一般常識で解ける マネジメント と ストラテジ の計算方法|かんたん計算問題
この連載では、基本情報技術者試験で、多くの受験者が苦手意識を持っている「計算問題」に的を絞って、問題の解き方をやさしく説明します。
今回のテーマは、「マネジメント」と「ストラテジ」の計算問題です。
これらの分野の計算問題の多くは、一見して難しそうに見えても、一般常識で解くことができます。いくつか過去問題を示しますので、「簡単にできる!」ということを味わってください。
もくじ
複雑度を考慮して工数を求める問題
全部で 100 画面から構成されるシステムの画面を作成する。100 画面を規模と複雑度で分類したときの内訳は次のとおりである。
規模が “中” で,複雑度が “普通” である画面数:40
規模が “大” で,複雑度が “普通” である画面数:20
規模が “大” で,複雑度が “複雑” である画面数:10
全ての画面を作成する総工数を,表の作成工数を用いて見積もると何人日になるか。ここで,全部の画面のレビューと修正に 5 人日を要し,作業の管理にはレビューと修正の工数を含めた作業工数の 20 % を要するものとする。
画面当たりの作成工数
単位 人日
複雑度 | ||||
---|---|---|---|---|
単純 | 普通 | 複雜 | ||
規模 | 小 | 0.4 | 0.6 | 0.8 |
中 | 0.6 | 0.9 | 1.0 | |
大 | 0.8 | 1.0 | 1.2 |
ア 80 イ 85
ウ 101 エ 102それでは、過去問題を解いてみましょう。はじめは、複雑度を考慮して工数を求める問題です。
この問題を解くポイントは、画面の作成の工数の他に、レビューと修正の工数、および作業の管理の工数が必要となることです。
画面の作成の工数は、「画面当たりの作成工数」の表から規模と複雑度に応じた工数を求め、それに画面数を掛けて集計して、以下のように求められます。
- 規模が “小” で、複雑度が “単純” である画面数:30 の工数
- 0.4 人月 × 30 画面 = 12 人月
- 規模が “中” で、複雑度が “普通” である画面数:40 の工数
- 0.9 人月 × 40 画面 = 36 人月
- 規模が “大” で、複雑度が “普通” である画面数:20 の工数
- 1.0 人月 × 20 画面 = 20 人月
- 規模が “大” で、複雑度が “複雑” である画面数:10 の工数
- 1.2 人月 × 10 画面 = 12 人月
- 画面の作成の工数
- 12 人月 + 36 人月 + 20 人月 + 12 人月
- 80 人月
この 80 人月に、レビューと修正の工数の 5 人月を加えて 85 人月になり、さらに作業の管理の工数の 20 % を加えると、
85 人月 × 1.2 = 102 人月
になります。選択肢エが正解です。
正解エ
プロジェクトの進捗度を求める問題
あるブロジェクトの工数配分は表のとおりである。基本設計からプログラム設計までは計画どおり終了した。現在はプログラミング段階であり,3,000 本のプログラムのうち 1,200 本が完成したところである。プロジェクト全体の進捗度は何 % か。ここで,各プログラムの開発工数は,全て等しいものとする。
基本設計 | 詳細設計 | プログラム設計 | プログラミング | テスト |
---|---|---|---|---|
0.08 | 0.16 | 0.20 | 0.25 | 0.31 |
ア 40 イ 44
ウ 54 エ 59次は、プロジェクトの進捗度を求める問題です。
この問題を解くポイントは、プロジェクトの工程が
- 「基本設計」
- arrow_downward
- 「詳細設計」
- arrow_downward
- 「プログラム設計」
- arrow_downward
- 「プログラミング」
- arrow_downward
- 「テスト」
の順に進んで行くことと、それぞれの工数が配分(全体に対する割合)で示されていることです。
現在は、プログラミングの段階なのですから、その前の基本設計の 0.08 と詳細設計の 0.16 とプログラム設計の 0.20 は、すでに完了しています。
そして、 0.20 のプログラミングで、 3,000 本のうちの 1,200 本が完成しているのですから、
0.25 × ( 1,200 ÷ 3,000 )
= 0.10
が完了しています。したがって、現在のプロジェクトの進捗度は、以下の計算で 54 % であり、選択肢ウが正解です。
