暗記しない用語の覚え方|過去問の解き方知りたいぜ
何らかの試験対策の書籍をお持ちなら、末尾にある索引を見てください。膨大な数の用語が並んでいるはずです。
「これらを全部覚えるなんて無理!」と思ってしまうかもしれませんが、午前試験にも午後試験にも、用語の意味がわかれば正解できる問題が数多く出るので、がんばって覚えるしかありません。
この記事では、午前試験の過去問題を例にして、用語を覚える方法をアドバイスします。
もくじ
英語の用語は日本語の意味を調べて覚える
システム開発におけるウォータフォールモデルの説明はどれか。
- ア
- 一度の開発ですべてを作るのではなく,基本的なシステムアーキテクチャの上に機能の優先度に応じて段階的に開発する。
- イ
- 開発工程を設計,実装,テストなどに分け,前の工程が完了してから,その成果物を使って次の工程を行う。
- ウ
- 試作品を作り,利用者の要求をフィードパックして開発を進める。
- エ
- 複雑なソフトウェアを全部最初から作成しようとするのではなく,簡単な部分から分析,設計,実装,テストを繰り返し行い、徐々に拡大していく。
「ウォーターフォールモデル」という用語の意味がわかれば正解できる問題です。
答えは、イの「開発工程を設計、実装、テストなどに分け、前の工程が完了してから、その成果物を使って次の工程を行う」ですが、この説明と「ウォーターフォールモデル」という用語を対応付けて覚えられるでしょうか。
おそらく、困難なはずです。
面倒くさがらずに、英和辞典で、用語の意味を調べてみましょう。
「ウォーターフォール( waterfall )」は、「滝」という意味です。
「ウォーターフォールモデル」は、「滝のように、前の工程が完了してから、その成果物を使って次の工程を行うことで、後戻りしない」という開発モデルです。これなら、覚えられるはずです。
IT 用語の多くは、英語です。
英語が苦手なら(私は苦手です)、英語の意味を調べて覚えてください。「ウォーターフォールモデル(英語)」→「滝のモデル(日本語)」→「後戻りしない開発モデル(用語の説明)」という覚え方です。
英語の略語は何の略かを調べて覚える
SWOT 分析を説明したものはどれか。
- ア
- 企業のビジョンと戦略を実現するために,財務,顧客,業務プロセス,学習と成長という四つの視点から検討し, アクションプランにまで具体化する。
- イ
- 企業を,内部環境と外部環境の観点から,強み,弱み,機会,脅威という四つの視点で評価し,企業を取り巻く環境を認識する。
- ウ
- 事業を,分散型,特化型,手詰まり型,規模型という四つのタイプで評価し,自社の事業戦略策定に役立てる。
- エ
- 製品を,導入期,成長期,成熟期,衰退期という四つの段階に分類し,企業にとって最適な戦略策定に活用する。
「 SWOT 分析」という用語の意味がわかれば正解できる問題です。
答えは、イの「企業を、内部環境と外部環境の観点から、強み、弱み、機会、脅威という四つの視点で評価し、企業を取り巻く環境を認識する」ですが、この説明と「 SWOT 分析」という用語を対応付けて覚えられるでしょうか。
おそらく、困難なはずです。
「 SWOT 分析」の「 SWOT 」は、略語です。面倒くさがらずに、何の略か調べてみましょう。
S は「 Strength(強さ)」、
W は「 Weakness(弱さ)」、
O は「 Opportunity(機会)」、
T は「 Threat(脅威)」
です。
「 SWOT 分析」は、企業の良い点と悪い点を、内部環境と外部環境に分けて分析することです。
内部環境の良い点が「 Strength(強さ)」であり、悪い点が「 Weakness(弱さ)」です。
外部環境の良い点が「 Opportunity(機会)」であり、悪い点が「 Threat(脅威)」です。
これらを覚えれば、「 SWOT 分析」という用語が、先ほどの問題の選択肢のどれに該当するかが、すぐにわかるはずです。
label 関連タグ: SWOT分析
変な日本語の用語は、もとの英語の意味を調べる
情報の “完全性” を脅かす攻撃はどれか。
- ア
- Web ページの改ざん
