IT初心者のための基本情報ではじめる OSI基本参照モデル 入門 ~ネットワーク分野 2


2022-11-04 更新

この連載は、これから IT の勉強をはじめる人を対象としたものです。 基本情報技術者試験の出題分野ごとに、仕組み、主要な用語、および過去問題を紹介します。 受験対策としてだけでなく、 IT の基礎知識を幅広く得るために、ぜひお読みください。

今回は、ネットワーク 分野 その 2 として OSI 基本参照モデル を取り上げます。

OSI 基本参照モデルが必要な理由

初期のコンピュータの時代には、メーカーごとにネットワークのプロトコル(通信の取り決め)が異なっていたため、同じメーカー同士でないと通信できませんでした。 これは、不便なことです。

そこで、 1970 年代に ISO ( International Organization for Standardization = 国際標準化機構)の情報処理システム技術委員会が、プロトコルの標準化を始めました。 それが OSI ( Open System Interconnection = 開放型システム間相互接続) です。

 

同委員会では、具体的なプロトコルを策定する前に、ネットワークの仕組みを 7 つの階層に分けるという考え方を取り決めました。 それが、今回のテーマである OSI 基本参照モデルです。 モデルという言葉は、実際のネットワークの仕組みが 7 つの階層に分けられるわけではなく、あくまでも考え方である、ということを示しています。

 

その後、 OSI 基本参照モデルをベースにして、 OSI のプロトコル群が策定されました。

ところが、これらのプロトコルは複雑であったため普及せず、 LAN ではイーサネット、インターネットでは TCP や IP などのプロトコルが自然と普及して、世界の標準になりました。 そして、 OSI 基本参照モデルだけが、ネットワークの基礎を知る考え方として残り、現在に至っているのです。

 

OSI 基本参照モデルが必要な理由は、当初は OSI という標準プロトコルを策定するためでしたが、現在ではネットワークの基礎を知るためです。

IT エンジニアの登竜門と位置付けられている基本情報技術者試験では、 OSI 基本参照モデルに関する様々な問題が出題されます。

OSI 基本参照モデルの各階層の役割と主要プロトコル

図 1 は、 OSI 基本参照モデルの 7 つの階層を示したものです。

図 1 OSI 基本参照モデルの 7 つの階層

それぞれの階層は、「応用層」や「物理層」のように名前で呼ぶ場合と、レイヤ 7 (第 7 層)やレイヤ 1 (第 1 層)のように番号で呼ぶ場合があります。

最上層の応用層の上にユーザーが乗っていて、最下層の物理層から通信ケーブル(無線の場合は電波)が出ているイメージです。

ユーザーが送信するとき
データが 7 つの階層を上から下にたどります
ユーザーが受信するとき
データが 7 つの階層を下から上にたどります

OSI 基本参照モデルでは、このように考えるのです。

OSI 基本参照モデル 7 つの層の機能

7 つの階層の機能を説明しましょう。

OSI 基本参照モデルをベースにして OSI というプロトコル群が策定されたのですから、それぞれの階層で何を取り決めるのか、という観点で説明します。 階層の名前と取り決めを対応付けると、わかりやすいはずです。

最下層の物理層
物理的な通信媒体(電線、光ケーブル、電波、など)の取り決めです。
データリンク層
同じネットワーク内(同じ LAN 内)で直接つながっている( link = つなぐ)相手と通信するための取り決めです。
ネットワーク層
ネットワークと他のネットワークの間を中継するための取り決めです。
トランスポート層
送信者から受信者までデータを確実に運搬する( transport = 運搬)ための取り決めです。
セッション層
たとえば、 Web サービスのログインからログアウトまでの期間( session = 期間)にセッション ID でユーザーを識別するように、通信の開始から終了までの管理をするための取り決めです。
プレゼンテーション層
使用する文字コードや画像形式など、データの表現( presentation = 発表)の取り決めです。
最上層の応用層
その上にユーザーが乗っているので、ユーザーから見た通信サービスの使い方の取り決めです。

図 2 は、現在普及している代表的なプロトコルを、 OSI 基本参照モデルに対応付けたものです。

図 2 代表的なプロトコルと OSI 基本参照モデルの対応
OSI 基本参照モデル 代表的なプロトコル
応用層
(アプリケーション層)
HTTP, SMTP, POP3 など
プレゼンテーション層
セッション層
トランスポート層 TCP, UDP
ネットワーク層 IP
データリンク層 イーサネット, Wi-Fi
物理層

