基本情報技術者試験 午前免除(修了試験)の講評 ~ 2020年6月14日実施


2021-02-16 更新

試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、 2020 年 6 月 14 日(日)に実施された基本情報技術者の午前免除試験(修了認定に係る試験)の講評をさせていただきます。

今回受験された人は ふりかえり の題材として、今後受験される人は対策の資料として、参考にしていただければ幸いです。

試験問題と解答問題 解答

難易度は例年通り

今回の試験問題の難易度は、例年通りであり、きちんと勉強していれば、ちゃんと合格点を取れたでしょう。以下は、問題の分類と難易度を示したものです。

この難易度は、私の講師経験から、

  • 受講者のほぼ全員ができるものを A (やさしい)
  • 半数ぐらいができるものを B (ふつう)
  • ほとんどができないものを C (むずかしい)

としたものです。

集計すると、

A が 19 問、
B が 52 問
C が 9 問

です。

A が 90 % できて、 B が 60 % できて、 C が 30 % できる( 4 択問題なのでデタラメでも 25 % できるので 30 % としました)とすれば、正答数の期待値は、

19 問 × 0.9 + 52 問 × 0.6 + 9 問 × 0.3
= 51 問

になり、合格点の 80 問中 48 問以上に達しています。

問題の分類と難易度
分野 問題番号(難易度)
情報の基礎理論 問1(B)、問2(B)、問3(C)
アルゴリズム 問4(B)、問7(A)、問8(A)、問9(B)、問10(B)、問18(B)
ハードウェア 問5(B)、問6(B)、問11(A)、問12(B)、問20(A)、問21(B)、問22(B)
ソフトウェア 問17(B)、問19(A)
システム構成 問13(B)、問15(B)、問16(B)
マルチメディアとヒューマンインタフェース 問14(B)、問23(A)、問24(C)
データベース 問25(B)、問26(A)、問27(B)、問28(B)、問29(B)
ネットワーク 問30(B)、問31(B)、問32(B)、問33(B)、問34(A)
セキュリティ 問35(B)、問36(B)、問37(A)、問38(B)、問39(B)、問40(B)、問41(A)、問42(C)、問43(B)、問44(B)
開発技術 問45(B)、問46(A)、問47(B)、問48(B)、問49(B)、問50(C)
マネジメント系 問51(B)、問52(B)、問53(B)、問54(B)、問55(A)、問56(B)、問57(C)、問58(A)、問59(A)、問60(A)
ストラテジ系 問61(B)、問62(A)、問63(B)、問64(C)、問65(A)、問66(A)、問67(C)、問68(B)、問69(B)、問70(B)、問71(B)、問72(B)、問73(B)、問74(B)、問75(A)、問76(B)、問77(C)、問78(C)、問79(B)、問80(B)

マネジメント系とストラテジ系は、それぞれを1つの分野としています。

ほぼ全員ができる問題の例

今回の試験問題の中から、 A (やさしい)、 B (ふつう)、 C (むずかしい)の具体例をお見せしましょう。

まず、受講者のほぼ全員ができる A の問題です。もしも、このレベルの問題ができないなら「ちゃんと勉強」していないということです。

問 55

サービスマネジメントのプロセス改善におけるベンチマーキングはどれか。

IT サービスのパフォーマンスを財務,顧客,内部プロセス,学習と成長の観点から測定し,戦略的な活動をサポートする。
業界内外の優れた業務方法(ベストプラクティス)と比較して,サービス品質及びパフォーマンスのレベルを評価する。
サービスのレベルで可用性信頼性,パフォーマンスを測定し,顧客に報告する。
強み,弱み,機会,脅威の観点から IT サービスマネジメントの現状を分析する。

ちゃんと勉強していれば、「ベンチマークキング」という言葉の意味を知っているはずです。「優れた業績を上げている他社と自社を比較する」ことなので、選択肢イが正解です。