- イ
- システム内に保管されているデータの不正コピー
- ウ
- システムを過負荷状態にする DoS 攻撃
- エ
- 通信内容の盗聴
「完全性」という用語の意味がわかれば正解できる問題です。
答えは、アの「 Web ページの改ざん」ですが、Web ページを改ざんすることが「完全性」を脅かすことだと感じられるでしょうか。
おそらく、違和感を感じるはずです。
立派な学者さんはどうかわかりませんが、一般的な日本人なら、「完全」という言葉の英語訳として「パーフェクト( perfect )」を思い浮かべるでしょう(私もそうです)。
野球やボーリングの「パーフェクトゲーム」のイメージです。しかし、このイメージは、「 Web ページを改ざん」には合いません。
「完全性」のような日本語の用語の多くは、英語の用語を訳したものです。面倒くさがらずに、書籍やインターネットで、もとの英語を調べてみましょう。
「完全性」は、「パーフェクト( perfect )」ではなく、「インテグリティ( integrity )」です。
それがわかったら、逆に、英和辞典で「インテグリティ( integrity )」の日本語訳を調べてみましょう。
筆者が調べた辞書には、「整合性」を代表的な訳として、その他に「保全」「清廉」「正直」「節操」などの訳がありましたが、「完全性」や「完全」という訳はありませんでした。
つまり、こう言っては失礼かもしれませんが、「インテグリティ( integrity )」を「完全性」と訳したこと自体が不適切だったのです。
Web ページを改ざんすると、もとの Web ページと異なる内容になるので、情報の「整合性」が脅かされます。情報の「インテグリティ( integrity )」が脅かされるのです。
不適切な日本語訳で言うと、情報が「パーフェクト( perfect )」でなくなるのです。情報が元通りの内容であることが、「パーフェクト( perfect )」なのでしょう。
そう考えると「まあ、完全性でもいいかなあ」と妥協して覚えられます。
関連する複数の用語を一緒に覚える
仮想記憶管理のページ入替え方式のうち,最後に使われてからの経過時間が最も長いページを入れ替えるものはどれか。
ア FIFO イ LFU
ウ LIFO エ LRUこの問題は、仮想記憶における「ページングアルゴリズム」に関する問題です。
答えは、エの「 LRU 」なのですが、この問題を通して「 LRU 」という1つの用語だけを覚えるのではなく、他のページングアルゴリズムの「 FIFO 」と「 LFU 」も一緒に覚えるとよいでしょう。
それぞれの違いを比べれば覚えやすく、さらに、まとめて覚えられて効率的だからです。
ページングアルゴリズムは、実メモリにあるページの中で、仮想メモリに追い出すページを決めるものです。
- FIFO = First In First Out
- 最初にページインしたページを最初にページアウトする。
- LRU = Least Recently Used
- 最も最近に使われていないページをページアウトする(最後に使われてから最も時間が経過しているページをページアウトする)
- LFU = Least Frequently Used
- 最も頻繁に使われていないページをページアウトする(使われた回数が最も少ないページをページアウトする)
これら 3 つのページングアルゴリズムは、どれも、今後使われる可能性が低いページを決める考え方です。
どのアルゴリズムが効果的なのかは、状況次第です。それぞれ納得できる考え方だと思いますので、一緒に覚えてください。
ページングアルゴリズムの種類は、3 つだけなのですが、問題には選択肢を 4 つ作らなければならないので、ウに「 LIFO 」という無関係な用語があります。市販の書籍には、このような用語の説明もあると思いますが、無関係なのですから気にする必要はありません。
この「 LIFO 」は、「 LIFO 」自体もしくは、それに関連した用語がテーマの問題に遭遇したときに覚えてください。
label 関連タグ: FIFO LRU LFU
どうしてもピンと来ない英語の用語は語源を調べる
