基本情報技術者試験 午前免除(修了試験)の講評 ~ 2021年12月12日実施
試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、 2021 年 12 月 12 日(日)に実施された基本情報技術者午前免除試験(修了認定に係る試験)の講評をさせていただきます。
今回受験された人は振り返りの題材として、今後受験される人は対策の資料として、参考にしていただければ幸いです。
実施月 | 問題 | 解答 |
---|---|---|
2021 年 12 月 | 問題 | 解答 |
見たことがない問題がとても多かった
今回の試験の内容は、「これまでとはちょっと違う!」という感じです。
ほぼ 100 % が過去問題の再利用であることは、これまでの試験と同様なのですが、見たことがない問題(他の試験区分の問題や、平成21年度春より前の古い基本情報の問題)が、これまで以上に多く出ていました。実際に受験された人は、きっと戸惑われたでしょう。
図 1 に、今回の試験の問 1 ~問 50 (テクノロジ系)の中で、見たことがない問題のテーマと出典(ここでは、出典を 1 つだけ示していますが、複数の試験に出ている問題もあります)を示します。
これまでの試験では、この手の問題は、せいぜい 5 問程度だったのですが、今回は、何とビックリ! 15 問も出ています。
問番号 | テーマ | 出典 |
---|---|---|
問 1 | ビット演算 | 応用情報 H 28 春 問 1 |
問 2 | 標本相関係数 | 基本情報 H 20 春 問 8 |
問 4 | 行列の操作 | 応用情報 H 22 春 問 4 |
問 6 | メッセージの符号化 | 応用情報 H 22 秋 問 2 |
問 9 | Python の特徴 | 応用情報 R 02 秋 問 7 |
問 12 | パイプライン制御 | 応用情報 H 29 秋 問 8 |
問 18 | キャッシュメモリの置換アルゴリズム | 応用情報 H 22 春 問 18 |
問 20 | D/A 変換器の出力 | 応用情報 H 26 秋 問 19 |
問 30 | 回線のビット誤り率 | 応用情報 H 30 春 問 33 |
問 33 | NAPT の仕組み | 応用情報 H 28 秋 問 34 |
問 35 | サーバ証明書を使った TLS 通信 | 応用情報 H 29 春 問 37 |
問 43 | パスワードを不正に取得する攻撃と対策 | セキスペ H 23 春 問 8 |
問 47 | 流れ図における初期値の関係 | 基本情報 H 18 春 問 42 |
問 49 | アジャイル開発のイテレーションの目的 | 応用情報 H 29 春 問 49 |
問 50 | マッシュアップを利用した Web コンテンツの表示 | セキスペ H 27 春 問 23 |
全体の難易度もやや高めだった
試験問題全体(問 1 ~問 80 )の難易度も、これまでの試験よりもやや高めでした。
図 2 は、今回の試験問題の分類と難易度を A, B, C で示したものです。この難易度は、私の講師経験から、
- 受講者のほぼ全員ができるものを A (やさしい)
- 半数ぐらいができるものを B (ふつう)
- ほとんどができないものを C (むずかしい)
としたものです。
分野 | 問題番号 (難易度) |
---|---|
情報の基礎理論 | 問 1(C) 、問 2 (B) 、問 3 (B) 、問 4(C) 、問 6(C) |
アルゴリズム | 問 5 (B) 、問 7(C) 、問 8 (B) |
ハードウェア | 問 11 (B) 、問 12(C) 、問 14 (B) 、問 18 (B) 、問 20(C) 、問 21 (A) 、問 22 (B) |
ソフトウェア | 問 9(C) 、問 10 (B) 、問 17 (A) 、問 19 (B) |
システム構成 | 問 13 (B) 、問 15 (B) 、問 16 (A) |
マルチメディアとヒューマンインタフェース | 問 23 (A) 、問 24 (A) |
データベース | 問 25 (B) 、問 26 (A) 、問 27 (B) 、問 28 (B) 、問 29 (B) |
ネットワーク | 問 30 (B) 、問 31 (A) 、問 32 (A) 、問 33 (A) 、問 34 (B) |
セキュリティ | 問 35 (B) 、問 36 (A) 、問 37 (A) 、問 38 (B) 、問 39 (A) 、問 40 (B) 、問 41 (B) 、問 42(C) 、問 43 (B) 、問 44 (B) |
開発技術 | 問 45 (B) 、問 46 (B) 、問 47(C) 、問 48 (A) 、問 49 (B) 、問 50 (B) |
マネジメント系 | 問 51 (A) 、問 52 (B) 、問 53 (B) 、問 54 (B) 、問 55 (B) 、問 56 (A) 、問 57 (B) 、問 58 (B) 、問 59 (A) 、問 60 (A) |
ストラテジ系 | 問 61 (A) 、問 62 (A) 、問 63 (A) 、問 64 (A) 、問 65 (B) 、問 66 (B) 、問 67 (A) 、問 68 (A) 、問 69 (B) 、問 70 (B) 、問 71 (B) 、問 72 (A) 、問 73 (A) 、問 74 (A) 、問 75 (C) 、問 76 (C) 、問 77 (B) 、問 78 (A) 、問 79 (A) 、問 80 (A) |
