基本情報技術者試験 午前免除(修了試験)の講評 ~ 2021年6月13日実施
試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、2021年6月13日(日)に実施された基本情報技術者午前免除試験(修了認定に係る試験)の講評をさせていただきます。今回受験された人は振り返りの題材として、今後受験される人は対策の資料として、参考にしていただければ幸いです。
実施月 | 問題 | 解答 |
---|---|---|
2021 年 6 月 | 問題 | 解答 |
冒頭の難しい問題が目立ったが、難易度はこれまでと同じ
今回の試験問題の内容も、ほぼ 100 % が過去問題の再利用でした。したがって、過去問題を数多く練習していれば、きっと合格点が取れたはずです。
冒頭に難しい問題が集中していて、目立ったかもしれませんが、全体的な難易度は、これまでの試験と同じでした。
以下は、今回の試験問題の分類と難易度を A, B, C で示したものです。この難易度は、私の講師経験から、
- 受講者のほぼ全員ができるものを A (やさしい)
- 半数ぐらいができるものを B (ふつう)
- ほとんどができないものを C (むずかしい)
としたものです。
分野 | 問題番号(難易度) |
---|---|
情報の基礎理論 | 問 1 ( B ) 、問 2 ( C ) 、問 3 ( C ) 、問 4 ( B ) 、問 5 ( B ) 、問 6 ( B ) |
アルゴリズム | 問 7 ( B ) 、問 8 ( C ) 、問 9 ( B ) 、問 10 ( B ) |
ハードウェア | 問 11 ( B ) 、問 12 ( B ) 、問 13 ( B ) 、問 20 ( B ) 、問 21 ( B ) 、問 22 ( B ) |
ソフトウェア | 問 14 ( A ) 、問 17 ( B ) 、問 18 ( B ) 、問 19 ( B ) |
システム構成 | 問 15 ( A ) 、問 16 ( B ) |
マルチメディアとヒューマンインタフェース | 問 23 ( B ) 、問 24 ( A ) |
データベース | 問 25 ( A ) 、問 26 ( A ) 、問 27 ( A ) 、問 28 ( B ) 、問 29 ( A ) |
ネットワーク | 問 30 ( B ) 、問 31 ( B ) 、問 32 ( B ) 、問 33 ( A ) 、問 34 ( B ) |
セキュリティ | 問 35 ( A ) 、問 36 ( B ) 、問 37 ( B ) 、問 38 ( B ) 、問 39 ( A ) 、問 40 ( A ) 、問 41 ( B ) 、問 42 ( A ) 、問 43 ( A ) 、問 44 ( B ) |
開発技術 | 問 45 ( A ) 、問 46 ( A ) 、問 47 ( A ) 、問 48 ( B ) 、問 49 ( A ) 、問 50 ( A ) |
マネジメント系 | 問 51 ( A ) 、問 52 ( B ) 、問 53 ( B ) 、問 54 ( B ) 、問 55 ( B ) 、問 56 ( B ) 、問 57 ( B ) 、問 58 ( A ) 、問 59 ( B ) 、問 60 ( A ) |
ストラテジ系 | 問 61 ( B ) 、問 62 ( B ) 、問 63 ( A ) 、問 64 ( B ) 、問 65 ( B ) 、問 66 ( A ) 、問 67 ( B ) 、問 68 ( B ) 、問 69 ( B ) 、問 70 ( B ) 、問 71 ( B ) 、問 72 ( B ) 、問 73 ( A ) 、 問 74 ( A ) 、 問 75 ( A ) 、問 76 ( A ) 、問 77 ( C ) 、問 78 ( B ) 、問 79 ( B ) 、問 80 ( A ) |
※マネジメント系とストラテジ系は、全体で 1 つの分野にしています。
全80問の難易度を集計すると、
A が 28 問、
B が 48 問、
C が 4 問
です。
A が 90 % できて、 B が 50 % できて、 C が 25 % できる(四択問題なので最低でも 25 % できます)とすれば、 1 問が 1.25 点なので、得点の期待値は、
1.25 点 × ( 28 × 0.9 + 48 × 0.5 + 4 × 0.25 )
= 62.75 点
になり、ギリギリですが合格点の 60 点を超えています。
以下は、近年の午前免除試験の得点の期待値です。今回の 62.75 点という期待値は、これまでの試験と同じです。
試験実施日 | 難易度A | 難易度B | 難易度C | 得点の期待値 |
---|---|---|---|---|
2020 年 1 月 16 日(日) | 30 問 | 41 問 | 9 問 | 62.19 点 |
2020 年 6 月 14 日(日) | 19 問 | 52 問 | 9 問 | 63.75 点 |
2020 年 7 月 26 日(日) | 20 問 | 50 問 | 10 問 | 63.75 点 |
2020 年 12 月 13 日(日) | 28 問 | 48 問 | 4 問 | 62.75 点 |