さらに、ちゃんと勉強していれば、

選択肢ア
「財務、顧客、内部プロセス、学習と成長」という言葉から「バランススコアカード」
選択肢ウ
「サービスレベル」という言葉から「SLA(Service Level Agreement)」
選択肢エ
「強み、弱み、機会、脅威」という言葉から「SWOT分析」

とわかるはずです。どれも、よく出題される用語です。

解答

半数ぐらいができる問題の例

次は、受講者の半数ぐらいができる B の問題です。

もしも、このレベルの問題ができないなら、何度も繰り返し練習して克服してください。このレベルの問題ができるかどうかが、合否の分かれ目になるからです。

info編集部注: スマートフォンでご覧の際は、SQL 文は横スクロールすると全文をご覧になれます
問 28

“中間テスト” 表からクラスごと,教科ごとの平均点を求め,クラス名,教科名の昇順に表示する SQL 文中の a に入れる字句はどれか。

中間テスト (クラス名, 教科名, 学生番号, 名前, 点数)

〔SQL 文〕

SELECT クラス名, 教科名,  AVG(点数) AS 平均点
  FROM 中間テスト
  [  a  ]

ア 

GROUP BY クラス名, 教科名 ORDER BY クラス名, AVG(点数) 

イ 

GROUP BY クラス名, 教科名 ORDER BY クラス名, 教科名

ウ 

GROUP BY クラス名, 教科名, 学生番号 ORDER BY クラス名, 教科名, 平均点

エ 

GROUP BY クラス名, 平均点 ORDER BY クラス名, 教科名

SQL 文でデータをグループ分けする GROUP BY と、データを整列させる ORDER BY に関する問題です。

「クラスごと、教科ごと」は、 SQL 文で「クラス、教科名でグループ分けして」と表現することになるので、GROUP BY クラス名, 教科名が適切です。

「クラス名、教科の昇順」は、 SQL 文で「クラス名、教科の昇順に整列して」と表現することになるので、ORDER BY クラス名, 教科名 ASCが適切です。

昇順を意味する ASC は省略できるので、 ORDER BY クラス名, 教科名 とすることもできます。以上のことから、選択肢イが正解です。

 

SQL 文は、午前試験でも午後試験でもよく出題されるので、しっかりとマスターしておきましょう。

そのために、 SQL 文に関する過去問題を数多く解いてください。もしも、知らない構文に遭遇したら、そのつど、教材(きっと何らかの教材をお持ちでしょう)を参照して意味を調べてください。

解答

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ほとんどができない問題の例

最後は、受講者のほとんどができない C の問題です。

もしも、このレベルの問題ができなくても、あまり気にしないでください。 80 問中 48 問以上( 60 % 以上)できれば合格なのですから、少しぐらいできない問題があっても合否には影響しないからです。

C レベルの問題は、それほど多くありません。今回は、 9 問でした。

問 42

インターネットに接続された利用者の PC から,DMZ 上の公開 Web サイトにアクセスし,利用者の個人情報を入力すると,その個人情報が内部ネットワークのデー タベース(DB) サーバに蓄積されるシステムがある。このシステムにおいて,利用 者個人のディジタル証明書を用いた TLS 通信を行うことによって期待できるセキュリティ上の効果はどれか。

PC と DB サーバ間の通信データを暗号化するとともに,正当な DB サーバであるかを検証することができるようになる。
PC と DB サーバ間の通信データを暗号化するとともに,利用者を認証することができるようになる。
PC と Web サーバ間の通信データを暗号化するとともに,正当な DB サーバであるかを検証することができるようになる。
PC と Web サーバ間の通信データを暗号化するとともに,利用者を認証することができるようになる。

「公開鍵暗号方式」や「ディジタル署名」の仕組みを知っていても、「ディジタル証明書」や「 TLS 通信」を知らないという人が多いでしょう。せっかくなので、この機会に覚えておきましょう。

