基本情報技術者試験 午前免除(修了試験)の講評 ~ 2022年1月23日実施


2022-01-27 更新

試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、 2022 年 1 月 23 日(日)に実施された基本情報技術者午前免除試験(修了認定に係る試験)の講評をさせていただきます。

今回受験された人は振り返りの題材として、今後受験される人は対策の資料として、参考にしていただければ幸いです。

実施月 問題 解答
2022 年 1 月 問題 解答

他の試験の過去問題がとても多かった

今回の試験の内容は、前回の試験( 2021 年 12 月 12 日実施)と同様に、基本情報技術者試験以外の過去問題が、数多く出題されていました。それらの中には、基本情報技術者試験の出題範囲を超えているのではないか?! と言いたくなるような問題もあったので、受験された人は大いに戸惑われたでしょう。

図 1 に、今回の試験のテクノロジ系の問題(問 1 ~問 50 )の中で、他の試験の過去問題だったものを示します。

ここでは、現行の試験制度となった平成 21 年度 春期より前の基本情報技術者試験も他の試験としています。多くの受験者は、平成 21 年度 春期以降の過去問題を練習しているからです。出典は、 1 つだけ示していますが、複数の試験に出ている問題もあります。

この手の問題の数は、前回は 15 問で、今回は 12 問です。今後の試験でも、同じ頻度で他の試験の過去問題が使われると予想されます。

図 1  今回の試験のテクノロジ系の問題の中で他の試験の過去問題だったもの
問番号 テーマ 出典
問 1 ビット演算 応用情報 H 23 秋 問 1
問 4 M / M / 1 の待ち行列モデル 応用情報 H 18 秋 問 31
問 8 ハッシュ値の衝突 基本情報 H 15 春 問 14
問 9 再帰的に定義された関数 応用情報 H 25 秋 問 8
問 12 コンピュータの五大装置 基本情報 H 18 春 問 26
問 19 ページング方式の仮想記憶 基本情報 H 20 秋 問 27
問 20 モータの速度制御に用いられる PWM の駆動波形 応用情報 R 02 秋 問 22
問 26 導出表を1行ずつ親プログラムに引き渡す操作 応用情報 H 27 春 問 27
問 30 無線 LAN で用いられる SSID の説明 応用情報 H 29 秋 問 31
問 38 OpenPGP や S/MIME で用いるハイブリッド暗号方式 応用情報 H 28 秋 問 42
問 47 分岐網羅と条件網羅を満たすテストデータ 応用情報 H 29 春 問 48
問 50 アジャイル開発のふりかえり(レトロスペクティブ) 応用情報 H 30 春 問 48

全体の難易度はこれまでと同様だった

問題の全体(問1~問80)の難易度は、前回の試験がやや高めでしたが、今回の試験はこれまでと同様でした。

図 2 は、今回の試験問題の分類と難易度を A, B, C で示したものです。この難易度は、私の講師経験から、

  • 受講者のほぼ全員ができるものを A (やさしい)
  • 半数ぐらいができるものを B (ふつう)
  • ほとんどができないものを C (むずかしい)

