2018年度春期 プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅱ 問1
過去問題との関係性
品質管理(5章)とステークホルダ関連(1章)の複合問題。
中でも特に,平成19年,21年,23年に連続して出題された品質管理の問題と,平成17年問1「重要な関係者とのコミュニケーション」,平成20年問1「利用部門の参画」や,平成24年問1の「要件定義のマネジメント」あたりが関係している。
最近,出尽くしたのか…複合問題が多い。品質のどれかを“非機能要件”で練習していて,ステークホルダの中の利用部門関連の問題を1問で練習していたら比較的容易に書けたと思う。
全体整合性
複合問題の場合,パーツ単位で準備したものを組み合わせるため全体整合性が崩れるケースが多いので,そこを注意する。そのポイントを握っているのが設問ア。今回は設問ウがオーソドックスな評価と改善点なので,アとイをつなげればOK。
なお,この問題の特性上…インフラの入替,単純コンバート,ネットワークシステム等,アプリケーションシステムの開発プロジェクト以外を題材にするのは難しいと思う。
設問ア
1-1.プロジェクトの特徴
プロジェクトの特徴のところで,若干工夫がいる。「関係部門が納得する非機能要件の実現が求められている」という一文が欲しい。もちろん,関係部門,非機能要件を具体的に書いたうえで。
1-2.関係部門と連携を図る際に注意を払う点
具体的な関係部門と,具体的な非機能要件について認識を合わせなければならないことについて書く。具体的な意義,重要性など。操作性であれば,「使いやすいとはどういうことか?」やシステム開発手順における上流工程で,その操作性に対する認識を擦り合わせることの重要性などを書けばいい。簡単にいうと,関係部門が軽く考えているとプロジェクト目標が達成できないという点を具体的に書けばいいだろう。
問題文…可用性(許容停止時間,復旧時間等),性能(レスポンス,バッチ処理時間)
他の論文の問題…操作性
ここあたりまでだろうか。
保守性や移植性,セキュリティなどは若干微妙。書けない(書いたら不合格)というわけではないけれど,問題文の“など”の範囲からは外れるので書きにくいと思う。
設問イ
設問イは,品質管理の問題なので…要件定義,設計,テストの3工程は必須であろうか。その上で,それぞれ1-2個づつのタスクで5-6タスクぐらいを書けばいいだろう。例えば,操作性ならこの程度の粒度でいいだろう。これ以上細かくしてしまうと1000字を超える。
操作性に関して利用部門と連携するタスクの例
- 要件定義
-
- 操作性に関する今回のプロジェクトの方針説明
- 操作性に関する利用部門からの要求の吸い上げ
- 操作性に関する利用部門の承認
- 外部設計
-
- 画面のプロトタイプによるレビュー
- 外部設計書の承認
- 単体テスト、結合テストもしくはシステムテスト
-
- 最重要プログラムの確認に参加
問題文に「非機能要件についても確実に要件が満たされるようにマネジメントしなければならない」,「要件定義を始めとする各工程」って書いてあるから,要件定義で要求を吸い上げて要件として確定させるだけでは不十分だと思われる。「システム受入れテストの段階で不満が続出する…」という記述から,それまでの工程。
※1.利用部門,操作性の画面名を具体的に書くこと。“利用部門”ではなく,営業部門の10人の営業担当者など具体的に。できれば,人数も欲しい。役割と理由は必須。
※2.できれば計画的表現が欲しい。どの工程(いつからいつまで)のどのタスク(いつからいつまで)で,プロジェクト側は誰が(何人)で,利用部門側は誰が何人で,どういうことをするのか?ガントチャートをイメージできるぐらいの計画的表現になっている論文はほとんどないと思うので,そこを書ききったら,他と差別化できる論文になり,ほぼ合格間違いなしだと思う。
設問ウ
平成20年以前の「評価と改善点」なので,評価に関しては,利用部門を各タスクに参加するように計画したことで,受入れテストがスムーズに行った(問題文を借用した場合)とか,本番稼働後も利用部門からの不満が出ていない,混乱していないなどでいいだろう。
改善点は難しい。時間が無ければ,採点講評で指摘されるだろうけど当たり障りのない「効率よくやっていこう」でもいいが,今回のケースなら…
「利用部門に参加してもらう時に,リスケが多かった」とか,「利用部門の忙しい時に参加してもらった」とか,参加してもらったことで大きなトラブルは無かったけど,参加そのもので現場に負荷をかけたとか,現場に浸透していなかったとか,字数を600字超えるようにしっかりとそのあたりを書けばいいだろう。
感想
複合問題なので,そうそう誰もが書けるとは思えない。
ただ,設問ウが評価と改善点で差が着かないし,設問アも1-2の意義は問題文の例から想像するに多くの受験生が書けるだろうから,勝負は設問イになるはず。
設問イはタスク単位で書いているだろうから,計画的表現になっている,すなわち,工程と,いつからいつまでのタスクで,双方の参加者の部署と人数,代表者が書いていて,役割や狙いが書いていれば万全。
そうなっていない論文のうち,品質の作り込みと,品質の確認,つまりレビューとテストのタスクが書いてあって,承認をもらっているところまでだろうか。
あくまでも,過去問題を添削してみて掴んでいる合格水準なので,予想だが。
著者の三好康之さんから許可を得て、2018年度 春期 情報処理技術者試験 の出題問題への感想を一部修正し、転載しています。
転載元: 三好康之オフィシャルブログ 「自分らしい働き方」Powered by Ameba
label 関連タグ注: 文中に出る (**章) は 情報処理教科書 プロジェクトマネージャ の該当章を指しています
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- 情報処理技術者試験全区分制覇(累計 32 区分,内高度系 25 区分)
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