「厳選5題」過去問と解説 | 平成24年度 春期 の過去問やるならこれをやれ
ここでは、平成 24 年度 春期 基本情報技術者試験の午前試験 の中から「やるべき問題」を 5 題に厳選し、ぶっちゃけた解説をさせていただきます。
やるべき問題とは、よく出る問題であり、かつ、練習すればできる問題(練習しないとできない問題)です。
もくじ
厳選問題looks_one自分流に具体例を書けばイメージをつかめます
多数のデータが単方向リスト構造で格納されている。 このリスト構造には,先頭ポインタとは別に、末尾のデータを指し示す末尾ポインタがある。 次の操作のうち,ポインタを参照する回数が最も多いものはどれか。
ア リストの先頭にデータを挿入する。
イ リストの先頭のデータを削除する。
ウ リストの末尾にデータを挿入する。
エ リストの末尾のデータを削除する。
この問題を見て「まったくイメージが思い浮かばない!」と思った人が多いでしょう。
このような問題は、自分流の具体例を書いてみましょう。 そうすれば、イメージをつかめます。 以下に具体例の例を示しますので、参考にしてください。
単方向リストですから、1 つの要素が「データの値」と「ポインタ(次にどこいつながっているか)」という 2 つの情報を持っています。
ここでは、要素数 5 個のリストを想定して、それぞれのデータを「あ」「い」「う」「え」「お」とします。
それぞれの要素に 100 番地、200 番地、300 番地、400 番地、500 番地という適当なアドレスを想定して、個々の要素のポインタを設定します。
先頭の要素のアドレスを持つ先頭ポインタと、末尾の要素のアドレスを持つ末尾ポインタがあるので、それらに 100 番地と 500 番地を設定します。 リストのつながりを矢印で示して、具体例のできあがりです。
具体例が書けたので、問題を解く準備ができました。 ポインタを参照する回数が最も多い操作を選ぶ問題なので、それぞれの選択肢の操作を実際にやってみましょう。
選択肢アの「リストの先頭にデータを挿入する」は、
- 600 番地に「か」という要素を追加することを想定し、先頭ポインタを参照して( 1 回目)、その 100 番地という情報を追加した要素のポインタに設定し、先頭ポインタを 600 番地に変更
します。
ポインタの参照は、1 回だけです。
選択肢イの「リストの先頭のデータを削除する」は、
- 先頭ポインタを参照して( 1 回目)
- 先頭の要素のポインタを参照して( 2 回目)、その 200 番地という情報を先頭ポインタに設定
します。
ポインタの参照は、2 回です。
選択肢ウの「リストの末尾にデータを挿入する」は、
- 600 番地に「か」「次はなし」という要素を追加することを想定し、末尾ポインタを参照して( 1 回目)、末尾の要素の「次はなし」を追加した要素の「次は 600 番地」に変更し、さらに末尾ポインタを「末尾は 600 番地」に変更
します。
ポインタの参照は、1 回だけです。
選択肢エの「リストの末尾のデータを削除する」は、
- 末尾ポインタを参照して( 1 回目)「末尾は 500 番地」を記憶しておき、
- 先頭ポインタを参照して( 2 回目)100 番地の要素にアクセスし、
- その要素のポインタを参照して( 3 回目)「次は 500 番地」ではないので 200 番地の要素にアクセスし、
- その要素のポインタを参照して( 4 回目)「次は 500 番地」ではないので 300 番地の要素にアクセスし、
- その要素のポインタを参照して( 5 回目)「次は 500 番地」ではないので 400 番地の要素にアクセスし、
- その要素のポインタを参照して( 6 回目)「次は 500 番地」なのでそれを「次はなし」に変更し、末尾ポインタを「末尾は 400 番地」に変更
します。
ポインタの参照は、6 回です。
以上のことから、ポインタを参照する回数が最も多い操作は、選択肢エです。
解答 エ
厳選問題looks_two事前にしっかりと練習しておけば試験当日に焦りません
次の条件で四つのジョブが CPU 処理及び印刷を行う場合に,最初の CPU 処理を開始してから最後の印刷が終了するまでの時間は何分か。
-
〔条件〕
- 多重度 1 で実行される。
- 各ジョブの CPU 処理時間は 20 分である。
- 各ジョブは CPU 処理終了時に 400 M バイトの印刷データをスプーリングする。
スプーリング終了後に OS の印刷機能が働き,プリンタで印刷される。 - プリンタは 1 台であり,印刷速度は 100 M バイト当たり 10 分である。
- CPU 処理と印刷機能は同時に動作可能で,互いに影響を及ぼさない。
