基本情報技術者試験 科目A免除試験 (旧 午前免除試験) の講評 ~ 2023年7月23日実施
試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、 2023 年 7 月 23 日(日)に実施された基本情報技術者 科目 A 免除試験(修了認定に係る試験)の講評をさせていただきます。
今回受験された人は振り返りの題材として、今後受験される人は対策の資料として、参考にしていただければ幸いです。
実施月 | 問題 | 解答 |
---|---|---|
2023 年 7 月 | 問題 | 解答 |
今回の科目 A 試験の内容
基本情報技術者試験は、 2023 年 4 月から新制度となり、従来の午前試験と午後試験が、それぞれ科目 A 試験と科目 B 試験に変わりました。 それに伴い、従来の午前免除試験は、科目 A 免除試験に変わりました。
今回の試験は、科目 A 免除試験として 2 回目に実施されたものです。 問題の構成、難易度、過去問題の再利用などを確認してみましょう。 これらが 1 回目と同様なら、今後の試験も同様の内容であると思われます。
図 1 は、今回の科目 A 免除試験の内容です。 問題の番号、分野、テーマ、難易度、および過去問題の再利用かどうかを示しています。
分野は、テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系を、それぞれ T 、 M 、 S で示しています。
難易度は、筆者の講師経験から、
- A
- 受講者のほぼ全員ができるもの
- B
- 半数ぐらいができるもの
- C
- ほとんどができないもの
としています。
過去問題の再利用である場合は(すべての問題が過去問題の再利用でした)出題された主な年度を示し(同じ問題が何度も再利用されている場合があるので、それらの中から 1 つだけを示しています)、基本情報技術者試験の過去問題ではない場合は「 H 30 秋 問 6 ( AP )」のようにカッコの中に試験区分の略語を示しています。
- AP
- 応用情報技術者試験の略語
- SG
- 情報セキュリティマネジメント試験の略語
- DB
- データベーススぺシャリスト試験の略語
- PM
- プロジェクトマネージャ試験の略語
番号 | 分野 | テーマ(分類) | 難易度 | 過去問題 |
---|---|---|---|---|
1 | T | 集合の演算 (情報の基礎理論) |
B | H 24 秋 問 1 (AP) |
2 | T | 三角グラフの解釈 (情報の基礎理論) |
B | H 18 春 問 11 |
3 | T | 逆ポーランド表記法 (アルゴリズム) |
B | H 26 秋 問 4 |
4 | T | M / M / 1 の待ち行列モデル (情報の基礎理論) |
B | H 21 春 問 1 (AP) |
5 | T | キューとスタックの操作 (アルゴリズム) |
B | H 26 春 問 7 |
6 | T | 漸化式の解釈 (アルゴリズム) |
C | H 21 春 問 5 (AP) |
7 | T | オーバーライドの説明 (ソフトウェア) |
B | H 29 秋 問 7 |
8 | T | パイプライン処理方式の説明 (ハードウェア) |
B | H 21 春 問 11 |
9 | T | USB 3.0 の説明 (ハードウェア) |
B | H 29 春 問 10 |
10 | T | 磁気ディスク装置の性能 (システム構成) |
B | H 20 春 問 21 |
11 | T | システムのスケールアウト (システム構成) |
A | H 30 春 問 15 |
12 | T | 稼働率の計算 (システム構成) |
B | H 30 秋 問 15 |
13 | T | 仮想記憶方式のページの説明 (ソフトウェア) |
A | H 16 春 問 30 |
14 | T | コンパイラの最適化の目的 (ソフトウェア) |
B | H 30 春 問 18 |
15 | T | ハッシュ法の説明 (アルゴリズム) |
B | H 16 春 問 35 |
16 | T | フラッシュメモリの説明 (ハードウェア) |
A | H 30 春 問 22 |
17 | T | 陰線消去と陰面消去の説明 (マルチメディアとヒューマンインタフェース) |
A | H 29 秋 問 25 |
18 | T | データウェアハウスの説明 (データベース) |
A | H 22 春 問 33 |
19 | T | 関係データベースの第3正規形 (データベース) |
B | H 21 春 問 32 |
20 | T | SQL の SELECT 命令 (データベース) |
B | H 17 春 問 60 |
