はじめての 基本情報技術者試験 で合格できる戦略と戦術

筆者は、長年に渡り基本情報技術者試験の対策講座で講師を務めています。
この記事では、筆者の講師経験を総動員して、はじめて基本情報技術者試験を受験する人に、基本情報技術者試験というものが、どのような相手であるかを説明し、どのように倒せばよいかをアドバイスします。
まずは相手を知ることから
情報 合格点は、午前試験と午後試験の両方で、60 点以上である
基本情報技術者試験は、午前試験と午後試験から構成されていて、どちらも試験時間は 2 時間 30 分で、どちらも 100 点満点で 60 点以上が合格です。
午前試験と午後試験の両方で、60 点以上を取らなくてはなりません。
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情報 午前試験は、時間の心配をする必要がない
午前試験は、全部で 80 問あり、出題分野と出題数は、
- テクノロジ系
- 50 問
- マネジメント系
- 10 問
- ストラテジ系
- 20 問
(それぞれ 1、2 問増減する場合があります)
です。
配点は、すべて 1.25 点であり、選択問題はありません。
午前試験は、多くの受験者が「時間が余った」と言っていますので、時間の心配をする必要はありません。
戦略 苦手な分野を集中的に学習しないと得点が上がらない
図 1 に令和元年度 秋期 午前試験の出題分野と問題数を示します。
ここでは、テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系を、いくつかの分野に分けています。どの分野も、出題される問題数は、毎回ほぼ同じです。
したがって、苦手な分野を集中的に学習しないと得点が上がりません。
テクノロジ系 | 情報の基礎理論 | 11 問 |
---|---|---|
コンピュータシステム | 11 問 | |
ヒューマンインターフェイスとマルチメディア | 2 問 | |
データベース | 5 問 | |
ネットワーク | 5 問 | |
セキュリティ | 10 問 | |
開発技術 | 6 問 | |
マネジメント系 | プロジェクトマネジメント | 4 問 |
サービスマネジメント | 3 問 | |
システム監査 | 3 問 | |
ストラテジ系 | システム戦略 | 9 問 |
ビジネスインダストリ | 4 問 | |
企業活動 | 5 問 | |
標準化と法律 | 2 問 |
※筆者が独自に分類したものです。
情報 午後試験は、時間内に問題を解く練習をしておく必要がある
午後試験は、令和元年度 秋期 までは全部で 13 問ありましたが、令和 2 年度 春期から問題の構成が変更されて全部で 11 問になり、配点も変更されます。変更後の問題の構成と配点を図 2 に示します。
問題番号 | 分野 | 配点 |
---|---|---|
1 | 情報セキュリティ 1 問 | 必須選択 20 点 |
2 ~ 5 | テクノロジ系から 3 問出題 (ソフトウェア・ハードウェア、データベース、ネットワーク、ソフトウェア設計) |
2 問選択 各 15 点 |
マネジメント系、ストラテジ系から 1 問出題 | ||
6 | データ構造およびアルゴリズム 1 問 | 必須選択 25 点 |
7 ~ 11 | ソフトウェア開発 5 問 ( C 言語、Java 、Python 、アセンブラ言語、表計算ソフトから各 1 問出題) |
1 問選択 25 点 |
午後試験は、多くの受験者が「時間が足りなかった」と言っていますので、あらかじめ時間配分を考え、時間内に問題を解く練習をしておく必要があります。選択問題があることにも注意してください。
午前試験の倒し方
戦略 できない計算問題は、その問題を何度も練習して、計算方法を覚える
テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系、どの分野でも、計算問題が出題されます。
計算問題が苦手な人は「公式があれば丸暗記したい」と思うかもしれませんが、基本情報技術者試験には、公式を丸暗記する必要がある問題が出たことはありません。
仕組みが分かっていれば計算できる問題、もしくは、用語の意味が分かっていれば計算できる問題になっています。
同じ問題が何度も再利用されているので、できない問題があったら、類題を探そうなどと思わずに、その問題を何度も練習して、計算方法を覚えてください。
label 計算問題をわかりやすく解説する連載はじまりました!