+ 0.16 (詳細設計)
+ 0.20 (プログラム設計)
+ 0.10 (プログラミング)
= 0.54( 54 % )
正解ウ
ID を発行し尽くす年度を求める問題
A 社の会員登録処理では、次の形式の ID を発行している。各年度末での発行済 ID 数の推移は表のとおりである。今後もこの傾向が続くと仮定した場合,この形式による ID は何年度に発行し尽くすと予想されるか。ここで、脱会した会員の ID は欠番として管理し,再利用は行わない。
-
〔ID の形式〕
- XXNNN (例:AZ059 など)
- X には英大文字( A ~ Z )を設定する。
- N には数字( 0 ~ 9 )を設定する。
〔各年度末における発行済 ID 数の推移〕
年度 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 |
---|---|---|---|---|
発行済 ID 数(累積) | 317,000 | 383,000 | 447,000 | 512,000 |
ア 2010年度
イ 2011 年度 ウ 2012 年度 エ 2013 年度今度は、ID を発行し尽くす年度を求める問題です。この問題を解くポイントは、
- ID の形式から ID の総数を得ること
- 「各年度末における発行済 ID 数の推移」の表から 1 年ごとの ID の発行数を得ること
です。
ID の総数は、 XXNNN という形式で、
X の部分が英大文字( A ~ Z )の 26 通りで、
N の部分が数字( 0 ~ 9 )の 10 通りなので、
以下のように計算して、 676,000 個です。
- ID の総数
- 26 × 26 × 10 × 10 × 10
- 676,000 個
1 年ごとの ID の発行数は、以下のように計算できます。
- 2007 年度の発行数
- 2007 年度末の発行済 ID 数 – 2006 年度末の発行済 ID 数
- 383,000 – 317,000
- 66,000 個
- 2008 年度の発行数
- 2008 年度末の発行済 ID 数 – 2007 年度末の発行済 ID 数
- 447,000 – 383,000
- 64,000 個
- 2009 年度の発行数
- 2009 年度末の発行済 ID 数 – 2008 年度末の発行済 ID 数
- 512,000 – 447,000
- 65,000 個
66,000 個、64,000 個、65,000 個ですから、毎年ほぼ同じ数の ID が発行されていることがわかります。平均すると、65,000 個です。
ID の総数が 676,000 個で、2009年度末までに 512,000 個が発行済なので、残りは、
676,000 個 - 512,000 個 = 164,000 個
です。
これ以降も 1 年間で平均 65,000 個の ID が発行されるので、
164,000 個 ÷ 65,000 個 ≒ 2.52 年後
に発行し尽くすと予測されます。
選択肢ウの 2012 年度が正解です。
正解ウ
システムの導入で削減される業務時間を求める問題
ある営業部員の 1 日の業務活動を分析した結果は,表のとおりである。営業支援システムの導入によって訪問準備時間が 1 件当たり 0.1 時間短縮できる。総業務時間と 1 件当たりの顧客訪問時間を変えずに, 1 日の顧客訪問件数を 6 件にするには, “その他業務時間” を何時間削減する必要があるか。
ア 0.3 イ 0.5
ウ 0.7 工 1.0次は、システムの導入で削減される業務時間を求める問題です。
この問題を解くポイントは、
- システムの導入によって短縮できるのが訪問準備時間だけであること
- 短縮が足りない部分は、その他業務時間を削減して対処すること
です。
- 「 1 日の業務活動の時間分析表」を見ると、現状(システムを導入する前)は、 5 件の顧客を訪問するのに 5.0 時間かかっている
- システム導入後に、これを 6 件にする
- 1日の総業務時間は、 8.0 時間なので、社内業務時間は?
- 現状、5 件の顧客を訪問するのに、訪問準備時間が 1.5 時間かかっている
- システム導入後は、訪問準備時間が 1 件あたり 0.1 時間短縮される
- システム導入後は、6 件訪問するので、訪問準備時間の合計は?
- 社内業務時間が 2.0 時間であり、訪問準備時間の合計が 1.2 時間なので、その他業務時間は?
- 現状のその他業務時間が 1.5 時間なので、必要な削減時間は?
