NFT アートが描くミライとは?~新時代のアートのかたち~|SEカレッジ ウェビナーレポート
SE カレッジでは旬のテーマをもとに、 1 時間のウェビナーを毎月 1 回以上、開催しています。
今回のテーマは、 「 NFT アートが描くミライとは?~新時代のアートのかたち~」です。
NFT アーティストとして第一線でご活躍されている せきぐち あいみ さんをお招きし、 NFT 、 NFT アート、メタバース、 Web3 と様々なトピックが錯綜する中、アーティストからみた NFT / NFT アートの価値、その未来、加えてクリエイターの心構えや基本動作をお話いただきました。
まだ NFT の価値にピンときてなかった私も、注目される理由とその魅力にワクワクしました! ぜひご覧ください。
クリーク・アンド・リバー社所属。 滋慶学園 COM グループ、 VR 教育顧問。 Withings アンバサダー。 福島県南相馬市「みなみそうま 未来えがき大使」
VR アーティストとして多種多様なアート作品を制作しながら、国内にとどまらず、海外(アメリカ、ドイツ、フランス、ロシア、UAE、タイ、マレーシア、シンガポール etc. )でも VR パフォーマンスを披露して活動している。
2017 年、 VR アート普及のため、世界初の VR 個展を実施すべくクラウドファンディングに挑戦し、目標額の 3 倍強( 347 % )を達成。
2021 年 3 月には、 NFT オークションにて約 1300 万円の値を付け、落札され、同年 12 月、 ForbesJapan が選ぶ今年の顔 100 人「 2021 Forbes JAPAN 100 」にも選出された。
もくじ
せきぐちあいみとは何者か?
―― とても新しい表現ですよね。 せきぐちさんはどのように創作されてらっしゃるのでしょうか?
VR アートといっても伝わりにくいので、こうした動画を見ていただくとか、ライブペイントのパフォーマンスを通じて、このアートの可能性を体感してもらえるように心がけて活動しています。
―― この作品はいつ創られたのですか?
NFT を始める前から制作したもので、 VR でも観れるようにしたり、新たに手を加えて NFT アート化もしました。
また NFT アート化にあたって IPSF という分散したネットワーク上に保存しています。 YouTube などのプラットフォームに保存すると、改変や消去の可能性がありますが、 ISPF だとその恐れはありません。
アートとしては、常に色が変わり続けている phoenix (鳳凰)の絵ですが、今の時代って目まぐるしく変わっているので、私たち自身も常に変わろうという気持ちを込めました。
―― 続いて、昨年に話題になったのが、こちらですね
この「 Alternate dimension 幻想絢爛」が初めて NFT で出品したものです。 空間の中に VR 空間の中を撮影した映像作品です。
古い巻物を突き破って進むとまだ見ぬ世界が広がっている、そんな今の時代の変化と世界の広がりを VR アートで表現しようと作りました。 この作品が、おかげさまで 1300 万円で落札いただきました。
―― 大きなニュースになり、一気に NFT アートが話題になりましたよね
これで取材やコラボレーションの依頼といった問い合わせも増えました。 もちろん海外では、もっと大きな事例がありますが、日本人のデジタルアーティストが、一個人でこういった実績が出るのは、まだまだ少ないですから。
―― 最後はこのライブペインティングです
これはロシアでパフォーマンスしたものですが、私がゴーグルの中で見えている視界を大きなモニターに投影しながら、みんなと一緒に擬似的に VR 体験してもらうというものです。 このようなパフォーマンスや制作を 10 ヵ国ぐらいで行ってきました。
―― これは本当にすごいですね
ありがとうございます。 こうして色んな国とか色んな場所でパフォーマンスして気づいたのは、この国は評判が良かった、この国は悪かったと分かれることが全くなかったんです。
VR って人間の本能的に老若男女国境とか関係なく、「何この世界!?」って人を高揚させてくれるものなんだと思い、あらためて可能性に満ち溢れていることを確信できました。
自身のクリエイティブに自信がなかったときのせきぐちあいみの処方箋
―― VR アートはいつから始められたのでしょうか?
2016 年からですね。 その前は Youtuber をやっていました(笑)。
―― もともと、ずっと昔から情報発信はされていたのですね
私は根本的にはずっと「何か物を作って人を楽しませる」と思っていて、高校生の頃からホームページやブログ、動画コンテンツなどは一通り触っていました。
―― VR アートを始められたのは、どのようなきっかけがあったのですか?
