「IT未経験者の学習期間は?」「専門用語はどうやって覚えたらいい?」|基本情報お悩み相談室


2025-10-28 更新

この連載は、基本情報技術者試験の受験者を対象としたものです。
毎回2つずつ、受験者が抱えているお悩みに、講師歴20有余年の私がお答えします。

お悩みの中には、技術的なものもあれば、精神的なものもあります。
どちらも解決して、スッキリした気分で受験勉強をしましょう。

お悩みを解決してくれる講師

矢沢 久雄

IT技術を楽しく・分かりやすく教える“自称ソフトウェア芸人”。
大手電機メーカーでPCの製造、ソフトハウスでプログラマを経験。独立後、現在はアプリケーションの開発と販売に従事。その傍ら、書籍・雑誌の執筆、またセミナー講師として活躍。軽快な口調で、知識0ベースのITエンジニアや一般書店フェアなどの一般的なPCユーザの講習ではダントツの評価。大手電機メーカーでPCの製造、ソフトハウスでプログラマを経験。独立後、現在はアプリケーションの開発と販売に従事。その傍ら、書籍・雑誌の執筆、またセミナー講師として活躍。軽快な口調で、知識0ベースのITエンジニアや一般書店フェアなどの一般的なPCユーザの講習ではダントツの評価。
■主な著書
「プログラムはなぜ動くのか(日経BP社)」「でるとこだけ!基本情報技術者(翔泳社)」など多数

【お悩み1】
IT未経験ですが、学習期間は何か月くらいがいいですか? また、どこから学習すればよいのかや、おすすめの教材なども教えてください。

●学習期間について
これは、この連載の第4回でもアドバイスしたことですが、ITの未経験者が基本情報技術者試験に合格するには、科目Aの出題範囲を網羅した教材何らかのプログラミング言語の入門教材そのプログラミング言語で基本的なアルゴリズムとデータ構造を学べる教材、という3冊を学習してから、科目Aの過去問題の学習をして、さらに科目Bの過去問題の学習をする必要があります。

それぞれの学習期間は、1日に2時間(平日は短くてもOKですので、休日は長くしてください)学習するとして、3冊の教材がそれぞれ1か月程度で、科目Aと科目Bの過去問題の学習がそれぞれ1か月程度であり、合計して5か月程度です。

「ええっ、5か月もかかるのですか!」「もっと、短い期間にできませんか?」と思うなら、学習時間を増やすしかありません。
たとえば、1日に3時間学習すれば3.3か月程度に短縮でき、1日に4時間学習すれば2.5か月程度に短縮できます。
ただし、会社の仕事や、学校の授業があるなら、1日に3時間や4時間の学習時間を取ることは、かなり難しいでしょう。
無理なく、ただし、かなり一生懸命に学習できるのは、1日に2時間でしょう。それも、難しいなら、1日に1時間にすると、10か月程度になります。
これほど長い期間、学習の意欲を持ち続けることも、かなり難しいと思いますので、1日に2時間で5か月程度なのです。

●どこから学習すればよいかについて
ITの未経験者なら、まず科目Aの出題範囲を網羅した教材で、試験の出題範囲の様々な分野を幅広く学習して、用語の意味や技術の仕組みを習得してください。
これが完了すれば、科目Aの過去問題の学習に進めますが、それを後回しにして、何らかのプログラミング言語の入門教材を学習し、さらに、そのプログラミング言語で基本的なアルゴリズムとデータ構造を学べる教材の学習に進むのでもOKです。
それらが終われば、科目Bの過去問題の学習に進めます。どの学習も、あせらずコツコツと続けることが重要です。

●お勧めの教材について
これは、ご自身で書店に行って、実際の教材の内容を見て判断するしかありません
誰にでもお勧めの教材というものはないからです。
これ以降では、教材を選ぶポイントをアドバイスします。

【教材を選ぶポイント】

・科目Aの出題範囲を網羅した教材
何でもよいので自分が気になるキーワード(たとえば、多くの受験者が苦手としている「2進数」や「論理演算」など)を選び、それらが掲載されているページを索引で調べて、説明を読んでください。その説明が、自分にとってわかりやすいなら、その教材がお勧めです。
数多くの教材があるので、同じキーワードをどのように説明しているか比べるとよいでしょう。

・何らかのプログラミング言語の入門教材
もしもプログラミング言語も選んでほしいなら、Javaをお勧めします。
基本情報技術者試験で使われる擬似言語(架空のプログラミング言語)の構文は、Javaに似ている部分が多いからです。
Javaの教材も数多くあるので、何冊かを比べて、自分に合っているものを選んでください。
プログラミング言語は、実際にプログラムを作ってみないと理解できません。
Javaのプログラムを作るには、ツール(プログラムを作るためのプログラム)が必要になります。
教材の最初に、ツールの入手方法(多くのツールが無償で入手できます)と、インストール方法、およびそのツールを使ってプログラムを作る手順が、詳しく説明している教材を選んでください。

