特集3:研修ターゲットとスモールスタートのススメ

前回の記事 では、研修制度の「育成目標」は「社内の課題」から考えると進めやすく、計測しにくかった導入効果も数値化しやすいことを書きました。
今回は、この育成目標から、「どんな人材 “を” 対象にするのか」、研修ターゲットと導入時の工夫について考えます。
育成目標と研修ターゲットはコストに密接に関係
この研修ターゲットは育成目標を決めると、自ずと決まりそうですが、その前に考えなければならないことがあります。
それは、このターゲットが、「全従業員」なのか、「特定の部門、チーム」なのか、「新人」なのか、「リーダー候補」なのか、それによって対象人数が変わることです。対象人数が変わるということは、必然的に、規模やコストのかけ方が変わります。
このため、できるだけ、精査したほうが良いでしょう。
そして、その精査にあたって、重要なやり方があります。
ここでも例を挙げながら、考えていきましょう。
- 育成目標
- 「コンピュータサイエンス、特に計算量を考えたプログラムが書けるようになる」
KPI 10 % の高速化 - 研修制度
- 「プログラミングコンテスト研修」
KPI 1 ランク以上アップ
必然的に、この研修ターゲットは、その製品を開発するチームメンバ全員になりそうですが、そのままスタートしてもよいでしょうか。
こういう言い回しだと、ダメなんでしょう、と言われそうですが、、、実際 NG です。
それはなぜでしょうか?
この場合、「ある機能の動作速度を上げる」<-「計算量を考えたプログラムが書けるようになる」が、本当に相関があるのか、まだ仮説レベルであり、やってみないと効果はわかりません。 では、導入効果が立証されるまで、もっと検討を重ねた方が良いでしょうか。そんなことはありませんね。
研修制度のスモールスタートのやり方
やってみないとわからないのであれば、スモールスタートしてみましょう。
研修制度におけるスモールスタートは、
「研修ターゲットを限定する」
「研修期間を短縮する」
というのが、よく行われます。
もちろん、外部研修機関を使うのであれば、趣旨説明すると、お試し価格、お試しコースなどもあるかも知れません。
いずれにせよ、一気に導入するのは悪手です。
また、いたずらに検討期間を伸ばすのは、さらに悪手です。その検討コスト (= 検討メンバの人件費) が、なおのこと、もったいありません。
では次に、研修制度をスモールスタートするにあたって、重要となる「研修ターゲットを限定する」を掘り下げてみましょう。
1. イノベータを見つける
例として挙げた「プログラミングコンテスト」研修の場合であれば、恐らく、その開発チームの中で、取り組んでみたいメンバがいるはずです。
そのメンバを研修ターゲットにして、スモールスタートしましょう。
フラットに見てくれる人のほうが良いのでは? と思うかも知れませんが、ここはキャズム理論と同様に、イノベータになりそうな方を選ぶのがベスト です。
イノベータがその研修のファンになれば、こちらからお願いせずとも周りを巻き込み、導入を推進してくれます。これは不確実性の高い導入フェーズにおいては、とても心強いものになります。
なにより、研修部門より、同じ開発チームで普段、隣りにいる IT エンジニアのほうが言葉の重みが違います。
また、逆に、そのイノベータがやってみて、「よくない」感触だったなら、改善できるチャンスです。インタビューして、一緒に仮説から考えましょう。
ちなみに、フラットに見てくれる人は得てして、レイトマジョリティになりがちで、成功事例がないと導入が進みません。制度導入なので、自社に前例はなく、結果、導入できないことが多くなります。
また、研修ターゲットが絞られている方が、効果を測りやすく、例に挙げた「プログラミングコンテスト」であれば、その研修ターゲットの IT エンジニアが実際、該当プログラムを一部リファクタリングしてみる、といった検証方法も試しやすくなります。
2. 導入事例とプロトタイピング
このスモールスタートで検証もうまくいったなら、その「導入事例」をもとに、研修ターゲットを近しい部門やチーム、近しい課題や問題をもっているチームに広げていきましょう。
導入事例によって数値化できているので、説得力も増し、近しい部門やチームであればあるほど、「ウチでもうまくいきそう」と疑似的な成功を考えられるはずです。
また、スモールスタートの方法も、実際、研修を実施してみるだけでなく、システム開発同様に、「プロトタイピング」できます。
もし、研修の題材となっているテキストや市販書籍、もしくはトレタン (トレーニング担当者) がイメージするものに合致する書籍や Web サイトやアプリ、チュートリアル、動画、GitHub のリポジトリなどがあれば、それを研修ターゲットに見てもらうのも、立派なプロトタイピングです。
スモールスタートなのですから、何度失敗してもよいように、出来るだけ影響範囲を小さく、コストも抑えて、検証 -> ピボットがしやすいようにしましょう。
まとめ
まとめとして、研修制度の「研修ターゲット」は規模やコストに、密接に関係するので、その精査することをオススメします。
精査にあたっては、スモールスタートを心がけ、その制度対象となる方はイノベータになりそうな「前のめり」な方を選び、出来るだけコストを抑えてプロトタイピングしながら、失敗しやすいようにしましょう。
この IT 研修制度構築ガイドは、この導入までの道筋をもってオシマイです!
気になる研修制度の中身そのものは、今後、トレタンで「名物研修に参加してみた」のようなシリーズ連載を構想 (妄想 ? ) していますので、ぜひご期待ください!!
この IT 研修制度構築ガイドが、トレタンのお役にたてば幸いです!
最後に、もしお気づきの点やご意見、こんなものを特集して欲しい、取材に来い! などご要望、ご相談などございましたら、お気軽に トレタンの問い合わせフォーム からご連絡くださいませ。
