基本情報でわかる IPアドレス と サブネットマスク
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この記事は基本情報技術者試験の旧制度( 2022 年以前)の記事ですが、試験対策ではなく、技術用語を理解する上では問題ないと考えています。
試験対策としてお読みになる場合は、現在の試験制度では出題されない午後問題を一部題材にしているので、ご注意ください。
この連載では、基本情報技術者試験によく出題されるテクノロジー関連の用語を、午前問題と午後問題のセットを使って解説します。
午前問題で用語の意味や概念を知り、午後問題で技術の活用方法を知ってください。それによって、単なる丸暗記では得られない明確さで、用語を理解できるようになります。
今回のテーマは、 IPアドレス と サブネットマスク です。
もくじ
そもそもインターネットとは?
もしも、「インターネットをご存じですか?」と尋ねたら、ほとんどの人が「もちろん知っています!」と答えるでしょう。それでは、「インターネットの インター という言葉の意味をご存じですか?」と尋ねたら、多くの人が答えに悩んでしまうでしょう。
インターネットのインター( inter )は、「間の」という意味です。 インターネットは、ネットワークとネットワークの間をつないだものなのです。
ここで、「ネットワーク」という言葉の意味にも注目してください。
一般的には、ネットワークは、様々な形式や規模のネットワークの総称ですが、 IT 用語では、オフィス内や企業内のネットワークのように、ひとつの小さなネットワークを指します。この小さなネットワークの間をルータという中継装置でつなぐことで、ネットワークの規模が大きくなります。そして、様々なプロバイダが提供するルータ網に接続することで、いわゆるインターネットに接続されるのです。
「インターネットは、ネットワークとネットワークの間をつないだものである」ということがわかれば、今回のテーマである IP アドレスとサブネットマスクの仕組みもわかります。
-
IPアドレス
- インターネットにおけるホスト(パソコン、サーバ、ルータなど、何らかの通信機器)を識別する番号です
- ホストは、何らかのネットワークに所属しています
- そのため IPアドレスは、上位桁がネットワークアドレス(ネットワークを識別する番号)、下位桁がホストアドレス(ホストを識別する番号)という形式になっています
- 「総務部に所属した山田さん」のように、「ネットワークアドレスに所属した、ホストアドレスさん」という形式
- この上位桁と下位桁の区切りを示すのが、 サブネットマスクです
IPアドレスとサブネットマスクに関する午前問題 ~ IPアドレスとは? サブネットマスクとは?
IPアドレスとサブネットマスクの具体例として、午前問題を見てみましょう。以下に、問題を示します。
IPアドレスの規格には、 IPv4 と IPv6 がありますが、この記事で取り上げている問題では、 IPv4 をテーマにしています。
次の IP アドレスとサブネットマスクをもつ PC がある。この PC のネットワークアドレスとして,適切なものはどれか。
- IP アドレス:
- 10.170.70.19
- サブネットマスク:
- 255.255.255.240
ア 10.170.70.0
ウ 10.170.70.31 エ 10.170.70.255
IPアドレスとサブネットマスクは、どちらも全体で 32 ビットの数値であり、それを 8 ビットずつドットで区切って、それぞれの部分を 10 進数で示します。
問題に示された、 255.255.255.240
というサブネットマスクを 2 進数で表すと、
11111111.11111111.11111111.11110000
です。このように、サブネットマスクは、上位桁に 1 を並べ、下位桁に 0 を並べたものとなっていて、それらによって、 IPアドレスの上位桁と下位桁の区切りを示します。
ここでは、上位桁に 1 が 28 ビット並び、下位桁に 0 が 4 ビット並んでいるので、 IPアドレスの上位 28 ビットがネットワークアドレスであり、下位 4 ビットがホストアドレスです。
10.170.70.19
という IPアドレスを 2 進数で表すと
00001010.10101010. 01000110.00010011
です。上位 28 ビットの
00001010.10101010. 01000110.0001
がネットワークアドレスですが、ネットワークアドレスだけを示すときは、ホストアドレスの部分を 0 で埋める約束になっています。
したがって、下位 4 ビットを 0 で埋めた
00001010.10101010. 01000110.00010000
がネットワークアドレスであり、 10 進数で示すと、 10.170.70.16
になります。選択肢イが正解です。
解答イ
IPアドレス と サブネットマスク に関する午後問題
今度は、 IPアドレスとサブネットマスクに関する午後問題を見てみましょう。
基本情報技術者試験の午後問題は、 IT に関する用語や概念を事例(架空の事例)に仕立てたものです。以下に問題(一部を抜粋したもの)を示しますので、ざっと目を通してください。すぐ後で、問題の内容を説明します。
ネットワークの構築に関する次の記述を読んで,設問 1, 2 に答えよ。
ファイアウォールはインターネットから基幹ネットワークへ向けた通信と基幹ネッ トワークからインターネットに向けた通信を全て遮断している。したがって,業務用 PC から社内にある社外公開用 Web サーバや社内システム Web サーバへはアクセス できるが,社外の Web サーバへはアクセスできない。
設問 1
次の記述中のに入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。
〔IPアドレス〕
10.0.0.2 | 10.0.0.3 | 10.0.0.4 | 10.0.1.1 | 10.0.1.2 |
10.0.1.3 | 10.0.2.1 | 10.0.2.2 | 10.0.2.3 | 10.0.2.4 |
a に関する解答群
ア 255.0.0.0
ウ 255.255.255.0 エ 255.255.255.128
b に関する解答群
ア 1 イ 2
オ 5 カ 6 キ 7 ク 8
D 社には、
- DMZ( De-Militarized Zone = 非武装地帯)
- 基幹ネットワーク
- ネットワーク A
- ネットワーク B
というネットワークがあり、それぞれがルータおよびファイアウォールでつながれています。
サブネットマスクを求める
設問 1 の空欄 a は、「ネットワーク A のサブネットマスクを求めよ」という問題です。
ネットワーク A にあるルータの IPアドレスは
10.0.1.1
であり、
Web サーバ 1 の IPアドレスは
10.0.1.200
です。
同じネットワークにあるホストは、 IPアドレスのネットワークアドレスが同じなので、 10.0.1
までの部分、つまり上位 24 ビットまでがネットワークアドレスだと思われます。
この範囲を 2 進数で示すと
11111111.11111111.11111111
であり、
10 進数で示すと
255.255.255
です。
解答群を見ると、
255.255.255.0
という選択肢ウと、
255.255.255.128
という選択肢エがあるので、これらに正解を絞り込めます。
それでは、 255.255.255.0
と 255.255.255.128
のどちらが適切でしょうか?
