基本情報でわかる SMTP / POP3 「ITエンジニア視点で見れば役割がわかる」
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この記事は基本情報技術者試験の旧制度( 2022 年以前)の記事ですが、試験対策ではなく、技術用語を理解する上では問題ないと考えています。
試験対策としてお読みになる場合は、現在の試験制度では出題されない午後問題を一部題材にしているので、ご注意ください。
この連載では、基本情報技術者試験によく出題されるテクノロジー関連の用語を、午前問題と午後問題のセットを使って解説します。
午前問題で用語の意味や概念を知り、午後問題で技術の活用方法を知ってください。それによって、単なる丸暗記では得られない明確さで、用語を理解できるようになります。
今回のテーマは、メールの通信プロトコルである SMTP と POP3 です。
SMTP と POP3 とは? ユーザー視点とエンジニア視点の違い
IT エンジニアではない一般ユーザーであっても、自分でメールソフトの設定を行ったことがあるなら、メールの送信と受信のプロトコルが異なることを知っているでしょう。
多くの場合に、
メールの送信プロトコルは、 SMTP( Simple Mail Transfer Protocol )であり、
メールの受信プロトコルは、 POP3( Post Office Protocol version 3 )です。
これらのプロトコルを使って、メールクライアント(メールソフトが動作しているパソコン)が、自社(またはプロバイダ)のメールサーバに接続します。
メールの送信が SMTP で、受信が POP3 というのは、ユーザー視点の知識です。
基本情報技術者試験は、 IT エンジニア向けの試験なので、 IT エンジニア視点の知識が要求されます。
それは、自社のメールサーバから先をどうつなぐかです。
自社のメールサーバは、他社のメールサーバとの間で、 SMTP を使ってメールの送受信を行います。つまり、 IT エンジニア視点では、メールクライアントから自社のメールサーバへの送信が SMTP で受信が POP3 であり、さらに自社のメールサーバと他社のメールサーバとの転送が SMTP なのです。
SMTP と POP3 に関する午前問題
ユーザー視点と IT エンジニア視点の違いがわかったところで、 SMTP と POP3 に関する午前問題を解いてみましょう。
以下は、メールクライアントからメールサーバへのメール送信、メールサーバからメールクライアントへのメール受信、およびメールサーバと別のメールサーバの間のメール転送のプロトコルを答える問題です。
図の環境で利用される ① ~ ③ のプロトコルの組合せとして,適切なものはどれか。
① | ② | ③ | |
---|---|---|---|
ア | POP3 | POP3 | SMTP |
イ | POP3 | SMTP | POP3 |
ウ | SMTP | POP3 | SMTP |
エ | SMTP | SMTP | SMTP |
メールクライアントからメールサーバへの ① メール送信は SMTP 、
メールサーバからメールクライアントへの ② メール受信は POP3 、
およびメールサーバと別のメールサーバの間の ③ メール転送は SMTP なので、
選択肢ウが正解です。
これまでに示した図では、メールの向きを矢印で示していますが、通信のやりとりを考えると、矢印の向きを変えた方がよい部分と、矢印の数を増やした方がよい部分があります。
メールの受信の POP3 では、メールクライアントからの要求がメールサーバに送られるので、矢印の向きは、メールクライアントからメールサーバにするべきです。
メールサーバと別のメールサーバの間は、それぞれが転送元となって相手に要求を送るので、矢印の数を 2 本にするべきです。これらの考えは、後で紹介する午後問題を解くときに、大いに役立ちます。
解答 ウ
SMTP と POP3 に関する午後問題
今度は、 SMTP と POP3 に関する午後問題です。
基本情報技術者試験の午後問題は、かつて「午前知識の応用問題」と呼ばれていました。先ほどの午前問題は、
というものでした。
以下に示す午後問題は、「それらの知識がファイアウォールの設定に応用できる」というものです。いかにも午後問題という内容です。
問題の説明文が長いので、ざっと目を通してください。後でポイントとなる部分を説明しますので、ざっとで OK です。
パケットフィルタリングに関する次の記述を読んで,設問 1, 2 に答えよ。
X 社では,図に示すネットワークを構築し,インターネットへの Webサイトの公開 と電子メール (以下,メールという) の送受信を行っている。
X 社のネットワークは二つのファイアウォールによって, DMZ 及び社内 LAN の二つのセグメントに分けられている。 Web サーバ,メールサーバ及びデータベースサーバ (以下, DB サーバという)は,それぞれ次の役割を果たしている。
- (1) Web サーバ
- Web サイトとして,自社の情報をインターネットに公開する。 Web サーバ上では,社外との取引情報を処理するプログラムが動作する。このプログラムが利用するデータは DB サーバ上に格納される。
- (2) メールサーバ
- 社外とのメールの送受信を行う。また,取引先に対してメールを自動配信するプログラムが動作する。メール配信のためのデータは DB サーバ上に格納される。
- (3) DB サーバ
- Web サーバ及びメールサーバで利用するデータを格納する。
社内 LAN に接続された管理用 PC からは, SSH を使った各サーバへのログイン操作と,メールサーバを介した外部とのメール送受信が可能である。管理用 PC から自社 Web サーバの参照はできるが,社外 Web サイトの利用は許可されていない。