全 80 問の難易度を集計すると、
A が 29 問、
B が 40 問、
C が 11 問
です。
A が 90 % できて、 B が 50 % できて、 C が 25 % できる(四択問題なので最低でも 25 % できます)とすれば、 1 問が 1.25 点なので、得点の期待値は、
1.25 点 × ( 29 × 0.9 + 40 × 0.5 + 11 × 0.25 )
≒ 61.1 点
これまでの午前免除試験と比べて、やや低い数字です。
図 3 に近年に実施された午前免除試験の得点の期待値を示します。どの実施日でも、 62 ~ 63 点であり、今回の 61.1 点より 1 ~ 2 点ほど高くなっています。たかが 1 ~ 2 点と思うかもしれませんが、その 1 ~ 2 点が合否に関わる場合が多々あります。
試験実施日 | 難易度 A | 難易度 B | 難易度 C | 得点の期待値 |
---|---|---|---|---|
2020 年 1 月 16 日 |
30 問 | 41 問 | 9 問 | 62.19 点 |
2020 年 6 月 14 日 |
19 問 | 52 問 | 9 問 | 63.75 点 |
2020 年 7 月 26 日 |
20 問 | 50 問 | 10 問 | 63.75 点 |
2020 年 12 月 13 日 |
28 問 | 48 問 | 4 問 | 62.75 点 |
2021 年 1 月 24 日 |
30 問 | 41 問 | 9 問 | 62.19 点 |
2021 年 6 月 13 日 |
28 問 | 48 問 | 4 問 | 62.75 点 |
次の午前免除試験を受ける人へアドバイス
最後に、次の午前免除試験を受ける人へアドバイスをさせていただきます。
次の試験も、今回の試験と同様に「見たことがない問題が多く、難易度もやや高め」という内容になることが予測されます。だからと言って、応用情報や平成 21 年度 春より前の古い基本情報の問題まで練習する必要はありません。
なぜなら、見たことがない問題であっても、その内容が、基本情報のシラバス(情報処理技術者試験における知識・技能の細目を示した資料)の範囲からはずれることはないからです。したがって、試験対策としては、基本情報の過去問題を新しい順に数多く学習すれば OK です。
たとえば、図 4 は、今回の試験の問題で、見たことがない問題の例です。この問題は、基本情報のシラバスにある「 NAPT 」がテーマであり、正解は選択肢ウです。
図 4 見たことがない問題であっても、基本情報のシラバスの範囲からはずれていない
TCP, UDP のポート番号を識別し,プライベート IP アドレスとグローバル IP アドレスとの対応関係を管理することによって,プライベート IP アドレスを使用する LAN 上の複数の端末が,一つのグローバル IP アドレスを共有してインターネットにアクセスする仕組みはどれか。
ア IP スプーフィング
イ IP マルチキャスト
ウ NAPT
エ NTP
ただし、問題の難易度がやや高くなりそうなので、これまで以上に、目標を高く設定してください。
これまでの目標が
「 60 点ギリギリでは危険なので、 70 点取れるようにしておこう」
だったとしたら、それを 5 点アップして
「 75 点取れるようにしておこう」
にしましょう。
そのためには、これまで以上に、できなかった問題を 1 つでも多くできるように練習してください。午前試験の問題を数多く練習すれば、その知識は、午後試験の問題(問 1 ~問 5 )を解くときにも役立ちます。午後試験でも、きっと良い結果が得られるはずです。
以上、試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、試験問題の講評をさせていただきました。
無事に合格できた人は、ここで手を抜かずに、午後試験の学習を始めてください。
残念な結果になってしまった人は、ここで気落ちせずに、次の午前免除試験の合格を目指してください。
皆様のご健闘をお祈り申し上げます!
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大手電気メーカーでPCの製造、ソフトハウスでプログラマを経験。独立後、現在はアプリケーションの開発と販売に従事。その傍ら、書籍・雑誌の執筆、またセミナー講師として活躍。軽快な口調で、知識0ベースのITエンジニアや一般書店フェアなどの一般的なPCユーザの講習ではダントツの評価。
お客様の満足を何よりも大切にし、わかりやすい、のせるのが上手い自称ソフトウェア芸人。
主な著作物
- 「プログラムはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「コンピュータはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「出るとこだけ! 基本情報技術者」 (翔泳社)
- 「ベテランが丁寧に教えてくれる ハードウェアの知識と実務」(翔泳社)
- 「ifとelseの思考術」(ソフトバンククリエイティブ) など多数