通信ネットワークの計算方法がわかる|かんたん計算問題
この連載では、基本情報技術者試験で、多くの受験者が苦手意識を持っている「計算問題」に的を絞って、問題の解き方をやさしく説明します。苦手克服のポイントは、シンプルな具体例で、計算方法を見出すことです。
今回のテーマは、「通信ネットワーク」の計算問題です。
いくつかの過去問題を練習することで、伝送時間や回線利用率などの計算方法を見出すコツを覚えてください。
伝送時間を求める問題
1.5 M ビット/秒の伝送路を用いて 12 M バイトのデータを転送するのに必要な伝送時間は何秒か。ここで,伝送路の伝送効率を 50%とする。
ア 16 イ 32 ウ 64 エ 128
最初の問題は、「伝送速度」と「データ量」から「伝送時間」を求める問題です。
伝送速度の単位が「ビット / 秒」で、データ量の単位が「バイト」で示されているので、「 8 ビット = 1 バイト」で、ビットとバイトのどちらかに単位をそろえる必要があります。ビットをバイトにするには、8 で割ります。バイトをビットにするには、8 倍します。計算が楽な方を選んでください。
ここでは、12 M バイトのデータ量を 8 倍して、12 M バイト = 12 × 8 = 96 M ビット にします。
さらに注目してほしいのは、「伝送路の伝送効率を 50 % とする」と示されていることです。これは、1.5 M ビット / 秒という伝送速度であっても、実際にはその 50 % しか利用できないという意味です。
したがって、実際の伝送速度は、
ということになります。
これで、計算のための数字がそろいました。伝送速度が 0.75 M ビット / 秒で、データ量が 96 M ビットです。さあ、どのように計算すればよいでしょう?
割り算することはわかっても、どっちをどっちで割ればよいか、悩んでしまうかもしれません。このような場合には、暗算でも計算できるシンプルな具体例を想定して考えてください。
それでは、5 と 10 のどっちをどっちで割れば 2 になりますか?
10 ÷ 2 = 5 です。
このことから、「データ量 ÷ 伝送速度」という計算で、伝送時間を求められる ことを見出せます。
以下のように計算して、答えは 128 秒(選択肢エ)です。
- 伝送時間
- = データ量 ÷ 伝送速度
- = 96 M ビット ÷ ( 0.75 M ビット / 秒)
- = 128 秒
正解 エ
label 関連タグ: 伝送時間
回線利用率を求める問題
10 M ビット / 秒の回線で接続された端末間で,平均 1 M バイトのファイルを,10 秒ごとに転送するときの回線利用率は何 % か。ここで,ファイル転送時には,転送量の 20 % が制御情報として付加されるものとし,1 M ビット = 106 ビットとする。
ア 1.2 イ 6.4 ウ 8.0 エ 9.6
次の問題は、「伝送速度」と「データ量」から「回線利用率」を求める問題です。ここでも、簡単な具体例を想定して、計算方法を見出してみましょう。
伝送速度が 5 M ビット / 秒なのですから、10 秒あれば ( 5 M ビット / 秒)× 10 秒 = 50 M ビット のデータを転送する能力があります。
ところが、実際には 10 M ビットしか転送しないのですから、「実際のデータ量 ÷ 回線のデータ転送能力」という計算で、回線利用率は 0.2 になります。
- 回線利用率
- = 実際のデータ量 ÷ 回線のデータ転送能力
- = 10Mビット ÷ 50Mビット
- = 0.2
それでは、問題に示された数字で計算してみましょう。
伝送速度は、10 M ビット / 秒です。ファイルのサイズは、平均 1 M バイトですから、ビット単位にすると 1 M バイト = 1 × 8 = 8 M ビットです。
さらに、このデータに 20 % の制御情報(宛先や差出人の情報など)が付加されるので、データ量は 8 M ビット × 1.2 = 9.6 M ビットです。このデータ量が、10 秒ごとに転送されます。
伝送速度が 10 M ビット / 秒なのですから、10 秒あれば( 10 M ビット / 秒)× 10 秒 = 100 M ビットのデータを転送する能力があります。
ところが、実際には 9.6 M ビットしか転送しないのですから、回線利用率は、以下のように計算して、0.096 = 9.6 %(選択肢エ)になります。
- 回線利用率
- = 実際のデータ量 ÷ 回線のデータ転送能力
- = 9.6 M ビット ÷ 100 M ビット
- = 0.096
正解 エ
バッファリング時間を求める時間
符号化速度が 192 k ビット / 秒の音声データ 2.4 M バイトを、通信速度が 128 k ビット / 秒のネットワークを用いてダウンロードしながら途切れることなく再生するためには,再生開始前のデータのバッファリング時間として最低何秒間が必要か。
ア 50 イ 100 ウ 150 エ 250
