IT初心者のための基本情報ではじめる ストラテジ 入門


2023-05-10 更新

この連載は、これから IT の勉強をはじめる人を対象としたものです。 基本情報技術者試験の出題分野ごとに、仕組み、主要な用語、および過去問題を紹介します。 受験対策としてだけでなく、 IT の基礎知識を幅広く得るために、ぜひお読みください。

今回は、 ストラテジ の分野を取り上げます。

ストラテジのポイント

情報システム戦略の策定

ストラテジ( strategy )とは、「戦略」という意味です。 この戦略とは、企業の情報システム戦略のことです。

図 1 に、情報システム戦略の策定手順の例を示します。 経営戦略を確認してから、現状の業務を調査・分析し、そこで見出した問題を解決するために情報システム戦略を策定するのです。

図 1 情報システム戦略の策定手順の例

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経営戦略の確認

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業務環境の調査、分析

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業務、情報システム、情報技術の調査、分析

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基本戦略の策定

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業務の新イメージ作成

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対象の選定と投資目標の策定

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情報システム戦略案の策定

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情報システム戦略の承認

エンタープライズアーキテクチャ

情報システムの構築では、エンタープライズアーキテクチャが注目されています。 これは、企業全体の業務やシステムをモデル化(整理して明確化)した上で、それに基づいて情報システムを構築するという考え方です。

アーキテクチャ( architecture = 構造)という言葉が示すとおり、企業全体の業務やシステムを

  • テクノロジアーキテクチャ(利用する情報技術)
  • アプリケーションアーキテクチャ(情報システムの構成)
  • データアーキテクチャ(業務に利用する情報)
  • ビジネスアーキテクチャ(組織全体として業務プロセス)

の階層で示し、現状モデルから理想モデルへ移行するために次期情報システムを構築するのです。 企業の特定の部門や業務ではなく、全体に注目していることがポイントです(図 2 )。

図 2 エンタープライズアーキテクチャによる情報システムの構築

情報システムの調達

自社に情報システムの開発部門を持たない企業では、開発を外部の企業に委託して情報システムを調達することになります。

図 3 に、情報システムの調達手順の例を示します。 ここでは、情報システムを依頼する企業を「依頼側」、開発する企業を「開発側」と呼ぶことにします。 依頼側は、名乗りをあげた複数の開発側から最適な企業を選定するとします。

図 3 情報システムの調達手順の例

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依頼側が、システム化の目的や業務内容などを示した RFI ( Request For Information = 情報提供依頼書)を提示する。

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複数の開発側が、 RFI に基づいて情報を提供する。

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依頼側が、調達対象システム、提案依頼事項、調達条件などを示した RFP ( Request For Proposal = 提案依頼書)および RFQ ( Request For Quotation = 見積依頼書 )を提示する。

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複数の開発側が、 RFP と RFQ に基づいて提案書と見積書を提出する。

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依頼側が、提案書と見積書の内容から、調達先を選定する。

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依頼側と開発側が、納入システム、費用、納入時期、役割分担などを確認し、契約を締結する。

ストラテジの主要な用語

表 1 は、基本情報技術者試験のシラバスに示されたストラテジの分野の主要な用語です。 前回と前々回に取り上げたマネジメントの分野と同様に、ほとんどの用語の意味は一般常識で理解できるものなので、ここでは、一般常識では理解しにくいと思われる用語だけを示しています(複数の分野で重複している用語や、マネジメントの分野と重複している用語もあります)。

多くの用語がありますが、用語として丸暗記するのではなく、過去問題を解いて新たな用語に遭遇するたびに覚えていくとよいでしょう。 試験には、同じ過去問題が何度も出ているからです。 後で紹介する過去問題に登場する用語は、赤色で示してあります。