苦手克服!かんたん計算問題
多くの受験者が苦手意識を持っている「計算問題」が「かんたん」と感じられるよう、計算方法をデフォルメしながら説明します。
戦術 時間がかかる問題は後回しにする
午前試験は、全問を解かねばならないのですから「これは時間がかかるな」と思った問題は、後回しにしましょう。
多くの受験者が「時間が余った」と言うのですから、余った時間で、時間がかかる問題を丁寧に解けばよいのです。
戦術 答えを選べなかったら、消去法で最も無難な選択肢を選ぶ
午前試験の問題は、すべて四択の選択問題です。もしも、答えを選べなかったら、誤りと思われる選択肢を消してください。いわゆる「消去法」です。
この消去法も、close と panorama_fish_eye だけではなく、不適切なら close 、微妙なら change_history 、悪くないなら panorama_fish_eye 、適切なら ◎ 、判断できないなら help_outline を付けてください。
基本情報技術者試験には、ヒッカケ問題は出ませんので、close 、change_history 、panorama_fish_eye 、◎ 、help_outline を付けた選択肢の中で、最も無難なものを選んでください。
消去法のやり方
戦術 具体的な値を想定して、不適切な選択肢を消す
すべて四択の選択問題であることから、具体的な値を想定して、不適切な選択肢を消すという解法もできます。
たとえば、問題文にディジタル回路が示され、選択肢に論理式が示されている場合(平成 29 年度 春期 午前試験 問 22 など)は、ディジタル回路の入力に具体的な数値を想定して出力を求め、同じ数値で同じ演算結果にならない論理式を消していけばよいのです。
具体的な値を想定する解き方
戦術 知らない用語に遭遇したら、言葉の意味から常識的な判断をする
もしも、知らない用語に遭遇したら、言葉の意味から常識的な判断をして、それに該当する選択肢を選んでください。
たとえば、「キーロガーの悪用例はどれか(平成 27 年度 春期 問 37 など)」という問題で「キーロガー」という用語を知らなかったとしましょう。
「キー(キーボード)」と「ログ(記録)」という言葉の意味から、キーボード入力を記憶するものであり、その悪用例なのですから、キーボード入力を盗むことだと予測できます。
午後試験の倒し方
戦略 午後試験の苦手な分野は、午前試験の同じ分野の問題を数多く学習することで克服できる
午後試験の問 1 ~問 5 は、かつて「午前知識の応用問題」と呼ばれていました。午前試験のテーマとなっている様々な用語や概念を、架空の事例に仕立てたものだからです。
そのため、問題の冒頭が「 A 社では、~」や「 B 社のシステムにおいて、~」のような書き出しになっています。一見して難しそうに感じるかもしれませんが、設問を見ると、そこで問われていることは、午前試験と同様です。
「午前試験はできるが、午後試験ができない」と言う人がいますが、多くの場合に「午前試験の知識が不十分なので、午後試験ができない」のです。
午後試験の苦手な分野は、午前試験の同じ分野の問題を数多く学習することで克服できます。
戦略 基本的なデータ構造とアルゴリズムをしっかりマスターしておくこと
問 6 のデータ構造およびアルゴリズムは、必須問題です。
出題者オリジナルのアルゴリズムまたは、やや高度で有名なアルゴリズムが出題されます。
いずれの場合も、午前試験で出題される、
基本的なデータ構造 | 配列、リスト、キュー、スタック、二分探索木、ヒープなど |
---|---|
アルゴリズム | バブルソート、選択法、挿入法、マージソート、クイックソート、線形探索、二分探索など |
を理解していることを想定している内容なので、それらをしっかりマスターしておく必要があります。
戦略 擬似言語の読み方をしっかりとマスターしておくこと
問 6 のデータ構造およびアルゴリズムでは、擬似言語で示されたプログラムを読まねばなりません。
擬似言語は、架空のプログラミング言語であり、基本情報技術者試験独自のもの です。
午後試験の問題用紙に、擬似言語の仕様が示されていますが、それを試験当日に見ていたのでは、時間が足りなくなってしまいます。あらかじめ、擬似言語の読み方をしっかりとマスターしておく必要があります。
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戦略 表計算は、問題を解くレベルになるまでの学習時間が短くて済むが、問題が簡単なわけではない
