講師インタビュー 樋口 至計「講師がわたしの天職」

研修で「何を学ぶのか」も重要ですが、 「誰から学ぶのか」も重視される時代。SEプラスの研修で登壇する講師がどんなことを思いながらコースを実施しているのか、講師にインタビューしています。
今回は PLUS DOJO や新人研修の講師として多くの受講者から親しまれる 樋口 至計 さんです!
受講者から恋愛相談を受けるほど親しまれる樋口さんですが、講師デビューは「地獄だった」というほど散々でした。その模様と、それでも今は「講師は天職」と語られる理由や 4 月から始まるオンライン化した新人研修でのテクニックなどもインタビューしました。ぜひご覧ください !!

大手企業の営業、 TEL オペレータなどを経て 24 歳から IT 業界に携わり、ほぼ独学でプログラミングを習得する(主な言語は Java ) 。
SE を兼任しながら、数々の企業で IT 系の研修を行い、受講生のプログラミング言語習得はもちろんのこと、メンタル面のケアも抜かりなく行い、受講生からの信頼も厚い。
講義には笑いが必要と豪語し、笑いの取れなかった講義のあとには驚くほど落ち込む傾向にある。
プライベートではバイクと旅先での出会いをこよなく愛している。 インドアでは DIY が好きで、業務用ミシンを購入し、革製品もつくることができる。
インタビュアー: SEプラス 寺井 彩香
「至計」という名前を読めますか?
―― 樋口さんには PLUS DOJO という新人研修プログラムで毎年登壇いただいていますが、そこで “ツカミ” のようなネタがあると伺いましたが …
―― 不吉なツカミですが、絶対、忘れませんね(笑)。そんなツカミから樋口さんが新人に親しまれやすいのが伺えます。ちなみに、新人研修以外でも講師の仕事をされているのですか?
年間ではだいたい半年が研修講師で、残りの半年が IT エンジニアとして Java がメインで色々なプロジェクトに入って開発しています。
―― 現場での開発もされていたとは、樋口さんは講師のイメージが強すぎて IT エンジニアっぽくないので驚きです。
そうすると、どういった経験を積まれて、その親しみやすさが生まれたのか、 IT 業界に入られた経緯から伺えますか?
中学生のときに情報の先生のタイピングがものすごく速かったパソコンに興味をもったのが始めです。あの地獄のミサワの「カチャカチャカチャ … ッターン!」のような感じですね(笑)。
それでタイピングは速くなったのですが、それからは特に IT に興味を持つことなく、学校卒業後は営業、料理人など色々やりました。最後にオペレータをしたところで、トークには自信が持てるようになりました。
―― IT エンジニアとは思えない、惹き込まれるお話ぶりはそのときに培われたんですね。
でも、一方でトークのスキルはこれ以上伸ばせない、と限界を感じました。 何かしら自信のあるスキルを身につけたいと思っていたので、そこでオペレータを辞めて、トークを使わない職種を探し始めました。
そのときにピンときたのが IT で、タイピングが速かったことを思い出し、縁あって 24 歳で IT 開発会社に入社しました。
―― ほぼ未経験で IT エンジニアになったのですね。どんな仕事をされたのですか?
それが、一通り研修で IT を勉強した後に、会社で新しく IT の教育事業部を立ち上げることになり、トーク力を見込まれて、スグに講師になってしまったんです。
―― えっ、ほぼ未経験で講師ですか … !? 上手くいったのでしょうか?
地獄でした(笑)。教えながら学ぶ毎日で、何とかトークでカバーしていました。 とはいえ、研修なので受講者からの「わからない」という声も挙がるのですが、講師の私も「わからない」。
―― 胃がキリキリ痛くなる情景ですね。どう解消されたのですか?
何かテクニックやチートがある訳ではないので、「わからない」をとにかく調べて答えることを繰り返しました。
それでも講師としてカッコつけたいので、そのときに使っていた参考書、「やさしい Java 」( SB クリエイティブ刊)がボロボロになるぐらい毎日徹夜して勉強して、次にはドヤ顔で教えていました。