としたものです。

図 2  今回の試験の問題の分類と難易度
分野 問題番号(難易度)
情報の基礎理論 問 1 (C)、問 2 (C)、問 3 (B)、問 4 (C)、問 5 (B)
アルゴリズム 問 7 (B)、問 8 (B)、問 9 (C)
ハードウェア 問 11 (A)、問 12 (B)、問 13 (B)、問 20 (B)、問 21 (B)、問 22 (A)
ソフトウェア 問 17 (B)、問 18 (B)、問 19 (B)
システム構成 問 14 (A)、問 15 (A)、問 16 (B)
マルチメディアとヒューマンインタフェース 問 6 (B)、問 10 (A)、問 23 (B)、問 24 (B)
データベース 問 25 (C)、問 26 (B)、問 27 (B)、問 28 (A)、問 29 (A)
ネットワーク 問 30 (B)、問 31 (A)、問 32 (B)、問 33 (B)、問 34 (B)
セキュリティ 問 35 (A)、問 36 (B)、問 37 (A)、問 38 (B)、問 39 (B)、問 40 (A)、問 41 (B)、問 42 (A)、問 43 (B)、問 44 (A)
開発技術 問 45 (A)、問 46 (B)、問 47 (B)、問 48 (A)、問 49 (B)、問 50 (B)
マネジメント系 問 51 (B)、問 52 (B)、問 53 (B)、問 54 (A)、問 55 (A)、問 56 (A)、問 57 (B)、問 58 (A)、問 59 (A)、問 60 (B)
ストラテジ系 問 61 (B)、問 62 (A)、問 63 (A)、問 64 (B)、問 65 (A)、問 66 (B)、問 67 (B)、問 68 (A)、問 69 (B)、問 70 (B)、問 71 (A)、問 72 (B)、問 73 (A)、問 74 (B)、問 75 (B)、問 76 (C)、問 77 (B)、問 78 (B)、問 79 (A)、問 80 (B)
infoマネジメント系とストラテジ系は、全体を 1 つの分野にしています。

全 80 問の難易度を集計すると、

A が 27 問、
B が 47 問、
C が 6 問

です。

A が 90 % できて、 B が 50 % できて、 C が 25 % できる(四択問題なので最低でも 25 % できます)とすれば、 1 問が 1.25 点なので、得点の期待値は、

1.25 点 × ( 27 × 0.9 + 47 × 0.5 + 6 × 0.25 )
≒ 63.5 点

冒頭の問 1 ~問 10 あたりに難易度の高い問題が集中していたので難しく感じたかもしれませんが、全体の難易度は、これまでの試験と同様です。

図 3 に近年に実施された午前免除試験の得点の期待値を示します。

図 3  近年の試験の得点の期待値
試験実施日 難易度 A 難易度 B 難易度 C 得点の期待値
2020 年
1 月 16 日(日)
30 問 41 問 9 問 62.19 点
2020 年
6 月 14 日(日)
19 問 52 問 9 問 63.75 点
2020 年
7 月 26 日(日)
20 問 50 問 10 問 63.75 点
2020 年
12 月 13 日(日)
28 問 48 問 4 問 62.75 点
2021 年
1 月 24 日(日)
30 問 41 問 9 問 62.19 点
2021 年
6 月 13 日(日)
28 問 48 問 4 問 62.75 点
2021 年
12 月 12 日(日)
29 問 40 問 11 問 61.10 点
2022 年
1 月 23 日(日)
27 問 47 問 6 問 63.50 点

出題範囲を超えているのではないか?! と言いたくなるような問題の例(その 1)

今回の試験の中で、基本情報技術者試験の出題範囲を超えているのではないか?! と言いたくなるような問題の例を示しましょう。

以下は、「 M / M / 1 の待ち行列モデル」をテーマとした問題です。待ち行列理論は、応用情報技術者試験では、よく出題される鉄板問題なのですが、基本情報技術者試験では、何となくそれを匂わすような問題しか出たことがありません。そのため、この問題を見て、ビックリした人が多いでしょう。

問 4

多数のクライアントが、 LAN に接続された 1 台のプリンタを共同利用するときの印刷要求から印刷完了までの所要時間を,待ち行列理論を適用して見積もる場合について考える。プリンタの運用方法や利用状況に関する記述のうち、 M / M / 1 の待ち行列モデルの条件に反しないものはどれか。

一部のクライアントは,プリンタの空き具合を見ながら印刷要求をする
印刷の緊急性や印刷量の多少にかかわらず、先着順に印刷する。
印刷待ち文書の総量がプリンタのバッファサイズを超えるときは、一時的に受付を中断する。
一つの印刷要求から印刷完了までの所要時間は、印刷の準備に要する一定時間と,印刷量に比例する時間の合計である。

ただし、以下のように「待ち行列理論」も「 M / M / 1 モデル」も基本情報技術者試験のシラバスに示されているので、この問題は、基本情報技術者試験の出題範囲を超えてはいません。今回の試験に出題されたのですから、これはもう基本情報技術者試験の過去問題です。解き方を覚えておきましょう。