21 | T | SQL のビューの SELECT 権限 (データベース) |
B | H 22 春 問 11 (DB) |
22 | T | 外部キーを定義する目的 (データベース) |
B | H 23 春 問 34 (AP) |
23 | T | IPv4 のサブネットマスク (ネットワーク) |
B | H 25 秋 問 32 (AP) |
24 | T | ルータが経路決定に用いる情報 (ネットワーク) |
A | H 22 秋 問 36 |
25 | T | IP アドレスの CIDR 表記 (ネットワーク) |
B | H 21 秋 問 39 |
26 | T | CGI の説明 (ネットワーク) |
B | H 22 春 問 39 |
27 | T | シャドー IT に該当するもの (セキュリティ) |
A | R 01 秋 問 10 (SG) |
28 | T | SHA-256 で実現できること (セキュリティ) |
B | R 01 秋 問 40 |
29 | T | ディジタル署名を施す目的 (セキュリティ) |
A | H 30 秋 問 36 |
30 | T | サーバーレスキュー隊 (J-CRAT) の活動目的 (セキュリティ) |
A | H 30 春 問 40 (AP) |
31 | T | クリアデスクに該当するもの (セキュリティ) |
B | H 28 春 問 2 (SG) |
32 | T | キャッシュポイズニング攻撃への対策 (セキュリティ) |
B | H 29 春 問 41 (AP) |
33 | T | セキュリティバイデザインの説明 (セキュリティ) |
A | H 30 春 問 42 |
34 | T | 開発・保守でリポジトリを構築する理由 (開発技術) |
B | H 21 春 問 57 (AP) |
35 | T | 基底クラスと派生クラスの関係にあるもの (開発技術) |
B | H 20 秋 問 41 |
36 | T | ソフトウェアの品質特性の定義 (開発技術) |
A | H 22 春 問 52 |
37 | T | 構造化プログラミングの三つの制御構造 (開発技術) |
B | H 15 春 問 53 |
38 | T | マッシュアップの説明 (開発技術) |
A | H 22 秋 問 48 (AP) |
39 | T | スクラムチームのスクラムマスタが行うこと (開発技術) |
B | R 03 秋 問 50 (AP) |
40 | T | ペアプログラミングの説明 (開発技術) |
B | R 03 春 問 50 (AP) |
41 | M | QC 七つ道具の図の種類と用途 | B | H 25 春 問 53 (AP) |
42 | M | パフォーマンス測定の EVM の管理対象 | B | H 24 秋 問 53 (AP) |
43 | M | ミッションクリティカルシステムの意味 | A | H 28 春 問 55 |
44 | M | 重み付けによる評価 | B | H 23 特別 問 20 (PM) |
45 | M | 事業継続計画( BCP )として適切な状況 | A | H 28 秋 問 60 |
46 | S | バランススコアカードを用いた手法の説明 | B | H 26 秋 問 61 (AP) |
47 | S | ビッグデータの特徴に沿った取扱い | A | R 01 秋 問 63 |
48 | S | CSR 調達に該当するもの | B | H 26 秋 問 67 |
49 | S | ニッチャの基本戦略 | B | H 29 春 問 68 |
50 | S | デルファイ法の説明 | B | R 02 秋 問 68 (AP) |
51 | S | 投資目的に応じた投資分類と KPI | B | H 27 秋 問 70 |
52 | S | 技術の進化過程を表す曲線 | B | H 30 秋 問 70 |
53 | S | IoT の構成要素に関する記述 | A | H 30 秋 問 71 |
54 | S | ブロックチェーンによる仮想通貨マイニングの説明 | B | R 01 秋 問 71 |
55 | S | クラウドソーシングの説明 | A | H 28 秋 問 72 (AP) |
56 | S | ワークシェアリングの説明 | B | H 26 秋 問 75 |
57 | S | 利益の期待値が最大になる仕入個数 | C | H 24 秋 問 76 |
58 | S | 線形計画法の説明 | B | H 18 春 問 78 |
59 | S | 財務諸表の種類と役割 | A | H 23 秋 問 78 |
60 | S | 技術者倫理の観点から最優先すべきこと | A | H 31 春 問 80 (AP) |
