情報処理安全確保支援士 試験ガイド 難易度や合格のしやすさ|令和2年 春期試験にむけて


2019-12-26 公開
資格紹介

情報処理安全確保支援士は、情報セキュリティに携わるプロフェッショナルの資格です。令和2年の春試験から、情報処理技術者試験全体で情報セキュリティの重要度が高くなったこともあり、今一番HOTな資格になります。

産業構造・市場取引の可視化(METI/経済産業省) より一部加工)

info 試験そのものは、旧情報セキュリティスペシャリストの内容を引き継いでいますが、合格後に登録し、定期的に研修を受けてスキルを維持するような制度になっているのが特徴です(登録は任意)。

受験者層から見た試験の特徴

令和 2 年度 春期試験から、情報処理技術者試験の全区分で情報セキュリティの重要性を高めるという発表がありました。 これを受けて、情報処理安全確保支援士を「先に受験する人」が増えるのではないでしょうか。

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そもそも、この情報処理安全確保支援士の受験者のうち、経験者(情報セキュリティ技術支援・管理・運用業務を担当している人)は、全受験者の 10 % ほどです。しかも、広く浅い知識が求められているので、暗号アルゴリズムを開発している専門家や、特定言語でセキュアなプログラムを開発しているエンジニアのような “狭く深い” 知識を持った専門家が受験しているという話は聞きません。

そういう意味では、ほとんどの受験者が、プログラマや SE 、プロジェクトマネージャ、コンサルタントなどだと言うことです。

きっと自分の仕事上、あるいはキャリアを考えるうえで、フルスタックを目指す第一歩に “情報セキュリティ” を選んだのでしょう。

難易度や合格率

難易度で言うと、一つ気になることがあります。難易度が微妙に下がった(合格しやすくなった)かもしれません。

これは、特に IPA から公表された訳ではないのですが、平成 31 年度の春期試験が例年に比べて簡単だった、という声が多いのです。その年は筆者自身も受験したのですが、同意見です。実際、過去 3 回、合格率はじわじわと上がってきています。

直近 3 年の合格率の推移
年度/期 合格率
令和元年度 秋期 19.4%
平成 31 年度 春期 18.9%
平成 30 年度 秋期 18.5%
平成 30 年度 春期 16.9%
平成 29 年度 秋期 17.1%
平成 29 年度 春期 16.3%

これはあくまでも勝手な想像なのですが、情報処理安全確保支援士の “登録者数” が想定以上に少なくて計画に満たないので、登録者を増やすことを狙ってのことかもしれません。難易度を下げて合格者が増えれば、登録者も増えますからね。

この試験だけは、他の試験区分とゴールが違います。あくまでも IPA が目標としているゴールは “登録者数” です。勝手な想像ですが、そういう可能性も十分合理的だと思います。

 

それともう一つ。

他区分では、IT エンジニアの担当業務が難易度や合格率に影響しますが、この情報処理安全確保支援士は 勤務先のセキュリティレベル によって合格しやすかったり、難しかったりする印象があります。

セキュリティポリシの有無、CSIRT やインシデント対応手順の有無、ID とパスワードの運用、スマホやノート PC の利用規約、入退室管理など . . . 自社のセキュリティレベルが高ければ、それを守る立場で、十分な知識がすでに付いている可能性があるからです。

実際に、これまでも「全く勉強できなかったけれど、偶然自分の知っている問題ばかり出て合格した」という人も、結構いました。

 

以上のような観点を踏まえて、難易度や合格率は、次のような知識や経験によって変わると考えておけばいいでしょう。

    情報処理安全確保支援士に合格しやすい前提知識や経験

  1. “セキュリティ” の知識を使う業務を担当している
  2. 自社のセキュリティ対策が進んでいる(しっかりと対策が行われている)
  3. 他の高度系区分に合格している。もしくはそのレベルの対策をしたことがある
  4. 日経 NETWORK を定期購読してしたり、IPA の資料をこまめにチェックしている

上記の 1. ~ 4. の中でどの部分が自分に欠けているのかを正確に把握して、難易度及び合格率を考えましょう。いかに弱点をカバーするのか、それにかかっていると言えます。

