午後問題の歩き方 | 午後問題の読み方~ネットワーク
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この記事は基本情報技術者試験の旧制度( 2022 年以前)の記事です。
この記事の題材となっている「午後問題」は現在の試験制度では出題されません。 ご注意くださいませ。
ネットワークの午後問題の多くは、午前問題に出題される様々な基礎知識を事例にしたもの です。
これといった傾向はない ので、きちんと基礎知識を勉強しておくことが対策となります。
ここでは、平成 23 年度 秋期 午後 問 3 を例にして、どのような基礎知識が必要とされるのかを説明します。
ネットワーク図の見方を知っておこう
以下は、試験問題の冒頭に示された D 社のネットワーク図です。
これを見て、「ネットワーク図の見方を知りません」と怖気づいてしまった人はいませんか。
心配いりません。ネットワーク図には、統一された描き方などない からです。
ネットワークに機器が接続されている様子が、そのまま描かれているだけです。「基礎知識があればわかるはずだ」という自信を持って見てください。
基礎知識として、「ネットワーク」という言葉に対する正しいイメージを持ちましょう。
世間一般では、「ネットワーク≒インターネット」というイメージがありますが、IT エンジニアは、そう考えてはいけません。
ネットワークとは、社内のネットワークや、部署のネットワークなど、小さなグループのネットワーク を意味します。この 小さなネットワークの間をルータという機器でつなぐ ことで、ネットワークが広がっていくのです。
ネットワークのイメージがつかめれば、先ほどの D 社のネットワーク図の内容がわかるでしょう。
D 社には、
- ネットワーク A
- ネットワーク B
- 基幹ネットワーク
- DMZ
という 4 つのネットワークがあり、それぞれがルータおよびファイアウォール(このファイアウォールは、ルータの機能も持っているはずです)でつながれているのです。
ネットワークのイメージがつかめれば IP アドレスもわかる
それでは、設問を見てみましょう。
設問 1 は、IP アドレスに関するものです。ここで、「ネットワークとは、小さなグループのネットワークである」というイメージを活かせます。
IP アドレスは以下のようなことを示します。
- 上位桁は ネットワークアドレス (ネットワークすなわち小さなグループを識別する番号)
- 下位桁は ホストアドレス (個々の機器を識別する番号)
- 同じネットワークにある機器は、ネットワークアドレスが同じ
- サブネットマスク は、IP アドレスの上位桁と下位桁の 区切り
これらの基礎知識で、設問を解いてみましょう。
D 社の各ネットワークに接続された機器の IP アドレスからネットワーク A のサブネットマスクはaであることが分かる。ネットワーク A のネットワークアドレスとサブネットマスクを考慮すると,次に示す IP アドレスのうち,社内システム Web サーバ 2 に設定可能なものは,b個ある。
[IP アドレス]
10.0.0.2 | 10.0.0.3 | 10.0.0.4 | 10.0.1.1 | 10.0.1.2 |
10.0.1.3 | 10.0.2.1 | 10.0.2.2 | 10.0.2.3 | 10.0.2.4 |
a に関する解答群
ア 255.0.0.0
ウ 255.255.255.0 エ 255.255.255.128
b に関する解答群
ア 1 イ 2
オ 5 カ 6 キ 7 ク 8
IP アドレスもサブネットマスクも、32 ビットの数値 です。それを、8 ビットずつ 4 つに区切って 10 進数に変換し、ドットで区切って示しています。
空欄 a の選択肢ア~エに示されたサブネットマスクを 32 ビットの 2 進数で示すと、以下のようになります。
ア 11111111.00000000.00000000.00000000 イ 11111111.11111111.00000000.00000000 ウ 11111111.11111111.11111111.00000000 エ 11111111.11111111.11111111.10000000
これらは、上位桁に 1 が並んだ部分がネットワークアドレスであり、下位桁に 0 が並んだ部分がホストアドレスであることを示しています。
どのサブネットマスクが適切でしょう。
10.0.1.1
Web サーバ 1 の IP アドレス
10.0.1.200
両者は、10.0.1 までが同じです。
したがって、空欄 a は、選択肢ウの 255.255.255.0 が適切だとわかります。
次は、空欄 b です。
サブネットマスクが 255.255.255.0 なのですから、ホストアドレスは下位 8 ビットであり、2 進数で 00000000 ~ 11111111 です。
このうち、00000000 と 11111111 は、機器に設定してはいけない約束になっている ので、設定できるのは、00000001 ~ 11111110 です。
これを 10 進数 で表すと、1 ~ 254 になります。
したがって、ネットワーク A の機器に設定できる IP アドレスは、10.0.1.1 ~ 10.0.1.254 です。
すでに他の機器(ここでは、ルータと Web サーバ 1 )に設定されている IP アドレスは使えないので、Web サーバ 2 に設定できる IP アドレスは、以下の 10.0.1.2 と 10.0.1.3 の 2 個です。
10.0.0.2 | 10.0.0.3 | 10.0.0.4 | 10.0.1.1 | 10.0.1.2 |
10.0.1.3 | 10.0.2.1 | 10.0.2.2 | 10.0.2.3 | 10.0.2.4 |
