新しく変更される 基本情報 アルゴリズムとプログラミング(科目 B )の難易度はどうなる?

2022 年 5 月 25 日に IPA (独立行政法人情報処理推進機構)から「基本情報技術者試験 科目B試験のサンプル問題などへの補足事項の追加について」という情報が公開され、 2023 年 4 月から試験制度が大幅に変更される基本情報技術者試験の科目 B 試験(従来の午後試験に該当するもの)の内容が、より明確になりました。
この記事では、アルゴリズムの問題に重点を置いて、科目 B 試験の内容を説明します。
科目 B 試験の内容
2023 年 4 月以降の基本情報技術者試験では、これまでの午前試験と午後試験が、科目 A 試験と科目 B 試験という名称に代わります。 科目 A 試験の内容は、これまでの午前試験と比べて、問題数が 80 問から 60 問に減り、試験時間が 150 分から 120 分に減るだけであり、問題の構成に大きな違いはないと思われます。
それに対して、科目 B 試験は、これまでの午後試験と比べて、問題の構成が大きく変わります。
以下は、現時点で過去問題が入手できる 2019 年秋期までの午後試験、現在実施されている 2022 年下期までの午後試験、および 2023 年 4 月以降の科目 B 試験の問題構成です。
問題番号 | 内容 | 配点 |
---|---|---|
1 | 情報セキュリティ | 12 点 |
2 ~ 7 | ソフトウェア、ハードウェア、データベース、ネットワーク、ソフトウェア設計から 4 問出題 マネジメント系、ストラテジ系 から 2 問出題 |
各 12 点 |
8 | データ構造およびアルゴリズム | 20 点 |
9 ~ 13 | ソフトウェア開発( C 言語、COBOL 、Java、アセンブラ、表計算から各 1 問出題) | 20 点 |
info 問 2 ~ 問 7 は 4 問を選択し、問 9 ~問 13 は 1 問を選択します。
info 100 点満点で 60 点以上が合格です。
問題番号 | 内容 | 配点 |
---|---|---|
1 | 情報セキュリティ | 20 点 |
2 ~ 5 | ソフトウェア・ハードウェア、データベース、ネットワーク、 ソフトウェア設計から 3 問出題 マネジメント系、ストラテジ系か ら 1 問出題 |
各 15 点 |
6 | データ構造およびアルゴリズム | 25 点 |
7 ~ 11 | ソフトウェア開発( C 言語、 Java 、 Python 、アセンブラ、表計算から各 1 問出題) | 25 点 |
info 問 2 ~問 5 は 2 問を選択し、問 7 ~問 11 は 1 問を選択します。
info 100 点満点で 60 点以上が合格です。
問題番号 | 内容 | 配点 |
---|---|---|
1 ~ 20 | 情報セキュリティ ( 4 問) アルゴリズムとプログラミング ( 16 問) |
IRT による |
info IRT ( Item Response Theory 、項目応答理論)に基づく方式で採点(問題の難易度に差があっても不公平が生じない採点)する ので、問題ごとの配点は決められていません。
info 1000 点満点で 600 点以上が合格です。
科目 B 試験の内容は、情報セキュリティ( 4 問)およびアルゴリズムとプログラミング( 16 問)だけです。 これまで、プログラミング経験のない受験者を悩ませてきたソフトウェア開発( C 言語、 Java 、 Python 、アセンブラ、表計算)の問題はありません。 テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系の選択問題もありません。
これらの変更によって、従来の試験と比べて、受験対策が容易になるでしょう。 学習する分野が減って明確になったからです。
アルゴリズムとプログラミングのカテゴリ
科目 B 試験は、全 20 問中の 16 問がアルゴリズムとプログラミングの問題です。
受験者は、この分野を重点的に学習する必要があります。 IPA の資料によると、アルゴリズムとプログラミングの出題範囲は、以下の 3 つのカテゴリに分けられています。
- looks_one
- プログラムの基本要素(型、変数、配列、代入、算術演算、比較演算、論理演算、選択処理、繰返し処理、手続・関数の呼出し など)
- looks_two
- データ構造及びアルゴリズム(再帰、スタック、キュー、木構造、グラフ、連結リスト、整列、文字列処理 など)
- looks_3
- プログラミングの諸分野への適用(数理・データサイエンス・ AI などの分野を題材としたプログラム など)
looks_one は、プログラムの基本的な概念に関するものです。
looks_two のデータ構造及びアルゴリズムは、従来の試験のデータ構造及びアルゴリズムと同様です。
looks_3 は、プログラミングの様々な分野への適用です。
looks_one と looks_3 があるので、分野の名称が従来の「データ構造及びアルゴリズム」ではなく、「アルゴリズムとプログラミング」とされたのでしょう。
アルゴリズムとプログラミングの出題範囲
