基本情報技術者試験 科目A免除試験(修了試験)の講評 ~ 2024年12月8日実施

試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、2024年12月8日(日)に実施された基本情報技術者科目A免除試験(修了認定に係る試験)の講評をさせていただきます。
今回受験された人は振り返りの題材として、今後受験される人は対策の資料として、参考にしていただければ幸いです。
実施月 | 問題 | 解答 |
---|---|---|
2024 年 12 月 | 問題 | 解答 |
問題の内容
表1は、今回の科目A免除試験の内容です。
問題の番号、分野、テーマ、難易度、および過去問題の再利用かどうかを示しています。
表1 今回の科目A免除試験の内容
番号 | 分野 | テーマ(分類) | 難易度 | 過去問題 |
---|---|---|---|---|
1 | T | 誤差の種類(情報の基礎理論) | 中 | H14秋問4 |
2 | T | 順列の計算(情報の基礎理論) | 中 | H20秋問6 |
3 | T | パリティビット(情報の基礎理論) | 中 | H17春問10 |
4 | T | 関数の処理を繰り返した結果(アルゴリズム) | 難 | H19春問6 |
5 | T | データ構造を実現する関数(アルゴリズム) | 中 | H19秋問13 |
6 | T | ハッシュ値が衝突するキー(アルゴリズム) | 中 | H15春問14 |
7 | T | プログラムモジュールの性質(ソフトウェア) | 難 | H15春問41 |
8 | T | パワーゲーティングの説明(ハードウェア) | 中 | H29春問9(AP) |
9 | T | アクセス時間の最も短い記憶装置(ハードウェア) | 中 | H19春問21 |
10 | T | 磁気ディスク装置の性能(ハードウェア) | 難 | H20春問21 |
11 | T | 分散処理システムのアクセス透過性(システム構成) | 中 | H25秋問14(AP) |
12 | T | 単位時間当たりに処理される仕事量(システム構成) | 易 | H25春問16 |
13 | T | 複数台のプリンタの割り当て(システム構成) | 中 | H19秋問28 |
14 | T | プログラムの実行された部分の割合を測定するツール(ソフトウェア) | 中 | H29春問18(AP) |
15 | T | Hadoopの説明(ソフトウェア) | 中 | R03春問20(AP) |
16 | T | MIL記号で示した論理回路(ハードウェア) | 中 | H22春問26 |
17 | T | Webページのアクセシビリティを高めるもの(マルチメディアとヒューマンインタフェース) | 中 | H30春問24(AP) |
18 | T | ビッグデータで使われるキーバリューストアの説明(データベース) | 易 | H31春問30 |
19 | T | 関係データベースの主キーの性質(データベース) | 易 | H21秋問32 |
20 | T | 特定の利用者だけに権限を与えるSQL文(データベース) | 中 | H31春問27(AP) |
21 | T | 関係データベースのビュー(データベース) | 中 | H25春問21(SC) |
22 | T | ロックの両立性(データベース) | 中 | H27秋問29 |
23 | T | 回線利用率の計算(ネットワーク) | 中 | H25春問32 |
24 | T | スイッチングハブの特徴(ネットワーク) | 中 | H24秋問35 |
25 | T | IPv4アドレスの割り振り(ネットワーク) | 中 | H24秋問36 |
26 | T | メールのプロトコル(ネットワーク) | 易 | H31春問46(SG) |
27 | T | UDPの性質を悪用したDDos攻撃(セキュリティ) | 中 | H30秋問7(SC) |
28 | T | 共通鍵暗号方式の特徴(セキュリティ) | 易 | H30秋問38 |
29 | T | XML署名でできること(セキュリティ) | 中 | H31春問24(SG) |
30 | T | IoTデバイスの耐タンパ性(セキュリティ) | 中 | R03秋問40(AP) |
31 | T | マルウェア対策ソフトでのフォールスネガティブ(セキュリティ) | 中 | H31春問41(AP) |
32 | T | 情報漏えい対策に該当するもの(セキュリティ) | 易 | H26秋問38 |
33 | T | 意図的に脆弱性をもたせたシステム(セキュリティ) | 易 | H31春問44 |
34 | T | オブジェクト間の相互作用を時系列に表す図(開発技術) | 中 | H29秋問46 |
35 | T | オブジェクト指向の概念(開発技術) | 中 | H30春問46 |
36 | T | 状態遷移図の説明(開発技術) | 易 | H26春問48 |
37 | T | ブラックボックステストにおけるテストケースの設計方法(開発技術) | 中 | H22秋問48 |
