基本情報技術者試験 科目A免除試験 (旧 午前免除試験) の講評 ~ 2023年12月10日実施


2023-12-21 更新

試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、2023年12月10日(日)に実施された基本情報技術者科目A免除試験(修了認定に係る試験)の講評をさせていただきます。

 

今回受験された人は振り返りの題材として、今後受験される人は対策の資料として、参考にしていただければ幸いです。

実施月 問題 解答
2023 年 12 月 問題 解答

全60問の構成を見てみよう

表1は、今回の科目A免除試験の構成です。

問題の番号、分野、テーマ、難易度、および過去問題の再利用かどうかを示しています。
分野は、テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系を、それぞれT、M、Sで示しています。

難易度は、筆者の講師経験から、

  • 易 受講者のほぼ全員ができるもの
  • 中 受講者の半数ぐらいができるもの
  • 難 受講者の数名しかできない問題

としています。

過去問題の再利用である場合は出題された主な年度を示し(同じ問題が何度も再利用されている場合がありますが、ここでは、それらの中から1つの年度だけを示しています)、基本情報技術者試験の過去問題ではない場合は「H23秋問13(AP)」のようにカッコの中に試験区分の略語を示しています。

  • AP 応用情報技術者試験
  • SC 情報セキュリティスペシャリスト試験
  • SG 情報セキュリティマネジメント試験

なお、旧制度の第2種情報処理技術者試験(現在の基本情報技術者試験)とソフトウェア開発技術者試験(現在の応用情報技術者試験)の問題もありますが、それらは基本情報技術者試験および応用情報技術者試験の過去問題としています。

問27とまったく同じ問題は、過去に出題されていませんが、H26秋問35(AP)とほとんど同じ内容なので、過去問題の再利用としています。問39は、IPAが公開しているサンプル問題の再利用です。

表1 今回の科目A免除試験の構成

番号 分野 テーマ(分類) 難易度 過去問題
1 T 2の補数表現(情報の基礎理論) H11春問2
2 T 組み合せ(情報の基礎理論) H20秋問6
3 T パリティビット(情報の基礎理論) H17春問10
4 T 音声のデジタル化(情報の基礎理論) H19秋問56
5 T 配列と連結リスト(アルゴリズム) H21春問6
6 T 二分探索の検索回数(アルゴリズム) H17春問15
7 T 再入可能なモジュール(ソフトウェア) H15春問41
8 T MIPS(ハードウェア) H25春問9
9 T 記憶装置の種類(ハードウェア) H19春問21
10 T DMA(ハードウェア) H23秋問13(AP)
11 T 仮想サーバのライブマイグレーション(システム構成) H28春問14(AP)
12 T 稼働率(システム構成) H15春問39
13 T ジョブのスケジューリング(ソフトウェア) H20秋問32
14 T テストカバレージ分析ツール(ソフトウェア) H25春問22
15 T OSS(ソフトウェア) H19春問39(AP)
16 T DRAM(ハードウェア) H29秋問21
17 T Webページのアクセシビリティ(マルチメディアとヒューマンインタフェース) H23特別問26(AP)
18 T ビッグデータのキーバリューストア(データベース) H31春問30
19 T 第3正規形(データベース) H15秋問67
20 T SQLのSELECT命令(データベース) H28秋問29
21 T 関係データベースのビュー(データベース) H25春問21(SC)
22 T データベースの排他制御(データベース) H25春問30
23 T NAPT(ネットワーク) H23特別問34(AP)
24 T LAN間接続装置(ネットワーク) H23秋問37
25 T サブネットマスク(ネットワーク) H24秋問36
26 T リバースプロキシ(セキュリティ) H31春問35(AP)
27 T サイバー攻撃のAPT(セキュリティ) H26秋問35(AP)
28 T 共通鍵暗号方式(セキュリティ) H18秋問71(AP)
29 T バイオメトリクス認証(セキュリティ) H20春問64
30 T PCI DSS(セキュリティ) H29春問26(SG)
31 T SIEM(セキュリティ) H29秋問14(SG)
32 T ファイアウォールとDMZ(セキュリティ) H26秋問40
33 T 電子メールのSPF(セキュリティ) H28秋問43(AP)
34 T UMLのユースケース図(開発技術) H28秋問46(AP)
35 T オブジェクト指向のカプセル化(開発技術) H24秋問47
36 T 状態遷移図(開発技術) H25春問46
37 T ブラックボックステスト(開発技術) H22秋問48
38 T リバースエンジニアリング(開発技術) H29秋問50
39 T スクラムのスプリント(開発技術) サンプル問41
40 T XPのプラクティス(開発技術) R01秋問50
41 M ファンクションポイント法 H23秋問52(AP)
42 M 工数の計算 H16秋問56
43 M 情報システムの縮退運用 H27春問56(AP)
44 M UPS H19春問49
45 M コントロールトータルチェック H30春問37(SG)
46 M KPI H25春問62(AP)
47 S ビッグデータの活用 H31春問64
48 S コールセンタの自動応答システム H30秋問65(AP)
49 S プロダクトポートフォリオマネジメント H21秋問69(AP)
50 S コモディティ化 H27春問68(AP)
51 S SFA H25春問70(AP)
52 S TLO R01秋問70(AP)
53 S 電子自治体のG to B H27春問72
54 S 部品の発注個数 H28秋問72
55 S ソーシャルメディアの活用 H27秋問73
56 S 社内カンパニー制 H31春問76
57 S 定量発注方式 H31春問75(AP)
58 S 散布図 H22秋問77
59 S 固定資産売却損 H25秋問77(AP)
60 S ソフトウェア開発の請負契約 H25春問80(AP)

