科目 A 試験対策は過去問演習|科目 A 試験・科目 B 試験サンプル問題セットからわかる傾向と対策 (1)


2023-01-04 更新

2022 年 12 月 26 日に情報処理推進機構から新制度の基本情報技術者試験のサンプル問題セット(科目 A 試験と科目 B 試験それぞれ 1 回分のサンプル問題)が公開されました。 受験を予定されている人は、大いに興味があるでしょう。

そこで、

  1. 科目 A 試験
  2. 科目 B 試験アルゴリズムとプログラミング
  3. 科目 B 試験 情報セキュリティ

の 3 回に分けて、サンプル問題セットの内容から、新制度の試験の出題傾向と対策を解説します。 今回は、「科目 A 試験」を取り上げます。

科目 A 試験 サンプル問題セットの分析

まず、出題傾向です。

出題傾向 1科目 A 試験 全 20 問の構成

以下は、サンプル問題セットの科目 A 試験全 60 問の構成を示したものです。

問題の番号です。
テーマ
筆者が独自に付けたものです。
シラバスの分類
現時点で最新のシラバス Ver.8.0 における分類です。
分野
テクノロジ系を「 T 」、マネジメント系を「 M 」、ストラテジ系を「 S 」で示しています。
過去問題の例
まったく同じ問題が出題された年度の例(同じ問題が複数の年度に出題されているので、これは一例です)を示しています。 基本情報技術者試験以外の試験分の過去問題もあるので、末尾の「( AP )」で応用情報技術者試験、「( SG )」で情報セキュリティマネジメント試験、「(二種)」で第二種情報処理技術者試験(現在の基本情報技術者試験に該当する古い試験)を示しています。
難易度
筆者の講師経験から、受験者の正解率が 25 % 程度を「難」、 50 % 程度を「中」、 90 % 程度を「易」で示しています。
サンプル問題セットの科目 A 試験 全 60 問の構成
テーマ シラバスの分類 分野 過去問題の例 難易度
1 2 の補数表現でマイナス求める式 基礎理論 T H 15 春 問 3
2 10 進数を 2 進数に変換する流れ図 基礎理論 T R 01 秋 問 1
3 命題と論理演算 基礎理論 T H 31 春 問 3
4 状態遷移図とオートマトン 基礎理論 T H 30 春 問 4
5 二分探索木になっている二分木 アルゴリズムとプログラミング T H 28 秋 問 6
6 花文字の回転 アルゴリズムとプログラミング T R 01 秋 問 9
7 ハッシュ法を用いた配列への格納 アルゴリズムとプログラミング T R 01 秋 問 10
8 再帰的に定義された関数 アルゴリズムとプログラミング T R 01 秋 問 11
9 プログラムのコーディング規約 アルゴリズムとプログラミング T H 30 秋 問 7
10 外部割込みの原因となるもの コンピュータ構成要素 T H 18 春 問 21
11 ECC を利用したエラー検出・訂正に必要な冗長ビット数 基礎理論 T H 30 秋 問 11
12 メモリの実効アクセス時間 コンピュータ構成要素 T H 23 秋 問 11
13 仮想化マシン環境の縮退運転 システム構成要素 T H 27 春 問 13
14 システムの稼働率を表す計算式 システム構成要素 T H 28 春 問 14
15 オーバーフローしないバッファサイズを表す式 システム構成要素 T H 29 春 問 17
16 インタプリタの説明 ソフトウェア T H 31 春 問 19
17 ファイル領域の総量 ソフトウェア T H 27 秋 問 18
( AP )
18 絶対パス名の説明 ソフトウェア T H 30 春 問 17
19 DRAM の特徴 コンピュータ構成要素 T H 25 春 問 23
20 入力されたデータのチェック ヒューマンインターフェース T H 28 秋 問 24
21 RDBMS におけるビューの説明 データベース T H 24 春 問 29
22 UML で表した概念データモデル データベース T R 01 秋 問 25
23 データレイクの特徴 データベース T H 31 春 問 29
( AP )
24 関係モデルの関係演算の種類 データベース T H 31 春 問 28
25 IoT で用いられる無線通信技術 ネットワーク T R 03 春 問 32
( AP )
26 ネットワークの伝送時間 ネットワーク T H 30 秋 問 31
27 電子メールに画像データなどを添付する規格 ネットワーク T H 27 春 問 35
28 信頼性よりもリアルタイム性が重視されるプロトコル ネットワーク T H 29 秋 問 34
29 HTTP 通信のパケットのポート番号 ネットワーク T H 31 春 問 34
30 ソーシャルエンジニアリング セキュリティ T H 28 秋 問 25
( SG )
31 ボットネットにおける C &C サーバの役割 セキュリティ T H 30 秋 問 41
32 メッセージ認証符号の利用目的 セキュリティ T H 31 春 問 38
33 UPS の導入によって期待できる効果 セキュリティ T H 30 春 問 11
( SG )
34 ファジングに該当するもの セキュリティ T H 30 春 問 42
( AP )
35 マルウェアの動的解析に該当するもの セキュリティ T R 01 秋 問 36
36 SQL インジェクション攻撃による被害を防ぐ方法 セキュリティ T H 30 春 問 41
37 電子メールの送信者を認証するためのもの セキュリティ T R 01 秋 問 44
38 オブジェクト指向プログラムのカプセル化 システム開発技術 T H 12 春 問 58(二種)
39 モジュール結合度が最も弱くなるもの システム開発技術 T R 01 秋 問 46
40 ブラックボックステスト システム開発技術 T H 23 秋 問 47
41 アジャイル開発のスクラムにおけるスプリントのルール ソフトウェア開発管理技術 T (なし)
42 プロジェクトライフサイクルの特性 プロジェクトマネジメント M R 01 秋 問 43
( SG )
43 ファンクションポイント法の説明 プロジェクトマネジメント M R 01 秋 問 53
44 アローダイアグラムの日程計画 プロジェクトマネジメント M H 31 春 問 53
45 サービスマネジメントのベンチマーキング サービスマネジメント M H 31 春 問 55
46 ディスク障害時にデータベースを回復する方法 サービスマネジメント M H 31 春 問 57
47 システム監査人の外観上の独立性 システム監査 M H 31 春 問 59
48 情報セキュリティ監査の可用性のチェック項目 システム監査 M H 28 秋 問 59
49 テレワークで活用しているVDIに関する記述 システム戦略 S R 03 問 61
( AP )
50 投資効果をROIで評価する システム戦略 S H 31 春 問 65
51 グリーン購入の説明 システム企画 S H 30 春 問 65
52 コアコンピタンスの説明 経営戦略マネジメント S H 25 秋 問 68
53 リーンスタートアップの説明 技術戦略マネジメント S R 03 秋 問 69( AP )
54 IoT の HEMS の説明 ビジネスインダストリ S H 31 春 問 71
55 ロングテールの説明 ビジネスインダストリ S H 26 春 問 73
56 CGM ( Consumer Generated Media )の例 ビジネスインダストリ S H 28 秋 問 73
57 線形計画法で最大利益を求める 企業活動 S H 25 秋 問 75
58 減価償却における固定資産売却損 企業活動 S H 27 秋 問 77
59 目的利益を達成するために必要な売上高 企業活動 S H 23 秋 問 77
60 派遣先企業と労働者との関係 法務 S H 30 春 問 80

