ECサイトの脆弱性に対処する組織|科目B情報セキュリティを解くための重要用語


2025-04-21 更新

この連載は、基本情報技術者試験の受験者を対象としたものです。

毎回1問ずつ、科目Bの情報セキュリティの問題を取り上げて、問題の中にある用語の意味と、問題の解き方を説明します。
用語の意味がわかれば、科目Bの情報セキュリティの問題は、それほど難しくない、ということを知ってください。

問題

今回の問題は、ECサイトの脆弱性に対処する組織がテーマです。

以下に問題を示しますので、本文、設問、選択肢に、ざっと目を通してください。
後で用語の意味を説明してから、再度問題を見ていただきますので、今はざっとでOKです。

問題(出典:2022年12月公開サンプル問題セット問17)

製造業のA社では,ECサイト(以下,A社のECサイトをAサイトという)を使用し,個人向けの製品販売を行っている。
Aサイトは,A社の製品やサービスが検索可能で,ログイン機能を有しており,あらかじめAサイトに利用登録した個人(以下,会員という)の氏名やメールアドレスといった情報(以下,会員情報という)を管理している。Aサイトは,B社のPaaSで稼働しており,PaaS上のDBMSとアプリケーションサーバを利用している。

A社は,Aサイトの開発,運用をC社に委託している。A社とC社との間の委託契約では,Web アプリケーションプログラムの脆弱性対策は,C社が実施するとしている。

最近,A社の同業他社が運営しているWebサイトで脆弱性が悪用され,個人情報が漏えいするという事件が発生した。そこでA社は,セキュリティ診断サービスを行っているD社に,Aサイトの脆弱性診断を依頼した。脆弱性診断の結果,対策が必要なセキュリティ上の脆弱性が複数指摘された。図1にD社からの指摘事項を示す。

設問
図1中の各項番それぞれに対処する組織の適切な組合せを,解答群の中から選べ。

解答群

問題の中にある用語の意味

以下に、今回の問題中にある重要な用語の意味を示します。

ここでは、用語の一般的な意味だけでなく、その用語から問題を読み取るポイントも示しています。
用語の意味がわかったら、もう一度問題を読み直してください。きっとスラスラと理解できるはずです。

各社の役割を整理すると、以下になります。・・・用語の説明の「この問題では」に記述

A社・・・Aサイト(ECサイト)を使って個人向けの商品販売をします。
B社・・・PaaSを提供します。Aサイトは、PaaS上のDBMSとアプリケーションサーバを利用します。
ここで、注意してほしいのは、PaaSは、ハードウェア、OS、ミドルウェア(DBMSとアプリケーションサーバ)を提供しますが、アプリケーションは提供しないことです。
C社・・・Aサイトの開発と運営を委託され、Webアプリケーションの脆弱性対策は、C社が実施する契約になっています。
D社・・・Aサイトの脆弱性診断をします。

ECサイト

意味「EC(Electric Commerce=電子商取引)サイト」は、自社の製品やサービスをインターネット上で販売するためのWebサイトです。この問題では、ECサイトであることは、設問には関係ありません。

脆弱性

意味「脆弱性」は、プログラムに欠陥や不具合があることが原因で、外部からの攻撃を防げないことです。「セキュリティホール(セキュリティ上の欠陥)」とも呼ばれます。この問題では、OS、DBMS、Aサイトに脆弱性があります。

OS

意味「OS(Operating System)」は、コンピュータを操作するための基本機能を提供するソフトウェアです。OSの上で動作するソフトウェアをアプリケーションと呼びます。この問題では、OSがPaaSとして提供されています。したがって、OSの脆弱性は、PaaSを提供している組織が対処するべきです。PaaSという用語の意味は、後で説明します。

DBMS

意味「DBMS(Data Base Management System)」は、データベースの機能を提供するソフトウェアです。DBMSは、OSでもなく、アプリケーションでもなく、それらの間に存在するものなので、「ミドルウェア」と呼ばれます。この問題では、DBMSがPaaSとして提供されています。したがって、DBMSの脆弱性は、PaaSを提供している組織が対処するべきです。

アプリケーションサーバ

意味「アプリケーションサーバ」は、アプリケーションを実行する機能を持ったサーバです。DBMSと同様に、アプリケーションサーバもミドルウェアです。この問題では、アプリケーションサーバがPaaSとして提供されています。したがって、アプリケーションサーバの脆弱性は、PaaSを提供している組織が対処するべきです。

PaaS

意味「PaaS(Platform as a Service)」は、アプリケーションを実行するための土台となるハードウェア、OS、ミドルウェア(DBMSやアプリケーションサーバなど)を、ネットワーク上のサービスとして提供します(アプリケーションは提供しません)。この問題では、B社のPaaSを使って、A社のECサイト(Webアプリケーション)を稼働させています。したがって、PaaSに関する脆弱性は、PaaSを提供しているB社が対処するべきです。

クロスサイトスクリプティング

意味「クロスサイトスクリプティング」は、悪意のあるWebサイトを経由して、脆弱性のあるWebサイトに接続し、そこで悪意のあるスクリプト(HTMLやプログラム)を実行する攻撃です。この問題では、Aサイト(アプリ)にクロスサイトスクリプティングの脆弱性があります。

問題の解き方

この手の問題を解くときには、常識的に考える、ということが重要です。
常識的に考えて、問題の項番1、2、3に示された脆弱性に対処する組織は、それらを提供している組織、または、それぞれの対処を実施することを契約している組織でしょう。

項番1のOSの既知の脆弱性に対処するのは、OSがPaaSとして提供されるので、PaaSを提供しているB社です。

項番2のクロスサイトスクリプティングの脆弱性に対処するのは、クロスサイトスクリプティングがWebアプリケーション(ここではAサイト)に対する攻撃なので、委託契約でWebアプリケーションの脆弱性対策を実施することになっているC社です。

項番3のDBMSの既知の脆弱性に対処するのは、DBMSがPaaSとして提供されているので、PaaSを提供しているB社です。

以上のことから、選択肢カが正解です。

【正解】
選択肢カ


もしも、今回の問題を見て「自分には用語の知識が不足している」と感じたなら、科目Bの問題だけでなく、科目A(および旧制度の午前試験)の問題も練習することをお勧めします。
科目Aの問題の多くは、用語の意味をテーマにしているので、知識の補充ができるからです。

情報セキュリティの分野だけでなく、それに関連するネットワークやシステム構成要素の分野の問題も練習してください。

それでは、またお会いしましょう!

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