38 | T | 下位のモジュールの代替となるテスト用のモジュール(開発技術) | 易 | H24春問47 |
39 | T | アジャイル開発手法のスクラムの説明(開発技術) | 易 | R02秋問49(AP) |
40 | T | XPのプラクティスとして提唱されているもの(開発技術) | 易 | R01秋問50 |
41 | M | プロジェクトのコンティジェンシ計画で決定すること | 中 | R04春問54(AP) |
42 | M | ガントチャートの特徴 | 易 | H29秋問44(SG) |
43 | M | 容量・能力管理における傾向分析 | 易 | H30秋問55 |
44 | M | サービスの可用性の計算 | 中 | H30秋問40(SG) |
45 | M | システム監査人の独立性 | 易 | H22春問58 |
46 | M | 戦略マネジメントでの実施項目 | 易 | H27秋問1(ST) |
47 | S | バランススコアカードのKPIの目標例 | 中 | H27春問65 |
48 | S | グリーン調達の説明 | 易 | H25春問66 |
49 | S | ベンチマーキングの説明 | 易 | H23秋問68 |
50 | S | サイトアクセス者の総人数に対する商品やサービスの購入に至る人数の割合 | 易 | H31春問69 |
51 | S | SFAの説明 | 易 | H25春問70(AP) |
52 | S | コンカレントエンジニアリングの説明 | 易 | H26秋問72 |
53 | S | XBRLの説明 | 中 | H22秋問71 |
54 | S | MRPの特徴 | 易 | H25春問71(AP) |
55 | S | ICタグ(RFID)の特徴 | 易 | H30秋問72 |
56 | S | M&Aの利点 | 中 | H21春問75 |
57 | S | ABC分析の計算 | 中 | H16秋問68(AD) |
58 | S | 散布図から読み取れること | 中 | H21秋問76 |
59 | S | 先入先出法の計算 | 中 | H21春問77 |
60 | S | サイバーセキュリティ戦略本部が置かれている機関 | 中 | H30秋問31(SG) |
※分野は、T=テクノロジ系、M=マネジメント系、S=ストラテジ系
※テクノロジ系だけ、カッコ内に問題のテーマの分類を示しています。
※難易度は、筆者の講師経験から、以下の通り設定しています。
易:受講者のほぼ全員ができるもの
中:受講者の半数ぐらいができるもの
難:受講者の数名しかできない問題
※過去問題の再利用である場合は出題された主な試験区分と年度を示す。
(同じ問題が複数の試験区分と年度で何度も再利用されている場合がありますが、ここでは、それらの中から1つの試験区分と年度だけを示す)
※基本情報技術者試験の過去問題ではない場合は「H29春問9(AP)」のようにカッコの中に試験区分の略称を示す。
AP:応用情報技術者試験、SG:情報セキュリティマネジメント試験、SC:情報処理安全確保支援士試験(旧:情報セキュリティスペシャリスト試験)、ST:ITストラジスト試験、AD:初級システムアドミニストレータ試験(現:ITパスポート試験)
※問45は、公開されている過去問題の中にまったく同じ問題はありませんが、H22春問58とほとんど同じ内容なので、過去問題の再利用としました。
過去問題の再利用
今回の試験も、これまでに実施された科目A免除試験と同様に、すべての問題が過去問題の再利用でした。
基本情報技術者試験の過去問題だけでなく、他の試験区分の過去問題や、かなり古い年度の過去問題(現時点では、情報処理推進機構のWebページで公開されていない過去問題)が数多くあったことも、これまでと同様です。
表2は、今回を含めた直近3回の試験で再利用された過去問題の試験区分と問題数です。
基本情報技術者試験の過去問題が多いのは当然ですが、応用情報技術者試験の過去問題も数多く再利用されています。
表2 今回を含めた直近3回の試験で再利用された過去問題の試験区分と問題数
試験区分 | 6月9日 (前々回) |
7月28日 (前回) |
12月8日 (今回) |
---|---|---|---|
基本情報技術者試験 | 37問 | 39問 | 39問 |
応用情報技術者試験 | 19問 | 14問 | 12問 |
情報セキュリティマネジメント試験 | 2問 | 5問 | 5問 |
その他の試験 | 1問 | 2問 | 4問 |
問題の難易度
今回の科目A免除試験の問題の難易度は、易が22問、中が35問、難が3問でした。
易が90%できて、中が50%できて、難が25%できる(四択問題なので最低でも25%できます)とすれば、正解数の期待値は、22×0.9 + 35×0.5 + 3×0.25 = 38.05問です。
合格基準は、60問中36問以上の正解なので、ちゃんと勉強していれば、合格点を取れたでしょう。
表3は、今回を含めた直近3回の試験の正解数の期待値です。
今回の問題は、直近の試験と比べると、やさしかったといえます。
