プロジェクトマネージャ試験 2022 変更点とその対策


2022-05-27 公開

先日( 2022 年 5 月 23 日)、 IPA から以下が発表されました。

参考IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:プロジェクトマネージャ試験(PM)の関連ドキュメントの一部改訂についてopen_in_new

適用時期は次の試験( 2022 年 10 月の試験)から。 そのため、当該試験の受験を考えている方の中には、これから合格を目指してどのように対策すればよいのか? これまで蓄積してきた知識は無駄になるのか? 不安を感じている方もいるかもしれません。

特に、もう既に試験対策本を購入して学習を初めている人や、過去に受験経験(学習経験)のある方は、そういう不安が大きいかもしれません。 この改訂が公表されたのはつい先日で、筆者が翔泳社から出している試験対策本を含め、ほとんどの試験対策本はそれよりもずっと前に刊行されていますからね。

ネット上には深い考察をせず「大きく変わる!」とおっしゃる人もいますが … それはどうでしょうか? 筆者はそう思いません。 これは既定路線の改訂だと思います。 したがって、少なくとも筆者の試験対策本は既に対応済みです。 心配しなくても大丈夫です。

今回の改訂について

筆者が “既定路線” だと考える理由は二つあります。ひとつは、「シラバスの改訂内容」にみられる変更がほとんどないことです。

今回 IPA は、前回の改訂時( Ver 5.0 → Ver 6.0 の改訂)に作成していた「変更箇所表示版」を作成していません(今回は、試験要綱の方は作成しています)。

そこで、とても面倒ですが、何がどう変わっているのか、突き合わせて確認しました。

すると、その結果は … 「大項目」には変更はなく、「小項目」では 1 か所( 2 項目)だけ順番を入れ替えた程度のものでした。 「概要」、「要求される知識」、「要求される技能表現」の内容は多少変わっていましたが、表現レベルの変更(構成員をメンバーなど)や誤字脱字の修正(今回も若干見つけましたが(笑))、字下げをした程度のものが多く、「え?こんなに変わるの?」と驚くような変更はありませんでした。 「変更箇所表示版」が無いのも納得です。 作る必要が無かったのでしょう。

では、今回なぜ、シラバス 7.0 を大きく変える必要が無かったのでしょうか?

それは、この表を見れば想像がつきます。

注 1
2019 年(令和元年) 5 月 27 日「情報処理技術者試験の「シラバス」における一部内容の見直しについて ~第 4 次産業革命に対応した用語例等の追加~」
注 2
2019年(令和元年) 11 月 5 日「情報セキュリティマネジメント試験・高度試験・情報処理安全確保支援士試験における人材像・出題範囲・シラバス 等の改訂について(新技術への対応、セキュリティ強化など)」
注 3
2019年(令和元年) 6 月 24 日「プロジェクトマネージャ試験 (PM)の関連ドキュメントの一部改訂について」

この表は、今回の改訂に関するこれまでの諸機関の動きをまとめたものです。

政府が DX に着目し始めたのは平成 30 年( 2018 年)です。 翌平成 31 年( 2019 年)、それに呼応すべく情報処理技術者試験の DX 対応が始まりました。 最初は FE と AP を対象にしていましたが(注 1 )、実はその後すぐに PM のシラバスも変わったのです(注 3 )。 ただ、この時点で、今回大きく変更された試験要綱の対象者像や業務と役割、期待する技術水準はあまり変わりませんでした(変更はありましたが、今回のように大きく変わったわけではありませんでした)。 つまり、この時点では、試験要綱のプロジェクトマネージャの内容とシラバス 6.0 の内容が微妙に乖離している状態だったのです。

今回の改訂は、おそらくその乖離を解消する(もしくは整合性を取る)ためのものなのでしょう。 PMBOK ® 第 7 版も出たことですし、それを加味する形で。

そう考えれば、令和元年から始まった午後Ⅰの問題の大きな変化(後述)の説明も付きますからね。 要するに、令和元年(遅くともその翌年の令和 2 年)から試験そのものが変化し、その変化に追随すべく、今回の試験要綱及びシラバスの改訂になったと考えるのが妥当なのではないでしょうか。

そういうわけで、多くの試験対策本はシラバス 6.0 に対応しているはずなので、問題はないと思います。 少なくとも筆者の試験対策本は数年前からシラバス 6.0 には対応していますので。

試験要綱(対象者像・業務と役割・期待する技術水準)の変更点

今回の改訂が、先行して改訂されたシラバス 6.0 と試験要綱(対象者像・業務と役割・期待する技術水準)の乖離をなくすため、 PMBOK ® 第 7 版との整合性を取るためかどうかは別にして、念のためどこが変わったのかチェックしておきましょう。