  • (6) 待ち行列理論

    待ち行列モデルの構成要素,考え方,M/M/1 モデルにおける簡単な計算を理解する。

    用語例

    サービス時間、待ち時間,到着間隔,平均到着率,平均サービス率

解説

待ち行列とは、たとえば、切符を購入するために窓口にできる順番待ちの行列のことです。

待ち行列理論とは、与えられた条件において、どの程度の待ちが生じるかを求めるものであり、いくつかの計算式が知られています。 IT の世界では、コンピュータシステムで行う処理が、どの程度待たされるかを理論的に求めるために使われます。

この問題では、プリンタの印刷要求から印刷完了までの時間を、待ち行列理論で求めるという内容になっています。

 

待ち行列の条件は、

到着間隔 / サービス時間 / 窓口数

という表記で示されます。

今回の問題のように、 M / M / 1 という表記がよく出題されます。 M / M / 1 は、到着間隔がランダムで、サービスを受ける時間がランダムで、窓口数が 1 であることを示しています。

この条件に反していない選択肢を選ぶ問題なので、選択肢の中の 3 つは条件に反しています。

 

ここでは、プリンタが 1 台であることが、窓口が 1 つであることに相当します。この条件に反する選択肢はありません。

選択肢ア
到着間隔がランダムであることに反します。
選択肢イ
条件に反しません。
選択肢ウ
サービス時間がランダムであることに反します。
選択肢エ
サービス時間がランダムであることに反します。

したがって、選択肢イが正解です。

解答

出題範囲を超えているのではないか?! と言いたくなるような問題の例(その 2)

もう 1 つ例を示しましょう。以下は、「モータの速度制御に用いられる PWM の駆動波形」をテーマとした問題です。何これ? PWM 制御なんて知らない! PWM の駆動波形などわからない! と言いたくなるような問題でしょう。

問 20

モータの速度制御などに PWM (Pulse Width Modulation) 制御が用いられる。
PWM の駆動波形を示したものはどれか。ここで,波形は制御回路のポート出力であり,低域通過フィルタを通していないものとする。

実は、この問題も、基本情報技術者試験の出題範囲を超えてはいません。以下のように、基本情報技術者試験のシラバスに

PWM (Pulse Width Modulation) 制御

が示されています。この問題も、解き方を覚えておきましょう。

  • (2) 機械・制御

    代表的な機械電子制御について,基本的な動作原理を理解する。

    用語例

    オープンループ制御,クローズドループ制御,シーケンス制御,フィードバック制御, PWM (Pulse Width Modulation) 制御

解説

この問題は、 PWM 制御のことを知らなくても、言葉の意味と選択肢から、正解を詳しく選べます。

PWM の Pulse は、人間の心臓の鼓動のように脈を打つ電気信号のことです。Width は幅という意味で、 Modulation は変調という意味です。変調が何であるかがわからなくても、電気信号の幅で制御することだ、ということが何となくわかるでしょう。

それでは、選択肢を見てみましょう。

電気信号の幅が変わっているのは、選択肢イだけです。選択肢イを選んでください。それで、正解です。

解答

 

このように、見たことがない問題に遭遇したら、言葉の意味と選択肢をヒントにすれば、正解が選べる場合がよくあります。わからない! と決めつけずに、ジタバタすることが大事です。

ジタバタするとは、すぐにあきらめずに、自分の知識を総動員して何とかすることです。ほとんどの場合、何とかなります。

以上、試験対策講座の講師として、誠に勝手ながら、試験問題の講評をさせていただきました。

今後の午前免除試験でも、他の試験の過去問題が数多く出ることが予想されますが、そのために他の試験を練習するというわけにもいかないでしょう。これまで通りに、 平成 21 年度 春期以降の基本情報技術者試験の過去問題を練習してください。

ただし、これまで以上に、学習目標を高く設定してください。そうすれば、必ず良い結果が得られるはずです!

 

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