IT初心者のための基本情報ではじめる ネットワーク 入門 ~ネットワーク分野 1


2022-11-02 更新

この連載は、これから IT の勉強をはじめる人を対象としたものです。 基本情報技術者試験の出題分野ごとに、仕組み、主要な用語、および過去問題を紹介します。 受験対策としてだけでなく、 IT の基礎知識を幅広く得るために、ぜひお読みください。

今回は、ネットワーク 分野 その 1 として ネットワーク全般 を取り上げます。

ネットワークが必要な理由

皆さんにお読みいただいているこの記事は、メールで依頼を受けて、 Web 会議で打合せをして、原稿をストレージサービスにアップして提出して、そして、編集された記事が Web で公開されています。 原稿の提出から公開までに要する時間は、多くの場合に半日程度です。 公開された記事は、内容が古くならない限り、だれでも、いつでも、どこでも、読むことができます。

これらは、どれも、ネットワークを使って実現されていることです。

もしも、ネットワークがなかったらどうなるでしょう。 電話で依頼を受けて、出版社の会議室に出向いて打合せをして、原稿を記憶媒体にコピーして郵送で提出して、そして、編集された記事が雑誌として書店で販売されることになります。 原稿の提出から公開までに要する時間は、多くの場合に 1 か月程度です。 公開された記事は、雑誌が書店に置かれている期間だけに、書店で雑誌を購入した人だけが、読むことができます。

両者を比較すれば、ネットワークが必要な理由は明らかです。

ネットワークによって、情報の伝達が効率化され、より多くの人に、より長い期間、利用してもらえるようになるのです。 ネットワークは、情報の提供者にも利用者にも、多くの便宜を提供してくれます。

ネットワークの仕組み

インターネットの「ネット」は、「通信網」という意味ですが、「インター」の意味をご存じでしょうか?

「国際的な(インターナショナル)」だと思っている人が多いと思いますが、実は「間の」という意味です。 インターネットは、ネットワークとネットワークの間をつないだものなのです。

この場合のネットワークとは、会社内や家庭内の小規模なネットワークである LAN ( Local Area Network )を意味しています。 LAN と LAN の間は、ルータという中継装置でつなぐことができます。 複数の LAN と LAN の間をつないだ大規模なネットワークを WAN ( Wide Area Network )と呼びます。 インターネットは、世界規模の WAN です。

図 1 インターネットは LAN と LAN の間をつないだもの

図 1 に示したように、インターネットのイメージは、雲の絵で示されることがよくあります。 この雲の中にあるのは、インターネットへの接続サービスを提供する数多くのプロバイダの通信網です。 この通信網もルータでつながれています。 これが、私たちが普段利用しているネットワークの全体の仕組みです。

ネットワークの主要な用語

基本情報技術者試験のシラバス(情報処理技術者試験における知識・技能の細目)に示されたネットワークの分野は、

  • ネットワーク方式
  • データ通信と制御
  • 通信プロトコル
  • ネットワーク管理
  • ネットワーク応用

という項目に分けられています。

以下は、それぞれの項目における主要な用語です。 赤色で示した用語は、この記事の中で説明しています。

ネットワーク方式
LANWAN 、無線 LAN 、 SSID 、 bps 、 IPv4IPv6グローバル IP アドレスプライベート IP アドレスNAT
データ通信と制御
OSI 基本参照モデル、リピータ、ブリッジ、ルータ、ゲートウェイ、プロキシサーバ
campaign OSI 基本参照モデルに関しては、次回の連載で詳しく説明します。
通信プロトコル
イーサネットMAC アドレス、 Wi-Fi 、 IP 、 TCP 、 UDP 、パケット、ヘッダー、 IP アドレス、サブネットマスク、 CIDR 、ポート番号、 HTTPSMTPPOP3FTP 、 NTP 、 DNS 、 DHCP 、 ICMPARP
ネットワーク管理
pingifconfigarp 、netstat
ネットワーク応用
MIME 、 HTTP 、 HTTP over TLS( HTTPS )、 cookie 、 URL 、セッション ID 、 VPN

