略語でわかる MIPS の計算方法|かんたん計算問題
この連載では、基本情報技術者試験で、多くの受験者が苦手意識を持っている「計算問題」に的を絞って、問題の解き方をやさしく説明します。
今回のテーマは、「 MIPS 」の計算問題です。はじめに、MIPS という略語の意味を説明します。意味がわかれば、計算方法もわかります。
ただし、様々な切り口で出題されるので、過去問題をよく練習しておきましょう。
もくじ
MIPS とは?
- Million
- 「百万」
- Instructions
- 「命令(複数形)」
- Per
- 「~あたり」
- Second
- 「秒」
したがって、 MIPSは、「 1 秒間に実行できる百万単位の命令数」という意味 であり、コンピュータの処理能力を示す単位です。
Per を「 / 」で表すと、MIPS は、「 百万命令 / 秒」と示せます。たとえば、2 MIPS のコンピュータなら、2 百万命令 / 秒の処理能力があります。
MIPS の意味がわかれば、計算方法もわかるでしょう。
たとえば、1 分間に 3 億個の命令を実行できるコンピュータの処理能力は、何 MIPS でしょうか。
1 秒間に実行できる命令数を求めればよいのであり、
1 分 = 60 秒なので、
3 億個 ÷ 60 秒
という計算で求められます。その際に、 計算結果を 100 万単位にすることに注意してください。100 万は、指数で表すと 106 です。
以下のように計算して、答えは 5 MIPS です。
= 300 × 106 ÷ 60
= 5 × 106
= 5 MIPS
それでは、逆に、5 MIPS の処理能力があるコンピュータの平均命令実行時間(命令 1 個を実行するのに要する平均時間)は、何秒でしょうか。
5 MIPS は、 1 秒間に 5 × 106 個の命令を実行できるという意味なので、命令 1 個を実行するのに要する平均時間は、
1 秒 ÷ ( 5 × 106 )個
という計算で求められます。以下のように計算して、答えは 0.2 マイクロ秒または、 200 ナノ秒です。マイクロとナノのどちらにするのかは、試験の問題文や選択肢に示されます。
10-6 がマイクロで、 10-9 がナノであることを覚えておきましょう。
= 0.2 × 10-6 ( 0.2 マイクロ秒)
= 200 × 10-9( 200 ナノ秒)
平均命令実行時間から MIPS を求める問題
平均命令実行時間が 20 ナノ秒のコンピュータがある。このコンピュータの性能は何 MIPS か。
ア 5 イ 10 ウ 20 エ 50
それでは、過去問題を解いてみましょう。はじめは、平均命令実行時間から MIPS を求める問題です。
平均命令実行時間が 20 ナノ秒とは、 1 個の命令を実行するのに 20 ナノ秒かかるということです。
MIPS は、 1 秒間に実行できる命令数ですから、 20 ナノ秒かかる命令を実行できる個数は、 1 秒 ÷ 20 ナノ秒という計算で求められます。
以下のように計算して、答えは 50 MIPS です。
= 1 ÷ ( 20 × 10-9 )
= 0.05 × 109
= 50 × 106
= 50 MIPS
正解エ
MIPS から平均命令実行時間を求める問題
50 MIPS のプロセッサの平均命令実行時間は幾らか。
ア 20 ナノ秒 イ 50 ナノ秒
ウ 2 マイクロ秒 エ 5 マイクロ秒
次は、MIPS から平均命令実行時間を求める問題です。これは、先ほどの問題と逆の手順になります。
処理能力が 50 MIPS ということは、
1 秒間 に 50 × 106 個の命令を実行できます。
1 秒間に 50 × 106 個の命令を実行できるなら、
1 個あたりの実行時間は、
1 秒 ÷ ( 50 × 106 ) 個 という計算で求められます。
以下のように計算して、答えは 0.02 マイクロ秒または 20 ナノ秒です。選択肢にあるのは、 20 ナノ秒です。
= 0.02 × 10-6( 0.02 マイクロ秒)
= 20 × 10-9( 20 ナノ秒)
正解ア
MIPS から 1 トランザクションの平均処理時間を求める問題
オンラインシステムにおいて, 1 トランザクションの処理に平均 60 万命令を実行し,平均 2 回のファイルアクセスが必要であるとき, CPU 性能が 30 MIPS であるコンピュータの 1 トランザクションの平均処理時間は何ミリ秒か。ここで,ファイルの平均アクセス時間は 30 ミリ秒とし,当該トランザクション以外の処理は発生しないものとする。
ア 8 イ 40
ウ 62 エ 80今度は、 MIPS から 1 トランザクションの平均処理時間を求める問題です。
トランザクションとは、何らかの機能を実現する処理のまとまりのことです。問題文の内容をよく見てください。
1 トランザクションで、
平均 60 万命令の実行と、
平均 2 回のファイルアクセス
が行われます。
CPU の性能が 30 MIPS なので、 60 万命令の実行には、以下のように計算して、 20 ミリ秒の時間がかかります。
= 60 × 104 ÷ ( 30 × 106 )
= 2 × 10-2
= 20 × 10-3( 20 ミリ秒)
この 20 ミリ秒に、以下のように、 30 ミリ秒のファイルアクセスを 2 回分加えて、答えは 80 ミリ秒です。
20 ミリ秒 + 30 ミリ秒 × 2 = 80 ミリ秒
正解エ
MIPS からトランザクションの処理能力を求める問題
1 件のトランザクションについて 80 万ステップの命令実行を必要とするシステムがある。プロセッサの性能が 200 MIPS で,プロセッサの使用率が 80 % のときのトランザクションの処理能力 ( 件 / 秒 ) は幾らか。
ア 20 イ 200
ウ 250 エ 313最後は、 MIPS からトランザクションの処理能力を求める問題です。
プロセッサの使用率が 80 % であることに注意してください。これは、プロセッサの性能が 200 MIPSであっても、実際には、その 80 % の 200 MIPS × 0.8 = 160 MIPS しか利用できないということです。
1 件のトランザクションで 80 万ステップ( 80 万個)の命令が実行されるので、それに要する時間は、以下のように計算して 0.5 × 10-2秒です。
= 80 × 104 ÷ ( 160 × 106 )
= 0.5 × 10-2
1 秒間に処理できるトランザクションの件数は、以下のように計算して、 200 件です。
1 秒 ÷ ( 0.5 × 10-2 秒)
= 2 × 102
= 200
正解イ
以上、「 MIPS 」の計算問題の解き方を説明しましたが、十分にご理解いただけましたでしょうか。
もしも、すぐに理解できない問題があったなら、同じ問題を繰り返し練習してください。
基本情報技術者試験では、同じ問題が何度も再利用されているので、できない問題をできるようにすることが、必ず得点アップにつながるからです。
それでは、またお会いしましょう!
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