・基本的なアルゴリズムとデータ構造を学べる教材
Javaの入門教材を選んだなら、Javaで基本的なアルゴリズムとデータ構造を学べる教材も選んでください。
アルゴリズムとデータ構造の教材には、入門者向けのやさしい内容のものと、中級者向けの高度な内容のものがあります。
ITの未経験者なのですから、もちろん入門者向けのものを選んでください。
基本情報技術者試験によく出題される「ソート」「サーチ」「再帰呼び出し」「リスト」「木」などの基本的なアルゴリズムやデータ構造が、やさしく解説されている教材を選んでください。

科目Aと科目Bの過去問題は、IPA(試験を実施している組織)のWebページから無償でPDFファイルをダウンロードして入手できるので、それらを利用するとよいでしょう。
ただし、入手できるのは、問題と解答だけであり、解説はありません。
解説が必要な場合は、インターネット上で、無償で解説を提供しているWebページを利用するとよいでしょう。「基本情報技術者試験 過去問題」で検索すれば、いくつかのWebページがヒットします。
「基本情報技術者試験 令和5年度 問12」のように検索すれば、その問題を解説したWebページがヒットします。

【お悩み2】
理解しにくい専門用語が多い。どうやって覚えたらいいですか?

まずはじめに申し上げたいのは、用語を覚えるときに「暗記はダメ」ということです。
暗記は、面白くないし、すぐに忘れるからです。
せっかく勉強するのですから、用語の意味を調べて「へえ、そういう意味だったんだ!」と楽しく覚えましょう。
基本情報技術者試験を受ける人は、試験に合格することだけが目的ではなく、試験の勉強を通してITの基礎知識と技能を幅広く習得することも目的でしょう。
調べて覚えて、忘れたらまた調べる、を繰り返して、用語の意味を忘れないように、体に染み込ませてください。

これ以降では、用語の意味を覚えるコツをアドバイスしましょう。

カタカナ表記の英語の用語は、辞書で調べて、日本語に訳して覚えましょう
そうすれば、用語と意味が一致します。

(例)
「耐タンパ性」という用語を、「システムや機器に、不正な改ざんや解析からデータを保護する機能があること」と覚えたのでは、「タンパ」という用語と意味が一致しません。
「タンパ(tamper)」を辞書で調べて、「いじくりまわすこと」だとわかれば、「耐タンパ性」→「いじくりまわすことに耐えうる性質」→「システムや機器に、不正な改ざんや解析からデータを保護する機能があること」という流れで、用語と意味が一致します。

辞書を調べるのは、ほんの少しの努力です。このほんの少しの努力で、用語の意味を覚えられるのですから、面倒くさがらずにやってください。

IT用語の中には、英語の頭文字を並べた略語も、数多くあります。
略語は、何の略であるかを調べ、わからない英語があれば辞書で調べて、日本語に訳して覚えましょう

そうすれば、用語と意味が一致します。

(例)
「SMTP」という略語を、「メールの転送プロトコル」と覚えたのでは、「SMTP」という用語と意味が一致しません。
Simple Mail Transfer Protocolの略であり、日本語に訳すと「単純な、メール、転送、通信規約」だとわかれば、用語と意味が一致します。
略語が何の略であるかは、インターネットで検索すれば、すぐにわかります。

これも、ほんの少しの努力です。このほんの少しの努力で、略語の意味を覚えられるのですから、面倒くさがらずにやってください。

多くの受験者が、何らかの教材(科目Aの出題範囲を網羅した教材)を使って勉強し、そこで、試験によく出る用語を覚えるでしょう。
一気に多くの用語を覚えることになりますが、その際に、ペアになっている用語や、関連する用語を、一緒に覚えるとよいでしょう。
そうすれば、わかりやすく、記憶に残りやすいからです。

たとえば、メモリの種類の「SRAM」と「DRAM」、テスト用モジュールの「ドライバ」と「スタブ」などです。

「高速だが高価なSRAM」と「低速だが安価なDRAM」、「仮の上位モジュールのドライバ」と「仮の下位モジュールのスタブ」のように、相手に対する違いで覚えるのです。

もちろん、ここでも、英語や略語の意味も調べてください。
なお、IT用語には、正式名称というものはないので、同じ事物に複数の呼び名がある場合があります。
たとえば、コンピュータの演算制御装置のことを「CPU」と呼ぶことも「プロセッサ」と呼ぶこともあります。このような用語も、一緒に覚えるとよいでしょう。

教材の勉強が終わったら、あとは試験に向けて、ひたすら過去問題を解いて勉強することになります。
過去問題を解いて、わからない用語に遭遇したら、そのタイミングで用語の意味を調べましょう。
問題の説明と対応付けて用語を覚えるのです。こうすれば、実際の試験で同じ問題が出れば、確実に正解できます。
選択肢から用語を選ぶ問題の場合は、正解の用語だけを覚えて、その他の用語は、気にしないでください。
正解でない用語は、その用語が正解になっている過去問題に遭遇したときに覚えてください。
試験では、過去問題が何度も再利用されているので、問題と対応付けて正解の用語を覚えることが、効率的かつ効果的だからです。


今回は、「IT未経験者の学習期間はどのくらい?」「専門用語はどうやって覚えたらいい?」というお悩みにお答えしました。
同じお悩みをお持ちの皆さんの参考になれば幸いです。

この連載は、今回で最終回です。これまの連載をお読みいただいた皆様に、この場をお借りして御礼申し上げます。
それでは、またどこかでお会いしましょう!

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