- スプーリングに要する時間など,条件に記述されていない時間は無視できる。
ア 120 イ 160 ウ 180 エ 240
もしも、この問題を試験当日に初めて見たら、「ジョブ」「多重度」「スプーリング」という言葉に惑わされて、「何これ! どうやって解くの?」と大いに焦るでしょう。 こういう問題こそ、事前にしっかりと練習しておくべきです。
まず、言葉の意味を説明しましょう。
- 「ジョブ」
- プログラムのことです。
- 「多重度」
- 同時に実行されるプログラムの数のことです。
ここでは、「多重度 1 」ですから、同時に実行されるプログラムはなく、1 つのプログラムの実行が終了してから、次のプログラムの実行が開始されます。
「スプーリング」とは、低速の周辺装置へ出力するデータを OS が預かる機能です。
ここでは、低速なプリンタへの印刷データを OS が預かっています。
問題文の 6. に
「スプーリングに要する時間など、条件に記述されていない時間は無視できる」
とあるので、スプーリングは瞬時に行われます。
したがって、CPU 処理と印刷処理を行う個々のジョブから見ると、CPU 処理が終わった時点で瞬時に印刷処理(実際にはスプーリング)が終了し、次のジョブを開始できます。
OS は、プリンタの処理速度に合わせて、預かった印刷データを出力します。
次に、それぞれの処理時間を確認しましょう。
ジョブは、全部で 4 つあり、それぞれが 20 分の CPU 処理と瞬時の印刷処理(スプーリング)を行います。
個々のジョブの印刷データが 400 M バイトで、プリンタの印刷速度が 100 M バイトあたり 10 分です。
したがって、個々のジョブの印刷には、400 M バイト × 100 M バイト × 10 分 = 40 分かかります。
CPU 処理と印刷処理の順序を図に書いてみましょう。
4 つのジョブを A 、B 、C 、D とし、それぞれの CPU 処理と印刷処理を色分けして示します。 CPU 処理が終わると、すぐに次の CPU 処理が開始されること、印刷処理は、CPU 処理とは別に、順番に行われることがポイントです。
図を書いたことで、最初の CPU 処理を開始しから最後の印刷処理が終了するまでの時間は、180 分あることがわかりました。 ウが正解です。
解答 ウ
厳選問題looks_3ハードウェアの問題は 2 進数の問題です
7セグメント LED 点灯回路で,出力ポートに 16 進数で 6D を出力したときの表示状態はどれか。 ここで, P7 を最上位ビット(MSB), P0 を最下位ビット( LSB )とし, ポート出力が 1 のとき, LED は点灯する。
私の講師経験では、「ハードウェアが苦手です」という受験者が多いようです。
そんな人が、この問題を見たら「何これ? 電気回路なんてわからない!」と思うでしょう。
でも、ご安心ください。
基本情報技術者試験のハードウェアの問題は、結局のところ 2 進数の問題だからです。 電気回路がわからなくても、 2 進数がわかれば問題を解けます。
ディジタルの電気回路では、1 本の電線で 2 進数の 1 桁の情報が伝達されます。
この問題では、出力ポート(データを出力する窓口)にある P0 ~ P7 の 8 本の電線を使って、8 桁の 2 進数が出力され、それぞれが 7 セグメント LED の a ~ Dt に接続されます。
7セグメント LED とは、7 つの LED を数字の 8 の形に並べ、それらのいくつかを点灯させることで数字や文字の形にするものです。 この LED には、小数点(ドット)を示す LED もあります。
問題に、「ポート出力が 1 のとき、LED は点灯する」とあります。
これは、P0 ~ P7 の 8 本の電線につながった a ~ Dt のうち、1 が伝達されているものが点灯するという意味です。
ここでは、16 進数で 6D = 2 進数で 01101101 を出力しています。
P7 が最上位ビットで、P0 が最下位ビットなので、Dt 、g 、f 、e 、d 、c 、b 、a のうち、1 になっている g 、f 、d 、c 、a が点灯します。
これによって、数字の 5 の形になります。 正解は、ウです。
解答 ウ
厳選問題looks_4算数の文章問題の大人版だと思って解いてください
設計書の作成状況が表のとおりであるとき, 3 種類の設計書全ての作成を完了させるために必要な今後の工数(人時)は幾らか。
設計書 | 作成枚数 (枚) |
1 枚当たりの所要工数 (人時) |
現在までの作成済み枚数 (枚) |
---|---|---|---|