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用語の意味をしっかり覚えよう
ネットワークの午前問題には、基礎知識として用語の意味を問う問題がよく出題されます。
以下に、いくつか用語の例を示します。英語の用語は、日本語に訳して覚えてください。英語の略語は、何の略かを調べて、日本語に訳して覚えてください。
ここでも、ネットワークとは、ルータで区切られた小さなグループのネットワークことです。
用語DMZ ( De Militarized Zone 、非武装地帯)
インターネットと社内ネットワークの間に置かれるネットワークのこと。ここに、インターネットに公開するメールサーバ、DNS サーバ、Web サーバなどが設置される。
用語DNS サーバ ( Domain Name System 、ドメイン名システム)
www.seplus.jp のようなドメイン名と IP アドレスを変換する機能を持ったサーバのこと。
用語DHCP サーバ ( Dynamic Host Configuration Protocol 、動的に機器を設定するプロトコル)
パソコンなどの機器の起動時に、接続されたネットワークに合わせて、IP アドレスやサブネットマスクなどの設定を自動的に行うサーバのこと。
同じネットワーク内のすべての機器を宛先としてデータを送ること。DHCP サーバを使う機器は、起動時にブロードキャストを行うことで DHCP サーバを見つける。
用語プロキシサーバ ( proxy = 代理人)
パソコンなどの代理人として、インターネットとの通信を行うサーバのこと。セキュリティを高める機能と、アクセス効率を高める機能がある。
設問 2 の空欄 c と空欄 d を見てみましょう。用語の意味がわかっていれば、容易に答えを選べるはずです。
午前問題に出題される用語の意味をきちんと覚えておけば、それが午後問題にも活かせる のです。
D 社は,業務用 PC に IP アドレスなどのネットワークの情報を設定するために,DHCP を利用することにした。DHCP を利用する PC は, DHCP サーバを見つけるためのメッセージをブロードキャストする。 D 社は DHCP のメッセージを中継する装置は設置しないので, PC からのメッセージを受信するために, DHCP サーバは,cに設置する必要がある。
さらに,業務用 PC から社外の Web サーバへアクセスするためにプロキシサーバを設置することにした。プロキシサーバはクライアントからの要求に基づき,クライアントの代わりに Web サーバにアクセスし, Web サーバからの応答をクライアントに転送する。インターネットと基幹ネットワーク間の直接の通信は遮断したままにしておきたいので,プロキシサーバはdに設置する。
空欄 c は、ネットワーク B にある業務用 PC が利用する DHCP サーバは、どのネットワークに設置すればよいかという問題です。
業務用 PC は、ブロードキャストを行うことで DHCP サーバを見つけます。したがって、DHCP サーバは、業務用 PC と同じネットワーク B(選択肢エ)に設置する必要があります。
空欄 d は、プロキシサーバは、どのネットワークに設置すればよいかという問題です。
プロキシサーバは、パソコンなどの代理人としてインターネットとの通信を行うのですから、インターネットに接続された DMZ(選択肢ア)に設置します。
計算問題もよく出題されるので練習しておこう
ネットワークの午前問題には、計算問題が出題されることもよくあります。午後問題の設問にも、計算問題が出題されることがあります。以下は、設問 2 の空欄 e です。
e に関する解答群
ア 50 イ 55
オ 70 カ 75 キ 80 ク 85
午前問題をきちんと練習していれば、この計算問題は、ネットワークの分野ではなく、ハードウェアの分野で メモリの実効アクセス時間を求める問題として解いた経験があるはずです。
- キャッシュのヒット率を H とすると、ヒットしない率は 1 – H
- したがって、平均応答時間の期待値は
30 H + 110 x ( 1 - H )
これが、キャッシュサーバ(プロキシサーバの機能)を利用しないときの平均応答時間である 100 の半分以下になるときを求めるのですから、以下の不等式を解けば OK です。
30 H + 110 × ( 1 - H ) ≦ 100 ÷ 2 H ≧ 0.75
答えは選択肢カの 75 % 以上 です。
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この設問でも、午前問題をきちんと練習しておけば、それを午後問題に活かせることを実感できますね。
それでは、またお会いしましょう!
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大手電気メーカーでPCの製造、ソフトハウスでプログラマを経験。独立後、現在はアプリケーションの開発と販売に従事。その傍ら、書籍・雑誌の執筆、またセミナー講師として活躍。軽快な口調で、知識0ベースのITエンジニアや一般書店フェアなどの一般的なPCユーザの講習ではダントツの評価。
お客様の満足を何よりも大切にし、わかりやすい、のせるのが上手い自称ソフトウェア芸人。
主な著作物
- 「プログラムはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「コンピュータはなぜ動くのか」(日経BP)
- 「出るとこだけ! 基本情報技術者」 (翔泳社)
- 「ベテランが丁寧に教えてくれる ハードウェアの知識と実務」(翔泳社)
- 「ifとelseの思考術」(ソフトバンククリエイティブ) など多数