図のように,クライアント上のアプリケーションがデータベース接続プログラム経由でサーバ上のデータベースのデータにアクセスする。アプリケーションとデー タベースとの間で送受信されるコマンドや実行結果の漏えいを防止する対策はどれか。
- ア
- サーバ側のデータベース接続プログラムにアクセスできるクライアントの IP アドレスを必要なものだけに制限する。
- イ
- サーバ側のデータベース接続プログラムを起動・停止するときに必要なパスワードを設定する。
- ウ
- データベース接続プログラムが通信に使用するポート番号をデータベース管理システムでの初期値から変更する。
- エ
- データベース接続プログラム間の通信を暗号化する。
この問題の内容は、用語の意味を問うものではありませんが、問題を解くには「セキュリティ」という基本的な用語の意味をわかっている必要があります。
英和辞典で調べると、「セキュリティ( security )」の日本語訳には、「安全」「無事」「安心」「防御」「保護」「警戒」「警備」など、様々な言葉が並んでいます。
これでは、つかみどろことがありません。それに、「安心」は「 safety 」であり、「防御」は「 defense 」でしょう。どの日本語訳も、私たちが持つ「セキュリティ」のイメージに、ピッタリと合ってはいません。
このように、英和辞典で英語の用語の日本語訳を調べてもピンと来るものがない場合は、最後の手段として、語源を調べるしかありません。
英和辞典の中には、日本語訳の他に、語源が載っているものがあるので、面倒くさがらずに調べてください。
「セキュリティ」の語源は、ラテン語であり、「セ」が「離れる」という意味で、「キュリティ」が「心配事」という意味です。
「心配事から離れる」を漢字を並べた用語で示すことができなかったので、「セキュリティ」の日本語訳として、「安心」や「防御」という様々な言葉があるのでしょう。
「セキュリティ」の本当の意味が、「心配事から離れる」であることがわかったところで、あらためて先ほどの問題を見てみましょう。
難しそうな図が示されていますが、問題の内容は「盗聴を防止する対策はどれか」ということだけです。つまり 「盗聴」という「心配事」から「離れる」ための「対策」は、何かということ です。
選択肢を見てみましょう。エの「暗号化」が最も適切なので、エを選んでください。実際の正解もエです。
「用語は暗記するしかない」という人がいますが、これは良くない覚え方だと思います。
暗記は、つまらないからです。それに、暗記しただけのことは、すぐに忘れてしまいます。
この記事で紹介した方法を参考にして、用語を覚える工夫をしてください。
その際のポイントは、記事の中で何度も書きましたが「面倒くさがらないこと」です。面倒くらさがずに調べれば「へえ! そうだったのか」という発見があり、楽しい気分になるはずです。せっかく試験を受けるのですから、勉強することを楽しんてください。
それでは、またお会いしましょう!
label 関連タグ
免除試験を受けた 74.9% の方が、 科目A免除資格を得ています。
『プログラムはなぜ動くのか』(日経BP)が大ベストセラー
IT技術を楽しく・分かりやすく教える“自称ソフトウェア芸人”
大手電気メーカーでPCの製造、ソフトハウスでプログラマを経験。独立後、現在はアプリケーションの開発と販売に従事。その傍ら、書籍・雑誌の執筆、またセミナー講師として活躍。軽快な口調で、知識0ベースのITエンジニアや一般書店フェアなどの一般的なPCユーザの講習ではダントツの評価。
お客様の満足を何よりも大切にし、わかりやすい、のせるのが上手い自称ソフトウェア芸人。
主な著作物
- 「プログラムはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「コンピュータはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「出るとこだけ! 基本情報技術者」 (翔泳社)
- 「ベテランが丁寧に教えてくれる ハードウェアの知識と実務」(翔泳社)
- 「ifとelseの思考術」(ソフトバンククリエイティブ) など多数