試験要綱の変更内容(プロジェクトマネージャの対象者像、業務と役割、期待する技術水準)の変更点をまとめると次のようになります。

  • ベネフィット(プロジェクトの目的)重視
    arrow_forward ステークホルダーとの協創
  • “不確かさ” を含むプロジェクトの推進
  • プロジェクトの目標を設定して、その達成に最適なライフサイクルと開発アプローチの選択、及びマネジメントプロセスの修整
    arrow_forward 予測型(従来型)か、適応型(アジャイル開発等)かの選択

やはり、これらも PMBOK ® 第 6 版で重視されるようになった内容(第 5 版からの改訂部分)です。 ここまで強調され、はっきりはしていませんが、シラバス 6.0 にも含まれていたものです。

そして、上記の 3 つめを強調するために、シラバス 6.0 から 7.0 で次のような変更をしたのでしょう。先に「小項目で変更があった 1 か所( 2 項目)」と挙げたのが、この部分です。

(Ver 6.0)「 2 プロジェクトの計画」
‐「2-1 システム開発方針の設定」
‐「2-2 プロジェクト全体計画の作成」
(Ver 7.0)「 2 プロジェクトの計画」
‐「2.1 プロジェクト計画の作成」
‐「2-2 システム開発アプローチの選択」

試験対策をどうするか?

以上の変更点を踏まえて、それでは最後に、皆さんが最も気になっているところ … 試験対策をどうすべきか考えましょう。

  • これまでの対策は無駄になるのか?
  • 今使っている試験対策本をそのまま使って大丈夫か?
  • 新しいことを覚えなければいけないのか?
  • etc

1午前Ⅰ対策

午前Ⅰ対策は従来通りで構いません。

午前Ⅰは応用情報技術者試験の問題から 30 問抽出されるので、基本は応用情報技術者試験の午前対策になります。 今回、応用情報技術者試験のシラバス等は変わっていません。 現状最新のシラバスは 6.2 で 2021 年 10 月 26 日に公表されたものなので、既に「新技術への対応」は盛り込み済みです。 試験対策本の多くも対応済みだと思います。

2午前Ⅱ対策

ここも従来通りで構いません。

但し、 PMBOK ® 第 7 版とアジャイル開発(スクラム)に関する新規問題は、普通に出題されるでしょう。 新規問題は、今回に限らず毎回何問かは出題されていますからね。

でも、過去問題と新規問題の比率は大きく変わらないのではないでしょうか。 多少新規問題の割合が増える可能性はあるかもしれませんが、元々 PM 試験の午前Ⅱは他の高度系試験区分に比べて新規問題の割合が多いので、今よりも大きく(新規問題と過去問題の)比率が変わるとは思えません。

加えて、予測型(従来型)プロジェクトが無くなったわけではないですからね。過去問題もそのまま使われる可能性が高いのではないでしょうか。

PMBOK ® 第 7 版が刊行されても第 6 版のプロセスが上書きされてなくなったわけではありません。 その上位プロセスになっただけです。 「プロジェクトの目標を設定して、その達成に最適なライフサイクルと開発アプローチの選択、及びマネジメントプロセスの修整」プロセスが入って、アジャイルなのか、従来型なのか、それともハイブリッド型なのかを選択するというフェーズが加わっただけなので。

そう考えれば、これは逆にチャンスです。 新規問題を正解するチャンスですよね。 アジャイル開発、 DX 、 PMBOK ® 第 7 版の重要な部分など、令和に入って重視されているこれらの基本的事項を学習すれば、新規問題を正解できる可能性が跳ね上がります。 こういう過渡期でもない限り新規問題の予測は難しいのですが、過渡期は十分予測できます。加えて…新規問題って、その対象となる用語の基礎の基礎しか問われないことが多いですからね。

3午後Ⅰ対策

ここも従来通りですね。 というより、令和 2 年・ 3 年の過去問題が解けるような対策を引き続き進めればよいということです。

午後Ⅰ問題の学習を開始している人はすでにご存じだと思いますが、(先述の通り)令和元年以後、午後Ⅰの問題は大きく変わっています。 しかも、今回の改訂内容を先取りしたような変化です(下記参照)。ここ 2 年は 3 問中 2 問(問 1 、問 2 )がそのような問題でした。

