テレワーク、止めるべきか?進めるべきか?|SEカレッジ ウェビナーレポート
本日のテーマは、「テレワーク、止めるべきか?進めるべきか? ~ ICT による課題解決と社員の自律性を育てるマネジメント~」です。
コロナをきっかけに日本企業のテレワークは一気に進みましたが、行動規制が緩和されるようになった今、 NTT グループのようにさらに加速する企業がある一方、ホンダのように中止する企業もいます。
ホンダは「週 5 出社」で NTT は「原則在宅」――テレワークやめる企業と続ける企業の「分岐点」(1/3)〈dot.〉 | AERA dot. (アエラドット)
そこで今回のウェビナーでは、なんと 10 年以上も前からテレワークを導入・推進されてきた 田澤 由利 さんに現在のテレワークの課題とその解決方法を伺いました!
田澤 由利
株式会社テレワークマネジメント 代表取締役 (兼 株式会社ワイズスタッフ代表取締役)
1998 年 株式会社ワイズスタッフ、 2008 年 株式会社テレワークマネジメントを設立し、 10 年以上も前からテレワーク導入支援や普及事業等を行う。 総務省や国土交通省など、テレワークの新たな普及定着に向けた国の政策検討会議にも多数参画、総務省地域情報化アドバイザーも務める。 2022 年には「テレワーク本質論」(幻冬舎 刊)を執筆。
平成 27 年度 情報化促進貢献個人等表彰総務大臣賞、テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰個人賞、第 66 回前島密賞を受賞
もくじ
間違ったテレワーク、続けていませんか?
―― 『テレワーク本質論』という書籍を執筆された田澤さん。 ズバリ、テレワークの本質とは何なのでしょうか。
―― なるほど。 日本には日本独自のテレワークの進め方があるということでしょうか?
従来の日本の働き方の良い部分を大切にしつつ、日本独自の課題を解決するのが、日本型テレワークといえるでしょう。
10 年ほど前に、アメリカのテレワークを視察した際に、文化も法律も考え方も日本とは全然違うということに気づきました。 日本はすぐにアメリカの真似をしてしまいがちですが、それでは日本独自の課題を解決することはできません。 それどころか、間違った方向に行ってしまいそうです。
―― ここで今回は投票ツールも併用していますので、実際にテレワークの課題を視聴者の皆さんにアンケートしてみましょう。
投票、ありがとうございます。 このあとお話するコミュニケーション、マネジメントの問題などがアンケートの結果に挙がってきていますね。
―― 課題にも挙がっているような、会社が陥りがちな間違ったテレワークの事例などはございますか?
よくあるのが、いわゆる「サボる」テレワーク。 そのほかにも、コミュニケーションが取れない、雑談ができない、新人が育たないとか、会社の一体感が薄れるテレワークなどがありますね。 あと困るのが、報連相は対面にしようというテレワークですね。
「コミュニケーションは対面で、それ以外の仕事をテレワークでやろう」という考え方の会社がまだまだ多いのが現状です。
テレワークでコミュニケーションしにくい問題のボトルネックは「声をかけにくい」
―― テレワークにはまだ誤解があるということですね。 間違ったテレワークに陥らないためには、どうすればよいのでしょうか。
テレワークの課題としてよく出てくるのが、先程のアンケートにも挙がった、コミュニケーションの問題です。 要は、「声をかけていいかわからない」とか、「部下が今何してるかわからない」といった話ですね。 この問題を解決することが、まず第一歩です。
弊社ではこの問題をバーチャルオフィスで解決しています。 バーチャルオフィス上で、このスペースなら自由に声をかけてよいといったようなルールを設けているので、「声をかけにくい」問題は解決できます。
では、実際の様子を皆さんにも会社見学していただきましょう!
弊社オフィスツアーにご参加いただき、ありがとうございました!
このように相手の状況をお互い把握できる状態にするのが、はじめの一歩です。
またバーチャルオフィスにみんなが集うことで、一体感を感じることもできます。やはり ICT ツールを使わずしてテレワークは始まりません。
ただしツールだけではテレワークはできません。 ルールが必要です。
―― チャットツールでは解決できないのでしょうか?
チャットツールの多くは個人のステータスを切り替えることができます。 これで相手の状況が把握できるという話ですが、まず、ステータスの切り替えって忘れやすいですよね。 話しかけられる状態であってもステータス「会議中」のままでは、話しかけるのを遠慮してしまいます。
―― では、チャットで雑談部屋を作る、というやり方はいかがでしょうか?
