基本情報技術者試験 科目 A 免除試験 (旧 午前免除試験) (修了試験)の講評 ~ 2022年12月11日実施


2022-12-13 更新

試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、 2022 年 12 月 11 日(日)に実施された基本情報技術者科目 A 免除試験(修了認定に係る試験)の講評をさせていただきます。

今回受験された人は振り返りの題材として、今後受験される人は対策の資料として、参考にしていただければ幸いです。

実施月 問題 解答
2022 年 12 月 問題 解答

見たことがない問題がとても多かった

今回の試験を受けた人は、問題の内容にビックリしたでしょう。 ふつうに過去問題を練習しただけでは、見たことがない問題が、とても多かったからです。 これらは、他の試験区分(主に応用情報技術者試験)や古い問題( IPA の Web ページで公開されている H 21 春期 より古い問題)です。

図 1 は、今回のテクノロジ系の問題の中で、他の試験区分や古い問題だったものです。 2021 年 7 月 25 日以降の科目 A 免除試験(実施当時は、午前免除試験)では、この手の問題が 10 問程度出ることが定番化しているのですが、今回は 19 問もありました。 テクノロジ系全 50 問中の 19 問ですから 38 % です。 これには、ビックリして当然です。

図 1 今回のテクノロジ系の問題の中で他の試験区分や古い問題だったもの
番号 問題のテーマ 問題の出典
問 2 M/M/1 の待ち行列モデル R01 秋期 応用情報技術者試験など
問 7 グラフを隣接行列で表す H29 秋期 応用情報技術者試験など
問 9 配列処理のフローチャート H16 春期 基本情報技術者試験など
問 12 クロック周期と CPI H24 春期 応用情報技術者試験など
問 17 タスク間共有変数による同期制御 H17 秋期 基本情報技術者試験など
問 20 リトルエンディアンのメモリ配置 H29 春期 応用情報技術者試験など
問 25 SQL の GRANT 文の説明 R02 秋期 応用情報技術者試験など
問 26 関係データモデルとエンティティ H21 秋期 応用情報技術者試験など
問 29 データベースの障害復旧 H20 秋期 基本情報技術者試験など
問 31 TCP/IP ネットワークの ARP の説明 R01 秋期 応用情報技術者試験など
問 32 ping が用いるプロトコル H29 春期 応用情報技術者試験など
問 33 イーサネットと IP の宛先情報 H26 秋期 応用情報技術者試験など
問 34 無線 LAN の周波数チャネル番号 R03 春期 応用情報技術者試験など
問 36 リスクベース認証の特徴 H31 春期 応用情報技術者試験など
問 39 DMZ に配置するもの R03 秋期 応用情報技術者試験など
問 40 S/MIME の機能 H26 秋期 応用情報技術者試験など
問 42 VPN のセキュアなプロトコル H31 春期 応用情報技術者試験など
問 47 処理区分を判定する比較回数 H12 秋期 第二種情報処理技術者試験 info など
問 50 バーンダウンチャート H31 春期 応用情報技術者試験など
info 第二種情報処理技術者試験は、旧制度の試験区分であり、現在の基本情報技術者試験に相当します。

難易度もやや高かった

問題の全体(問 1 ~問 80 )の難易度は、どうだったでしょう。

図 2 は、今回の試験問題の分類と難易度を A, B, C で示したものです。 この難易度は、私の講師経験から、

  • 受講者のほぼ全員ができるものを A (やさしい)
  • 半数ぐらいができるものを B (ふつう)
  • ほとんどができないものを C (むずかしい)

としたものです。

図 2  今回の試験の問題の分類と難易度
分野 問題番号(難易度)
情報の基礎理論 問 1 (B), 問 2 (C), 問 3 (C), 問 4 (C), 問 5 (A), 問 6 (B)
アルゴリズム 問 7 (C), 問 8 (A), 問 9 (C), 問 10 (B)
ハードウェア 問 11 (B), 問 12 (B), 問 13 (C), 問 14 (B), 問 20 (B), 問 21 (B), 問 22 (B)
ソフトウェア 問 17 (C), 問 18 (A), 問 19 (A)
システム構成 問 15 (B), 問 16 (C)
マルチメディアとヒューマンインタフェース 問 23 (A), 問 24 (B)
データベース 問 25 (B), 問 26 (B), 問 27 (B), 問 28 (B), 問 29 (B)
ネットワーク 問 30 (A), 問 31 (B), 問 32 (B), 問 33 (B), 問 34 (C)
セキュリティ 問 35 (A), 問 36 (B), 問 37 (A), 問 38 (B), 問 39 (B), 問 40 (A), 問 41 (A), 問 42 (C), 問 43 (B), 問 44 (A)
開発技術 問 45 (A), 問 46 (B), 問 47 (B), 問 48 (A), 問 49 (B), 問 50 (C)
マネジメント系 info 問 51 (A), 問 52 (A), 問 53 (C), 問 54 (B), 問 55 (B), 問 56 (A), 問 57 (A), 問 58 (B), 問 59 (A), 問 60 (A)
ストラテジ系 info 問 61 (B), 問 62 (A), 問 63 (A), 問 64 (B), 問 65 (B), 問 66 (B), 問 67 (B), 問 68 (B), 問 69 (A), 問 70 (B), 問 71 (B), 問 72 (A), 問 73 (A), 問 74 (A), 問 75 (B), 問 76 (B), 問 77 (B), 問 78 (B), 問 79 (A), 問 80 (A)
infoマネジメント系とストラテジ系は、全体を 1 つの分野にしています。