2019 年度 秋期試験からみて

2019 年 10 月 20 日に秋試験を受験された方は、その試験区分でしっかりと勉強したのなら、その資産によって . . . もう既に合格に近くなっているかもしれません。そのあたりの関係性も、この時期知っておいた方がいいでしょう。

2019 年度 秋期の受験区分 春に情報処理安全確保支援士を受験する?
(1)SC: 情報処理安全確保支援士 (合格しやすさ:★★★ おススメ度:★★★

秋期試験で情報処理技術者試験を受験して、残念ながら不合格だった場合に、再度受験するパターンだと思います。「何としてもセキュリティに強くなる!」というのはキャリア形成の観点からは間違っていません。

秋期試験のときにしっかりと勉強したにもかかわらず不合格だったのなら、連続して受験して「今度こそ合格するぞ!」というスタンスで挑むことは大正解だと思います。全てが蓄積になりますからね。

加えて、課題が明確なら、合格もしやすいと思います。単に知識が足りない場合は知識を補い、時間が足りなかったり、答えはわかっているんだけれど字数にまとめるところで点数を落としている場合は、解答手順を見直せば、それで秋よりも前進しますからね。

(2)NW: ネットワークスペシャリスト (合格しやすさ:★★★ おススメ度:★★★

この試験に最も近い試験区分がネットワークスペシャリスト試験になります。それぞれ類似問題が出るくらい強い相関関係があります。したがって、どちらかの資格が必要な人は、春は SC 、秋は NW を受験することを勧めています。

特に、ネットワークスペシャリスト試験対策で培った知識は、この試験でも大きな武器になります。ネットワークの基礎知識が無い場合、ネットワークセキュリティ部分はそこから始めなければなりませんからね。

(3)AP: 応用情報技術者 (合格しやすさ:★★ おススメ度:★★★

レベル 4(高度系)の最初の試験に情報処理安全確保支援士を選択するのは、いいアイデアだと思います。前述の通り、全区分で情報セキュリティの問題が重視されているからです。特に、SM、AU、NW の 3 区分は午後の問題でも情報セキュリティが出題される可能性がありますからね。

ただし、応用情報技術者試験の対策で培ったノウハウが役立つかというと、そうでもありません。

合格するには高度系の記述式の試験問題に慣れておく必要があります。特に午後Ⅰは時間内に解けるかどうかによって、合格できるかどうかが変わってくるので、その練習が必要でしょう。

(4)SG: 情報セキュリティマネジメント (合格しやすさ: おススメ度:★★★

情報セキュリティマネジメント試験は、利用者側の非IT人材向けの試験です。しかし、同じ “セキュリティ” をテーマにしたものです。それゆえおススメなのは間違いありません。

ただし、試験対策で培った “マネジメント領域の知識” は役立ちますが、そもそもレベル 2 の試験から、レベル 3 を飛び越してレベル 4 の試験を受験するので、かなりの勉強時間が必要になる覚悟だけは必要です。午前Ⅰ対策や、記述式対策、午後Ⅱの長文読解などの対策も必要になりますからね。

(5)ST: ITストラテジスト
(6)SA: システムアーキテクト
(7)SM: ITサービスマネージャ
(合格しやすさ:★★ おススメ度:★★★

高度系の論文試験の 3 区分から、情報処理安全確保支援士試験を受験する場合、試験対策で培ったノウハウは、残念ながらそれほど使えません。強いてあげるとすれば、BCP の部分や IT サービスマネージャのインシデント対応関連の部分ぐらいだと思います。

ただ、情報セキュリティに関する知識は “どの区分でも” 必要であり、その重要性が増してきています。それゆえ情報処理技術者試験を活用してキャリア形成を狙っている人にとっては、早い段階で “情報セキュリティ” に関する知識を身に着けて “得意” になっていれば後々楽になるでしょう。

(8)FE: 基本情報技術者 (合格しやすさ: おススメ度:★★★

レベル 2 の基本情報技術者から、レベル 3 の応用情報を飛び越してレベル 4 に挑戦する場合、合格は不可能とは言いませんが “かなりの勉強時間” が必要になるのは間違いありません。上記の応用情報技術者試験後に準備する以上に時間がかかるでしょう。

したがって、何かしらこの資格を必要な理由がある場合以外はおススメできません。

勉強方法や勉強時間

このあたりは、今後の記事に期待していてください。

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