ネットワークの過去問題

ネットワークの分野の過去問題を 3 問ほど紹介しましょう。

ネットワーク方式に関する問題

最初は、ネットワーク方式に関する問題です。

問 33 平成 29 年度 秋期

IPv4 において,インターネット接続用ルータの NAT 機能の説明として,適切なものはどれか。

インターネットへのアクセスをキャッシュしておくことによって,その後に同じ IP アドレスの Web サイトへアクセスする場合,表示を高速化できる機能である。
通信中の IP パケットを検査して,インターネットからの攻撃や侵入を検知する機能である。
特定の端末宛ての IP パケットだけを通過させる機能である。
プライベート IP アドレスとグローバル IP アドレスを相互に変換する機能である。

IPv4 の問題を解決する IPv6

ネットワークに接続された通信機器(パソコン、サーバ、ルータなど)をホストと呼びます。 インターネットでは、ホストの識別番号として IP アドレスが使われています。

従来から使われている IP アドレスの規格は、全体を 32 ビットで表す IPv4 ( IP version 4 )です。 32 ビットで表せるのは、約 43 億通りのアドレスですが、それでは、世界の人口の約 80 億人に対して、まったく足りません

そこで、新たに、全体を 128 ビットで表す IPv6 ( IP version 6 )という規格が作られました。 128 ビットで表せるのは、

約 3.4 × 1038 通りのアドレス

なので、足りなくなることはないでしょう。 現在は、 IPv4 から IPv6 への移行時期であり、両者が併用されています。

IPv4 の問題を解決する NAT

IPv6 が登場する前から、ビット数を増やすこととは別の方法で、 IPv4 の IP アドレスの不足を解決する方法が使われています。 それが、この問題のテーマとなっている NAT ( Network Address Translation ) です。

NAT は、 32 ビットの IP アドレスの範囲を、

  • 会社内や家庭内の LAN の中でだけ使えるプライベート IP アドレス
  • インターネットで使えるグローバル IP アドレス

2 つに分けて、両者を相互変換する機能です。 LAN が異なれば、同じプライベート IP アドレスを使えるので、 IP アドレスの不足を解決できるというわけです。

プライベート IP アドレスとグローバル IP アドレスの関係は、電話に例えれば、内線番号と外線番号のようなものです。 会社( LAN )には、 1 つだけ外線番号(グローバル IP アドレス)があり、複数の内線番号(プライベート IP アドレス)があります。 会社が異なれば、同じ内線番号(プライベート IP アドレス)が使えます。 これによって、外線番号(グローバル IP アドレス)の不足を解消できます。

 

小規模な LAN の場合は、インターネット接続用のルータが NAT の機能を持っています。

LAN (社内)からインターネット(社外)に送信する場合
ルータが差出人のプライベート IP アドレス(内線番号)をグローバル IP アドレス(外線番号)に変換します。
インターネット(社外)からLAN(社内)に受信する場合
ルータが宛先のグローバル IP アドレス(外線番号)をプライベート IP アドレス(内線番号)に変換します。

以上のことから、正解は、選択肢エです。

通信プロトコルに関する問題

次に紹介するのは、通信プロトコルに関する問題です。

通信プロトコルとは、通信における規約のことです。 送信者と受信者が同じ規約を守ることで、データの受け渡しが可能になります

よく使われるプロトコルには、

  • Web ページを閲覧する HTTP ( Hyper Text Transfer Protocol )
  • メールを転送する SMTP ( Simple Mail Transfer Protocol )
  • メールを受信する POP3 ( Post Office Protocol version 3 )
  • ファイルを転送する FTP ( File Transfer Protocol )