全 80 問の難易度を集計すると、

A が 27 問、
B が 41 問、
C が 12 問

です。

A が 90 % できて、 B が 50 % できて、 C が 25 % できる(四択問題なので最低でも 25 % できます)とすれば、 1 問が 1.25 点なので、得点の期待値は、

1.25 点 × ( 27 × 0.9 + 41 × 0.5 + 12 × 0.25 )
= 59.75 点

です。 合格点の 60 点に達していません。

過去 10 回の科目 A 免除試験の得点の期待値は、 61.10 点~ 64.13 点(どの回も合格点に達しています)だったので、今回の試験は、これまでの試験より、やや難しかったと言えます。

ただし、見たことがない問題がとても多くてビックリした割には、全体として、それほど難易度が高かったわけではありません。

今後の科目 A 免除試験に向けての対策

今後の科目 A 免除試験の内容も、今回の試験と同様であると予測されます。 他の試験区分や古い問題が多く出て、やや難易度が高いという内容です。

だからといって、他の試験区分や古い問題を練習するというわけにもいかないでしょう。 範囲が広くなり過ぎてしまうからです。 科目 A 免除試験の過去問題を練習するというのも効果的ではありません。 科目 A 免除試験の過去問題が数多く再利用されているわけではないからです。

したがって、今後の試験対策としては、これまでと同様に、現在公開されている H21 春期 ~ R01 秋期の基本情報技術者試験の過去問題を数多く練習してください。 過去問題が再利用されていることに変わりはないのですから、「できない問題があったら、できるようになるまで何度も練習する」という学習方法が最も効果的です。

「できるわけない!」と思う問題に遭遇した場合の解き方

試験当日に、他の試験区分や古い問題に遭遇した場合は、「基本情報技術者試験のシラバス(情報処理技術者試験における知識・技能の細目を示した資料)の範囲を超えた問題が出るはずがない。 自分はちゃんと勉強してきたのだから、自分が持つ知識で正解できるはずだ」と自信を持って取り組んでください。

自分が持つ知識で、他の試験区分の問題を解く例を示しましょう。

以下は、今回の試験の問 2 です。 テーマは M/M/1 の待ち行列モデルであり、出典は R01 秋期 応用情報技術者試験などです。 この問題を見て、
「 M/M/1 の待ち行列モデルなんて知らない!」
「できるわけない!」
などと逃げ腰にならずに、「何とかなるはずだ」と思ってください。

問 2

通信回線を使用したデータ伝送システムに M/M/1 の待ち行列モデルを適用すると,平均回線待ち時間,平均伝送時間,回線利用率の関係は,次の式で表すことができる。

平均回線待ち時間 = 平均伝送時間 ×
回線利用率
1-回線利用率

回線利用率が0から徐々に増加していく場合,平均回線待ち時間が平均伝送時間よりも最初に長くなるのは,回線利用率が幾つを超えたときか。

ア 0.4  イ 0.5  ウ 0.6  エ 0.7

平均回線待ち時間 = 平均伝送時間 ×(回線利用率 / ( 1 – 回線利用率))

という式が示されています。 この式において、

回線利用率が幾つを超えたら、平均回線待ち時間が平均伝送時間より長くなるか

という問題です。

冷静になって式を見てください。

平均回線待ち時間 = 平均伝送時間 × (回線利用率 / ( 1 – 回線利用率))

ですから、

(回線利用率 / ( 1 – 回線利用率))

の部分が 1 なら

平均回線待ち時間 = 平均伝送時間 × 1

なので

平均回線待ち時間 = 平均伝送時間

です。

したがって、

(回線利用率 / ( 1 – 回線利用率))

の部分が 1 を上回ると、式をイコールにするために、平均回線待ち時間が平均伝送時間より大きくなります。

(回線利用率 / ( 1 – 回線利用率))

の部分が 1 を上回ることは、

(回線利用率 / ( 1 – 回線利用率)) > 1

と表せます。

この式を変形すると、

回線利用率 > 0.5

になります。

したがって、回線利用率が 0.5 を超えたら、平均回線待ち時間が平均伝送時間より長くなります。 正解は、選択肢イです。

 

いかがですか。 M/M/1 の待ち行列モデルなんて知らなくても、何とかなったでしょう。 この問題を解くのに必要とされるのは、中学生レベルの基本的な数学の知識だけです。 見たことがない問題であっても、自信を持って取り組んでください。

以上、試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、試験問題の講評をさせていただきました。

今回の科目 A 免除試験に合格できた人は、ここで気を緩めずに、すぐに新制度の科目 B 試験の学習を始めてください。 残念な結果になってしまった人は、ここで気落ちせずに、次回の科目 A 免除試験に向けて学習を続けてください。

いずれの場合も、コツコツと学習を続けていれば、必ず良い結果が得られるはずです。 皆様のご健闘をお祈り申し上げます!

 

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