1 件当たり訪問時間
5.0 時間 ÷ 5 件 = 1.0 時間
1.0 時間 × 6 件 = 6.0 時間
8.0 時間 - 6.0 時間 = 2.0 時間
1 件当たり訪問準備時間
1.5 ÷ 5 件 = 0.3 時間
0.3 時間 - 0.1 時間 = 0.2 時間
0.2 時間 × 6 件 = 1.2 時間
2.0 時間 - 1.2 時間 = 0.8 時間
1.5 時間 - 0.8 時間 = 0.7 時間
したがって、選択肢ウが正解です。
正解ウ
コストが最も安くなる開発方法を求める問題
電化製品に搭載する部品を試作するとき,全体のコストが最も安くなる開発方法はどれか。ここで,各工程の工期は,作成工程が 6 か月,改造工程が 3 か月,評価工程が 2 か月とする。また, 1 人月当たりのコストは,作成工程が 60 万円,改造工程及び評価工程がそれぞれ 100 万円とする。ただし,人月コスト,購入費及び委託費の三つ以外のコストは考慮しない。
開発方法 | 購入費(万円) | 委託費(万円) | 月当たりの人数(人) | |||
---|---|---|---|---|---|---|
作成工程 | 改造工程 | 評価工程 | ||||
ア | サンプルを購入 して社内で改造 |
2,000 | 0 | 0 | 4 | 1 |
イ | 社外に一括委託 | 0 | 3,500 | 0 | 0 | 0 |
ウ | 社内資産を改造 | 0 | 0 | 0 | 10 | 3 |
エ | 社内で新規作成 | 0 | 0 | 10 | 0 | 2 |
今度は、コストが最も安くなる開発方法を求める問題です。
この問題を解くポイントは、選択肢イの「社外に一括委託」以外の開発方法では、何らかの工数(自社で行う業務)があるので、そのための計算が必要になることです。
選択肢ア~エの開発方法におけるコストは、以下のように求められます。
-
選択肢ア
- 「サンプルを購入して社内で改造」では、購入費が 2,000 万円かかり、改造工程に月あたり 4 人、評価工程に月あたり 1 人を割り当てます。
- 改造工程の工期は、 3 か月なので、工数は 4 人 × 3 か月 = 12 人月です。
- 改造工程の 1 人月当たりのコストは、100 万円なので、 12 人月のコストは、 100 万円 × 12 人月 = 1,200 万円です。
- 評価工程の工期は、 2 か月なので、工数は 1 人 × 2 か月 = 2 人月です。
- 評価工程の 1 人月当たりのコストは、100 万円なので、 2 人月のコストは、 100 万円 × 2 人月 = 200 万円です。
- したがって、全体のコストは、2,000 万円 + 1,200 万円 + 200 万円 = 3,400 万円です。
-
選択肢イ
- 「社外に一括受託」のコストは、委託費の 3,500 万円だけです。
-
選択肢ウ
- 「社内資産を改造」は、改造工程に月あたり 10 人を割り当て、評価工程に 3 人を割り当てます。
- 改造工程の工期は、 3 か月なので、工数は 10 人 × 3 か月 = 30 人月です。
- 改造工程の 1 人月当たりのコストは、 100 万円なので、 30 人月のコストは、100 万円 × 30 人月 = 3,000 万円です。
- 評価工程の工期は、 2 か月なので、工数は 3 人 × 2 か月 = 6 人月です。
- 評価工程の 1 人月当たりのコストは、100 万円なので、6 人月のコストは、100 万円 × 6 人月 = 600 万円です。
- したがって、全体のコストは、 3,000 万円 + 600 万円 = 3,600 万円です。
-
選択肢エ
- 「社内で新規作成」は、作成工程に月あたり 10 人を割り当て、評価工程に 2 人を割り当てます。
- 作成工程の工期は、6 か月なので、工数は 10 人 × 6 か月 = 60 人月です。
- 作成工程の 1 人月当たりのコストは、 60 万円なので、 60 人月のコストは、60 万円 × 60 人月 = 3,600 万円です。
- 評価工程の工期は、 2 か月なので、工数は 2 人 × 2 か月 = 4 人月です。
- 評価工程の 1 人月当たりのコストは、100 万円なので、4 人月のコストは、100 万円 × 4 人月 = 400 万円です。
- したがって、全体のコストは、 3,600 万円 + 400 万円 = 4,000 万円です。