ネットワーク上で使われるプロトコルとポート番号を表 1 に示す。
サービス | プロトコル | ポート番号 |
---|---|---|
Web | HTTP | 80 |
メール転送 | SMTP | 25 |
セキュアシェル(遠隔ログイン) | SSH | 22 |
メール受信 | POP3 | 110 |
DB アクセス | DB 専用 | 1999 |
- 設問 1 次の記述中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。解答は重複して選んでもよい。
- インターネットと DMZ をつなぐファイアウォール A のパケットフィルタリングの設定を表 2 に示す。また, DMZ と社内 LAN をつなぐファイアウォール B のパケットフィルタリングの設定を表 3 に示す。
フィルタリングの設定ルールは,送信元の IP アドレス,あて先の IP アドレス及び接続先ポート番号を指定して通信の許可/拒否を制御する。設定は上の行のルールから調べて,最初に条件が合致した行の動作を実行する。また,応答パケットについては動的フィルタリング機能によって自動的に許可されるので設定は不要なものとする。
条件 | 動作 | ||
---|---|---|---|
送信元 | あて先 | ポート番号 | |
任意 | Webサーバ | 80 | 許可 |
任意 | メールサーバ | 25 | 許可 |
a | 任意 | b | 許可 |
任意 | 任意 | 任意 | 拒否 |
条件 | 動作 | ||
---|---|---|---|
送信元 | あて先 | ポート番号 | |
Webサーバ | DB サーバ | 1999 | 許可 |
メールサーバ | DB サーバ | 1999 | 許可 |
管理用 PC | c | d | 許可 |
管理用 PC | メールサーバ | 22 | 許可 |
管理用 PC | メールサーバ | 25 | 許可 |
管理用 PC | Web サーバ | 80 | 許可 |
管理用 PC | Web サーバ | 22 | 許可 |
任意 | 任意 | 任意 | 拒否 |
a,c に関する解答群
ア DB サーバ
エ メールサーバ オ 任意
b,d に関する解答群
ア 22 イ 25 ウ 80
エ 110 オ 1999それでは、ポイントとなる部分を説明しましょう。
問題の内容は、「ファイアウォール A とファイアウォール B のフィルタリングの設定で、空欄となっている部分を埋める」というものです。
空欄 a, b と、空欄 c, d は、どちらも「動作」が「許可」になっています。ファイアウォール A とファイアウォール B にも、もう 1 つ許可しなければならないことがあるのです。
それは、問題の説明文で以下の部分を見ればわかります。
管理用 PC は、メールサーバを介した外部とのメール送受信が可能なのですから、
- 「管理用 PC 」→「メールサーバ」の SMTP による送信
- 「管理用 PC 」→「メールサーバ」の POP3 による受信
- 「メールサーバ」→「外部のメールサーバ」の SMTP による転送
- 「外部のメールサーバ」→「メールサーバ」の SMTP による転送
を許可することになります。プロトコルは、ポート番号で指定され、 SMTP は 25 で、 POP3 は 110 です。この「メールサーバ」は、自社のメールサーバのことです。
ファイウォール A のフィルタリングの設定を見てみましょう。
条件 | 動作 | ||
---|---|---|---|
送信元 | あて先 | ポート番号 | |
任意 | Webサーバ | 80 | 許可 |
任意 | メールサーバ | 25 | 許可 |
a | 任意 | b | 許可 |
任意 | 任意 | 任意 | 拒否 |
- 「任意」→「メールサーバ」のポート番号 25( SMTP )による転送が許可
- 逆方向の
「メールサーバ」→「任意」のポート番号 25( SMTP )による転送も許可
したがって、空欄 a は「メールサーバ(選択肢エ)」で、空欄 b は「 25 (選択肢イ)」です。
「任意」とは、何らかの通信相手のことであり、ここでは「外部のメールサーバ」です。
ファイアウォール B のフィルタリングの設定を見てみましょう。
条件 | 動作 | ||
---|---|---|---|
送信元 | あて先 | ポート番号 | |
Webサーバ | DB サーバ | 1999 | 許可 |
メールサーバ | DB サーバ | 1999 | 許可 |
管理用 PC | c | d | 許可 |
管理用 PC | メールサーバ | 22 | 許可 |
管理用 PC | メールサーバ | 25 | 許可 |
管理用 PC | Web サーバ | 80 | 許可 |
管理用 PC | Web サーバ | 22 | 許可 |
任意 | 任意 | 任意 | 拒否 |
- 「管理用 PC 」→「メールサーバ」のポート番号 25( SMTP )による送信が許可
- 「管理用 PC 」→「メールサーバ」のポート番号 110( POP3 )による受信も許可
したがって、空欄 c は「メールサーバ(選択肢エ)」で、空欄 b は、「 110 (選択肢エ)」です。
「管理用 PC 」→「メールサーバ」のポート番号 22( SSH )も許可されていますが、これはメールの送受信ではなく、メールサーバを管理するためにログインするためです。
解答設問 1 a ― エ、 b ― イ、 c ― エ、 d ― エ
いかがでしたか?
メールの通知プロトコルである SMTP と POP3 の役割を、しっかりと理解できたでしょう。
この連載では、今後も、多くの受験者が苦手としている用語を取り上げて行きます。それでは、またお会いしましょう!
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