基本情報技術者試験のシラバス改定|Ver9.0の概要

2023年12月25日にIPA(情報処理推進機構)から、基本情報技術者の出題範囲・シラバスが改訂されることが発表され、それに合わせてシラバスVer.9.0が公開されました。
このシラバスは、 2024年10月の試験から適用されるものです。
この記事では、シラバスVer.9.0の主な変更点と、新たに出題されると予測される問題のテーマを解説します。
シラバス改訂の趣旨
基本情報技術者のシラバス(試験における知識・技能の細目)は、基本情報技術者の人材像に照らし合わせて、必要となる知識・技能の幅と深さを体系的に整理して明確化した資料です。
試験問題は、シラバスに沿って作られています。
したがって、試験には、基本的に(例外はありますが)シラバスに示されたテーマや用語が出題され、シラバスに示されていないことは出題されません。
「基本情報技術者試験(レベル2)」シラバス(Ver.9.0)(変更箇所表示版)picture_as_pdf
2023年 12 月 25 日公開の IPAWebページ
によると、今回のシラバスの改訂は、近年の技術動向・環境変化などを踏まえたものです。
近年の技術動向・環境変化とは、業務改革やビジネス改革によってDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させて価値創造を継続することが益々重要になっていますが、それに対して、DXを推進するための素養や専門的な人材が大いに不足していることです。
つまり、今回の改訂の趣旨を一言でいうと「 DX人材を増やすため 」です。
IPAでは、DXを推進するために必要な知識として、「ビジネス変革」「デザイン(ユーザーインターフェイス技術、UX/UIデザイン)」「データ利活用(数理・データサイエンス)」「AI(生成AIを含む)利活用」をあげています。
さらに、今回の改訂では、JISの改正を踏まえた情報セキュリティ分野の用語の表記の変更と、近年の技術動向や環境変化等を踏まえた用語の整理も行われています。
シラバスの主な変更点
シラバスは、テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系に分けられていて、それぞれの分野が大分類、中分類、小分類に分けられています。
以下に、大分類ごとに、シラバスVer.9.0の主な変更点を示します。
当然のことですが、趣旨に見合った変更です。全体的に見て、それほど大きな改訂ではありません。
テクノロジ系
【大分類1:基礎理論】
・統計に関する用語が追加されています。
・AIの分野で、機械学習、ディープラーニング、自然言語処理、画像認識などに関する用語が追加されています。
・アルゴリズムでは、自然言語処理のアルゴリズムが追加されています。
・プログラミング言語の種類として、R、Julia、Goが追加されています。
【大分類2:コンピュータシステム】
(この分野に大きな変更はありません)
【大分類3:技術要素】
・ヒューマンインタフェース技術、インタフェース設計というテーマがユーザーインターフェイス技術、UX/UIデザインという名称に変更され、それらに関する用語が追加されています。
・グラフィックス処理に関するテーマと用語が追加されています。
・データベースでは、ドキュメント指向データベースやキーバリュー型データベースなど、関係データベースではない形式のデータベースが追加されています。
・セキュリティでは、ランサムウェアの様々な対策、AIを使ったセキュリティ技術などのテーマが追加されています。
【大分類4:開発技術】
・ドメイン設計やDevOpsに関する用語が追加されています。
マネジメント系
【大分類5:プロジェクトマネジメント】
(この分野に大きな変更はありません)
【大分類6:サービスマネジメント】
(この分野に大きな変更はありません)
ストラテジ系
【大分類7:システム戦略】
(この分野に大きな変更はありません)
【大分類8:経営戦略】
・Webマーケティング戦略に関する用語が追加されています。
・AIの利活用に関する用語が追加されています。
【大分類9:企業と法務】
・社会におけるIT利活用の動向というテーマが追加されています。
・OR・IEというテーマが業務分析・データ活用という名称に変更されています。
・データ利活用に関する用語が追加されています。
・情報倫理・技術者倫理に関する用語が追加されています。
新たに出題されると予測される問題
基本情報技術者試験のシラバスは、これまでに何度も改訂されてきました。
そして、改訂後の試験には、新たにシラバスに追加されたテーマや用語が必ず出題されていました。
もしも、シラバスを改訂したのに新たなテーマが出題されなかったら、改訂した意味がないからです。
現時点で、問題の内容まで予測することは困難ですが、新たに追加された用語は覚えておくとよいでしょう。
これまでの試験でも、用語の意味がわかれば正解できる問題が数多く出ているからです。
以下は、今回のシラバス改訂の趣旨と照らし合わせて、出題される可能性が高いと思われる用語を10個ほど厳選したものです。
これらは、問題を作りやすい用語であり、いかにも改訂後のシラバスから出題されている、と感じさせる用語です。
CNN (Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)
説明人間の脳神経を模したニューラルネットワークの一種であり、畳み込み層を用いた空間フィルタリングを行うことが特徴である。主に画像認識の分野で活用されている。
n-gram
説明自然言語処理において、連続するn個の単語や文字のまとまりを示す単位であり、文脈を捉える要素として使われる。たとえば、3-gramは、連続する3個の単語のまとまり
R (R言語)
説明オープンソースの統計解析向けプログラミング言語である。
Go (Go言語)
説明Googleが開発したプログラミング言語であり、WebサービスやWebアプリを効率的に開発できる。
IaC (Infrastructure as Code)
説明サーバーなどのインフラのインストールや設定を、手作業ではなくコードを用いて行うこと。
RAID10
説明複数のハードディスクを使ったRAID(Redundant Arrays of Inexpensive(またはIndependent) Disks)の構成において、RAID1(ミラーリング)とRAID0(ストライピング)を組合せて使うこと。
インタラクションの原則
説明使いやすいUXを実現するための原則であり、JIS Z 8520(ISO9241-110)として規格化されている。インタラクション(相互作用)は、人間のアクションに対して、コンピュータシステムが適切なリアクションをすることを意味する。
ドキュメント指向データベース
説明NoSQL(関係データベースではない形式のデータベースを意味する)の一種であり、ドキュメントを1件のレコードとして、レコードの集まりをコレクションと呼ぶ。
3-2-1ルール
説明ランサムウェアの対策として、データのコピーを3つ作成し、2つの異なる媒体に保存し、1つはネットワークに接続されていない場所に保管する、ということを意味する。
DevOps
説明開発(Development)と運用「Operations」を組合せた言葉であり、開発担当者と運用担当者が連携することで、コンピュータシステムの開発を効率化し、品質を向上する開発技法である。
* * *
以上、基本情報技術者試験のシラバスVer9.0の概要を解説しました。
注意してほしいのは、 このシラバスが適用されるのが、2024年10月の試験からであることです。それより前に受験する人は、シラバスVer9.0で追加された新たなテーマや用語を覚える必要はありません。
試験問題は、シラバスに沿って作られています。シラバスに示されていないテーマや用語は、基本的に(例外はありますが)出題されないからです。
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