基本情報技術者試験 科目A免除試験(修了試験)の講評 ~ 2024年6月9日実施
試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、2024年6月9日(日)に実施された基本情報技術者科目A免除試験(修了認定に係る試験)の講評をさせていただきます。
今回受験された人は振り返りの題材として、今後受験される人は対策の資料として、参考にしていただければ幸いです。
※2024年6月19日 以下の変更を行いました※
表1 一部問題の出題元(試験および年度)の修正(基本情報技術者試験・応用情報技術者試験双方に出題されている問題は、「基本情報技術者試験」を出題元として変更
表2 上記変更にあわせて、出題数を修正
実施月 | 問題 | 解答 |
---|---|---|
2024 年 6 月 | 問題 | 解答 |
問題の内容
表1は、今回の科目A免除試験の内容です。
問題の番号、分野、テーマ、難易度、および過去問題の再利用かどうかを示しています。
表1 今回の科目A免除試験の内容
番号 | 分野 | テーマ(分類) | 難易度 | 過去問題 |
---|---|---|---|---|
1 | T | シフトと加算による2進数の乗算(情報の基礎理論) | 中 | H21春問1 |
2 | T | 標準偏差の性質(情報の基礎理論) | 難 | R05問3 |
3 | T | UNIXにおける正規表現(情報の基礎理論) | 中 | H28春問3 |
4 | T | M/M/1の待ち行列の条件(情報の基礎理論) | 難 | H18秋問31(AP) |
5 | T | 二分木の構造(アルゴリズム) | 中 | H23特別問6(AP) |
6 | T | クイックソートの手順(アルゴリズム) | 易 | H27秋問7 |
7 | T | 再入可能プログラムの特徴(ソフトウェア) | 難 | H27春問7 |
8 | T | MIPSとトランザクションの処理能力(ハードウェア) | 中 | H25秋問9 |
9 | T | メモリインタリーブの説明(ハードウェア) | 中 | H23特別問12 |
10 | T | ディスクストライピングの説明(システム構成) | 中 | H24秋問11 |
11 | T | フォールトトレラントシステムの実現方法(システム構成) | 中 | H25秋問13 |
12 | T | MTBFとMTTRの性質(システム構成) | 中 | H27秋問14 |
13 | T | LRU方式の仮想記憶(ソフトウェア) | 中 | H27春問20 |
14 | T | コンパイラ方式とインタプリタ方式の処理時間(ソフトウェア) | 中 | H23特別問23 |
15 | T | OSSの統合開発環境(ソフトウェア) | 易 | H30春問19 |
16 | T | DRAMの説明(ハードウェア) | 中 | H30春問21 |
17 | T | マクロ機能の目的(マルチメディアとヒューマンインタフェース) | 中 | H26春問23 |
18 | T | 関係データベースのデータ構造(データベース) | 易 | H25秋問29 |
19 | T | 表を第3正規形にしたもの(データベース) | 中 | H21春問32 |
20 | T | SQLのカーソルの機能(データベース) | 中 | H25春問29(AP) |
21 | T | ビューのSELECT権限(データベース) | 難 | H22春問11(DB) |
22 | T | データベースの復旧で使用するファイル(データベース) | 中 | H21秋問34 |
23 | T | サブネットマスクの形式(ネットワーク) | 中 | H25秋問32(AP) |
24 | T | ブロードキャストフレームによるデータ伝送の説明(ネットワーク) | 中 | H19秋問57 |
25 | T | TELNETの機能(ネットワーク) | 中 | H23特別問41 |
26 | T | OpenFlowプロトコルを用いたSDNの説明(ネットワーク) | 難 | H29秋問35(AP) |
27 | T | 割れ窓理論の説明(セキュリティ) | 難 | H30秋問12(SG) |
28 | T | AES-256による暗号文を解読する試行回数(セキュリティ) | 中 | H30秋問37 |
29 | T | 2要素認証に該当するもの(セキュリティ) | 易 | H27秋問45 |
30 | T | サイバー・フィジカル・セキュリティ対策フレームワークの目的(セキュリティ) | 中 | R02問7(SC) |
31 | T | 時刻サーバとの間の通信プロトコル(セキュリティ) | 易 | H28秋問19(SG) |
32 | T | VDIサーバの動作の特徴(セキュリティ) | 難 | H30春問41(AP) |
