基本情報技術者試験 午前免除試験(修了試験)の講評 ~ 2023年1月22日実施


2023-01-24 更新

試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、 2023 年 1 月 22 日(日)に実施された基本情報技術者午前免除試験(修了認定に係る試験)の講評をさせていただきます。

今回受験された人は振り返りの題材として、今後受験される人は対策の資料として、参考にしていただければ幸いです。

実施月 問題 解答
2023 年 1 月 問題 解答

他の試験区分や古い問題がとても多かった

今回の試験も、前回( 2022 年 12 月 11 日に実施)の試験と同様に、基本情報技術者試験に出たことがない問題がとても多くありました。 これらは、他の試験区分(応用情報技術者試験や情報セキュリティマネジメント試験など)や、とても古い問題( IPA の Web ページで公開されている H 21 春よりも古い問題)です。

図 1 に、今回のテクノロジ系の問題の中で、他の試験区分や、とても古い問題だったものを示します。

2021 年 7 月 25 日以降の午前免除試験では、この手の問題が 10 問(全体の 12.5 %)程度出ることが定番化していたのですが、前回は 19 問であり、今回は 22 問もありました。 テクノロジ系全 50 問中の 22 問ですから 44 % です。 今回の試験を受けた人は、問題を見てビックリしたでしょう。

図 1 今回のテクノロジ系の問題の中で他の試験区分や古い問題だったもの
番号 問題のテーマ 問題の出典
問 5 パリティチェックの論理式 H 19 春 基本情報技術者試験
問 7 2 分木のテキスト表現 H 12 春 第二種情報処理技術者試験 info
問 8 関数の再帰呼び出し H 17 秋 基本情報技術者試験
問 9 線形探索の平均比較回数 H 24 春 応用情報技術者試験
問 15 仮想サーバのライブマイグレーション H 28 春 応用情報技術者試験
問 22 ADPCM による音声データのデータ量 H 28 秋 応用情報技術者試験
問 23 ニモニックコード H 31 春 応用情報技術者試験
問 24 CG のワイヤーフレーム表現 H 22 春 応用情報技術者試験
問 25 データベースの表の関連付け H 19 春 基本情報技術者試験
問 29 データベースの排他制御 H 30 秋 応用情報技術者試験
問 31 ルータの機能 H 28 秋 応用情報技術者試験
問 33 サブネットマスクからホストアドレスを求める式 H 27 秋 応用情報技術者試験
問 35 2 要素認証 H 29 春 情報セキュリティマネジメント試験
問 36 オープンリダイレクトを悪用した攻撃 R 03 秋 情報セキュリティマネジメント試験
問 37 従量課金制のクラウドービスにおける EDoS 攻撃 H 30 秋 情報セキュリティマネジメント試験
問 39 リバースブルートフォース攻撃 R 01 秋 情報セキュリティマネジメント試験
問 41 IoT デバイスの耐タンパ性の実装技術 R 03 秋 応用情報技術者試験
問 43 WAF の設置場所 H 27 秋 応用情報技術者試験
問 44 クロスサイトスクリプティング対策 H 30 秋 応用情報技術者試験
問 45 ソフトウェアの使用性 H 26 春 応用情報技術者試験
問 47 バグ埋込み法によるバグ数の推定 H 20 秋 基本情報技術者試験
問 48 図に示すテスト工程品質管理図 H 18 秋 基本情報技術者試験
info 第二種情報処理技術者試験は、旧制度の試験区分であり、現在の基本情報技術者試験に相当します。

難易度もやや高かった

問題の全体(問 1 ~問 80 )の難易度は、どうだったでしょう。

図 2 は、今回の試験問題の分類と難易度を A, B, C で示したものです。 この難易度は、私の講師経験から、

  • 受講者のほぼ全員ができるものを A (やさしい)
  • 半数ぐらいができるものを B (ふつう)
  • ほとんどができないものを C (むずかしい)

としたものです。

図 2  今回の試験の問題の分類と難易度
分野 問題番号(難易度)
情報の基礎理論 問 1 (B) 、問 2 (B) 、問 3 (B) 、問 4 (C) 、問 5 (C)
アルゴリズム 問 6 (B) 、問 7 (B) 、問 8 (B) 、問 9 (C)
ハードウェア 問 11 (B) 、問 12 (A) 、問 13 (B) 、問 14 (B) 、問 20 (B) 、問 21 (A)
ソフトウェア 問 10 (B) 、問 17 (B) 、問 18 (A) 、問 19 (B)
システム構成 問 15 (B) 、問 16 (A)
マルチメディアとヒューマンインタフェース 問 22 (B) 、問 23 (B) 、問 24 (B)
データベース 問 25 (B) 、問 26 (A) 、問 27 (A) 、問 28 (A) 、問 29 (B)
ネットワーク 問 30 (B) 、問 31 (A) 、問 32 (A) 、問 33 (C) 、問 34 (B)
セキュリティ 問 35 (B) 、問 36 (B) 、問 37 (B) 、問 38 (B) 、問 39 (B) 、問 40 (B) 、問 41 (B) 、問 42 (B) 、問 43 (C) 、問 44 (B)
開発技術 問 45 (B) 、問 46 (A) 、問 47 (C) 、問 48 (C) 、問 49 (A) 、問 50 (A)
マネジメント系 info 問 51 (B) 、問 52 (A) 、問 53 (B) 、問 54 (B) 、問 55 (A) 、問 56 (A) 、問 57 (B) 、問 58 (B) 、問 59 (A) 、問 60 (A)
ストラテジ系 info 問 61 (A) 、問 62 (A) 、問 63 (B) 、問 64 (B) 、問 65 (B) 、問 66 (A) 、問 67 (A) 、問 68 (A) 、問 69 (B) 、問 70 (B) 、問 71 (B) 、問 72 (C) 、問 73 (B) 、問 74 (A) 、問 75 (C) 、問 76 (C) 、問 77 (B) 、問 78 (A) 、問 79 (A) 、問 80 (B)
infoマネジメント系とストラテジ系は、全体を 1 つの分野にしています。

