基本情報技術者試験 科目A免除試験 (旧 午前免除試験) の講評 ~ 2024年1月28日実施
試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、2024年1月28日(日)に実施された基本情報技術者科目A免除試験(修了認定に係る試験)の講評をさせていただきます。
今回受験された人は振り返りの題材として、今後受験される人は対策の資料として、参考にしていただければ幸いです。
実施月 | 問題 | 解答 |
---|---|---|
2024 年 1 月 | 問題 | 解答 |
問題の内容
表1は、今回の科目A免除試験の内容です。
問題の番号、分野、テーマ、難易度、および過去問題の再利用かどうかを示しています。
表1 今回の科目A免除試験の構成
番号 | 分野 | テーマ(分類) | 難易度 | 過去問題 |
---|---|---|---|---|
1 | T | 誤差の種類(情報の基礎理論) | 中 | H14秋問4 |
2 | T | 確率の計算(情報の基礎理論) | 中 | H20秋問8 |
3 | T | BNFの解釈(情報の基礎理論) | 難 | H20秋問7(AP) |
4 | T | パリティチェック方式(情報の基礎理論) | 難 | H25春問4 |
5 | T | スタックの特徴(アルゴリズム) | 易 | H15秋問13 |
6 | T | ハッシュ値の衝突(アルゴリズム) | 中 | H15春問14 |
7 | T | XMLの説明(ソフトウェア) | 易 | H23秋問8 |
8 | T | CPIを使った計算(ハードウェア) | 中 | H19春問19 |
9 | T | メモリインタリーブの説明(ハードウェア) | 中 | H23特別問12 |
10 | T | RAIDの種類(システム構成) | 中 | R01秋問15 |
11 | T | Webブラウザと専用アプリの違い(システム構成) | 中 | H28秋問45(SG) |
12 | T | キャパシティプランニングの作業項目(システム構成) | 中 | H30秋問14 |
13 | T | メモリのセグメントの移動(ソフトウェア) | 難 | H27秋問18 |
14 | T | OSのAPIの説明(ソフトウェア) | 易 | H20春問29 |
15 | T | OSSのライセンス違反(ソフトウェア) | 中 | H25秋問21 |
16 | T | クロック信号の分周器(ハードウェア) | 難 | H22春問25(AP) |
17 | T | 入力画面の設計方針(マルチメディアとヒューマンインタフェース) | 易 | H14春問50 |
18 | T | DBMSのスキーマ(データベース) | 易 | H27秋問25 |
19 | T | 主キーの性質(データベース) | 易 | H21秋問32 |
20 | T | 権限を設定するSQL文(データベース) | 中 | H31春問27(AP) |
21 | T | クエリを実行する処理の流れ(データベース) | 中 | H27春問30 |
22 | T | トランザクションログを用いて行う操作(データベース) | 中 | H28春問30(AP) |
23 | T | IPアドレスを問合せる仕組み(ネットワーク) | 易 | R01秋問47(SG) |
24 | T | スイッチングハブの特徴(ネットワーク) | 中 | H24秋問35 |
25 | T | ARPの説明(ネットワーク) | 中 | R3秋問33(AP) |
26 | T | 電子メールのプロトコル(ネットワーク) | 中 | H31春問46(SG) |
27 | T | SMTPサーバの不正利用防止(セキュリティ) | 難 | H19秋問72(AP) |
28 | T | 共通鍵暗号方式の特徴(セキュリティ) | 中 | H30秋問38 |
29 | T | XML署名でできること(セキュリティ) | 中 | H31春問24(SG) |
30 | T | 耐タンパ性の実装技術(セキュリティ) | 中 | R03秋問40(AP) |
31 | T | マルウェア対策ソフトでのフォールスネガティブ(セキュリティ) | 中 | H31春問41(AP) |
32 | T | アクセスポイントへの無断接続防止(セキュリティ) | 中 | H31春問20(SG) |
33 | T | SSHの説明(セキュリティ) | 易 | H30秋問29(SG) |
34 | T | DFDの図記号(開発技術) | 易 | H22春問45 |
35 | T | オブジェクト指向の特徴(開発技術) | 中 | H19秋問44 |