YouTuber をやっていた時に、たまたま VR を体験する機会がありまして、「空間に立体を描けるってなんて楽しんだ!」って、本当に子供のような気持ちになったことからですね。
それで純粋に楽しいという気持ちで始めたのですが、実際作ってみると、まだまだだなあ、と思ってしまって。 「できた!」と思っても翌日見たら、これまだ人には見せられないと、納得いかなくて発信できずにいたんです。
―― 夜に書いた文章を、朝見ると恥ずかしくなってしまう現象に似ていますね
でも、たまたま友人に見せたら、「こんなの見たことないから出してみなよ」って言ってくれて、 SNS に出したら世界中から反響がきて、思っていたよりもすごく評判が良かったんですね。
それからは、もう自分で判断するのはやめて、常に出していこうと心がけるようになりました。 そうすると思ってもみなかった海外からの依頼などが増えました。
―― 自分で評価するのではなく、クリエイティブはどんどん発信するのがよいのですね!
そうですね。 あとは、作るときに人に刺さってバズるものを目指してしまいがちですが、それよりも継続することが大事だということに気づけました。
例えば海外の人が私の作品を面白いなって思ってくれても、それが 1 つや 2 つだけだったなら、本人が果たしてやっているのか、一個の作品にものすごい時間がかかってしまうとか、安定してなくていつ出せるかわからない人じゃないか、いろいろ思われてしまいます。
でも、続けて出していると、この人は人生をかけて取り組んでいて、安定して作品も出ているようだし、仕事を任せても大丈夫な人なんだ、ということに繋がります。
そもそも NFT / NFT アートとは何か?
せきぐちさんのアートワークを伺えたところで、 NFT / NFT アートのテーマに移ります。 その前に少しだけ NFT を解説します。 Non-fungible token 、翻訳すると非代替性トークン、代えがきかない唯一無二の暗号資産と言われます。 ブロックチェーンで実装されていて、データの改ざんや不正利用が難しいことが特徴です。 これによりデジタル作品の唯一無二性を担保することが可能になり、 NFT アートに注目が集まるようになりました
―― せきぐちさんは NFT アートをどのように認識されているのでしょうか?
これまでデジタル作品はコピーが可能であるが故に、なかなか価値がつきにくかったところ、 NFT によってその価値が認められるようになったと考えています。
―― それはアーティストとしてはうれしい?
それはもう、とても幸せですね(笑)。 NFT を通じて、私は自分の死後のことまで意識して作品を作るという視点をもらえました。
また、これまではクライアントワークが主だったのですが、去年から NFT アートの創作を中心に活動するようになりました。 いずれは、デジタルデータを売り買いする時代がくると思っていましたが、それがこんなに早く、こんなに高額で取引される、しかも自分が当事者になる …… とは一切予想していませんでした。
―― 一気に盛り上がりましたものね。 一方で NFT によって買う側も本物を買ったという満足感が得られやすくなりましたね
それもありますし、買ってくださる理由もさまざまですね。
所有やコレクション、アーティストの応援、支援、あとは投資・投機です。 転売して儲けるために買う方ももちろんいます。 これまでは転売されると、その利益は元の創作者には全く入りませんでした。
これが NFT の場合、ロイヤリティを設定でき、例えば私の場合は 10 % にしていて、転売価格の 10 % が私の収入になるようになりました。 アーティストにとっては転売が必ずしもネガティブなものにはならなくなったと思います。
もちろん日本が誇るような IP ( Intellectual Property:知的財産 )などは転売がリスクになり得ると思いますので、クリエイターの考え方次第ではあります。 私は、逆にどんどん転売されて、このプロジェクトを盛り上げたいですね。
―― なるほど、転売されてもアーティストにメリットがあるようになったのですね
一方で、今、 NFT 市場は、とんでもない額のお金が動いています。 そうすると、よくわからないけどお金が動いているという動機でやる方もいるのですが、それはすごく危険だと思います。
というのも、数年前に VR が盛り上がったとき、お金になると思って入ってきた人たちは、今みんないないんですね。
だからお金はもちろん大事ですが、しっかり可能性を感じているかどうかが、もっと大事です。 とりあえずウォレットを作ってみる、アカウントを作って試してみて、面白い、これから伸びると思えるかどうか、そうしないと続けていくことは難しいです。
その上で、一歩入ってみると、情報が一気に入ってきて、キャッチアップがしやすくなります。
NFT アートの今
―― その盛り上がっている NFT アートの動向はどのようなものでしょうか?