表3 今回を含めた直近3回の試験の正解数の期待値
試験実施日 | 6月9日 | 7月28日 | 12月8日 |
---|---|---|---|
正解数の期待値 | 33.35問 | 36.85問 | 38.05問 |
※60問中36問以上の正解で合格です。
今後の科目A免除試験を受ける人へのアドバイス
最後に、今後の科目A免除試験を受ける人にアドバイスをさせていただきます。
【アドバイス1】苦手分野の過去問題を重点的に解く
科目A免除試験の内容は、100%が過去問題の再利用です。
したがって、試験に合格するための最も効果的で効率的な学習方法は、できるだけ多くの過去問題や公開問題を解いて、できなかった問題があれば、できるようになるまで何度も練習することです。
それぞれの分野の出題数は、毎回ほぼ同じなので、苦手な分野の過去問題を、重点的に解いてください。
【アドバイス2】他の試験区分の過去問題を練習する必要はない
科目A免除試験には、基本情報技術者試験だけでなく、応用情報技術者試験や情報セキュリティマネジメント試験など、他の試験区分の過去問題も再利用されていますが、それらを練習する必要はありません。
なぜなら、他の試験区分の過去問題の中には、基本情報技術者試験の出題範囲外の問題(基本情報技術者試験には出題されない問題)もあるからです。
【アドバイス3】暗記ではなく意味や仕組みを理解する
他の試験区分の過去問題であっても、基本情報技術者試験の出題範囲を超えた問題が出るはずがありません。
基本情報技術者試験の出題範囲のテーマを、しっかりと理解しておきましょう。
過去問題の解き方を丸暗記するのではなく、用語の意味や技術の仕組みを理解して解けるようにしておくのです。
そうすれば、他の試験区分の過去問題も解けるはずです。
【アドバイス4】試験当日は自信を持って問題を解く
試験当日に、はじめて見る問題に遭遇すると「えっ! 何これ?」と思うでしょう。
そんなときは、「ちゃんと勉強してきたのだから、自分の持つ知識で必ず解けるはずだ!」と、自信を持って取り組んでください。
試験問題は、すべて選択問題なので、自分の持つ知識を総動員すれば、誤りと判断できる選択肢を消すことで(いわゆる消去法です)、正解を選べる場合がよくあります。
以上、試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、試験問題の講評をさせていただきました。
今回の試験に合格した人は、ここで気を緩めずに、科目B試験の学習を始めてください。
残念な結果になってしまった人は、ここで気を落すことなく、次回の科目A試験免除試験の合格を目指してください。
どちらも場合も、コツコツと学習を続けていれば、必ず良い結果が得られるはずです。
皆様のご健闘をお祈り申し上げます!
label 関連タグ免除試験を受けた 74.9% の方が、 科目A免除資格を得ています。
※独習ゼミは、受験ナビ運営のSEプラスによる試験対策eラーニングです。

基本情報技術者試験 科目A免除試験(修了試験)の講評 ~ 2025年1月26日実施
update
基本情報技術者試験 科目A免除試験(修了試験)の講評 ~ 2024年12月8日実施
update
基本情報技術者試験 科目A免除試験(修了試験)の講評 ~ 2024年7月28日実施
update
令和6年度 基本情報技術者試験 公開問題の講評
update
基本情報技術者試験 科目A免除試験(修了試験)の講評 ~ 2024年6月9日実施
update
基本情報技術者試験のシラバス改定|Ver9.0の概要
update
基本情報技術者試験 科目A免除試験 (旧 午前免除試験) の講評 ~ 2024年1月28日実施
update
基本情報技術者試験 科目A免除試験 (旧 午前免除試験) の講評 ~ 2023年12月10日実施
update
基本情報技術者試験 科目A免除試験 (旧 午前免除試験) の講評 ~ 2023年7月23日実施
update
新制度・基本情報技術者試験の過去問(公開問題)からわかる難易度と対策
update
『プログラムはなぜ動くのか』(日経BP)が大ベストセラー
IT技術を楽しく・分かりやすく教える“自称ソフトウェア芸人”
大手電気メーカーでPCの製造、ソフトハウスでプログラマを経験。独立後、現在はアプリケーションの開発と販売に従事。その傍ら、書籍・雑誌の執筆、またセミナー講師として活躍。軽快な口調で、知識0ベースのITエンジニアや一般書店フェアなどの一般的なPCユーザの講習ではダントツの評価。
お客様の満足を何よりも大切にし、わかりやすい、のせるのが上手い自称ソフトウェア芸人。
主な著作物
- 「プログラムはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「コンピュータはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「出るとこだけ! 基本情報技術者」 (翔泳社)
- 「ベテランが丁寧に教えてくれる ハードウェアの知識と実務」(翔泳社)
- 「ifとelseの思考術」(ソフトバンククリエイティブ) など多数