アルゴリズムとプログラミングの looks_one と looks_3 の対策として、何を学習すればよいのでしょう。 以下は、 IPA が公開している試験要綱抜粋に示されたアルゴリズムとプログラミングの出題範囲です。
- looks_one プログラミング全般に関すること
- 実装するプログラムの要求仕様(入出力,処理,データ構造,アルゴリズムほか)の把握、使用するプログラム言語の仕様に基づくプログラムの実装,既存のプログラムの解読及び変更、処理の流れや変数の変化の想定、プログラムのテスト、処理の誤りの特定(デバッグ)及び修正方法の検討 など
注記 プログラム言語について、基本情報技術者試験では擬似言語を扱う。 - looks_two プログラムの処理の基本要素に関すること
- 型、変数、配列、代入、算術演算、比較演算、論理演算、選択処理、繰返し処理、手続・関数の呼出し など
- looks_3 データ構造及びアルゴリズムに関すること
- 再帰、スタック、キュー、木構造、グラフ、連結リスト、整列、文字列処理 など
- looks_4 プログラミングの諸分野の適用に関すること
- 数理・データサイエンス・ AI などの分野を題材としたプログラム など
これを見ると、ソフトウェア開発( C 言語、 Java 、 Python 、アセンブラ、表計算)がなくなったとはいえ、プログラミングの経験がないと理解しにくい概念や用語が数多くあることがわかります。 試験に出題されなくても、受験対策として何らかのプログラミング言語を学習しておくべきです。
プログラム言語について、基本情報技術者試験では擬似言語を扱う」
という注記があるので、擬似言語に似た表現を使う C 言語か Java をお勧めします。
アルゴリズムとプログラミングのサンプル問題
実際にどのような形式の問題が出るのでしょう。 IPA が公開している科目 B のサンプル問題を見ると、
- looks_one
- プログラムの基本要素
- looks_two
- データ構造及びアルゴリズム
- looks_3
- プログラミングの諸分野への適用
という 3 つのカテゴリの問題では、どれも擬似言語で記述されたプログラムが示されています。
アルゴリズムとプログラミングの対策として、擬似言語のプログラムを読み取れるようになっておく必要があります。 ただし、どの問題も、従来の午後試験と比べて、とても短いものになっているので、プログラムの内容を読み取ることに苦戦することはないでしょう。
以下は、プログラムの基本要素のサンプル問題です。 午前試験の問題が、ちょっと長くなった程度のボリュームです(この問題の正解は、選択肢カです)。
問 1
次のプログラム中のに入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。
ある施設の入場料は,0 歳から 3 歳までは 100 円,4 歳から 9 歳までは 300 円,10 歳以上は 500 円である。関数 fee は,年齢を表す 0 以上の整数を引数として受け取り,入場料を返す。
〔プログラム〕
○整数型: fee(整数型: age) 整数型: ret if (age が 3 以下) ret ← 100 elseif ( ) ret ← 300 else ret ← 500 endif return ret
解答群
- ア
- (age が 4 以上) and (age が 9 より小さい)
- イ
- (age が 4 と等しい) or (age が 9 と等しい)
- ウ
- (age が 4 より大きい) and (age が 9 以下)
- エ
- age が 4 以上
- オ
- age が 4 より大きい
- カ
- age が 9 以下
- キ
- age が 9 より小さい
今後は、 Web 記事でも市販書籍でも、looks_one プログラムの基本要素、 looks_twoデータ構造及びアルゴリズム、 looks_3 プログラミングの諸分野への適用という 3 つのカテゴリで、試験の出題範囲に示された概念や用語を説明し、それを具体的に擬似言語の短いプログラムにしたものが紹介されるでしょう。
2023 年 4 月以降に受験される方は、新しい学習教材で学習しましょう。 もちろん、この基本情報技術者試験 受験ナビでも、どんどん新しい学習教材を提供する予定です。
以上、アルゴリズムにおける従来制度の試験範囲と 5 月 25 日の発表内容との違いを説明しました。 2023 年 4 月以降に基本情報技術者試験を受験される方の参考になれば幸いです。 なお、 2022 年の下期の基本情報技術者試験までは、現行の試験制度で実施されることにご注意ください。
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大手電気メーカーでPCの製造、ソフトハウスでプログラマを経験。独立後、現在はアプリケーションの開発と販売に従事。その傍ら、書籍・雑誌の執筆、またセミナー講師として活躍。軽快な口調で、知識0ベースのITエンジニアや一般書店フェアなどの一般的なPCユーザの講習ではダントツの評価。
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