次の問題は、「符号化速度」と「データ量」と「通信速度」から「バッファリング時間」を求める問題です。
この問題のバッファリング時間とは、音声データの再生を開始する前に、ダウンロードを済ませておく時間のことです。
データの符号化速度(音声をデジタルデータに変換する速度)の方が、通信速度(データを送る速度)より速く、そのままでは再生が間に合わないので、データ量に合わせて、あらかじめいくらかのデータをダウンロードしておくのです。
ここでも、簡単な具体例を想定して、計算方法を見出してみましょう。
それを一気にを見出すことは、難しいと思いますので、とにかくできることをやってみましょう。それによって、「わかった!」ということがよくあるからです。
音声データが 2000 k ビットで、通信速度が 20 k ビット / 秒なのですから、「データ量 ÷ 通信速度」という計算をして、データのダウンロードには、100 秒かかります。
符号化速度が 100 k ビット / 秒で、音声データ量が 2000 k ビットなのですから、この音声データの符号化に要した時間は、「データ量 ÷ 符号化速度」という計算をして、20 秒です。
- 符号化に要した時間
- = データ量 ÷ 符号化速度
- = 2000 k ビット ÷(100 k ビット / 秒)
- = 20 秒
これで、計算方法が「わかった!」でしょう。
符号化するときは 20 秒ですが、それをダウンロードするのに 100 秒かかるのです。
したがって、その差の 100 秒 – 20 秒 = 80 秒分のデータを、あらかじめダウンロードしておく必要があります。
この 80 秒がバッファリング時間です。これは、以下の計算です。
- バッファリング時間
- = データのダウンロード時間 – 符号化に要した時間
- = 100 秒 – 20 秒
- = 80 秒
それでは、ここまでの計算方法を、問題に示された数字に当てはめてみましょう。
符号化速度が 192 k ビット / 秒
音声データが 2.4 M バイト = 2.4 M × 8 = 19.2 M ビット = 19200 k ビット
通信速度が 128 k ビット / 秒
です。以下のように計算して、バッファリング時間は 50 秒(選択肢ア)です。
- データのダウンロード時間
- = データ量 ÷ 通信速度
- = 19200 k ビット ÷(128 K ビット / 秒)
- = 150 秒
- 符号化に要した時間
- = データ量 ÷ 符号化速度
- = 19200 k ビット ÷(192 k ビット / 秒)
- = 100 秒
- バッファリング時間
- = データのダウンロード時間 – 符号化に要した時間
- = 150 秒 – 100 秒
- = 50 秒
正解 ア
伝送遅延時間を求める問題
地上から高度約 36,000 km の静止軌道衛星を中継して,地上の A 地点と B 地点で通信をする。衛星と A 地点,衛星と B 地点の距離がどちらも37,500 km であり,衛星での中継による遅延を 10 ミリ秒とするとき, A から送信し始めたデータが B に到達するまでの伝送遅延時間は何秒か。ここで,電波の伝搬速度は 3 × 108 m / 秒とする。
ア 0.13 イ 0.26 ウ 0.35 エ 0.52
最後の問題は、「距離」と「速度」から「時間」を求める問題です。
答えは、1200 m ÷( 2 m / 秒) = 600 秒です。このことから、以下の計算方法が見出せます。
「時間 = 距離 ÷ 速度」に、問題の数字を当てはめてみましょう。
A 地点から衛星までの距離は 37,500 km で、電波の伝搬速度は 3 × 108 m / 秒 = 300,000 km / 秒です。
したがって、以下のように計算して、時間は、0.125 秒です。
衛星での中継に 10 ミリ秒 = 0.01 秒かかり、衛星から B 地点までは、A 地点から衛星までの距離と同じなので、時間が 0.125 秒かかります。
したがって、合計時間( A 地点から送信し始めたデータが B 地点に到達するまでの伝送遅延時間)は、0.26 秒(選択肢イ)です。
いかがですか?
「衛星」や「電波」などの言葉を見て難しく感じたかもしれませんが、計算方法は「家から学校まで」という小学校の問題と同じでした。
見かけに惑わされずに「絶対にできるはずだ!」という自信を持って、計算問題に取り組んでください。
正解 イ
以上、「通信ネットワーク」の計算問題の解き方を説明しましたが、十分にご理解いただけましたでしょうか。
もしも、すぐに理解できない問題があったなら、同じ問題を繰り返し練習してください。
基本情報技術者試験では、同じ問題が何度も再利用されているので、できない問題をできるようにすることが、必ず得点アップにつながるからです。
それでは、またお会いしましょう!
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