※分野は、T=テクノロジ系、M=マネジメント系、S=ストラテジ系です。

※テクノロジ系だけ、カッコ内に問題のテーマの分類を示しています。

テクノロジ系のセキュリティと開発技術の問題数が多い

表2は、今回を含めた直近3回の試験の分野ごとの問題数です。

どの試験でも、分野ごとの問題数に大きな違いがないので、今後の試験も各分野が同様の割合で出題されるでしょう。
テクノロジ系が20問、マネジメント系が5問、ストラテジ系の割合が15問です(マネジメント系とストラテジ系の割合には、数問の変動があります)。テクノロジ系では、セキュリティと開発技術の問題数が多くなっています。

表2 今回を含めた直近3回の科目A免除試験の分野ごとの問題数

分野 前々回(6月11日) 前回(7月23日) 今回(12月10日)
T 情報の基礎理論 4問 3問 3問
アルゴリズム 2問 4問 2問
ハードウェア 3問 3問 4問
ソフトウェア 4問 3問 4問
システム構成 3問 3問 2問
マルチメディアとヒューマンインタフェース 1問 1問 2問
データベース 5問 5問 5問
ネットワーク 4問 4問 3問
セキュリティ 7問 7問 8問
開発技術 7問 7問 8問
M 5問 5問 6問
S 15問 15問 14問

※分野は、T=テクノロジ系、M=マネジメント系、S=ストラテジ系です。

※テクノロジ系だけ、問題のテーマの分類を示しています。

100%が過去問題の再利用である

今回の試験も、前回と前々回と同様に、すべての問題が過去問題の再利用でした。
基本情報技術者試験の過去問題だけでなく、他の試験区分の過去問題も多くあったことも、前回と前々回と同様です。

表3は、今回を含めた直近3回の試験で再利用された過去問題の試験区分と問題数です。

基本情報技術者試験の過去問題が多い(全体の58%~65%)のは当然ですが、応用情報技術者試験の過去問題も多く(全体の28%~35%)再利用されています。

表3 直近3回の科目A免除試験で再利用された過去問題の試験区分と問題数

試験区分 前々回(6月11日) 前回(7月23日) 今回(12月10日)
基本情報技術者試験 38問(63%) 39問(65%) 35問(58%)
応用情報技術者試験 18問(30%) 17問(28%) 21問(35%)
情報セキュリティマネジメント試験 3問 2問 3問
情報セキュリティスペシャリスト試験 (なし) (なし) 1問
データベーススぺシャリスト試験 (なし) 1問 (なし)
プロジェクトマネージャ試験 (なし) 1問 (なし)
初級システムアドミニストレータ試験(現在のITパスポート試験) 1問 (なし) (なし)

※初級システムアドミニストレータ試験は、現在のITパスポート試験です。

特定の年度の過去問題の再利用が多いという傾向はない

旧制度の午前免除試験では、特定の年度の過去問題が数多く再利用されるという傾向があったのですが、現在の科目A免除試験には、その傾向はありません。
かなり前の第2種情報処理技術者試験の過去問題も再利用され、近年に公開された新制度の科目A試験のサンプル問題も再利用されています。

表4は、今回の試験で再利用された過去問題が出題された主な年度を示したものです。

1個の「■」で1問の再利用を表しています。
複数個の問題が再利用されている年度もありますが、特定の年度が極めて多いことはなく、新しい年度ほど再利用が多いということもありません。

表4 今回の試験で再利用された過去問題が出題された主な年度

年度 基本情報技術者試験 応用情報技術者試験 その他の試験区分
H11春
H11秋
H12春
H12秋
H13春
H13秋
H14春
H14秋
H15春 ■■
H15秋
H16春
H16秋
H17春 ■■
H17秋
H18春
H18秋
H19春 ■■
H19秋
H20春
H20秋 ■■
H21春
H21秋
H22春
H22秋 ■■
H23春 ■■
H23秋 ■■
H24春
H24秋 ■■
H25春 ■■■■ ■■■
H25秋
H26春
H26秋
H27春 ■■
H27秋
H28春
H28秋 ■■ ■■
H29春
H29秋 ■■
H30春
H30秋
H31春 ■■■ ■■
R01秋
サンプル問題
R05公開

