データベーススペシャリスト 対策 6月は出題傾向を知ろう|2023年度
さぁ 6 月も後半になりました。 今年 2023 年(令和 5 年)の試験日は 10 月 8 日。 試験まで、あと 3 か月半です。 そろそろ試験対策に着手しようと考えているのではないでしょうか。
以下の記事にも書いている通り、情報処理技術者試験は、令和に入ってから DX 重視になっています。 それから 4 年、もう過渡期とは言えないかもしれませんが、(年 1 回の試験につき 4 回の試験が開催されているものの)はっきりと方向性が定まったとも思えません。 しかも、その(変更の) “程度” は … 試験区分や時間区分によって異なっているのが現状です。
info 新傾向 DX に関する記事
そこで、令和 5 年の試験対策では、次のように考えて対策をしなければなりません。
- 令和に入ってからの過去 4 回の出題から “傾向” を把握する
- その傾向を踏まえて、取り組み方法の優先順位を考える
時間が無尽蔵にあれば、平成 30 年までの過去問題の傾向と令和に入ってからの新傾向の過去問題の両方を押さえればよいと思います。 しかし、ほとんどの人が限られた時間の中で試験対策をおこなっているはずなので、それも難しいでしょう。
そこで、合格確率を上げる … つまり、より効果的な対策になるように、これまでの傾向を加味した対策の優先順位を考えました。 午後Ⅱ、午後Ⅰ、午前Ⅱとそれぞれの時間区分ごとに見ていきましょう。
午前Ⅱ
午前Ⅱ試験は、特に目立った変化はありませんでした。
令和 4 年度の午前Ⅱ試験は、全 25 問中 18 問がデータベース分野の問題でした。 その 18 問のうち、過去問題がほぼそのまま出題されているのが半数以上の 11 問。 この比率は例年通りでした。 なお、この 11 問のうち 8 問は平成 30 年以後に出題された問題だということも覚えておいて損はないでしょう。
分野 | 内訳 | 出題数 |
---|---|---|
DB | 過去問 | 11 |
新規 | 7 | |
DB 以外 | 7 |
難易度に関しては下がっていたのかもしれません。 というのも、例年 70 ~ 80 % 程度だった午前Ⅱの通過率( 60 点以上でクリアした人の割合)が、令和 4 年は 92 % だったからです。 令和 5 年は、午前Ⅱの通過率を抑制するために新規問題を増やすかもしれません。
以上のような傾向から、午前Ⅱの対策は、基本的には例年通りで良いと思いますが、新規問題が増える可能性も考えて対策するようにしましょう。
- 優先順位 looks_one
- データベース分野の過去問題から出題される 11 問を確実に正解する対策を行います。 試験直前までで構わないので、平成 30 年度以後の過去問題を重点的に、余裕があればそれ以前の過去問題にも目を通しましょう
- 優先順位 looks_two
- データベース分野の新規問題は例年通りだと約 7 問です。 そのうち、過去問題を理解して解ければ正解できる問題を確実に正解することを狙うが次の段階です。 選択肢にある正解以外の用語やその意味を覚えるなど、違った切り口で出題されても対応できるようにしましょう
- 優先順位 looks_3
- 最後に、余裕があればデータベース分野以外の 7 問も正解できるように狙いたいところです。 ここで半分以上の 4 問正解できれば、新規問題の正答率が低くてもカバーできるからです。 セキュリティをはじめ、得意かどうかを考え、必要に応じて長期戦略を立てるのもいいでしょう
午後Ⅰ
令和 4 年の午後Ⅰ試験は、問 1 が「データベース設計」、問 2 が「 SQL 」、問 3 が「データベースの実装や性能」というラインナップでした。 このラインナップは例年通りでした。
問 1 の「データベース設計」の問題はすべて、午後Ⅱで問われる「データベース設計」と同じ概念データモデルと関係スキーマを完成させる問題で構成されていました。 これは、(現在、唯一と言っていいほどの定番の設問なのですが)例年通りのパターンで、しかも分量も相対的に多くなかったので、時間的にも余裕があったのではないでしょうか。
問 2 の SQL の問題も午後Ⅱで問われるパターンと同じでした。 トリガーやウィンドウ関数(分析関数)など令和に入ってから目にするようになった命令の出題が中心だったのです。 これは、明らかに DX 重視の(ゆえにここ数年の)新傾向なので、今後も続くと思います。
問 3 は、再編成とデッドロックがメインの問題でした。 題材自体は特に目新しいものでもなく難易度も高かったわけでもありませんが、ほぼすべての設問が 30 字や 40 字で解答する記述式だったので、それが得意かどうかで差が出たと思います。
ただ、1 点気になったことがあります。 それは、筆者の周囲で「午後Ⅰは自己採点よりも 10 ~ 20 点高い結果になっていた。 」という声が多かったことです。 しかも問 3 を選択した人ばかりです。 母数が圧倒的に少ないので真相はわかりませんが、記述式だったので幅広く正解にしてくれたのかもしれません。 あるいは、令和 4 年の午後Ⅰの突破率は 53 % で例年と変わらないことから、何かしら調整が入ったのかもしれません。
こうしたことを総合的に考えれば、午後Ⅰの対策方針は次のようになると思います。
- 優先順位 looks_one
- 例年通り午前Ⅱ対策を進める。
午後Ⅰ試験では SQL の問題が出題されます。 しかも最近は 3 問中 2 問が SQL の問題なので、避けては通れません。 SQL は午後Ⅰや午後Ⅱの過去問題で早く解く練習をしますが、それには基本的な構文を知っていることが大前提です。 まずは基本構文を把握し、その基本的な使い方を午前Ⅱの問題で理解しましょう。