表 1 ストラテジの分野の主要な用語
システム戦略
CIO, BPMS, BPO, BPR, BYOD, CRM, DFD, ERP, E-R 図 , KGI, KM, KMS, KPI, RPA, SCM, SFA, SOA, UML, エンタープライズアーキテクチャ, オフショア, クラウドサービス( SaaS, PaaS, IaaS など), チャットボット, データマイニング, デジタルディバイド
システム企画
CSR, IT ポートフォリオ, RFI , RFP , RFQ , ステークホルダ
経営戦略マネジメント
3C 分析, CRM, CS, ERP, KGI, KM, KPI, M&A, SCM, SFA, SWOT 分析, オムニチャネル, カニバリゼーション, コアコンピタンス, コモディティ化, コンバージョン率, シナジー効果, バランススコアカード, ブルーオーシャン戦略, プロダクトポートフォリオマネジメント, ベンチマーキング, マーチャンダイジング, リテンション率
技術戦略マネジメント
API エコノミー, イノベーションのジレンマ, キャズム, コンカレントエンジニアリング, ダーウィンの海, 死の谷, 魔の川, リーンスタートアップ
ビジネスインダストリ
XBRL, CAD, CAE, CAM, CGM, ERP, HEMS, IoT, MRP, POS, RFID, BtoB, BtoC, CtoC, GtoB, GtoC, OtoO, かんばん方式, クラウドソーシング, コネクテッドカー, シェアリングエコノミー, セル生産方式, デジタルディバイド, フィンテック, ブロックチェーン, ユニバーサルデザイン, リーン生産方式, ロングテール
企業活動
CSR, BCP, CEO, CFO, CIO, CISO, COO, CPO, HR テック, ROA, ROE, アローダイアグラム, クリティカルパス, グリーン IT, ダイバーシティ, データマイニング, デルファイ法, バスタブ曲線, 貸借対照表, 損益計算書, 損益分岐点, 先入先出法
法務
ANSI, IEC, IEEE, ITU, ISBN コード, JAN コード, JIS コード, QR コード, Unicode, OSS ライセンス, サイトライセンス契約, シュリンクラップ契約, ボリュームライセンス契約, 特許権, 実用新案権, 意匠権, 商標権, 著作権, 著作者人格権

ストラテジの過去問題

ストラテジの分野の過去問題を 3 問ほど紹介しましょう。

エンタープライズアーキテクチャに関する問題

最初は、エンタープライズアーキテクチャに関する問題です。 この記事の前半部で示したエンタープライズアーキテクチャの構成を思い出してください。

問 62 平成 28 年度 春期

エンタープライズアーキテクチャの “四つの分類体系” に含まれるアーキテクチャは,ビジネスアーキテクチャ,テクノロジアーキテクチャ,アプリケーションアーキテクチャともう一つはどれか。

ア システムアーキテクチャ  
イ ソフトウェアアーキテクチャ
ウ データアーキテクチャ  
エ バスアーキテクチャ

エンタープライズアーキテクチャは、

  • テクノロジアーキテクチャ
  • アプリケーションアーキテクチャ
  • データアーキテクチャ
  • ビジネスアーキテクチャ

から構成されています。

format_quote 土台にテクノロジ(技術)があり、その上にアプリ(情報システム)があり、その上にデータ(情報)があり、一番上にビジネス(業務)がある format_quote

と覚えるとよいでしょう。

正解は、選択肢ウのデータアーキテクチャです。

情報システムの調達に関する問題

次は、情報システムの調達に関する問題です。この記事の前半部で示した RFIRFP という略語の意味を思い出してください。

問 66 平成 30 年度 秋期

図に示す手順で情報システムを調達するとき, b に入れるものはどれか。

a
発注元はベンダにシステム化の目的や業務内容などを示し,情報提供を依頼する。
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b
発注元はベンダに調達対象システム,調達条件などを示し,提案書の提出を依頼する。
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c
発注元はベンダの提案書,能力などに基づいて,調達先を決定する。
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d
発注元と調達先の役割や責任分担などを,文書で相互に確認する。

ア RFI  イ RFP
ウ 供給者の選定  
エ 契約の締結

a は「情報提供を依頼する」なので、 RFI ( Request For Information = 情報提供依頼書)です。
b は「提案書の提出を依頼する」なので、 RFP ( Request For Proposal = 提案依頼書)です。

ここでは、 b に入るものを答えるので、選択肢イの RFP が正解です。

知的財産権に関する問題

ストラテジの分野には、契約や知的財産権などの法務が含まれています。最後は、知的財産権のうちの産業財産権に関する問題です。

問 78 平成 22 年度 秋期

日本において、産業財産権と総称される四つの権利はどれか。

意匠権、実用新案権、商標権、特許権
意匠権、実用新案権、著作權、特許権
意匠権、商標権、著作權、特許権
実用新案権、商標、著作権、特許権

知的財産権とは、知的創造活動によって生み出されたものを、創作した人の財産とする権利です。

知的財産権には、

  • 特許権(発明)
  • 実用新案権(考案)
  • 意匠権(デザイン)
  • 商標権(マーク)
  • 育成者権(植物の新品種)
  • 著作権(精神的作品)

などがあります。 これらの中で、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の 4 つを産業財産権と呼び、特許庁が所管しています。

したがって、選択肢アが正解です。

今回は、「ストラテジ」の分野のポイント、主要な用語、技法、および過去問題を紹介しました。

次回は、「基礎理論」その 2 として「 2 進数」の分野を取り上げます。

それでは、またお会いしましょう!

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