新しい基本情報技術者試験は「受験しやすく合格しやすくなる!」 サンプル問題から科目 B 問題の難易度を解説
2022 年 4 月 25 日に、基本情報技術者試験を実施している IPA (情報処理推進機構)から、 2023 年 4 月から基本情報技術者試験と情報セキュリティマネジメント試験の制度が変更されることが発表されました。
ここでは、基本情報技術者試験の変更内容のポイントと、 IPA が公開している変更後の科目 B 試験のサンプル問題を紹介します。
試験制度の変更内容
2023 年 4 月から、基本情報技術者試験の試験制度は、以下のように大きく変更されます。 いつでも受験できて、試験時間と問題が減り、科目 B 試験(変更前の午後試験)の問題が短くなるのですから、受験しやすく合格しやすい試験に変わると言えます。
- 年 2 回実施(上期 / 下期の特定期間だけ)
- 問題ごとに固定的な配点で採点
- 通年実施
いつでも受けられます
- IRT (Item Response Theory、項目応答理論)に基づく方式で採点
IRT は、 IT パスポート試験でも採用されている方式であり、問題の難易度に差があっても不公平が生じないように採点します。 IRT 方式では、問題ごとの配点は決められていません
- 試験時間
- 150 分
- 出題数
- 80 問(すべて短い問題)
- 解答数
- 80 問(選択問題なし)
午前試験
- 試験時間
- 90 分
- 出題数
- 60 問(すべて短い問題)
- 解答数
- 60 問(選択問題なし)
科目 A 試験
午前試験は科目 A 試験という名称に変わります
変更前より 60 分短くなります
変更前より 20 問少なくなります
- 試験時間
- 150 分
- 出題数
- 11 問(すべて長い問題)
- 解答数
- 5 問(選択問題あり)
午後試験
- 試験時間
- 100 分
- 出題数
- 20 問(すべて短い問題)
- 解答数
- 20 問(選択問題なし)
科目 B 試験
午後試験は科目 B 試験という名称に変わります
変更前より 50 分短くなります
解きやすくなります
選択に悩む必要がありません
- テクノロジ系
- 50 問
- マネジメント系
- 10 問
- ストラテジ系
- 20 問
午前試験
(分野ごとの問題数は年度によって若干の違いがあります)
科目 A 試験
変更前の午前試験に準じます。
分野ごとの問題数の配分は、変更前と同様であると思われます
- 情報セキュリティ
- 1 問
- テクノロジ系の選択問題
- 3 問
- マネジメント系またはストラテジ系の選択問題
- 1 問
- データ構造及びアルゴリズム
- 1 問
- ソフトウェア開発(C、Java、Python、アセンブラ言語、表計算ソフトから選択)
- 1 問
午後試験
- 情報セキュリティ 4 問
- データ構造及びアルゴリズム 16 問
- ソフトウェア開発( C 、 Java 、 Python 、アセンブラ言語、表計算ソフトから選択)が廃止され、データ構造及びアルゴリズム(擬似言語)に統一されます
- 擬似言語の表記方法は、変更前の ▲ や ■ を使った表現から、 if 、 while 、 for などを使った表現に変更されます
- 詳細は、 IPA が公開している科目試験 B のサンプル問題の末尾にある〔擬似言語の記述形式〕を参照してください
科目 B 試験
シラバスの変更内容
試験制度の変更に応じて、試験の出題範囲の細目を示したシラバスも変更されます。 現時点で IPA から公開されている資料では、出題範囲から C 、 Java 、 Python 、アセンブラ言語、表計算ソフトが削除されたこと以外に、大きな変更はありません。
以下は、変更後のシラバスの一部を抜粋したものです。取り消し線がつけられた青色の部分が削除され、赤色の部分が追加されます。
4. プログラム言語
目標
科目 B 試験のサンプル問題(情報セキュリティ)
IPA では、科目 B 試験のサンプル問題を 6 問だけ公開しています。 ここでは、それらの中から「情報セキュリティ」と「アルゴリズムとプログラミング」の問題を、それぞれ 1 問ずつ紹介しましょう。
どちらの問題も、変更前の午後試験とは比べ物にならないほど短くて簡単です。 はたして、実際の試験でも、これと同レベルの問題が出るかどうかはわかりませんが、問題のボリュームは、この程度なのでしょう。
以下は、「情報セキュリティ」のサンプル問題です。
問 6基本情報技術者試験 科目 B 試験のサンプル問題picture_as_pdf より
製造業の A 社では, EC サイト(以下, A 社の EC サイトを A サイトという)を使用し,個人向けの製品販売を行っている。 A サイトは, A 社の製品やサービスが検索可能で,ログイン機能を有しており,あらかじめ A サイトに利用登録した個人(以下,会員という)の氏名やメールアドレスといった情報(以下,会員情報という)を管理している。 A サイトは, B 社の PaaS で稼働しており, PaaS 上の DBMS とアプリケーションサーバを利用している。
A 社は, A サイトの開発,運用を C 社に委託している。 A 社と C 社との間の委託契約では, Web アプリケーションプログラムの脆ぜい弱性対策は, C 社が実施するとしている。
最近, A 社の同業他社が運営している Web サイトで脆弱性が悪用され,個人情報が漏えいするという事件が発生した。そこで A 社は,セキュリティ診断サービスを行っている D 社に, A サイトの脆弱性診断を依頼した。脆弱性診断の結果,対策が必要なセキュリティ上の脆弱性が複数指摘された。図 1 に D 社からの指摘事項を示す。
- A サイトで利用している DBMS に既知の脆弱性があり,脆弱性を悪用した攻撃を受けるおそれがある。
- A サイトで利用しているアプリケーションサーバの OS に既知の脆弱性があり,脆弱性を悪用した攻撃を受けるおそれがある。
- ログイン機能に脆弱性があり, A サイトのデータベースに蓄積された情報のうち,会員には非公開の情報を閲覧されるおそれがある。
設問
図 1 中の項番 1. ~ 3. それぞれに対処する組織の適切な組合せを,解答群の中から選べ。
解答群
1. | 2. | 3. | |
---|---|---|---|
ア | A 社 | A 社 | A 社 |
イ | A 社 | A 社 | C 社 |
ウ | A 社 | B 社 | B 社 |
エ | B 社 | B 社 | B 社 |
オ | B 社 | B 社 | C 社 |
カ | B 社 | C 社 | B 社 |
キ | B 社 | C 社 | C 社 |
ク | C 社 | B 社 | B 社 |
ケ | C 社 | B 社 | C 社 |
コ | C 社 | C 社 | B 社 |
解答群の選択にあるのは、 A 社、 B 社、 C 社です。
A 社は、 A サイト( EC サイト)で商品販売をしています。
B 社は、 A サイトの稼働環境( PaaS 上の DBMS とアプリケーションサーバ)を提供しています。
C 社は、 A サイトの開発と運営を委託されています。
- 項番 1.
