令和6年度 基本情報技術者試験 公開問題の講評


2024-07-25 更新

2024年7月5日に、情報処理推進機構の Web ページで、令和6年度の基本情報技術者試験の公開問題が公開されました。

試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、公開問題の講評をさせていただきます。
今後、基本情報技術者試験を受験される皆様の参考になれば幸いです。

公開問題の内容

今回公開された公開問題の内容は、科目Aが20問だけで、科目Bが6問だけです。
実際の試験は科目Aが60問で、科目Bが20問なので、かなり少なくなっています。

これは、昨年の7月に公開された令和5年度公開問題と同じなので、今後も、毎年7月上旬に、同じ問題数で公開問題が公開されると思われます。
公開問題は、情報処理推進機構が「これが試験問題の具体例である」として正式に公開したものなので、試験対策において最も重要な資料です。

以下の表1に、今回の公開問題の内容を示します。

*難易度
筆者の講師経験から、以下のように設定しています。
  ・易:受講者のほぼ全員ができるもの
  ・中:受講者の半数ぐらいができるもの
  ・難:受講者の数名しかできない問題

*集計結果
科目Aの難易度を集計すると、易が7問、中が13問、難が0問です。
科目Bの難易度を集計すると、易が2問、中が4問、難が0問です。

*期待値
易が90%できて、中が50%できて、難が25%できる(四択問題なので最低でも25%できます)とすれば、正解率の期待値は以下の通りです。

   科目A : (7問×0.9+13問×0.5+0問×0.25) ÷ 20問 = 64.0%
   科目B : (2問×0.9+4問×0.5+0問×0.25) ÷ 6問 ≒ 63.3%

実際の試験は、科目Aと科目Bの両方が1000点で、それぞれで600点以上が合格なので、正解率60%が合格の目安です。

表1 今回公開された公開問題の内容【科目A】

分野 テーマ 難易度 再利用
1 基礎理論 論理演算の真理値表 FE H22春問2
2 基礎理論 ハッシュ値の衝突 AP H27秋問5
3 システム構成 メモリの実効アクセス時間 FE H25春問12
4 システム構成 稼働率の計算 なし
5 開発技術 ロジックマッシュアップの例 なし
6 マルチメディアとヒューマンインタフェース 表示装置のアンエイエイリアシング FE H30秋問25
7 データベース 原子性(atomicity)の説明 AP H27春問30
8 ネットワーク LAN間接続装置の種類 FE H30秋問32
9 セキュリティ ペネトレーションテスト SG H31春問18
10 セキュリティ SQLインジェクションの対策 なし
11 開発技術 テスト用の下位モジュール FE H24春問47
12 開発技術 スクラムのスプリント なし
13 マネジメント系 アローダイアグラム FE H22秋問52
14 マネジメント系 新規サービスの設計と移行を円滑かつ効率的に進める方法 FE H29春問56
15 ストラテジ系 非構造化データを構造化データに加工する処理 なし
16 ストラテジ系 コアコンピタンスの説明 AP H23特別問66
17 ストラテジ系 ブルーオーシャンの説明 なし
18 ストラテジ系 HRテックの説明 なし
19 ストラテジ系 散布図から読み取れること FE H21秋問76
20 ストラテジ系 産業財産権と総称される権利 FE H22秋問78

※テクノロジ系(問1~問12)だけ、問題のテーマの分類を示しています。

※過去問題の再利用の場合は、「再利用」欄に試験の区分(FE=基本情報技術者試験、AP=応用情報技術者試験、SG=情報セキュリティマネジメント試験)と年度を示しています。同じ問題が複数の試験区分で何度か再利用されている場合もあります。
ここに示した区分と年度は、それらの中から1つだけを示したものです。過去問題の再利用でない場合は「なし」と示しています。

表1 今回公開された公開問題の内容【科目B】

分野 テーマ 難易度 再利用
1 アルゴリズムとプログラミング
(プログラムの基本要素)
最大値を返す関数 なし
2 アルゴリズムとプログラミング
(データ構造及びアルゴリズム)
2進数の文字列を10進数の数値に変換する関数 なし
3 アルゴリズムとプログラミング
(データ構造及びアルゴリズム)
グラフの辺の配列を隣接行列に変換する関数 なし
4 アルゴリズムとプログラミング
(データ構造及びアルゴリズム)
マージソートを行う関数 なし
5 アルゴリズムとプログラミング
(プログラミングの諸分野への適用)
同一の注文で購入されやすい商品の傾向を示す関連度を求める手続 なし
6 情報セキュリティ クラウドサービスへの不正アクセスのリスクを低減するための対策 なし