ディジタル証明書
認証局( CA = Certificate Authority )によって発行される証明書であり、暗号化やディジタル署名に使われる公開鍵の所有者が、ちゃんと認証局に申請を行っていることを示します。
TLS 通信
TLS( Transport Layer Security )というプロトコルを使った通信であり、公開鍵暗号方式を使って、通信相手の認証、暗号化、改ざんの検出を行えます。

この問題では、「利用者個人のディジタル証明書を用いた通信」なので、利用者の認証、利用者の PC から Web サーバ間の通信の暗号化、およびデータの改ざんの検出が行えます。これに該当するのは、選択肢エです。

利用者の PC がアクセスしているのが Web サーバであること( DB サーバではありません)、認証の対象となるのが利用者であること( DB サーバではありません)に注意してください。

解答

見たことない問題の例

これまでの午前免除試験の内容は、ほぼ 100 % が過去問題の再利用であり、それは今回も同様でした。

ただし、 1 問だけ「こんな問題見たことない!」というものがあったはずです。それは、以下の問題です。

問 3
(1 + α)n の計算を, 1 + n × α で近似計算ができる条件として,適切なものはどれか。

|α| が 1 に比べて非常に小さい。
|α| が n に比べて非常に大きい。
|α ÷ n| が 1 よりも大きい。
|n × α| が 1 よりも大きい。

この問題を見たことがなくても当然です。なぜなら、これは 応用情報技術者試験の過去問題(平成 29 年度 春期 問 2 )だからです。

見るからに難しそうですが、たったの 1 問だけなのですから、まったく気にする必要はありません。とは言え「どうしても気になる」という人もいると思いますので、解説しておきましょう。

 

このような問題を解くときに「式を変形して正解を導こう」と考える必要はありません。

選択肢があるのですから、具体例を想定して、選択肢の中から最も適切なものを選べばよいのです。

たとえば、全体として n = 2 を想定し、それぞれの選択肢で α の値を想定して、近似計算ができるかどうかを確認してみましょう。

選択肢アは、 |α| が 1 に比べて非常に小さいのですから、 α = 0.1 を想定してみます(非常に小さくはありませんが、試験会場では電卓を使えないので簡単な値にしています)。

( 1 + α )2
= ( 1 + 0.1 )2
= 1.21

であり、 1 + n × α = 1 + 2 × 0.1 = 1.2 なので、近似計算ができるといえます。

選択肢イは、 |α| が n に比べて非常に大きいのですから、 α = 10 を想定してみます(これも非常に大きくはありませんが、試験会場では電卓を使えないので簡単な値にしています)。

( 1 + α )2
= ( 1 + 10 )2
= 121

であり、 1 + n × α = 1 + 2 × 10 = 21 なので、近似計算ができるとはいえません。

選択肢ウは、| α ÷ n | が 1 よりも大きいのですから、 α = 4 を想定してみます。

( 1 + α )2
= ( 1 + 4 )2
= 25

であり、 1 + n × α = 1 + 2 × 4 = 9 なので、近似計算ができるとはいえません。

選択肢エは、 | n × α | が 1 よりも大きいのですから、 α = 10 を想定してみます。

( 1 + α )2
= ( 1 + 10 )2
= 121

であり、 1 + n × α = 1 + 2 × 10 = 21 なので、近似計算ができるとはいえません。

以上のことから、選択肢アが正解ですが、いかがでしょうか。

もしも「具体例を想定するやり方でも難しい!」と思ったらなら、この問題を気にしないで構いません。たった 1 問題だけの応用情報技術者試験の問題なのですから。

解答

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以上、試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、試験問題の講評をさせていただきました。

無事に合格できた人は、ここで手を抜かずに、午後試験の学習を始めてください。残念な結果になってしまった人は、ここで気落ちせずに、午前試験と午後試験の学習を並行して進めてください。

いずれにしても、最終的なゴールは、 2020 年 10 月に開催予定の春期の代替試験です。皆様のご健闘をお祈り申し上げます!

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