問 7 ~ 11 では、C 言語、Java 、Python 、アセンブラ言語、表計算ソフトの問題の中から 1 つを選びます。
経験のある言語や、得意な言語を選ぶと思いますので、選択で悩むことはないでしょう。もしも、プログラミング言語の経験がないなら、表計算ソフトを選ぶことをお勧めします。
表計算ソフトの問題の前半部は、セルに入れる数式を選ぶ問題です。Microsoft Excel を使ったことがあるなら、意味がわかるはずです。
後半部は、擬似言語で示されたマクロ(ワークシートを利用するプログラム)の問題です。問 6 のデータ構造およびアルゴリズムで覚えた擬似言語の知識があればわかるはずです。
ただし、表計算の問題の内容が簡単なわけではありません。C 言語、Java 、Python 、アセンブラ言語と比べて、問題を解くレベルになるまでの学習時間が短くて済むだけです。
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戦術 冒頭の事例ではなく、設問と選択肢を見て選択するかどうかを決める
問 1 の情報セキュリティは、必須問題ですが、問 2 ~ 5 は、2 問を選択しなければなりません。少し手を付けてから「やっぱりやめた」では、時間を無駄にしてしまうので、慎重に選択してください。
選択するコツは、冒頭の事例ではなく、設問と選択肢を見ることです。設問と選択肢に、自分の知っている言葉が並んでいるなら、選択してください。そうでないなら、選択しない方が無難です。
学習計画と勉強方法
それでは、最後に、学習計画と勉強方法をアドバイスしましょう。
戦略 はじめに午前試験の勉強をして、十分に知識が付いたと感じてから、午後試験の勉強をする
基本情報技術者試験の出題テーマの細目を示した シラバス picture_as_pdf という資料があります。
これを見ると、試験の出題テーマは、午前試験と午後試験で分けられていません。
同じ出題テーマで、午前試験は短い問題(概念や用語の意味に関する問題)、午後試験は長い問題(架空の事例を読み取る問題、およびプログラムの内容を読み取る問題)になっているのです。
したがって、勉強の順序としては、はじめに午前試験の勉強をして、十分に知識が付いたと感じてから、午後試験の勉強をしてください。
また、基本情報技術者試験試験には「午前免除制度」というものがあり、本試験 3 ~ 4 ヶ月前に午前試験を 2 回受験でき、どちらかに合格できれば、午前試験が免除されます(本試験では午後試験だけを受ければよい)。この突破を目安にするのも一つの方法です。
戦略 数多くの過去問を解いて、できなかった問題があれば、できるようになるまで繰り返し解く
最も効率的で効果的な勉強方法は、過去問を解いて、できなかった問題があれば、できるようになるまで繰り返し解くことです。
午前試験は、同じ問題が何度も出題されています。午後試験は、まったく同じ問題が出題されたことはありませんが、同じテーマの問題は何度も出題されています。
したがって、できなかった過去問をできるようにすることが、最も効率的であり効果的なのです。
過去問と解答は、情報処理推進機構の Web ページ からダウンロードできます。年度の新しい順に解いていくとよいでしょう。
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記事をお読みいただき、ありがとうございます。
筆者は、講師として数多くの受験者に接してきましたが、合格できた人の多くには共通した特徴がありました。
それは、「合格したい!」という意欲を持っていたことです。何となく「合格できればいいな!」ではなく、「絶対に合格したい!」という強い意欲です。
この記事が、皆さんの意欲を駆り立てる一助となったなら幸いです。では、またお会いしましょう!
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午前試験を免除しています。

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大手電気メーカーでPCの製造、ソフトハウスでプログラマを経験。独立後、現在はアプリケーションの開発と販売に従事。その傍ら、書籍・雑誌の執筆、またセミナー講師として活躍。軽快な口調で、知識0ベースのITエンジニアや一般書店フェアなどの一般的なPCユーザの講習ではダントツの評価。
お客様の満足を何よりも大切にし、わかりやすい、のせるのが上手い自称ソフトウェア芸人。
主な著作物
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