基本情報技術者試験 午前免除(修了試験)の講評 ~ 2020年12月13日実施
試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、 2020 年 12 月 13 日(日)に実施された基本情報技術者午前免除試験(修了認定に係る試験)の講評をさせていただきます。
今回受験された人はふりかえりの題材として、今後受験される人は対策の資料として、参考にしていただければ幸いです。
実施月 | 問題 | 解答 |
---|---|---|
2020 年 12 月 | 問題 | 解答 |
もくじ
ちゃんと勉強していれば合格できたはずです
これまでと同様に、今回の試験問題の内容も、ほぼ 100% が過去問題の再利用でした。したがって、ちゃんと勉強していれば、きっと合格点が取れたはずです。
以下は、今回の試験問題の分類と難易度を A, B, C で示したものです。この難易度は、私の講師経験から、
- 受講者のほぼ全員ができるものを A (やさしい)
- 半数ぐらいができるものを B (ふつう)
- ほとんどができないものを C (むずかしい)
としたものです。
分野 | 問題番号(難易度) |
---|---|
情報の基礎理論 | 問2(B)、 問3(B)、 問4(B)、 問5(B) |
アルゴリズム | 問1(B)、 問6(B)、 問7(A)、 問8(B)、 問9(B)、 問10(A) |
ハードウェア | 問11(C)、 問12(C)、 問13(B)、 問14(B)、 問20(A)、 問21(A)、 問22(B) |
ソフトウェア | 問17(B)、 問19(A) |
システム構成 | 問15(A)、 問16(B)、 問18(B) |
マルチメディアとヒューマンインタフェース | 問23(B)、 問24(B) |
データベース | 問25(A)、 問26(B)、 問27(B)、 問28(B)、 問29(B) |
ネットワーク | 問30(B)、 問31(B)、 問32(B)、 問33(A)、 問34(A) |
セキュリティ | 問35(B)、 問36(A)、 問37(B)、 問38(A)、 問39(B)、 問40(B)、 問41(A)、 問42(B)、 問43(B)、 問44(A) |
開発技術 | 問45(A)、 問46(B)、 問47(B)、 問48(A)、 問49(B)、 問50(A) |
マネジメント系 | 問51(C)、問52(B)、問53(B)、問54(B)、問55(A)、問56(B)、問57(B)、問58(A)、問59(A)、問60(A) |
ストラテジ系 | 問61(B)、問62(B)、問63(B)、問64(B)、問65(B)、問66(A)、問67(A)、問68(A)、問69(B)、問70(B)、問71(B)、問72(B)、問73問(A)、74問(A)、75問(A)、問76(B)、問77(C)、問78(A)、問79(A)、問80(B) |
※マネジメント系とストラテジ系は、全体で 1 つの分野にしています。
全 80 問の難易度を集計すると、
A が 28 問、
B が 48 問、
C が 4 問
です。
A が 90 % できて、 B が 50 % できて、 C が 25 % できる(四択問題なので最低でも 25 % できます)とすれば、 1 問が 1.25 点なので、得点の期待値は、
1.25 点 × ( 28 × 0.9 + 48 × 0.5 + 4 × 0.25 )
= 62.75 点
になり、ギリギリですが合格点の 60 点を超えています。ですから「ちゃんと勉強していれば合格できたはず」なのです。
受講者のほぼ全員ができる A (やさしい) の問題の例
今回の試験問題の中から、 A, B, C の具体例をあげてみましょう。まず、受講者のほぼ全員ができる A の問題です。
もしも、このレベルの問題ができないなら「ちゃんと勉強」していないということです。今後の勉強方法や勉強時間を大いに見直してください。
プロダクトライフサイクルにおける成熟期の特徴はどれか。
- ア
- 市場が商品の価値を理解し始める。商品ラインもチャネルも拡大しなければならない。この時期は売上も伸びるが,投資も必要である。
- イ
- 需要が大きくなり,製品の差別化や市場の細分化が明確になってくる。競争者間の競争も激化し,新品種の追加やコストダウンが重要となる。
- ウ
- 需要が減ってきて,撤退する企業も出てくる。この時期の強者になれるかどうかを判断し,代替市場への進出なども考える。
- エ
- 需要は部分的で,新規需要開拓が勝負である。特定ターゲットに対する信念に満ちた説得が必要である。
ちゃんと勉強していれば、「プロダクトライフサイクル」をテーマにした問題を何度か目にしているはずです。
ちゃんと勉強していれば、プロダクトライフサイクルが「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の 4 つに分類されることを知っているはずです。
そして、
ちゃんと勉強していれば、「基本情報技術者試験の問題は、裏をかくことなく常識的な判断で正解を選べる」ということを実感しているはずです。