情報処理教科書プロジェクトマネージャ 2022 年版(翔泳社 刊)の P.89 より引用

これらの過去問題を見れば気付くでしょう … 今回の改訂内容そのものだということに。 令和 2 年 問 1 ではベネフィット(便益)を現実化するためのチーム編成、同 問 2 ではメンバが自律的に行動すること、令和 3 年の問 2 などですから。 今回の改訂そのものです(笑)。

令和 4 年も、ここ 2 年と同じく今回の改訂内容をベースにした問題が 2 問、予測型(従来型)プロジェクトの問題が 1 問となるのではないでしょうか。(午前Ⅱで説明した通り)予測型(従来型)プロジェクトはなくならなりませんから。

したがって、令和 2 年及び令和 3 年同様、こうした問題を想定した対策をしましょう。

4午後Ⅱ対策

最後は午後Ⅱ対策です。

午後Ⅱ対策だけは、(人によっては)軌道修正が必要かもしれません

これまでは、(前述の表にある通り)今回の改訂内容に準拠した問題は出題されていません。 もちろん、どの開発アプローチ(予測型プロジェクト、アジャイル開発を採用したプロジェクト、ハイブリッド型プロジェクトなど)でも書くことができる問題は出題されていますが、それは「予測型プロジェクトでは書けない!」というものではありません。それゆえ、 これまでは 2 問とも予測型プロジェクトで書くことができていたのです。

なので、あえて予測型プロジェクト以外のネタを用意する必要もありませんでした。

でも、令和 4 年の問題は変わってくるのではないでしょうか?

2 問とも改訂内容に準拠した(すなわち、アジャイル開発の)プロジェクトでしか書けない、予測型プロジェクトの経験では書けないという可能性は低いと思います。

しかし、アジャイル開発の(アジャイル開発でしか書けない)プロジェクトの問題が 1 問、予測型のプロジェクトの問題が 1 問になる可能性は十分ありえると思います。 システムアーキテクト(令和 3 年~)やシステム監査技術者試験(平成 30 年~)では、既に午後Ⅱ論述式試験で出題されていますからね。 プロジェクトマネージャ試験もそろそろだと思います。

だとすれば、論文対策はどうすればいいのでしょうか?

予測型、適応型(アジャイル開発)の両方の経験がある人は問題ありません。 それぞれの事例を元に論文や部品を準備していけばいいだけです。 問題は、適応型(アジャイル開発)の経験が無い人です。そういう人は次のように考えることをお勧めします。

まずは過去問題で論文を作成します。その過程で、まずは下記の点( 1. )を準備していきましょう。それが終わった段階で、下記の点( 2. )を準備しておけば万全でしょう。

  1. 過去問題を活用して仕上げる部分
    1. 論文共通の基礎的事項(具体的に書く、第三者にわかりやすく書く、計画の表現、体制の表現など)
    2. 予測型プロジェクトの問題への対応(部品化、完成版)
    3. 開発アプローチに依存しない問題への対応
      (人間関係管理、チーム編成など)
  2. アジャイル開発の問題への対応
    1. マネジメント業務の開発チームへの権限委譲
    2. サーバント型のマネジメント

まとめ

少々長くなったので、今回はここまでにします。

これだけでも、ざっくりとした方向性を示せたのではないでしょうか。 要するに、注意すべきは午後Ⅱの準備部分だけだというわけです。 午前Ⅰも午前Ⅱ及び午後Ⅰも、令和に入ってから既に変わっていますからね。

政府が DX の研究会を立ち上げたのが 2019 年。その頃から IPA は DX とアジャイル開発に関する資料を積極的に公表してきました。 それから 3 年 … PMBOK ® 第 7 版の登場を待って改訂したと考えれば、この時期になるのも想定通りですよね。 内容も、これまで IPA が公表してきた方向性通りです。 特にズレもありません。

当然ながら筆者の情報処理教科書プロジェクトマネージャ 2022 年版も、 PMBOK ® 第 7 版対応、 DX やアジャイル開発を想定した予想問題なども織り込み済みです。 加えて(以前は重視していなかったので)第 7 章にしていた「プロジェクト立ち上げ時」の話を第 1 章にもってきて「開発アプローチの選定」も含めています。 なので、読者の皆さんは安心してください。 想定通りです。先を読むのは得意ですから(まぁ、今回の改訂は誰でも予測できますが 笑)。

ただし、具体的な学習方法や過去問題の選定など、わかりにくい部分もあると思うので、これからも定期的に情報発信したいと考えています。 今回は、方向性だけでしたが、より具体的な方法も随時、定期的にアップするように考えています。

このサイトでも、これからも定期的に「今回のシラバス改訂」に対応すべく “より具体的な方法” を、順次公開する予定です。 定期的にチェックしていただければ幸いです。

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