基本設計書 | 80 | 5 | 80 |
概要設計書 | 300 | 2 | 200 |
詳細設計書 | 500 | 2 | 50 |
ア 550 イ 900 ウ 1100 エ 2000
この問題を見て「何これ? 工数の計算方法なんて知らない!」と思ったなら、心配しなくて大丈夫です。
基本情報には、事前に公式を暗記する必要がある問題が出たことがありません。 常識的な考えで計算できます。
小学校や中学校の算数で、「文章問題(文章を読んで計算式を考える問題)」がありましたが、その大人版のようなものです。
それでは、常識的な考えで、問題を解いてみましょう。
基本設計書は、80 枚のうち 80 枚が作成済みなので、残りの工数はありません。
概要設計書は、300 枚のうち 200 枚が作成済みなので、残り 100 枚です。 1 枚当たりの所要工数が 2 人時なので、この 100 枚には 2 × 100 = 200 人時の工数がかかります。
詳細設計書は、500 枚のうち 50 枚が作成済みなので、残り 450 枚です。 1 枚当たりの所要工数が 2 人時なので、この 450 枚には 2 × 450 = 900 人時の工数がかかります。
以上のことから、3 種類の設計書全ての作成を完成させるために必要な今後の工数は、200 人時 + 900 人時 = 1100 人時であり、ウが正解です。
解答 ウ
厳選問題looks_5花形、金のなる木、問題児、負け犬は、そう呼ばれる理由で覚えよう
プロダクトポートフォリオマネジメント( PPM )における “花形” を説明したものはどれか。
ア 市場成長率,市場占有率ともに高い製品である。 成長に伴う投資も必要とするので,資金創出効果は大きいとは限らない。
イ 市場成長率,市場占有率ともに低い製品である。 資金創出効果は小さく,資金流出量も少ない。
ウ 市場成長率は高いが,市場占有率が低い製品である。 長期的な将来性を見込むことはできるが,資金創出効果の大きさは分からない。
エ 市場成長率は低いが,市場占有率は高い製品である。 資金創出効果が大きく,企業の支柱となる資金源である。
この問題を見て「何これ? 花形って役者のことじゃないの!」と思われて当然です。 もともと英語だった言葉を、日本人の感覚に合わせて意訳したものだからです。
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント( Product Portfolio Management = PPM )は、1970 年代に米国の Boston Consulting Group が提唱した経営資源(製品や事業など)のマネジメント手法です。 経営資源を、市場成長率と市場占有率の高低から、Stars 、Cash Cows 、Question Marks 、Dogs の 4 つに分類します。
これらが、「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」と意訳されているのです。 それぞれが何であるかは、丸暗記ではなく、そう呼ばれる理由を納得して覚えてください。 そうすれば、決して忘れません。
市場成長率が高ければ、お金がかかることになります。 市場占有率が高ければ、お金を稼ぐことになります。
- 市場成長率が高く、市場占有率も高い経営資源は、お金がかかりますが、お金も稼ぐので、花形です。
- 市場成長率が低く、市場占有率が高い経営資源は、お金がかからないのに、お金を稼ぐので、金のなる木です。
- 市場成長率が高いのに、市場占有率が低い経営資源は、お金をかけているのに、お金を稼がないので、問題児です。
- そして、市場成長率が低く、市場占有率も低い経営資源は、お金がかかりませんが、お金も稼がないので、負け犬です。
それでは、選択肢を見てみましょう。
選択肢アは、市場成長率、市場占有率ともに高い製品なので、花形です。 したがって、正解はアです。
念のため他の選択肢も見ておきましょう。
- 選択肢イ
- 市場成長率、市場占有率ともに低い製品なので、負け犬です。
- 選択肢ウ
- 市場成長率が高く、市場占有率が高い製品なので、問題児です。
- 選択肢エ
- 市場成長率が低く、市場占有率が高い製品なので、金のなる木です。
解答 ア
記事をお読みいただきありがとうございます。
もしも、一度解いただけでは、よくわからない問題があったなら、わかるまで何度でも練習してください。 「やるべき問題」は「わかるまでやるべき問題」だからです。
この厳選問題大全集が、受験者の皆様のお役に立てば幸いです。
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