常識的な判断で、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」を選択肢に割り当ててみましょう。
- 選択肢ア
- 「市場が商品の価値を理解し始める」ということから「成長期」が適切です。
- 選択肢イ
- 「競争者間の競争が激化し」ということから「成熟期」が適切です。
- 選択肢ウ
- 「需要が減ってきて、撤退する企業も出てくる」ということから「衰退期」が適切です。
- 選択肢エ
- 「需要は部分的で、新規需要開拓が勝負である」ということから「導入期」が適切です。
したがって、答えは、選択肢イです。
解答イ
半数ぐらいができる B (ふつう)の問題の例
次は、受講者の半数ぐらいができる B の問題です。もしも、このレベルの問題ができないなら、何度も繰り返し練習して克服してください。このレベルの問題ができるかどうかが、合否の分かれ目になるからです。
8 ビットのビット列の下位 4 ビットが変化しない操作はどれか。
- ア
- 16 進表記 0F のビット列との排他的論理和をとる。
- イ
- 16 進表記 0F のビット列との否定論理積をとる。
- ウ
- 16 進表記 0F のビット列との論理積をとる。
- エ
- 16 進表記 0F のビット列との論理和をとる。
この問題を解くには、
- 「16進数を2進数に変換する」という知識
- 2進数を桁ごとに論理演算する「ビット演算」の知識
が必要になります。どちらも「それが苦手です!」という受験者が多いテーマです。
0F という 16 進数を 2 進数に変換すると、 00001111 になります。
8 ビットのビット列と 00001111 で、排他的論理和(XOR)、否定論理積(NAND)、論理積(AND)、論理和(OR)を行った結果は、以下のようになります。
ここでは、 8 ビットのビット列の具体例を 01010101 にしています。
図 01010101 と 00001111 のビット演算の結果
01010101 XOR 00001111 ------------- 01011010下位 4 ビットが変化している
01010101 NAND 00001111 ------------- 11111010下位 4 ビットが変化している
01010101 AND 00001111 ------------- 00000101下位 4 ビットが変化していない
01010101 OR 00001111 ------------- 01011111下位 4 ビットが変化している
01010101 の下位 4 ビットが変化していないのは、論理積( AND )です。したがって、答えは、選択肢ウです。
解答ウ
1 割ぐらいの人しかできない C (むずかしい)の問題の例
最後に、ほどんどの受験者ができない C の問題です。もしも、このレベルの問題ができなくても、気にしないでください。 100 点満点で 60 点以上取れれば合格なのですから、少しくらいできない問題があっても合否には影響しないからです。
メイン処理,及び表に示す二つの割込み A,B の処理があり,多重割込みが許可されている。割込み A,B が図のタイミングで発生するとき, 0 ミリ秒から 5 ミリ秒までの間にメイン処理が利用できる CPU 時間は何ミリ秒か。ここで,割込み処理の呼出し及び復帰に伴うオーバヘッドは無視できるものとする。
割込み | 処理時間(ミリ秒) | 割込み優先度 |
---|---|---|
A | 0.5 | 高 |
B | 1.5 | 低 |
ア 2 イ 2.5 ウ 3.5
エ 5「こんなのわからないよ!」と言いたくなるような問題かもしれませんが、内容は、いたってシンプルです。「割り込み」と「割り込みの優先度」が何であるかを知っていれば、問題を解くことができます。
コンピュータの CPU は、プログラムの内容を解釈・実行します。ある時点で解釈・実行しているプログラムを、問題に合わせて「メイン処理」と呼ぶことにしましょう。
CPU には、メイン処理を中断して、他のプログラムを実行し、再びメイン処理に戻る機能があります。これが「割り込み」です。
複数の割り込みが発生した場合は、優先度が高い方が先に実行されます。これが「割り込みの優先度」です。
この問題では、メイン処理の実行中に、割り込み A と割り込み B が発生します。 A の方が B より優先度が高いので、 B の処理中に A が発生すると、 A の処理が行われます。
以下は、問題に示された図に、 A と B の処理を書き込んだものです。赤色が A で、青色が B です。
図の 0 ミリ秒から 5 ミリ秒の間で、 A と B のどちらの処理も行っていない部分では、メイン処理が行われます。それは、全部で 2 ミリ秒あります。したがって、答えは、選択肢アです。
解答ア
直前対策講座でヤマを張った問題の 18 % が的中
私は、今回の午前免除試験の直前対策講座で、以下の 2 つの資料を受講者に配布して、問題演習と解説を行いました。つまり、この 80 問 + 20 問 = 100 問で、ヤマを張ったわけです。はたして、このヤマは、どれだけ的中したでしょうか?