などがあります。

問 39 平成 21 年度 春期

図の環境で利用される ① ~ ③ のプロトコルの組合せとして,適切なものはどれか。


POP3 POP3 SMTP
POP3 SMTP POP3
SMTP POP3 SMTP
SMTP SMTP SMTP

この問題は、メールに関するプロトコルを答えるものです。 選択肢にあるのは、 SMTP と POP3 だけです。

メールクライアントからメールサーバへメールを送信するプロトコルは、 SMTP です。
メールクライアントがメールサーバからメールを受信するプロトコルは、 POP3 です。
メールサーバ(自社または契約しているプロバイダのメールサーバ)と他社のメールサーバの間は、送信も受信も SMTP です。

SMTP は、メールクライアントから見れば送信プロトコルですが、メールサーバの間では送信と受信の両方なので、転送プロトコルと呼ばれます。

以上のことから、正解は、選択肢ウです。

info_outlineSMTP 、 POP3 の詳しい解説記事

基本情報でわかる SMTP / POP3 「ITエンジニア視点で見れば役割がわかる」

同時実行制御に関する問題

最後に紹介するのは、ネットワーク管理に関する問題です。

問題文に示された ICMP( Internet Control Message Protocol )とは、インターネットの基本プロトコルである IP ( Internet Protocol )において、誤りの通知や通信情報の通知を行うプロトコルです。

選択肢に示された
arp
echo
ipconfig
ping
は、 OS が提供するネットワーク管理コマンド(小さなプログラム)です。 これらの中で、 ICMP で通信相手との接続性を確認するコマンドを答えます。

問 34 平成 26 年度 春期

IP ネットワークにおいて, ICMP のエコー要求,エコー応答,到達不能メッセージなどによって,通信相手との接続性を確認するコマンドはどれか。

ア arp
イ echo
ウ ipconfig
エ ping

それぞれのコマンドには、以下に示した機能があります。

arp コマンド
arp テーブル の内容を確認する。
echo コマンド
画面表示を ON /OFF する。
ipconfig コマンド
ネットワークに接続するための設定を確認する。
ping コマンド
ICMP で通信相手との接続性を確認する。

arp テーブルとは、インターネットの識別番号である IP アドレスと、 LAN の識別番号である MAC アドレス(通信装置を物理的に識別する番号)の対応を記録した表のこと

Windows では、コマンドプロンプト( Windows キー + r > cmd と入力すると起動)のウインドウの中でネットワーク管理コマンドを実行します。

たとえば、 ICMP で通信相手との接続性を確認する ping コマンドを実行する場合は、 ping の後にスペースで区切って、通信相手の IP アドレスまたはドメイン名を指定します。

図 2 は、 SE プラスの Web サーバのドメイン名( www.seplus.jp )を指定して ping コマンドを実行したところです。

図 2  ping コマンドの実行結果の例

swipe横スクロールできます

C:\>ping www.seplus.jp

www.seplus.jp [110.232.196.233]に ping を送信しています 32 バイトのデータ:
110.232.196.233 からの応答: バイト数 =32 時間 =8ms TTL=245
110.232.196.233 からの応答: バイト数 =32 時間 =8ms TTL=245
110.232.196.233 からの応答: バイト数 =32 時間 =8ms TTL=245
110.232.196.233 からの応答: バイト数 =32 時間 =8ms TTL=245

110.232.196.233 の ping 統計:
    パケット数: 送信 = 4、受信 = 4、損失 = 0 (0% の損失)、
ラウンド トリップの概算時間 (ミリ秒):
    最小 = 8ms、最大 = 8ms、平均 = 8ms

ping コマンドは、通信相手に「応答せよ」という要求を 4 回送ります。 ここでは、 4 回とも応答が得られているので、問題なく接続されていることを確認できます。

 

以上のことから、正解は、選択肢エです。

なお、選択肢ウの ipconfig は、 Windows におけるコマンド名であり、 Unix 系の OS では ifconfig という名前です。 試験のシラバスには、 ifconfig の方が示されています。

今回は「ネットワーク」その 1 として「ネットワーク」が必要な理由、仕組み、主要な用語、および過去問題を紹介しました。

次回は、「ネットワーク」その 2 として「 OSI 基本参照モデル 」の分野を取り上げます。

それでは、またお会いしましょう!

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