科目 A 免除試験の出題傾向と対策
図 2 は、 1 回目と今回の試験で「問題の構成」「全体の難易度」「過去問題の再利用」「他の試験区分の過去問題」を示したものです。
問題の構成は、テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系を T 、 M 、 S で表して
「 T = 問題数、M = 問題数、S = 問題数」
という形式で示しています。
全体の難易度は、図 1 に示した各問題の難易度を集計し、
A が 90 % 、 B が 50 % 、 C が 25 % 正解できる
として、全体の正解数の期待値を求めたものです(全 60 問で 36 問( 60 % )以上の正解が合格です)。
過去問題の再利用は、全 60 問中の何問が過去問題の再利用だったかを示しています。 他の試験区分の過去問題は、基本情報技術者試験以外の試験区分の過去問題が何問あったかを示しています。
比較する項目 | 第 1 回の試験 | 今回の試験 |
---|---|---|
問題の構成 | T = 40 問 M = 5 問 S = 15 問 |
T = 40 問 M = 5 問 S = 15 問 |
全体の難易度 | 38 問 ( 63 % ) |
37.1 問 ( 62 % ) |
過去問題の 再利用 |
60 問 ( 100 % ) |
60 問 ( 100 % ) |
他の試験区分の 過去問題 |
22 問 ( 37 % ) |
21 問 ( 35 % ) |
図 2 から、第 1 回と今回の試験の内容が同様であることがわかります。 今後、科目 A 免除試験を受ける人は、この内容に合わせた対策をしましょう。
科目 A 免除試験対策は新しい年度の「基本情報」の過去問題から練習する
100 % が過去問題の再利用なのですから、最も効率的で効果的な対策は「過去問題を数多く解いて、できなかった問題があれば、できるようになるまで繰り返し練習すること」です。 できなかった問題の類題を求める必要はありません。 できなかった問題と、まったく同じ問題が再利用されるのですから、その問題をできるようにすればよいのです。
現時点で、情報処理推進機構から公開されているのは、旧制度の 平成 21 年度 春期 ~ 令和元年度 秋期 の過去問題、および新制度の 令和 5 年の公開問題です。 図 1 を見てわかるように、特定の年度の過去問題がよく出るという傾向はないので、新しい順に過去問題を解いていけばよいでしょう。 古い過去問題の中には、時代に合わないもの(今後の試験で再利用されないもの)もあるからです。
他区分の過去問題は解かなくてもよい
他の試験区分の過去問題は、特に応用情報技術者試験の過去問題の再利用が多いのですが、だからといって、応用情報技術者試験の過去問題を解くことは効率的ではありません。 応用情報技術者試験の過去問題の中には、基本情報技術者試験の出題範囲外の問題(基本情報技術者試験に出題されない問題)もあるからです。
「それでは、実際の試験に出題された応用情報の過去問題を解けないではないか!」と思われるかもしれませんが、その心配は不要です。
これは、当然のことですが、基本情報技術者試験には、基本情報技術者試験の出題範囲を超えた問題が出るはずがありません。 先ほど図 1 に示した過去問題の出典は、まったく同じ(もしくは、ほとんど同じ)問題が出た年度と試験区分を示したものであり、応用情報としている問題であっても、それらのほとんどは、同じテーマに関する問題が基本情報技術者試験にも出ているからです。 基本情報技術者試験の対策には、基本情報技術者試験の過去問題を解けばよいのです。
以上、試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、試験問題の講評をさせていただきました。
今回の午前免除試験に合格できた人は、ここで気を緩めずに、科目 B 試験の学習を始めてください。 残念な結果になってしまった人は、ここで気落ちせずに、科目 A 試験の学習と科目 B 試験の両方の学習をしてください。
いずれの場合も、コツコツと学習を続けていれば、必ず良い結果が得られるはずです。 皆様のご健闘をお祈り申し上げます!
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主な著作物
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- 「コンピュータはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「出るとこだけ! 基本情報技術者」 (翔泳社)
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