33 | T | ファイアウォールのNAPT機能による効果(セキュリティ) | 中 | H29春問36(AP) |
34 | T | ソフトウェア開発・保守においてリポジトリを構築する理由(開発技術) | 中 | H21春問57(AP) |
35 | T | オブジェクト指向のサブクラスといえるもの(開発技術) | 中 | H27春問48 |
36 | T | ソフトウェアの使用性を向上させる施策(開発技術) | 易 | H26春問47(AP) |
37 | T | 構造化プログラミングの三つの制御構造(開発技術) | 中 | H15春問53 |
38 | T | マッシュアップの説明(開発技術) | 易 | H22秋問48(AP) |
39 | T | スプリントで実施するスクラムイベントの順序(開発技術) | 難 | R05春問48(AP) |
40 | T | XPのペアプログラミングの説明(開発技術) | 易 | H30春問50 |
41 | T | テスト項目消化件数と累積バグ件数との関係(開発技術) | 中 | H29春問53 |
42 | M | アローダイアグラムの読み方 | 中 | H19秋問48 |
43 | M | SLAの説明 | 易 | H25春問55(AP) |
44 | M | バックアップの運用に必要な磁気テープの本数 | 難 | H17秋問50 |
45 | M | 情報システムの監査可能性の説明 | 中 | H30秋問60(AP) |
46 | S | BPOの説明 | 易 | H30秋問62 |
47 | S | BI(Business Intelligence)の活用事例 | 易 | H31春問63 |
48 | S | 非機能要件の定義で行う作業 | 中 | H26秋問56 |
49 | S | M&Aによる垂直統合に該当するもの | 中 | H27秋問67(AP) |
50 | S | デルファイ法の説明 | 中 | H23秋問67(AP) |
51 | S | バランススコアカードの学習と成長の視点 | 易 | H29春問70 |
52 | S | ファウンドリ企業のビジネスモデルの特徴 | 中 | R04春問70(AP) |
53 | S | 3PL(3rd Party Logistics)の説明 | 中 | H29秋問73(AP) |
54 | S | 能力不足となる工程 | 中 | H23特別問71 |
55 | S | EDIを実施するための情報表現規約 | 中 | H28秋問74 |
56 | S | プロジェクト組織の特徴 | 易 | H26春問75 |
57 | S | 在庫補充量の算出式 | 中 | H19秋問78 |
58 | S | パレート図が活用できる事例 | 中 | H26春問76(AP) |
59 | S | 営業利益の計算式 | 中 | H19秋問72 |
60 | S | Webページを改ざんして業務を妨害する行為を処罰する法律 | 易 | H27秋問80(AP) |
※分野は、T=テクノロジ系、M=マネジメント系、S=ストラテジ系
※難易度は、筆者の講師経験から、以下の通り設定しています。
易:受講者のほぼ全員ができるもの
中:受講者の半数ぐらいができるもの
難:受講者の数名しかできない問題
※過去問題の再利用である場合は出題された主な試験区分と年度を示す。
(同じ問題が複数の試験区分と年度で何度も再利用されている場合がありますが、ここでは、それらの中から1つの試験区分と年度だけを示す)
※基本情報技術者試験の過去問題ではない場合は「H18秋問31(AP)」のようにカッコの中に試験区分の略称を示す。
AP:応用情報技術者試験、DB:データベーススペシャリスト試験、SG:情報セキュリティマネジメント試験、SC:情報処理安全確保支援士
過去問題の再利用
今回の試験も、これまでに実施された試験と同様に、すべての問題が過去問題の再利用でした。基本情報技術者試験の過去問題だけでなく、他の試験区分の過去問題も多くあったことも、これまでと同様です。
表2は、今回を含めた直近3回の試験で再利用された過去問題の試験区分と問題数です。
基本情報技術者試験の過去問題が多いのは当然ですが、応用情報技術者試験の過去問題も数多く再利用されています。
表2 今回を含めた直近3回の試験で再利用された過去問題の試験区分と問題数
試験区分 | 12月10日 (前々回) |
1月28日 (前回) |
6月9日 (今回) |
---|---|---|---|
基本情報技術者試験 | 35問 | 38問 | 37問 |
応用情報技術者試験 | 21問 | 14問 | 19問 |
情報セキュリティマネジメント試験 | 3問 | 7問 | 2問 |
情報セキュリティスペシャリスト試験 | 1問 | (なし) | (なし) |
データベーススペシャリスト試験 | (なし) | (なし) | 1問 |
