2018年度(平成30年度) 秋期 基本情報技術者試験 講評


2021-09-15 更新

2018 年度 (平成 30 年度) 秋期試験は終了しました。
2019 年度 (平成 31 年度) 春期試験の講評はこちらです。

2019 年度 (平成 31 年度) 春期
基本情報技術者試験 講評

 

2018 年 10 月 21 日(日)に実施された基本情報技術者試験の講評をさせていただきます。

試験対策講座で講師をしている私は、試験問題を見るときに、とってもドキドキします。はたして、私が指導してきた内容で、合格点を取れる問題だったのでしょうか。

 

午前試験:過去問題を十分に練習していれば合格点が取れたはず

はじめに、午前試験の問題を見てみましょう。

私の講座では、受講者に

  • 「とにかく過去問題を数多く解きなさい」
  • 「わからない問題に遭遇したらジタバタしなさい」
  • 「少しぐらいわからない問題があっても気にしないこと」

と指導しています。

基本情報技術者試験の午前問題は、70% くらいが過去問題の再利用だからです。わからない問題に遭遇しても、自分の知っている知識を総動員してジタバタすれば、どうにか答えを絞り込める場合があります。

もしも、まったくわからない問題があっても、他の問題で合格点を取れればOKなので、気にする必要はありません。

 

午前試験: ◯ △ × で試験問題の難易度調査

問 番号 評価 問 番号 評価 問 番号 評価 問 番号 評価
問 1 問 21 問 41 問 61
問 2 問 22 問 42 × 問 62 ×
問 3 問 23 × 問 43 × 問 63
問 4 × 問 24 問 44 問 64
問 5 問 25 問 45 × 問 65
問 6 問 26 問 46 問 66
問 7 問 27 問 47 問 67
問 8 問 28 問 48 × 問 68
問 9 問 29 問 49 問 69
問 10 問 30 問 50 × 問 70
問 11 問 31 問 51 問 71
問 12 問 32 問 52 問 72
問 13 問 33 問 53 問 73 ×
問 14 問 34 問 54 問 74
問 15 問 35 問 55 問 75
問 16 問 36 問 56 問 76 ×
問 17 問 37 × 問 57 問 77
問 18 問 38 問 58 問 78
問 19 × 問 39 問 59 問 79
問 20 問 40 × 問 60 問 80

以下は、私の個人的な評価で、午前試験の全 80 問を

 「○:過去問題を練習していればできる」
 「△:ジタバタすればできる」
 「×:できなくても気にする必要なし」

この 3 つに分類したものです。

合格点は、100 点満点で 60 点以上です。

○ の問題は、必ず正解できて、△ の問題は、半分正解できるとすれば、○ + △ × 0.5 の総数が 80 問 × 60 / 100 = 48 問以上なら、私の指導で合格点を取れたはずです。

○:過去問題を練習していればできる
△:ジタバタすればできる
×:できなくても気にする必要なし

 

○ が 40 問で、△ が 26 問です。○ + △ × 0.5 = 40 問 + 26 問 × 0.5 = 53 問で、どうにか 48 問以上になりました。この結果には、正直言ってホッとしました。無事に合格点を取れた人は、× を付けた問題ができていなくても気にしないでください。

 

午前試験: 分野別の出題傾向

分野別でも、○ と △ の数を確認しておきましょう。

分野は、問 1 ~ 問 50 がテクノロジ系で、問 51 ~ 問 60 がマネジメントジ系で、問 61 ~ 問 80 がストラテジ系です。

以下に、結果を示します。「 ○ + △ × 0.5(割合)」の「(割合)」の部分は、それぞれの分野で正解できる割合を示しています。

それほど大きな差はありませんが、テクノロジ系 > ストラテジ系 > マネジメント系の順に難しかったといえます。これは、例年通りという感じです。

分野 ○ の数 △ の数 ○ + △ × 0.5(割合)
テクノロジ系 24 16 32( 64% )
マネジメント系 5 5 7.5( 75% )
ストラテジ系 12 5 14.5( 72.5% )

 

午前試験:「わからない問題に遭遇したらジタバタしなさい」の例

いくつか問題を紹介しましょう。まず、「わからない問題に遭遇したらジタバタしなさい」の例です。

以下は、テクノロジ系の問 35 で、テーマは「携帯電話網で使用される通信規格の名称」です。

もしも、「こんなの知らないよ!」と思ったなら、選択肢を見てください。自分の知っている用語と、言葉の意味から、消去法で答えを絞り込めるはずです。

問 35 携帯電話網で使用される通信規格の名称であり、次の三つの特徴をもつものはどれか。

(1) 全ての通信をパケット交換方式で処理する。
(2) 複数のアンテナを使用する MIMO と呼ばれる通信方式が利用可能である。
(3) 国際標準化プロジェクト 3GPP ( 3rd Generation Partnership Project )で標準化されている。