※R02~R04の問題は、公開されていません。

※R05は、公開問題として全20問が公開されています。

※サンプル問題は、R05の公開問題より先に公開されたので、R05より上に掲載しています。

問題がやや難しくなっている

今回の科目A免除試験の問題の難易度は、易が18問、中が39問、難が3問でした。
易が90%できて、中が50%できて、難が25%できる(四択問題なので最低でも25%できます)とすれば、正解数の期待値は、18×0.9 + 39×0.5 + 3×0.25 = 36.45問です。
合格基準は、60問中36問以上の正解なので、ギリギリで合格できたか、逆にギリギリで残念な結果になってしまったでしょう。

表5に、今回を含めた直近3回の試験の正解数の期待値を示します。
今回の問題は、やや難しかったといえます。

表5 今回を含めた直近3回の科目A免除試験の正解数の期待値

試験 前々回(6月11日) 前回(7月23日) 今回(12月10日)
正解数の期待値 38問 37.1問 36.45問

※60問中36問以上の正解で合格です。

旧制度の午前試験でよく出た問題は、新制度の試験でも(それなりに)よく出る

筆者は、今回の科目A免除試験に向けた対策講座で「試験によく出る問題Top20」を紹介し、例題の演習と解説を行いました。これは、H21春~R01秋までの旧制度の午前試験の問題を独自に調査したものです。

表6は、試験によく出る問題Top20として示したテーマと、それが今回の試験に出たかどうかの結果です。
同じテーマの問題が出たことを「○」で、出なかったことを「×」で示しています。
20テーマ中の7テーマが出たので、旧制度の午前試験でよく出た問題は、新制度の試験でも(それなりに)よく出るといえるでしょう。

表6 試験によく出る問題Top20が今回の試験に出たかどうかの結果

順位 テーマ 今回の試験に出たか
1位 アローダイアグラムの使い方 ×
2位 稼働率の計算
3位 MIL記号で示した論理回路 ×
4位 リピータ、ブリッジ、ルータの説明
5位 SQLのSELECT命令
6位 工数の計算
7位 伝送時間の計算 ×
8位 MIPSの計算
9位 再帰呼出しの仕組み ×
10位 著作権法の保護の対象 ×
11位 エンタープライズアーキテクチャの説明 ×
12位 DRAMの特徴
13位 LRU方式の説明 ×
14位 RFIDの説明 ×
15位 WBSの説明 ×
16位 トランザクション処理の説明 ×
17位 プロダクトライフサイクルの説明 ×
18位 音声サンプリングの計算
19位 CIOの説明 ×
20位 SOAの説明 ×

※同じテーマの問題が出たことを「○」で、出なかったことを「×」で示しています。

次回の科目A免除試験を受ける人へのアドバイス

最後に、今回および前回と前々回の科目A免除試験の内容から、次回の科目A免除試験を受ける人にアドバイスをさせていただきます。

★アドバイス1: できるだけ多くの過去問題を解く

科目A免除試験の内容は、100%が過去問題の再利用です。
したがって、試験に合格するための最も効果的で効率的な学習方法は、過去問題(科目A試験の公開問題、科目A試験のサンプル問題、および旧制度の午前試験の過去問題)を数多く解いて、できなかった問題があれば、できるようになるまで何度も練習することです。
試験の内容は、やや難しいので、ふつうに勉強していたのでは、合格できるかどうかギリギリでしょう。とにかく、できるだけ多くの過去問題を解いてください。

★アドバイス2: 苦手な分野の過去問題を数多く解く

特定の年度の過去問題の再利用が多い傾向はなく、新しい年度の過去問題の再利用が多いという傾向もないので、年度ごとに1回分ずつ過去問題を解くのではく、苦手な分野の過去問題を数多く解くとよいでしょう。
そして、できない問題に遭遇したら、できるようになるまで練習してください。
セキュリティと開発技術は、出題数が多いので、これらに苦手意識があるなら、重点的に練習してください。

★アドバイス3: 他の試験区分の過去問題を練習する必要はない

「基本情報技術者試験だけでなく、多く再利用されている応用情報技術者試験の過去問題も練習した方がよいのではないか?」と思われるかもしれませんが、それは効率のよい学習方法ではありません。

なぜなら、応用情報技術者試験の過去問題の中には、基本情報技術者試験の出題範囲外の問題(基本情報技術者試験には出題されない問題)もあるからです。
この記事の冒頭の表1に示した過去問題の出典は、まったく(もしくはほとんど)同じ問題が出た年度と試験区分を示したものであり、出典が応用情報技術者試験となっていても、同じテーマの問題が基本情報技術者試験にも出ている場合が多々あるからです。
これは、当然のことですが、基本情報技術者試験には、基本情報技術者試験の出題範囲を超えた問題が出るはずがありません。

もしも、試験当日に、見たことのない問題に遭遇したら「ちゃんと勉強してきたのだから、自分の持つ知識で必ず解けるはずだ!」と、自信を持って取り組んでください。

*   *   *

以上、試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、試験問題の講評をさせていただきました。

今回の試験に合格した人は、ここで気を緩めずに、科目B試験の学習を始めてください。残念な結果になってしまった人は、ここで気落ちせずに、次回の科目A免除試験に向けて学習を続けてください。
どちらの場合も、コツコツと学習を続けていれば、必ず良い結果が得られるはずです。
皆様のご健闘をお祈り申し上げます!

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