2021 年 1 月 24 日(日) | 30 問 | 41 問 | 9 問 | 62.19 点 |
2021 年 6 月 13 日(日) | 28 問 | 48 問 | 4 問 | 62.75 点 |
見たことがない問題でも、知識を総動員すれば何とかなる
試験問題の内容は、ほぼ 100 % が過去問題の再利用なのですが、毎回 2 ~ 3 問くらいは「こんな問題を見たことがない!」という問題もあります。それらは、基本情報技術者試験ではなく、他の試験区分の過去問題だからです。
今回の試験では、以下の問題です。問 8 と問 34 は、応用情報技術者試験の過去問題です。問 38 は、情報セキュリティマネジメント試験の過去問題です。
自然数をキーとするデータを,ハッシュ表を用いて管理する。キー x のハッシュ 関数 h(x) を
とすると,任意のキー a と b が衝突する条件はどれか。ここで, n はハッシュ表の 大きさであり, x mod n は x を n で割った余りを表す。
ア a + b が n の倍数 イ a – b が n の倍数
ウ n が a + 6 の倍数 エ n が a – b の倍数
TCP/IP ネットワークにおける RARP の機能として,適切なものはどれか。
- ア
- IP パケットが通信先の IP アドレスに到達するかどうかを調べる。
- イ
- MAC アドレスから IP アドレスを求める。
- ウ
- ドメイン名とホスト名から IP アドレスを求める。
- エ
- プライベート IP アドレスとグローバル IP アドレスを相互に変換する。
リバースブルートフォース攻撃に該当するものはどれか。
- ア
- 攻撃者が何らかの方法で事前に入手した利用者 ID とパスワードの組みのリストを使用して,ログインを試行する。
- イ
- パスワードを一つ選び、利用者 ID として次々に文字列を用意して総当たりにログインを試行する。
- ウ
- 利用者 ID,及びその利用者 ID と同一の文字列であるパスワードの組みを次々に生成してログインを試行する。
- エ
- 利用者 ID を一つ選び、パスワードとして次々に文字列を用意して総当たりにログインを試行する。
基本情報技術者試験の午前免除試験を受けるために、他の試験区分の過去問題まで練習する必要はありません。したがって、この手の問題は、対処のしようがありません。
ただし、基本情報技術者試験の過去問題の練習で得た知識を総動員すれば、正解できる場合も多々あります。「見たことないからできない」とあきらめずに、「見たことないけれど何とかしよう」と思ってください。
以下に、何とかする例を示します。
問 8 を何とかする
数学的に答えを導くのではなく、 a と b と n にシンプルな具体例を想定して、それが成り立つ選択肢を選べば解けます。
ここでは、 n に 3 を想定します。そして、 a mod 3 と b mod 3 が衝突する(同じ値になる)具体例として、
a に 10 ( 10 mod 3 = 1 ) 、
b に 4 ( 4 mod 3 = 1 )
を想定します。
これらの具体例を選択肢に当てはめると、以下のようになります。
- ア
- 10 + 4 が 3 の倍数 ・・・成り立たない
- イ
- 10 – 4 が 3 の倍数 ・・・成り立つ
- ウ
- 3 が 10 + 4 の倍数 ・・・成り立たない
- エ
- 3 が 10 – 4 の倍数 ・・・成り立たない
成り立つのは、選択肢イだけなので、選択肢イが正解です。もしも、想定した具体例で答えを 1 つに絞り込めない場合は、別の具体例を想定してください。
問 34 を何とかする
基本情報技術者試験の過去問題を練習していれば、「 ARP 」というネットワーク用語に関する問題に遭遇したことがあるでしょう。
ARP( Address Resolution Protocol 、アープ)は、 IP アドレスから MAC アドレスを求めます。
この問題は、
TCP/IP ネットワークにおける
と言っているので、「 RARP 」という聞いたことがない用語は、ネットワーク用語であり、おそらく ARP に関連したものでしょう。そう考えて、選択肢を見てみましょう。
選択肢イの「 MAC アドレスから IP アドレスを求める」は、 ARP と逆の機能です。ここで「 R は、 Reverse = 逆、という意味だ!」とピンと来るはずです。選択肢イを選んでください。それで、正解です。
問 38 を何とかする
この問題を何とかする方法も、問 34 と同様です。基本情報の過去問題を練習していれば、セキュリティの分野で「ブルートフォース攻撃」という用語に関する問題に遭遇したことがあるでしょう。
ブルートフォース( brute force = 力任せ)攻撃は、様々な文字列をパスワードとして試行することを繰り返して、不正アクセスを行う攻撃です。
この問題の「リバースブルートフォース攻撃」は、ブルートフォースに「リバース( reverse = 逆)」という言葉が付いています。ブルートフォースの「逆」と考えて、選択肢を見ると、選択肢イの
パスワードを一つ選び、利用者 ID として次々に文字列を用意して総当たりにログインを試行する