選択肢アが 3,400 万円、選択肢イが3,500 万円、選択肢ウが3,600 万円、選択肢エが4,000 万円なので、コストが最も安いのは、選択肢アです。
正解ア
総合評価落札方式で落札者を選ぶ問題
総合評価落札方式を用い,次の条件で調達を行う。 A ~ D 社の入札価格及び技術点が表のとおりであるとき,落札者はどれか。
〔条件〕
- 価格点(100 点満点)及び技術点( 100 点満点)を合算した総合評価点が最も高い入札者を落札者とする。
- 予定価格を 1,000万円とする。予定価格を超える入札は評価対象とならない。
- 価格点は次の計算式で算出する。
[ 1 – (入札価格 / 予定価格)] × 100
〔A ~ D 社の入札価格及び技術点〕
入札価格(万円) | 技術点 | |
---|---|---|
A 社 | 700 | 50 |
B 社 | 800 | 65 |
C 社 | 900 | 80 |
D 社 | 1,100 | 100 |
ア A 社 イ B 社
ウ C 社 エ D 社最後は、総合評価落札方式で落札者を選ぶ問題です。この問題を解くポイントは、問題に示された計算式の通りに計算することです。
基本情報技術者試験には、事前に計算式を暗記しておく必要がある問題が出たことがありません。もしも、特殊な計算式が必要な場合は、必ず問題の中に計算式が示されます。
この問題では、価格点と技術点を合算した総合評価点が最も高い入札者を落札者とします。
- 入札価格と技術点は、「 A ~ D 社の入札価格及び技術点」という表に示されています。
- 価格点は、問題の中に示された [ 1 – (入札価格 / 予定価格)] × 100 という計算式で求めます。
- 予定価格は、問題の中に 1,000 万円であると示されています。
A 社 ~ D 社の総合評価点は、以下のように求められます。
- A 社
- 価格点 = [ 1 – ( 700 / 1,000 )] × 100 = 30 点
- 技術点 = 80 点
- 総合評価点 = 30 点 + 80 点 = 80 点
- B 社
- 価格点 = [ 1 – ( 800 / 1,000 )] × 100 = 20 点
- 技術点 = 65 点
- 総合評価点 = 20 点 + 65 点 = 85 点
- C 社
- 価格点 = [ 1 – ( 900 / 1,000 )] × 100 = 10 点
- 技術点 = 80 点
- 総合評価点 = 10 点 + 80 点 = 90 点
- D 社
- 入札価格 1,100 万円が予定価格 1,000 万円 を超えているので、評価対象となりません。
総合評価点が最も高いのは、C 社の 90 点なので、選択肢ウが正解です。
正解イ
以上、「マネジメント」と「ストラテジ」の計算問題の解き方を説明しましたが、十分にご理解いただけましたでしょうか。
かんたん計算問題は、今回で 最終回 になります。この連載を通して、皆様の計算問題への苦手意識が少しでも解消されたなら幸いです。
基本情報技術者試験に出題されるテーマは、きちんと決められています。そして、同じ問題が何度も出題されています。
したがって、できない問題を繰り返し練習することが、得点をアップする秘訣です。この連載も、ぜひ繰り返しお読みください。
それでは、またお会いしましょう!
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update『プログラムはなぜ動くのか』(日経BP)が大ベストセラー
IT技術を楽しく・分かりやすく教える“自称ソフトウェア芸人”
大手電気メーカーでPCの製造、ソフトハウスでプログラマを経験。独立後、現在はアプリケーションの開発と販売に従事。その傍ら、書籍・雑誌の執筆、またセミナー講師として活躍。軽快な口調で、知識0ベースのITエンジニアや一般書店フェアなどの一般的なPCユーザの講習ではダントツの評価。
お客様の満足を何よりも大切にし、わかりやすい、のせるのが上手い自称ソフトウェア芸人。
主な著作物
- 「プログラムはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「コンピュータはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「出るとこだけ! 基本情報技術者」 (翔泳社)
- 「ベテランが丁寧に教えてくれる ハードウェアの知識と実務」(翔泳社)
- 「ifとelseの思考術」(ソフトバンククリエイティブ) など多数