IT初心者のための基本情報ではじめる コンピュータ 入門 ~コンピュータシステム分野 1
この連載は、これから IT の勉強をはじめる人を対象としたものです。 基本情報技術者試験の出題分野ごとに、仕組み、主要な用語、および過去問題を紹介します。 受験対策としてだけでなく、 IT の基礎知識を幅広く得るために、ぜひお読みください。
今回は、コンピュータシステム 分野 その 1 として コンピュータ を取り上げます。
コンピュータの仕組み
コンピュータには、マイコン、パソコン、大型コンピュータ、スーパーコンピュータなど、様々な種類がありますが、およそコンピュータと呼ばれるものは、
- 入力装置
- 記憶装置
- 演算装置
- 出力装置
- 制御装置
から構成されていて、これらを コンピュータの五大装置 と呼びます。 五大装置を持つことが、コンピュータの仕組みなのです。
- 入力装置
- コンピュータの外部から内部にデータを取り込みます。
- 記憶装置
- コンピュータの内部でデータを保持します。
- 演算装置
- コンピュータの内部でデータを加工します。
- 出力装置
- コンピュータの内部から外部にデータを送り出します。
- 制御装置
- コンピュータに与えられたプログラムの内容に従って、他の装置を動作させます。
下図に、コンピュータの五大装置の関係を示します。
身近なパソコンを例にして、コンピュータの五大装置の具体例を示しましょう。
プロセッサ( CPU とも呼ばれます)は、制御装置と演算装置を兼務しています。
キーボードやマウスは、入力装置です。
メモリ、ハードディスク装置、光ディスク( CD 、 DVD 、ブルーレイディスク)装置は、記憶装置です。 メモリを「主記憶装置」と呼び、ハードディスク装置と光ディスク装置「補助記憶装置」と呼んで、それぞれを区別することもあります。
液晶ディスプレイやプリンタは、出力装置です。
コンピュータの主要用語
基本情報技術者試験のシラバス(情報処理技術者試験における知識・技能の細目)には、コンピュータの分野の用語が
- プロセッサ
- メモリ
- バス
- 入出力デバイス
- 入出力装置
に分けて示されています。
バスとは、コンピュータ内部でデータをやり取りするための伝送路のことです。
入力装置と出力装置に関する用語は、入出力装置にまとめて示されています。 入出力デバイスには、入出力装置のインターフェース、データ転送方式、接続形態、入出力制御方式などに関する用語が示されています。
それぞれの主要な用語を紹介しましょう。 赤色で示した用語は、後で紹介する過去問題のテーマになっています。
- プロセッサ
- CPU 、GPU 、命令レジスタ、指標レジスタ、スタックポインタ、内部割込み、外部割込み、 CPI 、 MIPS 、パイプライン
- メモリ
- RAM 、 ROM 、 DRAM 、 SRAM 、キャッシュメモリ、実効アクセス時間、 SSD 、 CD 、 DVD 、ブルーレイディスク、フラッシュメモリ( USB メモリ、 SD カード)
- バス
- アドレスバス、データバス、コントロールバス
- 入出力デバイス
- USB 、 IEEE1394 、 Bluetooth 、 IrDA 、シリアル、パラレル、スター接続、デイジーチェーン接続
- 入出力装置
- マウス、キーボード、スキャナー、液晶ディスプレイ、有機 EL ディスプレイ、レーザープリンター、インクジェットプリンター、 3D プリンタ
コンピュータの過去問題
コンピュータの分野の過去問題を 3 問ほど紹介しましょう。
CPU の機能に関する問題
最初は、 CPU の機能に関する問題です。 CPU には、現在実行中のプログラムを中断させて、他のプログラムを実行する 割込み と呼ばれる機能があります。
割込みは、プログラムの動作によって発生する 内部割込み と、装置の動作によって発生する 外部割込み に分類されます。
内部割込みに分類されるものはどれか。
- ア
- 商用電源の瞬時停電などの電源異常による割込み
- イ
- ゼロで除算を実行したことによる割込み
- ウ
- 入出力が完了したことによる割込み
- エ