エンベデッドシステムスペシャリスト試験 | (なし) | 1問 | (なし) |
情報処理安全確保支援 | (なし) | (なし) | 1問 |
問題の難易度
今回の科目A免除試験の問題の難易度は、易が14問、中が37問、難が9問でした。
易が90%できて、中が50%できて、難が25%できる(四択問題なので最低でも25%できます)とすれば、正解数の期待値は、14×0.9 + 37×0.5 + 9×0.25 = 33.35問です。
合格基準は、60問中36問以上の正解なので、残念な結果になってしまった受験者が多かったでしょう。
表3は、今回を含めた直近3回の試験の正解数の期待値です。
今回の問題は、かなり難しかったといえます。
表3 直近3回の試験の正解数の期待値
試験実施日 | 12月10日 | 1月28日 | 6月9日 |
---|---|---|---|
正解数の期待値 | 36.5問 | 36.9問 | 33.35問 |
※60問中36問以上の正解で合格です。
今後の科目A免除試験を受ける人へのアドバイス
最後に、今後の科目A免除試験を受ける人にアドバイスをさせていただきます。
★アドバイス1: 普通以上に勉強する
先ほど示した正解数の期待値が33.35問というのは、筆者の講師経験上、普通に勉強した人の期待値です。
その期待値が、合格点の36問未満なのですから、普通に勉強していたのでは合格てきません。
これまで以上に気合を入れて勉強してください。
★アドバイス2: 苦手分野の過去問題を数多く解く
科目A免除試験の内容は、100%が過去問題の再利用です。
したがって、試験に合格するための最も効果的で効率的な学習方法は、できるだけ多くの過去問題や公開問題を解いて、できなかった問題があれば、できるようになるまで何度も練習することです。
それぞれの分野の出題数は、毎回ほぼ同じなので、苦手な分野の過去問題を、重点的に解いてください。
★アドバイス3: 他の試験区分の過去問題を練習する必要はない
科目A免除試験には、基本情報技術者試験だけでなく、応用情報技術者試験や情報セキュリティマネジメント試験など、他の試験区分の過去問題も再利用されていますが、それらを練習する必要はありません。なぜなら、他の試験区分の過去問題の中には、基本情報技術者試験の出題範囲外の問題(基本情報技術者試験には出題されない問題)もあるからです。
★アドバイス4: はじめた見た問題にも自信を持って取り組む
試験当日に、他の試験区分の過去問題に遭遇すると、はじめて見た問題なので戸惑うでしょう。
そんなときは、決して怖気づかずに「ちゃんと勉強してきたのだから、自分の持つ知識で必ず解けるはずだ!」と、自信を持って取り組んでください。これは、当然のことですが、基本情報技術者試験には、基本情報技術者試験の出題範囲を超えた問題が出るはずがありません。
★アドバイス5: 暗記ではなく仕組みを理解する
他の試験区分の過去問題であっても、基本情報技術者試験の出題範囲を超えた問題が出るはずはありませんが、はじめて見た問題(他の試験区分の過去問題)を解くには、基本情報技術者試験の出題範囲のテーマを、しっかりと理解しておく必要があります。過去問題の解き方を暗記するのではなく、仕組みを理解してください。そうすれば、はじめて見た問題も解けるはずです。
以上、試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、試験問題の講評をさせていただきました。
今回の試験に合格した人は、ここで気を緩めずに、科目B試験の学習を始めてください。
残念な結果になってしまった人は、ここで気を落すことなく、次回の科目A試験免除試験の合格を目指してください。
どちらも場合も、コツコツと学習を続けていれば、必ず良い結果が得られるはずです。<
皆様のご健闘をお祈り申し上げます!
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大手電気メーカーでPCの製造、ソフトハウスでプログラマを経験。独立後、現在はアプリケーションの開発と販売に従事。その傍ら、書籍・雑誌の執筆、またセミナー講師として活躍。軽快な口調で、知識0ベースのITエンジニアや一般書店フェアなどの一般的なPCユーザの講習ではダントツの評価。
お客様の満足を何よりも大切にし、わかりやすい、のせるのが上手い自称ソフトウェア芸人。
主な著作物
- 「プログラムはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「コンピュータはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「出るとこだけ! 基本情報技術者」 (翔泳社)
- 「ベテランが丁寧に教えてくれる ハードウェアの知識と実務」(翔泳社)
- 「ifとelseの思考術」(ソフトバンククリエイティブ) など多数