ア LTE ( Long Term Evolution )
イ MAC ( Media Access Control )
ウ MDM ( Mobile Device Management )
エ VOIP ( Voice over Internet Protocol )

イの MAC( Media Access Control )がイーサネットの識別番号であることを知っているでしょう。したがって、これは × です。

ウの MDM( Mobile Device Management )は、「携帯機器の管理」という言葉の意味から、通信規格ではないと判断できるでしょう。これも × です。

エの VoIP( Voice over Internet Protocol )は、インターネット電話のプロトコルであることを知っているでしょう。これも × です。

これで、アが残ったので、アを選んでください。実際の正解もアです。これが、ジタバタするということです。

 

午前試験:「少しぐらいわからない問題があっても気にしないこと」の例

次に、「少しぐらいわからない問題があっても気にしないこと」の例を紹介しましょう。

以下は、テクノロジ系の問 4 で、テーマは「ハフマン符号」です。

過去問題では、ハフマン符号のビット数の期待値を求める問題が何度も出題されていますが、符号を選ぶ問題はめずらしいものです。「そんなの勉強していないよ!」という人が多かったでしょう。

問 4 出現頻度の異なる A,B,C,D,E の 5 文字で構成される通信データを, ハフマン符号化を使って圧縮するために,符号表を作成した。a に入る符号として,適切なものはどれか。

文字 出現頻度(%) 符号
A 26 00
B 25 01
C 24 10
D 13   a  
E 12 111

ア 001  イ 010  ウ 101  エ 110

ハフマン符号は、可変長符号なので、先頭から見て他の符号と区別できるように符号化しなければなりません。

ア の 001 は、A の 00 と区別できません。
イ の 010 は、B の 01 と区別できません。
ウ の 101 は、C の 10 と区別できません。
エ の 110 なら、他のどの符号とも区別できます。

したがって、正解はエなのですが、この問題ができなくても気にしないでください。他の問題で合格点が取れれば OK なのですから。

 

(編集部注: 午前試験でしたら、午前免除制度というやり方があります。ご参考まで)

2018年度 (平成31年) 春期 基本情報技術者試験 午前免除制度 活用スケジュール

午後試験

問 1 ~ 問 7 の内容と選択のポイント

今度は、午後試験の問題を見てみましょう。まず、問 1 ~ 問 7 です。

私の講座では、受講者に

  • 「午後試験は、午前試験の知識を事例に仕立てたものだから、午前試験の問題を数多く解いて基礎概念や用語を覚えることが重要である」
  • 「問題の冒頭の長い説明文に惑わされずに、設問と選択肢を見て、知っている概念と用語が並んでいる問題を選ぶこと」

と指導しています。

ここでは、問題の選択に関しても、個人的な意見を述べさせていただきます。

 

問 1(必須問題: 情報セキュリティ)

問 1(必須問題)は、情報セキュリティの問題で、テーマは「情報セキュリティ事故と対策」です。

必須問題なので、やるしかありません。問題文や選択肢に示された HTTP over TLS、パスワードのハッシュ化、SQL インジェクション攻撃、DNS 、クロスサイトスクリプティング、エスケープ処理、ディジタル署名、ハードディスクのデフラグメンテーション、DMZ 、WAF( Web Application Firewall )などの用語の意味がわかれば、正解を選べるでしょう。

「午前試験の問題を数多く解いて基礎概念や用語を覚えることが午後試験の対策になる」と、つくづく感じさせる問題です。

 

問 2(選択問題: ソフトウェア)

問 2(選択問題)は、ソフトウェアの問題で、テーマは「プロセスのスケジューリング」です。

設問と選択肢を見ると、OS がプロセスに CPU を割り当てる方式である「ラウンドロビン方式」と「優先度順方式」が取り上げられ、優先度や実行時間を数値で答える内容になっていることがわかります。

ラウンドロビン方式と優先度順方式の違いがわかり、数値を取り扱う問題が苦手でないなら、比較的短い時間に解ける問題なので、ぜひ選んでください。苦手なら、とりあえずパスして、他の問題を見てください。

ところで、ラウンドロビンって、どういう意味かご存知ですか?