私のようなアーティストや、 Zombie Zoo Keeper を作った小学生などが、よくメディアで取り上げられますが、他にも日本発の大きな事例はたくさんあるんですね。
この GAL verce というのは、 Zombie Zoo Keeper を作った小学生のお母さま、草野絵美さんがプロデュースされてる新しいプロジェクトで、 13 億という価値がついてます。
―― 13 億! この 1 つの作品にですか?
いえ、 GAL verce は、いわゆる「コレクタブル」と呼ばれているもので、一個のアート作品ではなくて、シリーズものなんです。 GAL verce は 8888 体あります。
コレクタブルのいいところは、コミュニティが生まれるところです。 それを所有している人たちの仲間意識や、持っていることのステータスになったり。
絵美さんは、こうしたプロデュース能力や、 PR 能力が素晴らしいんですね。 もし NFT アーティストでなく、プロデュースなどをしたい人は草野絵美さんの動きを見習うのがおすすめです。
NFT が描く未来
たくさんの NFT アートを紹介いただいたところで、最後のテーマは「これから NFT / NFT アート はどうなるのか」です。 せきぐちさんに伺うと、意外にもアートではなく、 NFT そのものの可能性について言及いただきました。
―― せきぐちさんは NFT の未来がどのようになるとお考えですか?
NFT アートは他の暗号資産と違って視覚化されているので、 NFT と相性が良いですね。 このため NFT アートが先行して動いています。
ただ、これからはアートだけでなく、あらゆるジャンルで NFT が組み合わされると思います。 すでに企業や自治体も動き出しているのですが、その中から事例を紹介します。
今すごく面白いなあと思ってるのが向かって右側、新潟の山古志地域の取り組みで、 NFT でデジタル村民権を販売しているんですね。
山古志地域というところは、限界集落でほとんど人がいないのですが、デジタル村民権を取得すると、投票権があったり、何かを決めるときに権利を持てるデジタル村民になれます。 そういったデジタル村民を取り込んで盛り上げていこうという、ユニークな試みです。
こんな風に、一見、テクノロジーとは縁が無さそうなものでも発展するのが NFT の面白さの一つです。
他にも NFT は権利のようなものと相性が良いので、例えば、特許や認可が NFT 化すると所有や分配、お金のやり取りなどが可視化してわかります。 あと楽曲の権利なども、確実にアーティストにストレートにお金が入りますし、問い合わせ先も明確になります。
―― 確かに、おっしゃる通り、機能しそうですね
YouTube やクラウドファンディングなども、当初はごく一部の人が使うものでしたが、今となっては全ジャンルの人が使っています。
今の NFT の盛り上がり方を見ると、そういう可能性を感じていて、どういったジャンルでも何かしらマッチするものがあり、人々の日常に根付いてくものだと考えています。
―― とても可能性が感じられますね! では、最後に、せきぐちさんからメッセージをお願いします
NFT やメタバースは可能性に満ち溢れています。 絶対やらなければならないというものでもありませんが、確実に人生を豊かに広げてくれます。
会社のプロジェクトに取り組むでもいいですし、それが難しければ個人で挑戦するのでもいいので、とにかく、ぜひ一歩足を踏み込んでください。
まとめ
話題のせきぐち あいみさんにお越しいただき、 NFT / NFT アートの今と未来をお話いただきました。
なぜ NFT アートが注目されているのか、せきぐちさんからデジタルアーティストからみた NFT の魅力を伺え、その理由がわかりやすく理解できました。 また、クリエイター活動のあり方も実体験を通してお話いただけたので、文章を書く身としても、とても励みになるものでした。
このレポートでは取り上げませんでしたが、 NFT 化するものとして、せきぐちさんが資格や学歴も挙げられていて、「確かに!」と思うことばかりでした。 ウェビナーに参加する前は、少し斜に構えた気持ちもありましたが、今はとても可能性を感じています。 私もウォレットを持つところから始めてみたいと思います!
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(動画のように)空間に VR のデバイスを使用して立体を描いています。 VR のゴーグルの中で見えている視界と合成し、キャンパスが 360 度広がる立体的な空間にアートを描いています。