飽き性でも続けられる講師の面白さ
―― そんなツラい講師デビューから 15 年ほど経って、まだ講師を続けられている理由を伺えますか?
先程、自信のあるスキルを身につけたいと言いましたが、その想い以上に “飽き性” なんですね。
営業などでもトップ成績を残してしまうとやる気が湧かず、オペレータでもどんな状況のスクリプトでも話せるようになると飽きてしまいました。
そんな “飽き性” なのに 講師の仕事は飽きません。
―― “飽き性” (笑)。 なぜ、飽きないのでしょう?
あることを教えるのに、受講者 1 人 1 人ごとに「わかる」パターンが違っているからです。 そのパターンを考えるのが、とても楽しいんですね。 そこで考えたパターンが当てはまって「わかった!」と言われると、これまたとてもうれしい。
また「わかる」感覚を共有できるだけでなく、受講者と一緒にわからないこと、例えば、バグ修正などに取り組んで、修正できたときは一緒にバンザイできたり、とにかく毎日、楽しいですね。
―― 研修でも樋口さんを拝見していると、本当に毎日楽しそうですよね
講師が “天職” かも知れませんね(笑)。
―― いいですね! 逆に、そんな樋口さんでも苦労したことはあるのでしょうか?
今でも苦労していることがあります。それは受講者が 4 割ぐらいしかわかっていなくても、皆さんスマートなので、気を遣って「わかった」と答えてしまうことですね。
「わかった」と言った後で受講者自身でそのわからないことを解決できれば良いのですが、これまでの経験上、そこから理解が止まってしまうことが大半です。
とはいえ、そういった場面で「わかってないよね」と言うと傷ついてしまうので、受講者の表情やしぐさ、声のトーンなどをとにかく観察しています。
―― 「わかった」という言葉では判断できないのですね
判断できないですね。
そこで経験を重ねて「わかっているかどうか」判断する精度は上がっているので、「わかっていないかも」と判断すればパターンを色々話しながら、「わかった!」というサインが出るまで、色々なパターンを交えて話しています。
―― 特に社会人経験がない新人にとってはありがたいですね
ただそれには欠点もあって、時間がかかりすぎてしまいます。 なので、研修プログラムの進行や教え方はある程度、任せてもらって、全員に「これがわからない人」と質問して集まってもらって話したり、工夫しています。
やっぱり「わからない」は講師として放っておけませんから。
オンライン研修で iPad で 120 枚の図解を作成
―― そんな樋口さんが講師としてこだわっていることを伺えますか?
大量にこだわりがあるので、 5 時間はかかります(笑)。その中から今回は 2 つだけ紹介しますね。
―― 空気を読んでいただき、ありがとうございます!
まず 1 つめが質問しやすい環境をつくることです。
先程お話した「わからない」と個別に聞きにくることすら、新人の皆さんにとってハードルが高いことなので、周りがいる中で質問するのはもっとハードルが高くなります。
そこで “講師 ― 受講者” という関係ではなく、同僚、先輩として接するように、敬語を極力使わなかったり、内容も問わず、プライベートの相談にも乗っています。
―― 確かに樋口さんと楽しくコミュニケーションをとる受講者が多いですよね
また、「わからない」はいつ発生するかわからないので、 24 時間どんな質問・相談でも答えています。 働き方改革上、あまり良くありませんが(笑)。 新人研修期間中だけに限って、寝ている横に PC を置き、通知がくれば答えています。
―― 24 時間! 今の御時世で、あまり大きな声では言えませんが、受講者にはありがたい限りですね。
では、もう 1 つのこだわりは … ?
これは研修がオンライン化してから始めたことですが、 iPad で図解することです。
教室のホワイトボードと違って、書いた図を受講者が写さなくてもスグに共有・保存できるので、積極的に使っています。 2 ヶ月で 120 枚ぐらい図解したと思います。
―― 120 枚! ほぼ毎日書いてらしたのですね。
その図解が評判良くて、樋口さんの担当クラスではないのに、なぜか他のクラスの受講者でもデータを持っていました(笑)。
試験前のノートみたいですよね。 試験前のノートと同じようにお金をもらおうかな(笑)。
―― 売れるかも知れませんね! 「イラストと図解でわかる Java 」みたいなタイトルで
(笑)。 冗談はさておき、 iPad は PLUS DOJO で同じく講師をしている冨原さんがこれみよがしに見せびらかしてきたので、それをマネてよかったです。
やっぱり、オンラインだから出来なかった、わからなかったは講師として一番避けたいので、オンラインならではの工夫をどんどん取り入れたいですね。
―― オンライン化で他に工夫されていることはあるのでしょうか?
教室であれば、作業中に片手間で聴く、と言ったことが可能ですが、オンラインでは実施しにくいものです。
そこで Zoom でルームを作業用と講義用とを分けて、「講義ルームでずっと話しているので、興味があれば聞きに来たり、質問しにきて」と伝えています。受講者の集中を妨げず、「わからない」や質問を拾えるようになりました。
―― では、最後に受講者の方へメッセージをお願いします!
新人の方々には初めての研修なので「頑張ろう! 何とか理解しよう!」と 24 時間、肩ヒジ張りがちですが、頑張りすぎず、プライベートとメリハリをつけてリラックスして受講しましょう!
―― 今日はありがとうございました!
ありがとうございました。


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私の名前の漢字が特殊で “至計” と書いて、 “よしかず” と呼ぶのですが、受講者から毎回「しけい」さんと言われるので毎回訂正するというネタをやっております。