「円形嘆願書」です。17 ~ 18 世紀ごろのフランスでは、農民が国王に嘆願書を提出すると、「けしからん」ということで、嘆願書の上位に名前が載っている数名が処刑されました。この悲劇をさけるために、誰が上位かわからないように、円形に名前を並べた嘆願書を提出するようになったのです。

IT の世界では、プロセスに優先順位を付けないことを、ラウンドロビンと呼びます。OS という国王への「円形嘆願書」なのかもしれませんね(すみません、ちょっと話が脱線しました)。

label 関連タグ: ラウンドロビン方式

 

問 3(選択問題:データベース)

問 3(選択問題)は、データベースの問題で、テーマは「コンサートチケット販売サイトの関係データベースの設計及び運用」です。

選択肢を見ると、設問 1 では、「検査制約」「非 NULL 制約」「参照制約」「一意性制約」という制約の種類が並んでいます。

設問 2 、設問 3 、設問 4 は、SQL 文の問題で、INNER JOIN 、LEFT OUTER JOIN 、RIGHT OUTER JOIN や、DATEDIFF 関数や FLOOR 関数などが並んでいます。

どれも滅多に出題されないものなので、知らない人が多いと思いますが、説明があるので意味がわかるはずです。他の問題で選択数を満たせないなら、チャレンジしてください。

 

問 4(選択問題:ネットワーク)

問 4(選択問題)は、ネットワークの問題で、テーマは「ネットワークの障害分析と対策」です。

ルータとスイッチで接続されたネットワーク図が示され、ファイアウォールの設定、負荷分散、障害時のルータの切り替え、などが設問になっています。

従来のネットワークの問題と比べて、かなり本格的という感じです。ルータやスイッチの機能がよくわからないという人は、パスした方が無難でしょう。

 

問 5(選択問題:ソフトウェア設計)

問 5(選択問題)は、ソフトウェア設計の問題で、テーマは「購買管理システムで行う処理」です。

ソフトウェア設計の問題は、「フローチャートを使ったファイル処理」「 UML によるオブジェクト指向」「その他」に分類できますが、この問題は、フローチャートを使ったファイル処理です。

こう言っては、出題者に甚だ失礼かもしれませんが、フローチャートを使ったファイル処理の問題は、選択問題がなかった昔の試験制度の時代からあるもので、他の問題よりボリュームが多いように感じます。

決して難しくはないのですが、かなり時間がかかるので、他の問題をパスして、これしか残っていない、というときに選んでください。

 

問 6(選択問題:プロジェクトマネジメント)

問 6(選択問題)は、プロジェクトマネジメントの問題で、テーマは「プロジェクトのスケジュール作成」です。

午前試験のマネジメント系で頻繁に出題されているアローダイアグラムを読み取る内容になっています。これは、判断しやすいでしょう。

「アローダイアグラム大好き!」という人は、ぜひ選んでください。「アローダイアグラム大嫌い!」という人は、すぐにパスしてください。

 

問 7(選択問題:システム戦略)

問 7(選択問題)は、システム戦略の問題で、テーマは「広告制作業務の現状把握と改善」です。

問題文に示された業務の内容を読み取るという、国語の長文読解のような内容です。

自分のことを文系だと思う人は、この手の問題が得意でしょう。

理系と思う人は、この手の問題が苦手でしょう。

自分の得手不得手に合わせて、問題を選ぶかどうかを判断してください。

 

問 8 は出題者オリジナルの数式のアルゴリズム

問 8(必須問題)は、アルゴリズム及びデータ構造の問題で、テーマは「整数式の解析と計算」です。

数式の解析といえば、「逆ポーランド記法」がよく出題されるのですが、この問題は、違います。

出題者オリジナルのアルゴリズムのようです。したがって、説明文とプログラムからアルゴリズムを理解するしかありません。プログラムは短くて、内容も難しくありません。

具体例が示されているので、その具体例を想定して、プログラムを読んでください。選択肢も大いにヒントにしてください。

自分の知らないオリジナルのアルゴリズムであっても、「必須問題なのだから、絶対にできるはずだ!」と自信を持って解いてください。

 

問11はJavaという言語を十分に理解していないと解けない

問 9 ~ 問 13 のソフトウェア開発(プログラミング言語)の中から、IT企業の新人研修で採用されることが多い問 11 の Java の問題を取り上げます。

テーマは、「書式を表すひな型への置換表の適用による文書の作成」です。

Java の問題では、使用されている API が気になります。

この問題では、、

java.io.Reader クラス(抽象クラス)、
java.io.FileReader クラスというファイル関連の API、
java.util.List インターフェイス、
java.util.ArrayList クラス、
java.util.Map インターフェイスというコレクション関連のAPI、
java.lang.CharSequence インターフェイス、
java.lang.StringBuilder クラス、
java.lang.String クラスという基本的な API

が使用されています。

これらの API の機能がわかり、さらに Java の構文として、抽象クラスやインターフェイスの実装や、インスタンスの生成などがわかるかどうかが、問題を解くポイントになっています。

Java の問題は、Java という言語を十分に理解していないと解けません。

 

IPA の Web ページでは、すでに今回の試験問題と解答が公開されています。

自己採点して合格点を取れた人、おめでとうございます。残念だった人、その悔しさをバネにすれば、次の試験できっと合格できます。

今後も、この記事では、受験者の皆さんを精一杯応援させていただきますので、ぜひお読みください。それでは、またお会いしましょう!

 

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