経済の基礎知識がある人
  • 簿記 3 級以上の資格を持っている人、もしくは相応の知識のある人
  • IT コンサルタント、提案する機会の多い IT エンジニア、もしくは将来それらを目指している人
  • 応用情報技術者試験合格後、(すぐに、もしくは “すぐに” とは言わないまでも)いずれ受験して合格を目指している人

“高得点の取れる可能性が高い” 、 “学習時間が抑制できる” 、 “次につながる” など、それぞれ異なりますが、いずれも何かしらのメリットがあるので、上記に該当する人は迷うことなく選択の優先順位を高めるべきだと思います。

対策(勉強方法)

対策は、次のように進めるのがベストだと考えています。

  1. 経営戦略立案手順の理解
  2. 事業戦略策定とマーケティング知識の補充
  3. BCP に関する知識の補充
  4. 財務・簿記関連知識の補充

それぞれ対策の進め方が微妙に異なるので注意が必要です。

1 経営(事業)戦略立案手順の理解

まずは、一連の経営(事業)戦略立案手順を把握しましょう。 これは、これから学習する土台をつくるためです。 この流れを理解すると、午後問題に書かれているストーリがや状況が鮮明に見えてきます。

2 事業戦略策定とマーケティング知識の補充

経営(事業)戦略立案手順が把握できたら、そこにプロットする個々の知識を押えていきます。 まずは、過去問題を使って仕上げていきます。

まずは、午前問題を使って 広く浅い知識” を習得します。 経営、マーケティング、業務、法律などに関する個々のワードに関する知識ですね。 かなり多いので、経営(事業)戦略立案手順にオーバラップするイメージで体系的に整理して進めます。

そして、その 広く浅い知識” のうち、午後の問題で取り上げられている “最重要ワード” なら、午後問題を使って深く掘り下げ、一連の経営(事業)戦略との関係性を確認しながら固めてるとよいでしょう。

3 BCP に関する知識の補充

BCP に関する知識は過去問題だけでは不十分です。 他に、最低でも次のような資料にも併せて目を通す必要があります。

事業継続計画における IT サービス継続計画の位置付けを押えます。 少々古い資料ですが、さほど変わらないので大丈夫です。 もちろん、各企業が紹介しているサイトや資料をチェックすることでも大丈夫です。

4 財務・簿記関連知識の補充

最後に “財務・簿記関連知識” をどうするのかを考えましょう。

特に時間のかかる “簿記” ですね。

簿記の勉強をしなくても、財務分析の知識やキャッシュフロー計算書、原価計算などの部分だけを勉強して挑めますが、やはり、ある程度は簿記の知識が必要になります。 仕訳はできなくても、代表的な勘定科目の意味や貸借対照表や損益計算書がどのように作られるのか(簿記一巡の手続き)ぐらいの知識は必要です。

ある程度簿記の知識が大丈夫な人は “財務・簿記関連知識” の過去問題に目を通して、どのような問題が出題されるのかをチェックしましょう。 そして、自分の現状の知識と比較して準備するのかしないのかを決めましょう。

幸い、経営戦略分野は選択問題ですから、「 “簿記関連知識” の問題は、(試験本番時に出題されていたら、その問題を見て)解けそうなら選択する。 解けそうになければ選択しない。」とすることもできます。

但し長期的に考えれば、 “この時期に” 簿記の 3 級と 2 級の勉強をすることは有益です。 今後、情報処理技術者試験を受験し続けるのであれば、簿記の知識が必要な問題はずっとついて回るからです。 高度系試験であれば、出たとしても「午前問題で 1 問」。 その 1 問を正解するために「簿記の勉強」に時間を割くというのは非現実的です。 そのため、簿記の知識が既にある人は「 1 問もうけた。 ラッキー!」となるのですが、簿記の知識がない人は、その 1 問は捨てないといけません。 これがずっとついて回るのです。 そう考えれば簿記の学習は、簿記に関連する問題の出題比率や出題確率が高い応用情報技術者試験対策や、情報処理技術者試験とは別でやるのがベストです。

ITエンジニアのための【業務知識】がわかる本

後は、手前味噌かつ宣伝になってしまうのですが、翔泳社から出している拙著の「 IT エンジニアのための【業務知識】がわかる本」を参考書代わりに使うのも有益です。

IT エンジニアのための【業務知識】がわかる本 第 5 版

この書籍は、(表紙には書いてはいませんが)情報処理技術者試験や中小企業診断士試験対策としても活用できるように作ったものです。 必要な知識を体系的にまとめ、順を追って説明しています。 効率よく学習したい方や、この先 IT ストラテジスト試験を見据えている方は、一度チェックしてみてください。

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