- DBMS の脆弱性なので、稼働環境である DBMS を提供する B 社が対処します。
- 項番 2.
- OS の脆弱性なので、稼働環境である OS を提供する B 社が対処します。
- 項番 3.
- Web アプリケーションプログラムの脆弱性であり、問題文に「 Web アプリケーションの脆弱性対策は、 C 社が実施するとしている」とあるので、 C 社が対処します。
したがって、選択肢オが正解です。
正解 オ
科目 B 試験のサンプル問題(アルゴリズムとプログラミング)
以下は、「アルゴリズムとプログラミング」のサンプル問題です。
変更前の問題と比べて大幅に短くなっていて、大幅に解きやすくなっています。 アルゴリズムとプログラミングの問題を苦手としている受験者にとって、これは正に朗報です。
問 1基本情報技術者試験 科目 B 試験のサンプル問題picture_as_pdf より
次のプログラム中のに入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。
ある施設の入場料は, 0 歳から 3 歳までは 100 円, 4 歳から 9 歳までは 300 円, 10 歳以上は 500 円である。 関数 fee は,年齢を表す 0 以上の整数を引数として受け取り,入場料を返す。
〔プログラム〕
○整数型: fee(整数型: age) 整数型: ret if (age が 3 以下) ret ← 100 elseif ( ) ret ← 300 else ret ← 500 endif return ret
解答群
- ア
- (age が 4 以上) and (age が 9 より小さい)
- イ
- (age が 4 と等しい) or (age が 9 と等しい)
- ウ
- (age が 4 より大きい) and (age が 9 以下)
- エ
- age が 4 以上
- オ
- age が 4 より大きい
- カ
- age が 9 以下
- キ
- age が 9 より小さい
if (age が 3 以下)
という条件に該当しないときに、
elseif ()
の条件がチェックされます。
この条件が真なら
ret ← 300
という処理が行われるので、正解は選択肢 カの age が 9 以下です。
正解 カ
以上、基本情報技術者試験の変更内容のポイントと、 IPA が公開している変更後の科目 B 試験のサンプル問題を紹介しました。
変更前よりも、受験しやすく合格しやすくなるのですから、これまで受験に躊躇していた人も、 2023 年 4 月以降の試験にぜひチャレンジしてください。
今後は、市販の教材や Web 記事なども、 2023 年 4 月以降の試験に合わせて大幅に改訂されるはずです。
label 関連タグ
免除試験を受けた 74.9% の方が、 科目A免除資格を得ています。
基本情報技術者試験 科目A免除試験(修了試験)の講評 ~ 2024年7月28日実施
update令和6年度 基本情報技術者試験 公開問題の講評
update基本情報技術者試験 科目A免除試験(修了試験)の講評 ~ 2024年6月9日実施
update基本情報技術者試験のシラバス改定|Ver9.0の概要
update基本情報技術者試験 科目A免除試験 (旧 午前免除試験) の講評 ~ 2024年1月28日実施
update基本情報技術者試験 科目A免除試験 (旧 午前免除試験) の講評 ~ 2023年12月10日実施
update基本情報技術者試験 科目A免除試験 (旧 午前免除試験) の講評 ~ 2023年7月23日実施
update新制度・基本情報技術者試験の過去問(公開問題)からわかる難易度と対策
update新制度・基本情報技術者試験 6月の合格率も 52.7% と高水準が続く
update基本情報技術者試験 新制度で出題された過去問題を IPA が公開
update『プログラムはなぜ動くのか』(日経BP)が大ベストセラー
IT技術を楽しく・分かりやすく教える“自称ソフトウェア芸人”
大手電気メーカーでPCの製造、ソフトハウスでプログラマを経験。独立後、現在はアプリケーションの開発と販売に従事。その傍ら、書籍・雑誌の執筆、またセミナー講師として活躍。軽快な口調で、知識0ベースのITエンジニアや一般書店フェアなどの一般的なPCユーザの講習ではダントツの評価。
お客様の満足を何よりも大切にし、わかりやすい、のせるのが上手い自称ソフトウェア芸人。
主な著作物
- 「プログラムはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「コンピュータはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「出るとこだけ! 基本情報技術者」 (翔泳社)
- 「ベテランが丁寧に教えてくれる ハードウェアの知識と実務」(翔泳社)
- 「ifとelseの思考術」(ソフトバンククリエイティブ) など多数