OSI 基本参照モデルは 7 階層ですが、現在普及しているプロトコルは、 4 階層に分けられます。 これは、複数の階層に対応するプロトコルがあるからです。

LAN で使われるイーサネット(有線 LAN )と Wi-Fi (無線 LAN )は、物理層とデータリンク層に対応します。

インターネットでは、ネットワーク層で IP を使い、トランスポート層で TCP を使います。 トランスポートでは、信頼性は低下しますがスピードが速い UDP というプロトコルも使えます。

Web ページを閲覧する HTTP 、メールを転送する SMTP 、メールを受信する POP3 など、通信サービスごとの専用プロトコルは、セッション層、プレゼンテーション層、応用層に対応します。

OSI 基本参照モデルの過去問題

OSI 基本参照モデルの分野の過去問題を 3 問ほど紹介しましょう。

各階層の機能に関する問題

最初は、各階層の機能に関する問題です。

問 31 平成 27 年度 秋期

OSI 基本参照モデルの第 3 層に位置し,通信の経路選択機能や中継機能を果たす層はどれか。

ア セション層  
イ データリンク層
ウ トランスポート層  
エ ネットワーク層

OSI 基本参照モデルの改造の番号は、最下層から順に 1, 2, 3, ・・・, 7 です。 これは、ビルディングの最下層が 1 階であることと同様です。

物理層 → データリンク層 → ネットワーク層とたどって、第 3 層はネットワーク層です。

通信の経路選択機能や中継機能を果たす

ということからも、ネットワーク層だと判断できます。

したがって、正解は、選択肢エです。

プロトコルとの対応に関する問題

次は、プロトコルとの対応に関する問題です。

問 33 平成 31 年度 春期

トランスポート層のプロトコルであり,信頼性よりもリアルタイム性が重視される場合に用いられるものはどれか。

ア HTTP  イ IP  
ウ TCP  エ UDP

選択肢アの HTTP は、 Web ページを閲覧するための専用プロトコルであり、応用層、プレゼンテーション層、セッション層に対応します。

選択肢イの IP は、インターネットの識別番号である IP アドレスを見て、ネットワークと他のネットワークの間を中継するので、ネットワーク層に対応します。

選択肢ウの TCP と選択肢エの UDP は、どちらもトランスポート層に対応します。 両者の違いを以下にまとめています。

  • TCP が信頼性を重視している(スピードは遅い)
  • UDP がスピードを重視している(信頼性は低い)

ここでは、トランスポート層で信頼性よりもリアルタイム性を重視するプロトコルを選ぶので、正解は、選択肢エです。

ネットワーク機器との対応に関する問題

最後は、ネットワーク機器との対応に関する問題です。

リピータ、ブリッジ、ルータなどのネットワーク機器も、それぞれが持つ機能から、 OSI 基本参照モデルの階層に対応付けられるのです。

問 30 平成 26 年度 春期

OSI 基本参照モデルの各層で中継する装置を,物理層で中継する装置,データリンク層で中継する装置,ネットワーク層で中継する装置の順に並べたものはどれか。

ア ブリッジ,リピータ,ルータ  
イ ブリッジ,ルータ,リピータ
ウ リピータ,ブリッジ,ルータ  
エ リピータ,ルータ,ブリッジ

リピータ
長距離の伝送を行うと、データの信号が減衰してしまいます。 リピータは、信号を回復させ伝送距離を延ばすための装置です。 信号を物理的に回復するだけなので、リピータは物理層に対応します。
ブリッジ
LAN をいくつかの部分に区切るための装置です。 LAN の識別番号である MAC アドレスを見て、どの部分にデータを送るかを判断します。 同じ LAN 内で使う装置なので、ブリッジはデータリンク層に対応します。
ルータ
インターネットの識別番号である IP アドレスを見て、ネットワークと他のネットワークの間を中継(ルーティング)する装置なので、ネットワーク層に対応します。

以上のことから、正解は、選択肢ウです。

今回は「ネットワーク」その 2 として「 OSI 基本参照モデル」が必要な理由、各階層の役割と主要プロトコル、および過去問題を紹介しました。

次回は、「セキュリティ」その 1 として「セキュリティ全般」の分野を取り上げます。

それでは、またお会いしましょう!

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