が正解だとわかります。
解答 問 8 - イ 問 34 - イ 問 38 - イ
難しくて奇抜な過去問題であっても、きちんと練習しておこう
基本情報技術者試験の過去問題を練習していると、「こんな難しくて奇抜な問題は、何度も出ないだろう」と思う問題に遭遇することがあります。ところが、そういう問題であっても、出題されることがあるのです。
今回の試験では、以下の問題です。
a 及び b を定数とする関数 及び に対して, はどれか。ここで,a ≠ 0,b ≠ 0,t > 1 とする。
ア 0 イ 1 ウ エ ∞
関数 f(x) は,引数も戻り値も実数型である。この関数を使った, 1. ~ 5. から成る手続を考える。手続の実行を開始してから 2. ~ 5. を十分に繰り返した後に, 3. で表示される y の値に変化がなくなった。このとき成立する関係式はどれか。
- x ← a
- y ← f(x)
- y の値を表示する。
- x ← y
- 2. に戻る。
ア f(a) = y イ f(y) = 0 ウ f(y) = a エ f(y) = y
家庭用の 100 V 電源で動作し,運転中に 10 A の電流が流れる機器を,図のとおりに 0 分から 120 分まで運転した。このとき消費する電力量は何 Wh か。ここで,電圧及び電流の値は実効値であり、停止時に電流は流れないものとする。また、力率は 1 とする。
ア 1,000 イ 1,200 ウ 1,500 エ 2,000
過去問題は、「難しいか易しいか」「奇抜か普通か」に関わらず、同じ問題が何度も出題されます。難しくて奇抜な過去問題であっても、きちんと練習しておきましょう。それが、確実に得点をアップする秘訣です。
自分で解き方がわからなくても、過去問題であれば、インターネットを検索すれば、解き方を示した記事が見つかるはずです。この記事も、その 1 つですから、解き方を示しておきましょう。
問 2 の解き方
以下の手順を何度も繰り返し練習して、丸暗記ではなく、納得して覚えてください。
手順 1g(t) / f(t)に、それぞれの関数の計算式を入れて、式を整理します。
手順 2この式のまま、t → ∞ にすると、 ∞ / ∞ になります。これは、値の定まらない「不定形」です。選択肢には、不定形がありません。
手順 3そこで、分母にある項の最大次数である t2 で、分母と分子を割って、式を整理します。
手順 4この式で、t → ∞ にすると、
b / t = b / ∞ = 0 ,
b / t2 = b / ∞2 = 0 ,
a / t = a / ∞ = 0
になるので、式のそれぞれの部分を 0 に置き換えて、式を整理します。
手順 50 / aという式になりました。 a ≠ 0 なのですから、 0 / a = 0 です。したがって、選択肢アが正解です。
問 3 の解き方
この問題は、関数 f(x) の処理内容が示されていないので、具体例を想定して解くことはできません。正解は、選択肢エの f(y) = y なのですが、どうしてそうなるのか、以下に理由を示しますので、これも、丸暗記ではなく、納得して覚えてください。
理由2. ~ 5. を繰り返すと、
- f(x) の戻り値を求める
- その値を表示
- その値を引数として f(x) を呼び出す
となります。
2. ~ 5. を十分に繰り返して、 f(x) の戻り値が変化しなくなったのですから、 f(x) の戻り値が x と同じ値になったのです。したがって、 f(x)=x です。
選択肢には、 f(x) = x がありませんが、選択肢エの f(y) = y が同じ意味なので、選択肢エが正解です。
問 22 の解き方
電力量に関しては、中学の理科の時間に教わったはずですが、忘れている人も多いでしょう。以下に、説明を示しますので、思い出してください。
- 電力とは?
- 電力 = 電圧 × 電流 であり、 W (ワット) という単位で示します。
- 電力量とは?
- 電力量 = 電力 × 時間 であり、 Wh (ワットアワー) という単位で示します。
思い出したら、問題を解けるでしょう。
電圧が 100 V で電流が 10 A なのですから、電力は、
100 V × 10 A = 1000 W
です。問題に示された図を見ると、全部で
90 分間 = 1.5 時間 = 1.5 h
だけ機器を運転しています。したがって、電力量は、
1000 W × 1.5 h = 1500 Wh
であり、選択肢ウが正解です。問題文に示された実効値や力率は、このような単純な計算で OK とするための補足なので、気にする必要はありません。
解答 問 2 - ア 問 3 - エ 問 22 - ウ
以上、試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、試験問題の講評をさせていただきました。
無事に合格できた人は、ここで手を抜かずに、午後試験の学習を始めてください。
残念な結果になってしまった人は、ここで気落ちせずに、次の午前免除試験の合格を目指してください。
皆様のご健闘をお祈り申し上げます!
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