また、令和 4 年の問 3 の問題のように、午後Ⅰの問題の中には午前Ⅱの問題が解けるようになれば解ける問題も出題されます。 排他制御とデッドロックやデータベースの回復処理などです。 この手の問題も午前Ⅱ対策を進めれば対応できます。 - 優先順位 looks_two
- 例年通り午後Ⅱ対策を進める。
今のデータベーススペシャリスト試験対策は「午後Ⅱ対策を進めれば、それが午後Ⅰ対策の一部にもなる」と考えるのが基本です。 令和 4 年も、問 1 の “データベース設計の問題” は午後Ⅱと同じパターンの出題でしたし、問 2 の “SQL の問題” で問われているトリガーやウィンドウ関数は午後Ⅱでも出題されています。 解き方等は同じなので対策も同じだと考えればいいわけです。 - 優先順位 looks_3
- データベースの基礎理論
昔ド定番だった「データベースの基礎理論」に関する問題も、余裕があれば目を通したいものの一つです。 令和に入る少し前に出題されなくなったと思わせて、令和 3 年に突然復活しています。 令和 4 年は出題されていませんが、またいつ復活するかわかりません。 出題されなかったら無駄になる可能性はありますが、出題された時には対策をしていたかどうかで解答速度は大きく変わるでしょう。 時間的に余裕があれば押さえたいところです。 - 優先順位 looks_4
- 午後Ⅰの過去問題を解いてみる
優先順位 looks_3 とどちらを優先するのか迷いますが、午後Ⅰの過去問題を活用して、制限時間内に解けるかどうかの確認は重要です。
午後Ⅱ
令和 4 年の午後Ⅱ試験は、問 1 が「データベースの実装・運用」、問 2 が「データベース設計」で、変化はなく例年通りでした。
ただ、実際に受験した人に感想を聞くと「例年よりも簡単だった」という人と、「難しかった」という人に二分していたようです。 特に何か新しいことが問われていたわけでもありません。 考えられる要因は 2 つ。 オーソドックスな販売管理業務や生産管理業務ではなく、問 1 で宿泊管理業務、問 2 でフェリーの予約業務が題材だった点と、問 2 のデータベース設計の問題のうち、定番の問題(未完成の概念データモデルと関係スキーマを完成させる問題)の比率が 50 % ぐらいだった点です。
そのため、データベース設計の問題の中の定番の問題(未完成の概念データモデルと関係スキーマを完成させる問題)だけにヤマを張って、それしか対策をしなかった受験生には難しく感じたのでしょう。 この低比率になったのは実に 8 年ぶりで、この 7 年間は 70 ~ 90 % だったので仕方がなかったと思います。
また、ホテルの宿泊管理業務やフェリーの予約業務のイメージがあったかどうかも問題文を読解する時間に差が出たと思います。 筆者も時間を計測して解きましたが、いずれも業務内容をよくわかっていたので難しくは感じませんでした。 ホテルや新幹線の Web 予約を日頃フル活用しているからだと思います。
そう考えれば、 Web 上での予約やショッピング、行政手続きなどは積極的に利用したほうがよいのかもしれません。 データベーススペシャリスト試験の題材になるのは、基本として知る必要のある販売管理業務や生産管理業務と、それ以外は「利用者として使用しているからイメージしやすい業務(ゆえに受験者によって差が出ない業務)」ですからね。 触れておくのも(利用するのも)ひとつの試験対策なのかもしれません。
以上より、例年通りの対策で構わないと思いますが … 令和 4 年の出題傾向を踏まえて、次のような優先順位で進めるのがいいと思います。
- 優先順位 looks_one
- データベースの物理設計(問 1 )とデータベース設計(問 2 )のうち、得意な方の問題を優先して仕上げます。 特にどちらでもない場合は、データベース設計の問題のうち、定番の問題(未完成の概念データモデルと関係スキーマを完成させる問題)から仕上げましょう
- 優先順位 looks_two
- データベース設計(問 2 )の問題を優先させる場合、過去の午後Ⅱの問題をチェックして、よく知らない業務やイメージできない業務のものがあれば、その問題を通じて理解しましょう
- 優先順位 looks_3
- 優先順位 looks_one や 優先順位 looks_two で選ばなかった方の問題にも目を通しましょう(それが午後Ⅰ対策にもなります)。
まとめ
今月はここまでです。
まずは限られた時間を有効に使うために、データベーススペシャリスト試験と、その時間区分ごとの傾向を把握して、どのような対策を立案すべきか … 方向性を考えましょう。
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- 略歴
- 株式会社エムズネット代表。
大阪を主要拠点に活動するIT コンサルタント。 本業のかたわら、大手 SI 企業の SE に対して、資格取得講座や階層教育を担当している。高度区分において脅威の合格率を誇る。 - 保有資格
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- 情報処理技術者試験全区分制覇(累計 32 区分,内高度系 25 区分)
- ITコーディネータ
- 中小企業診断士
- 技術士(経営工学)
- 販売士 1 級
- JAPAN MENSA 会員
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