36 | T | モジュール結合の種類(開発技術) | 中 | H30秋問48 |
37 | T | トップダウン方式の結合テスト(開発技術) | 易 | H25秋問50 |
38 | T | SOAの説明(開発技術) | 易 | H24秋問48(AP) |
39 | T | スクラムのプロダクトオーナの責任(開発技術) | 難 | R03春問49(AP) |
40 | T | アジャイル開発のリファクタリング(開発技術) | 中 | H29春問50 |
41 | M | プロジェクトのピーク時の要因の計算 | 中 | H20秋問46 |
42 | M | ガントチャートの説明 | 易 | H29秋問44(SG) |
43 | M | データのバックアップ方法 | 中 | H29秋問56 |
44 | M | 総所有費用(TCO)の計算 | 中 | H25春問57(AP) |
45 | M | 監査報告書に記載すべきもの | 易 | H31春問60 |
46 | S | RPAの事例 | 易 | R01秋問62 |
47 | S | BI(Business Intelligence)の説明 | 易 | H29秋問65 |
48 | S | 半導体ファブレス企業の説明 | 中 | H24秋問66(AP) |
49 | S | 企業経営のベンチマーキングの説明 | 易 | H23秋問68 |
50 | S | 商品体系変更後の試算 | 中 | H30秋問69 |
51 | S | バランススコアカードの4つの視点 | 易 | H22秋問69 |
52 | S | プロダクトイノベーションの説明 | 易 | H23秋問71 |
53 | S | アクセシビリティの説明 | 易 | H27秋問71(AP) |
54 | S | デジタルサイネージの説明 | 易 | H31春問74 |
55 | S | RFIDの説明 | 易 | H25春問72 |
56 | S | 従業員1人当たりの勤務時間を減らして雇用維持や雇用機会増加を図る考え方 | 中 | H27春問76 |
57 | S | 期待利益の計算 | 中 | H16秋問77 |
58 | S | 最も高い利益を求める手法 | 中 | H16秋問78 |
59 | S | 最大利益が見込める設定価格の計算 | 中 | R04春問76(AP) |
60 | S | 著作権法によるソフトウェアの保護範囲 | 易 | H24春問78 |
※分野は、T=テクノロジ系、M=マネジメント系、S=ストラテジ系です。
※テクノロジ系だけ、カッコ内に問題のテーマの分類を示しています。
※問39とまったく同じ問題は、過去に出題されていませんが、R03春問49(AP)とほとんど同じ内容なので、過去問題の再利用としています。
難易度は、筆者の講師経験から、以下のように設定しています。
・易:受講者のほぼ全員ができるもの
・中:受講者の半数ぐらいができるもの
・難:受講者の数名しかできない問題
過去問題の再利用である場合は出題された主な年度を示し(同じ問題が何度も再利用されている場合がありますが、ここでは、それらの中から1つの年度だけを示しています)、基本情報技術者試験の過去問題ではない場合は「H20秋問7(AP)」のようにカッコの中に試験区分の略称(※)を示しています。
※AP:応用情報技術者試験、SC:情報セキュリティスペシャリスト試験、SG :情報セキュリティマネジメント試験
過去問題の再利用
今回の試験も、前回の試験(2023年12月10日実施)と同様に、すべての問題が過去問題の再利用でした。基本情報技術者試験の過去問題だけでなく、他の試験区分の過去問題も多くあったことも、前回と同様です。
表2は、今回と前回の試験で再利用された過去問題の試験区分と問題数です。
基本情報技術者試験の過去問題が多いのは当然ですが、応用情報技術者試験の過去問題も数多く再利用されています。
表2 今回と前回の免除試験で再利用された過去問題の試験区分と問題数
試験区分 | 前回(12月10日) | 今回(1月28日) |
---|---|---|
基本情報技術者試験 | 35問(58%) | 39問(65%) |
応用情報技術者試験 | 21問(35%) | 14問(23%) |
情報セキュリティマネジメント試験 | 3問 | 7問 |
情報セキュリティスペシャリスト試験 | 1問 | (なし) |
エンベデッドシステムスペシャリスト試験 | (なし) | (なし) |
問題の難易度
今回の科目A免除試験の問題の難易度は、易が21問、中が33問、難が6問でした。