- attach_file配布資料 1
- 近年の午前問題 1 回分( 80 問)
- attach_file配布資料 2
- よく出る問題と用語 Top 20( 20 問)
以下は、今回の試験問題の分類と難易度で、ヤマが的中した問題(まったく同じ問題、もしくは、同じ知識で解ける問題)を赤色で示したものです。
分野 | 問題番号(難易度) |
---|---|
情報の基礎理論 | 問2(B)、 問3(B)、 問4(B)、 問5(B) |
アルゴリズム | 問1(B)、 問6(B)、問7(A)、 問8(B)、 問9(B)、 問10(A) |
ハードウェア | 問11(C)、 問12(C)、 問13(B)、 問14(B)、問20(A)、 問21(A)、問22(B) |
ソフトウェア | 問17(B)、 問19(A) |
システム構成 | 問15(A)、 問16(B)、 問18(B) |
マルチメディアとヒューマンインタフェース | 問23(B)、 問24(B) |
データベース | 問25(A)、 問26(B)、 問27(B)、 問28(B)、 問29(B) |
ネットワーク | 問30(B)、 問31(B)、 問32(B)、 問33(A)、 問34(A) |
セキュリティ | 問35(B)、 問36(A)、 問37(B)、 問38(A)、 問39(B)、 問40(B)、 問41(A)、 問42(B)、 問43(B)、 問44(A) |
開発技術 | 問45(A)、 問46(B)、 問47(B)、 問48(A)、 問49(B)、 問50(A) |
マネジメント系 | 問51(C)、問52(B)、問53(B)、問54(B)、問55(A)、問56(B)、問57(B)、問58(A)、問59(A)、問60(A) |
ストラテジ系 | 問61(B)、問62(B)、問63(B)、問64(B)、問65(B)、問66(A)、問67(A)、問68(A)、問69(B)、問70(B)、問71(B)、問72(B)、問73問(A)、74問(A)、75問(A)、問76(B)、問77(C)、問78(A)、問79(A)、問80(B) |
全 80 問中、 14 問(約 18 % )が的中しました。
ヤマが的中した問題が 90 % できるとして、得点の期待値を計算し直すと、
1.25 点 × ( 36 × 0.9 + 40 × 0.5 + 4 × 0.25 ) = 66.75点
になり、余裕を持って合格点の 60 点を超えました。
ちょっと宣伝になってしまいますが、私の講座に限らず、試験の専門家による直前対策講座には、十分に効果があると思いますので、機会がありましたら、ぜひご参加ください。
以上、試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、試験問題の講評をさせていただきました。
無事に合格できた人は、ここで手を抜かずに、午後試験の学習を始めてください。
残念な結果になってしまった人は、ここで気落ちせずに、次の午前免除試験の合格を目指してください。皆様のご健闘をお祈り申し上げます!
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- 「ベテランが丁寧に教えてくれる ハードウェアの知識と実務」(翔泳社)
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