雑談を雑談と思ってしようとすると、それはもはや雑談ではないのでは(笑)。 仕事の会話の中で雑談が発生するといった状況は、オフィスにいる環境でしか生まれにくいのかも知れません。
テレワークでマネジメントしにくい問題は ICT ツール + テレワークルール で解決する
―― ここまで、主にコミュニケーションの話をしてきましたが、今度は課題に挙がっていたマネジメントの話もうかがっていきたいと思います。
では、こちらの羊の絵をご覧ください。 みなさんは、どの羊が幸せだと思いますか?
簡単に説明すると、 A の羊は、小屋につながれていて、いわゆる監視型です。
B の羊は柵の中で自由に働いている。
C の羊は放任型ですね。
―― 個人的には C がいいですね(笑)。
自由な C ですね(笑)。 私は、働く上ではB タイプが一番良いと考えています。 B の羊の柵は、いわばマネジメントです。 マネジメントという柵に守られて安心して働ける環境で、社員が「自律」して働くことができる。 これが会社が担うべきマネジメントのあり方だと考えます。
そして、実は従来の物理オフィスが柵の役割をしているのです。
そこでオフィスを実現するバーチャルオフィスと、それに加えてテレワークの独自ルール、例えば、勤怠のルールや中抜けルールなどを用意して、 “柵を作る” というテレワークでのマネジメントが必要になります。
マネジメントしにくい問題の次は「テレワークで評価しにくい問題」が浮上する
―― コミュニケーションの問題が解決できたら、 “柵” を作ってマネジメントの問題を解決すると … 。
そうですね、課題として気づきやすいのはコミュニケーション。 次がマネジメント。 それが進むと「評価」が問題になります。
―― テレワーク時代では評価も変わるべきということでしょうか?
ええ、どのように評価しているか、今の評価制度をもう一度、見直すことから始めましょう。 弊社で評価制度を調べてみたところ、多くの会社では、足し算で評価されていました。
ところが足し算で評価すると、子育てや介護、その他の事情で時短勤務の人は、報酬が下がるので、働くモチベーションも下がります。 しかも、これからの時代はフルタイムで働ける人がどんどん減少していきます。
果たして、従来の足し算評価のままでいいのでしょうか。
―― “時間” に変わるものが必要ということですか。 … ちょっと思いつきません。
弊社では、成果主義でもなく、時間主義でもなく、「成果 ÷ 時間主義」と呼ばれる評価を採用しています。 つまり、時間当たりの生産性で評価しています。
―― すばらしいですね! 納得感がありますが、一方で実際やるとなると、なかなか難しそうです。
難しいですよ。 でも、テレワークでむやみに長い時間働いたり、成果を出すために無理して潰れることを防ぐには必要です。
テレワークであっても、会社に出社しても、時間当たりの生産性を基に、マネージャーが評価をするという姿勢が重要です。 それによって、社員ひとり一人が時間当たりの生産性を意識するようにもなります。
テレワーク、進むべきか、戻るべきか
―― あっという間に時間が過ぎました。 最後に視聴者、皆さんへのメッセージをいただけますか?
コロナを契機に、テレワークは飛躍的に普及しました。 ところが、ひと段落したところで、「コミュニケーションが取りにくい」「管理ができない」「生産性が低下する」といった課題が顕在化して、めげてしまい、戻った会社もあります。
このスライドのように壁を乗り越えれば、 DX や人材確保、コスト削減、など必ずいろいろなメリットを得られます。 進むか戻るかで迷っているなら、ここを乗り越えた先に答えはあるとお考えください。 それを知らないで戻ってしまうと最初からやり直しですから、あまりにもったいないです。
ぜひ、乗り越えましょう!
まとめ
10 年以上も前からテレワークを導入・推進されてきた 田澤 由利 さんにテレワークの問題を整理していただきながら、自社での解決方法を丁寧に紹介いただきました。
物理オフィスが果たしていた役割を分解し、バーチャルオフィスツール + テレワーク独自ルールでコミュニケーションとマネジメントの問題を解決できることを、実際にバーチャル会社見学で披露されていたのは圧巻で、テレワークはもっと有意義なものになるのではないか、そんな確信が持てる内容でした。
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一言でいうと、テレワークの本質は「会社が、働く人が、そして社会が幸せになること。 さらに幸せであり続けること」だと考えています。 今日の日本では、若者の減少、子育てや親の介護、頻発する災害など課題が多く、同じ場所、同じ時間で働くことができない人が増えています。
でも、本来、人は、幸せに生きるために働いてきたはずです。 働くために幸せでなくなるなら、それは本末転倒です。 テレワークにより、自らが働く場所と時間を選択できるようになります。 ただし、個々に仕事をすればいいのではありません。 チームで働き、協力し合って、より良い成果を出す、これまでの日本の働き方の良いところですね。