特集1:研修制度 とは ~様変わりする IT 研修

もくじ
研修制度とは人材育成システム
制度とは、仕組みであり、英訳すると system です。つまり、研修制度とは、社員を育成する仕組み、システムとなります。
「システム」である限り、「入力」 -> 「処理」 -> 「出力」 という流れがあります。
例えば、会計システムを例にすると、
(入力) 請求明細の束を入力
(処理) 会計システムが仕分け
(出力) 原価表などを出す
このような流れになるのと同様に、人材育成システムでは、
(入力) 寿司職人になりたい人
(処理) 寿司職人育成学校がトレーニング
(出力) 寿司職人になる
こういったイメージですね。



IT 研修 制度における 入力・出力・処理 とは
では、研修制度を「システム」として考えると、制度を作るにあたって、「入力」「処理」「出力」どれから一番先に考えると良さそうでしょうか。
制度構築手順 1.
一番先に 出力:「育成目標」を考える
そうです、「出力」です。
研修制度に置き換えると、「育成目標: どんな人材 “に” 育成したいか」になり、これを一番最初に考えます。
例えば、テック企業において「海外研修制度」というのはよくありますが、この育成目標は様々です。
企業名 | 制度名 | 育成目標 |
---|---|---|
mercari | Mercari Tech Research | 現地でサービスを体験し、企画・開発に活かす |
クックパッド | プログレス | プロダクトを展開してる地域で、ユーザーを理解する |
Yahoo! Japan | トップカンファレンス参加支援 | 世界の最新技術や情報に触れ学ぶ |
もちろん「海外研修制度、導入 (ドン) !!」のように目標ではなく、話題性を狙って、システム導入そのものが目的になることもありますが、基本的には「育成目標」ありきです。
制度構築手順 2.
次に 入力:「育成対象」を考える
そして、次に考えるのは「入力」「処理」どちらでしょうか。
「入力」ですね。
研修制度に置き換えると、「育成対象: どの人材 “を” 育成したいか」です。
先程の海外研修制度の一覧がありましたが、「誰でも OK 」と考えられそうでしょうか。恐らく、制度の目標に照らし合わせた対象になっているはずです。
また、この「目標と対象」は研修制度構築・運営コストに密接に関係します。
「新人にマナーを身に着けさせる」のか、「新人を AI 研究者レベルに育成する」とは全く費用のかかり方が異なります。
制度構築手順 3.
最後に 処理:「研修制度」を考える
そして、最後に「処理」です。
これは研修制度そのものです。「育成目標」から「育成対象」のギャップを埋められる制度内容を考えます。
研修制度というと、制度内容そのもののアイデアから企画することが多いのですが、そうすると、的を外れた研修制度になりがちです。
例えば、「英語研修制度」を作ろう、というアイデアから企画が始まったとして、
育成目標は「ビジネスレベルの英会話」なのか、「英語のドキュメントが読める」なのか、
育成対象は「若手」なのか、「管理職」なのか、
それによってプログラムも変わりますし、実施方法も、e ラーニングやマン・ツー・マンになるなど変わります。
制度内容から企画すると、そういった様々なことが検討から漏れがちで、あとから制度改定を繰り返すことになってしまい、結果的に使われない制度になります。
また、それ以外にも、制度内容から企画・構築することで、弊害が発生します。
一番大きいものは、
「なぜ、その研修制度が必要だったのか」
「企業のどの問題解決に効果があったのか」
これらがわからなくなることです。
では、どこから制度を考えるべきなのか、これは、次の特集記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。
様変わりする IT 研修制度
研修制度というと、講師 -> 受講者のような研修コースを組み合わせ、体系化したイメージが強いかも知れませんが、これは先の海外研修制度同様に、目標に合致していれば「現地での生活を支援」でも OK です。
最近では、従来のような研修のイメージから離れ、技術情報の共有や、技術をアウトプットする目的で、
「ハッカソン」や「コンテスト」や、
「社内 Podcast 」「開発合宿」「社内勉強会」「部活動」、
スクラムのプラクティスを取り入れた「ペアプログラミング」「モブプログラミング」
など様々な形態、手法が増えています。
例えば、Google は「イノベーションを起こす」ためには、「学習する文化が必要」ということで、「 g2g ( googler 2 googler )」と呼ばれる社内勉強会が活発に開催されています。( Google re:Work より)
また、Web アプリケーションを高速化する「 ISUCON 」というコンテストを題材に、社内 ISUCON を開催し、IT エンジニア同士、切磋琢磨することで技術力を高める、という事例や、オライリー刊行の全書籍をライブラリとして用意する、といったユニークな事例もあります。
- 社内 ISUCON の例
-
NTTコミュニケーションズのソフトウェアエンジニア向け研修内容・資料を公開します | NTT Communications Developer Portal
-
社内ISUCON開催のための構成とノウハウを公開!Amazon Lambdaでサーバレスのベンチマーカーを構築した話 – pixiv inside
-
インフラ新卒研修と社内ISUCONのはなし – クックパッド開発者ブログ
- オライリー刊行書籍 全巻コンプリート
-
Sales Information – オライリー・ジャパンの在庫書籍全点を導入の猛者あらわる!
-
ぼくらのオフィスにオライリー・ジャパンの本がやってきた! – Tech Blog – Recruit Lifestyle Engineer
-
DMMオフィスにオライリー本が全巻導入されました! – DMM inside
「育成目標」と「育成対象」から、こういった事例をアイデアの源泉として、柔軟に制度内容を考えられるようになると、トレタン(トレーニング担当者)としてのスキルも上がった、と言えるかも知れませんね。
まとめ
研修制度とは、人材を育成する仕組み、システムのことを指し、システム同様に、出力 = 育成目標、入力 = 育成対象、処理 = 研修制度、と順番に考えることが重要です。
次の特集記事では、研修制度をつくるにあたって、一番最初の「出力 = 育成目標」をどう決めるか、考えてみます。