令和5年度と令和6年度の公開問題の比較

現行制度になってから入手可能な公開問題は、令和5年度と令和6年度だけです。

表2に令和5年度と令和6年度の公開問題の比較を示します。

両者に、際立った違いはありません。
科目Aは、7割程度が過去問題の再利用であり、ちゃんと勉強していれば合格できる難易度です。
科目Bは、過去問題の再利用はありませんが(現時点では、公開されている問題が少ないからでしょう)、こちらもちゃんと勉強していれば合格できる難易度です。

本試験(実際の試験)も、7割程度が過去問題の再利用であり、ちゃんと勉強していれば合格できる難易度であると予測されます。

表2 令和5年度と令和6年度の公開問題の比較

年度 科目A
過去問題の再利用
科目A
正解率の期待値
科目B
過去問題の再利用
科目B
正解率の期待値
令和5年度 FE  9問
AP  3問
なし 8問
66.8% なし 65.8%
令和6年度 FE  9問
AP  3問
SG  1問
なし 7問
64.0% なし 63.3%

「わからない」と思った問題を解くコツ

公開問題と同様に、本試験でも、過去問題ではない問題(「再利用」欄に「なし」と示した問題)が3割程度出題されると予測されます。
そのような問題に遭遇したときには、「わからない」と決めつけないでください。
ちゃんと勉強してきたのなら、自分が持つ知識を総動員すれば、正解を選べる場合が多々あるからです。

以下に例を示します。

問題例1(出典:令和6年度公開問題 問10)

SQLインジェクションの対策として、有効なものはどれか。

ア URLをWebページに出力するときは、“http://” や “https://” ではじまるURLだけを許可する。
イ 外部からのパラメータでWebサーバ内のファイル名を直接指定しない。
ウ スタイルシートの任意のWebサイトから取り込めるようにしない。
エ プレースホルダを使って命令文を組み立てる。

正解は選択肢エなのですが、「プレースホルダ」が取り上げられた過去問題はないので、「わからない」と思ってしまうでしょう。
そんなときは、「消去法」です。

ちゃんと勉強してきたのなら、SQLインジェクションが、悪意のあるSQL命令をアプリに注入する攻撃であることを知っているはずです。
選択肢アのURL、選択肢イのファイル名、選択肢ウのスタイルシートは、どれもSQL命令の注入とは無関係なので「×」を付けてください。
選択肢エは、プレースホルダの意味を知らないなら「?」を付けてください。
選択肢ア、選択肢イ、選択肢ウが「×」で、選択肢エが「?」なのですから、最も無難な選択肢エを選んでください。それで、正解です。

もう1つ例を示しましょう。

問題例2(出典:令和6年度公開問題 問12)

アジャイル開発手法の一つであるスクラムで定義され、スプリントで実施するイベントのうち、毎日決まった時間に決まった場所で行い、開発チームの全員が前回からの進捗状況や今後の作業計画を共有するものはどれか。

ア スプリントプランニング     イ スプリントレトロスペクティブ
ウ スプリントレビュー       エ デイリースクラム

問題文と選択肢に様々な用語が並んでいるので、それらの用語の意味を知らないと「わからない」と思ってしまうでしょう。

そんなときは、「言葉の意味から判断する」です。「毎日決まった時間に・・・」に該当するイベントを選択肢から選ぶのですから、選択肢エの「デイリースクラム」が適切でしょう。

デイリー(daily)は「毎日の」という意味だからです。それで、正解です。

以上、試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、公開問題の講評をさせていただきました。

試験に合格するための最も効率的で効果的な学習方法は、過去問題(公開問題とサンプル問題を含む)を数多く学習することです。
特に科目Bは、現状で入手できる過去問題が少ないので、丁寧に学習してください。

基本情報技術者試験を受験される皆様のご健闘をお祈り申し上げます!

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