易が90%できて、中が50%できて、難が25%できる(四択問題なので最低でも25%できます)とすれば、正解数の期待値は、21×0.9 + 33×0.5 + 6×0.25 = 36.9問です。
合格基準は、60問中36問以上の正解なので、ギリギリで合格できたか、逆にギリギリで残念な結果になってしまったでしょう。
表3は、今回を含めた直近4回の試験の正解数の期待値です。
今回の問題は、前回の試験と同様に、やや難しかったといえます。
表3 今回を含めた直近4回の科目A免除試験の正解数の期待値
試験実施日 | 6月11日 | 7月23日 | 12月10日 | 1月28日 |
---|---|---|---|---|
正解数の期待値 | 38.0問 | 37.1問 | 36.5問 | 36.9問 |
※60問中36問以上の正解で合格です。
今後の科目A免除試験を受ける人へのアドバイス
最後に、今回の科目A免除試験の内容から、今後の科目A免除試験を受ける人にアドバイスをさせていただきます。
★アドバイス1: 苦手分野の過去問題を数多く解く
科目A免除試験の内容は、100%が過去問題の再利用です。
したがって、試験に合格するための最も効果的で効率的な学習方法は、過去問題(科目A試験の公開問題、科目A試験のサンプル問題、および旧制度の午前試験の過去問題)を数多く解いて、できなかった問題があれば、できるようになるまで何度も練習することです。
苦手な分野の過去問題を、重点的に解いてください。
★アドバイス2: 他の試験区分の過去問題を練習する必要はない
科目A免除試験には、基本情報技術者試験だけでなく、応用情報技術者試験や情報セキュリティマネジメント試験など、他の試験区分の過去問題も再利用されていますが、それらを練習する必要はありません。
なぜなら、他の試験区分の過去問題の中には、基本情報技術者試験の出題範囲外の問題(基本情報技術者試験には出題されない問題)もあるからです。
他試験の問題を見ながら、基本情報技術者試験の範囲内かどうかを判断するのは時間もかかってしまいます。それであれば、基本情報技術者試験の問題をより丁寧に学習したほうが効果的であると言えます。
★アドバイス3: はじめて見た問題にも自信を持って取り組む
試験当日に、他の試験区分の過去問題に遭遇すると、はじめて見た問題なので戸惑うでしょう。
そんなときは、決して怖気づかずに「ちゃんと勉強してきたのだから、自分の持つ知識で必ず解けるはずだ!」と、自信を持って取り組んでください。
この記事の冒頭の表1に示した過去問題の出典は、まったく(もしくはほとんど)同じ問題が出た年度と試験区分を示したものであり、出典が応用情報技術者試験や情報セキュリティマネジメント試験になっていても、同じテーマの問題が基本情報技術者試験にも出ている場合が多々あります。
これは、当然のことですが、基本情報技術者試験には、基本情報技術者試験の出題範囲を超えた問題が出るはずがありません。
* * *
以上、試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、試験問題の講評をさせていただきました。
今回の試験に合格した人は、ここで気を緩めずに、科目B試験の学習を始めてください。
残念な結果になってしまった人は、ここで気を落とすことなく、科目A試験と科目B試験の学習を並行して続けてください。
どちらも場合も、コツコツと学習を続けていれば、必ず良い結果が得られるはずです。
皆様のご健闘をお祈り申し上げます!
label 関連タグ免除試験を受けた 74.9% の方が、 科目A免除資格を得ています。
※独習ゼミは、受験ナビ運営のSEプラスによる試験対策eラーニングです。
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大手電気メーカーでPCの製造、ソフトハウスでプログラマを経験。独立後、現在はアプリケーションの開発と販売に従事。その傍ら、書籍・雑誌の執筆、またセミナー講師として活躍。軽快な口調で、知識0ベースのITエンジニアや一般書店フェアなどの一般的なPCユーザの講習ではダントツの評価。
お客様の満足を何よりも大切にし、わかりやすい、のせるのが上手い自称ソフトウェア芸人。
主な著作物
- 「プログラムはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「コンピュータはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「出るとこだけ! 基本情報技術者」 (翔泳社)
- 「ベテランが丁寧に教えてくれる ハードウェアの知識と実務」(翔泳社)
- 「ifとelseの思考術」(ソフトバンククリエイティブ) など多数