出題傾向 2難易度(ちゃんと勉強していれば合格点を取れる)

難易度を集計すると、

難 = 8 問
中 = 26 問
易 = 26 問

なので、

科目 A 試験のサンプル問題セットの正解率の期待値 =
(8 × 0.25 + 26 × 0.50 + 26 × 0.9) ÷ 60
= 64 %

です。 60 % の正解が合格の基準なので、ちゃんと勉強していれば合格点を取れるでしょう。

ただし、第 2 回と第 3 回で詳しく説明しますが、科目 B 試験のサンプル問題セットの正解率の期待値は、 53 % であり合格の基準に達しません。 旧制度の試験では「午前試験で合格点が取れてたが、午後試験が残念な結果になってしまった」という人が多かったですが、新制度でも同様に「科目 A 試験で合格点が取れたが、科目 B 試験が残念な結果になってしまった」という人が多くなるでしょう。

出題傾向 3テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系の割合は旧制度と同じ

テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系の問題の割合を確認してみましょう。

分野 旧制度の午前試験 新制度の科目 A 試験 増減
テクノロジ系 50 問 (62.5 %) 41 問 (68.3 %) ↑ やや増えた
マネジメント系 10 問 (12.5 %) 7 問 (11.7 %) → 同様
ストラテジ系 20 問 (25.0 %) 12 問 (20.0 %) ↓ やや減った

上記に示したように、旧制度の午前試験では、全 80 問中、
テクノロジ系が 50 問( 62.5 % )、マネジメント系が 10 問( 12.5 % )、ストラテジ系が 20 問( 25.0 % )、
でした(年度によって少しだけ違う場合もあります)。

それに対して、新制度の科目 A 試験では、全 60 問中、
テクノロジ系が 41 問( 68.3 % )、マネジメント系が 7 問( 11.7 % )、ストラテジ系が 12 問( 20.0 % )、
になっています。

新制度では、テクノロジ系の問題がやや増えて、その分ストラテジ系の問題がやや減っています。 マネジメント系の問題の割合は、旧制度と同様です。 全体的に見ると、分野ごとの割合に大きな違いはないといえます。

出題傾向 4セキュリティに重点が置かれていることも旧制度と同様

旧制度の午前試験では、情報セキュリティに重点が置かれていて、

令和元年度 秋期
全 80 問中 11 問( 14 % )
平成 31 年度 春期
全 80 問中 12 問( 15 % )

が出題されています。 これは、新制度の科目 A 試験でも同様であり、

全 60 問中 8 問( 13 %)