- メモリパリティエラーが発生したことによる割込み
選択肢の中で、プログラムの動作によって発生するのは、選択肢イの ゼロ除算 だけです。
選択肢アの 電源異常 、選択肢ウの 入出力が完了 、選択肢エの パリティエラー は、電源装置、入出力装置、メモリという装置の動作にとって発生します。 したがって、選択肢イが正解です。
メモリの種類に関する問題
次は、メモリの種類に関する問題です。 メモリの種類は、 ROM と RAM に大別され、さらに RAM は、 SRAM と DRAM に分類されます。
- SRAM
- フリップフロップ(論理演算による切り替え回路)で記憶を行い、高速ですが高価なので、容量より速度が優先されるキャッシュメモリ( CPU の内部にあるメモリ)として使われます。
- DRAM
- コンデンサ(小さな充放電素子)で記憶を行い、低速ですが安価なので、速度より容量が優先されるメインメモリとして使われます。
さらに、 DRAM では、記憶されているデータが自然放電で消えてしまうので、定期的に同じデータで上書きする リフレッシュ と呼ばれる動作が必要です。 SRAM では、リフレッシュが不要です。
SRAM と比較した場合の DRAM の特徴はどれか。
- ア
- 主にキャッシュメモリとして使用される。
- イ
- データを保持するためのリフレッシュ又はアクセス動作が不要である。
- ウ
- メモリセル構成が単純なので、ビット当たりの単価が安くなる。
- エ
- メモリセルにフリップフロップを用いてデータを保存する。
選択肢を見てみましょう。
- 選択肢ア
- キャッシュメモリとして使用されるので SRAM の特徴です。
- 選択肢イ
- リフレッシュが不要なので、 SRAM の特徴です。
- 選択肢ウ
- 単価が安くなるので DRAM の特徴です。
- 選択肢エ
- フリップフロップを用いるので SRAM の特徴です。
したがって、選択肢ウが正解です。
入出力装置の接続形態に関する問題
最後は、入出力装置の接続形態に関する問題です。
ここでは、デイジーチェーン接続であるものを選びます。 デイジーチェーン( daisy chain )は、直訳すると「ヒナギクをつないだもの」という意味ですが、日本語の「数珠つなぎ」という言葉がぴったりでしょう。
次に示す接続のうち、デイジーチェーンと呼ばれる接続方法はどれか。
- ア
- PC と計測機器とを RS-232C で接続し, PC とプリンタとを USB を用いて接続する。
- イ
- Thunderbolt 接続ポートが 2 口ある 4K ディスプレイ 2 台を, PC の Thunderbolt 接続ポートから 1 台目のディスプレイにケーブルで接続し,さらに, 1 台目のディスプレイと 2 台目のディスプレイとの間をケーブルで接続する。
- ウ
- キーボード,マウス及びプリンタを USB ハブにつなぎ, USB ハブと PC とを接続する。
- エ
- 数台のネットワークカメラ及び PC をネットワークハブに接続する。
- 選択肢ア
- PC と計測装置、 PC とプリンタ、それぞれを別々につないでいるので、デイジーチェーンではありません。
- 選択肢イ
- PC → 1 台目のディスプレイ → 2 台目と数珠つなぎにしているので、デイジーチェーンです。
- 選択肢ウ
- PC に接続された USB ハブから広がるようにキーボード、マウス、プリンタをつないでいるので、数珠つなぎではありません。 このような接続形態を スター接続 と呼びます。
- 選択肢エ
- ネットワークハブから広がるように数台のネットワークカメラと PC をつないでいるので、数珠つなぎではありません。 これも、スター接続です。
したがって、選択肢イが正解です。
今回は「コンピュータシステム」その 1 として「コンピュータ」の仕組み、主要な用語、および過去問題を紹介しました。
次回は、「コンピュータシステム」その 2 として「 OS 」の分野を取り上げます。
それでは、またお会いしましょう!
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