全 80 問の難易度を集計すると、

A が 25 問、
B が 45 問、
C が 10 問

です。

A が 90 % できて、 B が 50 % できて、 C が 25 % できる(四択問題なので最低でも 25 % できます)とすれば、 1 問が 1.25 点なので、得点の期待値は、

1.25 点 × ( 25 × 0.9 + 45 × 0.5 + 10 × 0.25 )
= 59.375 点

です。 合格点の 60 点に達していません。

前回を除く過去 10 回の午前免除試験の得点の期待値は、 61.10 点~ 64.13 点(どの回も合格点に達しています)だったので、今回の試験は、前回と同様に(前回の期待値は 59.75 点でした)、やや難しかったと言えます。

次回の試験に向けての対策 1

次回から、試験制度の変更に合わせて、午前免除試験は、科目 A 免除試験に変わります。

「問題の内容も大幅に変わるのではないか?」と心配している人がいるかもしれませんが、そのようなことはないようです。 なぜなら、 2022 年 12 月 26 日に情報処理推進機構から公開された新制度のサンプル問題セットを見ると、科目 A 試験の内容は、従来の午前試験と同様であり、ほとんどが従来の試験の過去問題の再利用だからです。 他の試験区分の問題の再利用は、全 60 問中 9 問であり全体の 15 % に過ぎません

info_outline科目 A 試験 サンプル問題セットの解説記事

科目 A 試験対策は過去問演習|科目 A 試験・科目 B 試験サンプル問題セットからわかる傾向と対策 (1)

したがって、試験対策としては、現在公開されている H 21 春期~ R 01 秋期の基本情報技術者試験の過去問題を数多く練習すれば OK です。 まったく同じ問題が再利用されるのですから「できない問題があったら、できるようになるまで練習する」ということが、最も効率的かつ効果的な学習方法です。

次回の試験に向けての対策 2

試験当日に、他の試験区分や古い問題に遭遇した場合は、

「基本情報技術者試験のシラバス(情報処理技術者試験における知識・技能の細目を示した資料)の範囲を超えた問題が出るはずがない。 自分はちゃんと勉強してきたのだから、自分が持つ知識で正解できるはずだ」

と自信を持って取り組んでください。

自分が持つ知識で、他の試験区分の問題を解く例を示しましょう。

以下は、今回の試験の問 22 です。 これは応用情報技術者試験の過去問題であり、基本情報技術者試験に出たことがない「 ADPCM 」という言葉があります。

問 22

音声を標本化周波数 10 kHz ,量子化ビット数 16 ビットで 4 秒間サンプリングして音声データを取得した。 この音声データを,圧縮率 1/4 の ADPCM を用いて圧縮した場合のデータ量は何 k バイトか。ここで, 1 k バイトは 1,000 バイトとする。

ア 10  イ 20  ウ 80  
エ 160

まったく同じではなくても、同様のテーマの問題が、基本情報技術者試験に出題されています。 以下は、平成 28 年度春期の問 4 です。

問 22 平成 28 年度 春期

PCM 方式によって音声をサンプリング(標本化)して 8 ビットのディジタルデータに変換し,圧縮せずにリアルタイムで転送したところ,転送速度は 64,000 ビット /秒であった。このときのサンプリング間隔は何マイクロ秒か。

ア 15.6  イ 46.8  
ウ 125  エ 128

「 ADPCM 」という言葉はありませんが、それに似た「 PCM 」という言葉があります。 PCM( Pulse Code Modulation )と ADPCM ( Adaptive Differential Pulse Code Modulation )の違いは、 PCM ではデータを圧縮しませんが、 ADPCM ではデータを圧縮することです。

 

まず、基本情報技術者試験の過去問題を解いてみましょう。

1 秒間に 64,000 ビットを送り、 1 つのデータが圧縮なしで 8 ビットなのですから、 1 秒間のサンプリング回数は、

keyboard_arrow_right64,000 ÷ 8 = 8,000 回

です。

サンプリング間隔は、

keyboard_arrow_right1 ÷ 8,000 = 0.000125 秒 = 125 マイクロ秒

です。したがって、選択肢ウが正解です。

 

それでは、今回の午前免除試験の問題(応用情報技術者試験の過去問題)を解いてみましょう。

標本化周波数 10 kHz ですから、 1 秒間に 10 k 回のサンプリングを行います。
量子化ビット数 16 ビット = 2 バイトで、 4 秒間のサンプリングを行うのですから、データ量は

keyboard_arrow_right2 × 10 k × 4 = 80 kバイト

です。

このデータを 1/4 に圧縮するので、データ量は

keyboard_arrow_right80 k バイト ÷ 4 = 20 k バイト

です。したがって、選択肢イが正解です。

いかがですか。 「自分が持つ知識で正解できるはずだ」と自信を持って解けば、ちゃんと解けたでしょう。

以上、試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、試験問題の講評をさせていただきました。

今回の午前免除試験に合格できた人は、ここで気を緩めずに、科目 B 試験の学習を始めてください。 残念な結果になってしまった人は、ここで気落ちせずに、次回の科目 A 免除試験に向けて学習を続けてください。

いずれの場合も、コツコツと学習を続けていれば、必ず良い結果が得られるはずです。 皆様のご健闘をお祈り申し上げます!

 

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