255.255.255.0
を 2 進数で示すと
11111111.11111111.11111111.00000000
なので、下位 8 ビットがホストアドレスです。 8 ビットで表せるのは、 00000000
~ 11111111
であり、 10 進数で 0 ~ 255 です。
したがって、 10.0.1.1
の 1 というホストアドレスも、 10.0.1.200
の 200 というホストアドレスも表せます。
255.255.255.128
を 2 進数で表すと、
11111111.11111111.11111111.10000000
なので、下位 7 ビットがホストアドレスです。 7 ビットで表せるのは、 0000000
~ 1111111
であり、 10 進数で 0 ~ 127 です。
したがって、 10.0.1.1
の 1 というホストアドレスを表せますが、 10.0.1.200
の 200 というホストアドレスを表せません。
したがって、サブネットマスクは、 255.255.255.0
が適切であり、選択肢ウが正解です。
IPアドレスを求める
設問 1 の空欄 b は、「ネットワーク A にある Web サーバ 2 に設定可能な IPアドレスを求めよ」という問題です。
ネットワーク A のサブネットマスクは、上位 24 ビットがネットワークアドレスなので、 IPアドレスの上位桁は、 10.0.1
でなければなりません。下位 8 ビットがホストアドレスなので、 00000000
~ 11111111
の範囲( 10 進数で 0 ~ 255 の範囲)を下位桁に設定できます。
ただし、すべてが 0 のホストアドレスと、すべてが 1 のホストアドレスは、設定できない約束になっています。
- すべてが 0 のホストアドレス
- ネットワークアドレスを示すために使われる
- すべてが 1 のホストアドレス
- ブロードキャスト(同じネットワーク内にあるすべてのホストを宛先にして通信すること)を意味する
そして、これは当然のことですが、すでに他のホストに設定されているホストアドレスは、設定できません。
以下は、問題に示された IPアドレスの中から、
- ネットワークアドレスが
10.0.1
でないものに赤色のアミカケ - すでに他のホストに設定されているホストアドレスに紫色のアミカケ
を付けたものです(ここでは、すべてが 0 のホストアドレスと、すべてが 1 のホストアドレスはありません)。
10.0.0.2 | 10.0.0.3 | 10.0.0.4 | 10.0.1.1 | 10.0.1.2 |
10.0.1.3 | 10.0.2.1 | 10.0.2.2 | 10.0.2.3 | 10.0.2.4 |
アミカケを付けていない IP アドレスは、 2 つあり、これらのいずれかを Web サーバ 2 に設定できます。したがって、選択肢イが正解です。
解答設問 1 a – ウ, b – イ
いかがでしたか?
午前問題と午後問題のセットで、 IPアドレスとサブネットマスクを十分に理解できたでしょう。
この連載は、今回で最終回になります。
これまで連載をお読みいただき、ありがとうございました。どこかで、また、お会いしましょう!
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大手電気メーカーでPCの製造、ソフトハウスでプログラマを経験。独立後、現在はアプリケーションの開発と販売に従事。その傍ら、書籍・雑誌の執筆、またセミナー講師として活躍。軽快な口調で、知識0ベースのITエンジニアや一般書店フェアなどの一般的なPCユーザの講習ではダントツの評価。
お客様の満足を何よりも大切にし、わかりやすい、のせるのが上手い自称ソフトウェア芸人。
主な著作物
- 「プログラムはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「コンピュータはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「出るとこだけ! 基本情報技術者」 (翔泳社)
- 「ベテランが丁寧に教えてくれる ハードウェアの知識と実務」(翔泳社)
- 「ifとelseの思考術」(ソフトバンククリエイティブ) など多数