です。

出題傾向 5過去問題の再利用が多いことも旧制度と同様

旧制度の令和元年秋期までの午前試験( CBT 化される前の午前試験)では、 1 回の試験あたり 76 % 程度(61問程度)が過去問題の再利用でした。

科目 A 試験は、新しい試験なので、問題もすべて新しくなるのではないかと思っていましたが、実際には 82 %( 49 問)が過去問題の再利用でした。

新しい問題(過去の基本情報技術者試験に出題されていない問題)であっても、応用情報技術者試験や情報セキュリティマネジメント試験など、他の試験区分の問題であり、まったく新しい問題ではありませんでした。

 

ただし、たった 1 問だけ、どの試験区分の過去問題でもない問題がありました(これは、筆者の調査不足であり、何らかの試験区分で出題されているかもしれません)。 記事の冒頭で示した「サンプル問題セットの科目 A 試験全 60 問の構成」の「過去問題の例」が「(なし)」になっている問 41 です。

どんな問題か気になると思いますので、以下に示します。 この問題の正解は、選択肢エです。

1 問だけあったどの試験区分の過去問題でもない問題
問 41

アジャイル開発のスクラムにおけるスプリントのルールのうち,適切なものはどれか。

スプリントの期間を決定したら,スプリントの 1 回目には要件定義工程を, 2 回目には設計工程を, 3 回目にはコード作成工程を, 4 回目にはテスト工程をそれぞれ割り当てる。
成果物の内容を確認するスプリントレビューを,スプリントの期間の中間時点で実施する。
プロジェクトで設定したスプリントの期間でリリース判断が可能なプロダクトインクリメントができるように,スプリントゴールを設定する。
毎回のスプリントプランニングにおいて,スプリントの期間をゴールの難易度に応じて, 1 週間から 1 か月までの範囲に設定する。
出典基本情報技術者試験(科目 A 試験)サンプル問題セット

この問題は、どの試験の過去問題でもありませんが、応用情報技術者試験や IT パスポート試験などに類題が出題されています。 また、基本情報技術者試験のシラバスには、この問題のテーマである「スクラム」も「スプリント」も示されているので、試験の出題範囲を超えているわけではありません。

スクラムもスプリントも試験の出題範囲である
  1. アジャイル
    迅速かつ適応的にソフトウェア開発を行う軽量な開発手法であるアジャイルの特徴を理解する。

    1. アジャイルの概要
      アジャイルの概要として,アジャイルソフトウェア開発手法の種類などを理解する。

      用語例アジャイルソフトウェア開発宣言,アジャイルソフトウェアの 12 の原則, XP(エクストリームプログラミング),スクラム,ユーザーストーリー,テスト駆動開発,リファクタリング,継続的インテグレーション( CI ),ふりかえり(レトロスペクティブ)

    2. XP (エクストリームプログラミング)の特徴
      XP (エクストリームプログラミング)の特徴を理解する。

      用語例ペアプログラミング

    3. スクラムの特徴
      スクラムの特徴を理解する。

      用語例スプリント

出典基本情報技術者試験シラバス Ver.8.0

科目 A 試験対策(勉強方法)

ここからは、科目 A 試験の出題傾向を踏まえて、試験対策の解説をさせていただきます。

試験対策 1新しい順に過去問題を数多く学習する

60 問中 11 問が他の試験区分および新しい問題でした。 令和元年秋期以降の試験問題( CBT 化された後の試験問題)は、公開されていないので明確な判断はできませんが、最近実施された午前免除試験の内容(問題が公開されています)を見ると、この割合で他の試験区分の過去問題を利用する傾向にあるようです。 ただし、他の試験区分の過去問題を練習するわけにもいかないでしょう。 それでは、範囲が広すぎるからです。

再利用されている基本情報技術者試験の過去問題を見ると、令和元年秋期や平成 31 年度春期などの新しい問題が多いことがわかります。

したがって、現状公開されている基本情報技術者試験の過去問題を、新しい順にできるだけ多く学習することが、最も効率的かつ効果的な学習方法だといえます。 特に、出題数が多い情報セキュリティに重点を置いて学習してください。 情報セキュリティは、科目 B 試験でも出題されます。

試験対策 2テキパキと問題を解く習慣を付けておく

旧制度の午前試験は、

制限時間 150 分で全 80 問
解答時間の目安は 1 問あたり約 2 分

でした。

それに対して、新制度の科目 A 試験は、

制限時間 90 分で 60 問
解答時間の目安は 1 問あたり 1.5 分

です。

科目 A 試験は、問題の内容が午前試験と同様であっても、解答時間が大幅に短くなっています。 旧制度の午前試験の受験者の多くは「時間が余った」と言っていましたが、新制度の科目 A 試験の受験者の多くは「時間がギリギリだった」と言うことになるでしょう。

学習の段階から、テキパキと問題を解く習慣を付けておくことをお勧めします。 さらに、受験日が近づいたら、 90 分で 60 問(旧制度の過去問題の 1 回分の中から 60 問を選んで模擬試験としてください)を解く練習をしておくとよいでしょう。

今回は、サンプル問題セットの「科目 A 試験」の内容から、新制度の試験の出題傾向と対策を解説しました。 次回は、「科目 B 試験アルゴリズムとプログラミング」を取り上げます。

それでは、またお会いしましょう!

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