上位 5 % 社員から学ぶ! 2030 年に生き残るビジネスパーソンとは?|SEカレッジ ウェビナーレポート
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今回は「上位 5 % 社員から学ぶ! 2030 年に生き残るビジネスパーソンとは?」というテーマで、コロナ禍でさらに変化が激しくなった現在、どのような仕事の進め方がよい評価を生むのか、越川 慎司 さんをお招きしてお話を伺いました。
株式会社クロスリバー 代表取締役社長
国内および外資系通信会社、 IT ベンチャーを経て、 2005 年にマイクロソフトに入社。業務執行役員として Office365 などの事業責任者を歴任。 2017 年に株式会社クロスリバーを創業しメンバー全員が週休 3 日・週 30 時間労働、複業、リモートワークを約 5 年継続。のべ 800 社に行動変革を提供し、企業向けのオンライン講座は累計 17 万人が受講。著書 16 冊。『 AI 分析でわかった トップ 5 % 社員の習慣』、『 AI 分析でわかった トップ 5 % リーダーの習慣』 (共にディスカヴァー・トゥエンティワン) など
もくじ
スペックの高い人から、巻き込み力のある人へ。時代とともに変わる「出来る」ビジネスパーソン像
―― コロナ禍もあって、改めて「出来る」ビジネスパーソンとは、どのような人なのでしょうか?
―― なるほど。この上位 5 % 社員の層は時代によって変わってきてはいるんですか?
明確に変わってきていす。 1990 年代後半ぐらいまでは、成果の出し方が画一的でした。つまり、「これをやれば成果が出る」というのが、会社の中でもある程度、確立されていたので、それを言われた通りにやれる人の評価が高かった。もっと言うと、スペック、例えば学歴や英語が喋れるとか、 IQ が高い人の評価が高かった。いわゆるエリートと言われるような人が上位 5 % を占めていたと思います。
現在は、完全に評価制度が変わっていると断言できます。その理由は、今、成果を出しているか? 今後成果を出し続けるか? ということが評価基準になっているからです。また、 IQ が高い人よりも、人をどんどん巻き込んでいくような、いわゆる人たらしの EQ ( Emotional Intelligence Quotient : 心の知能指数 ) が高い人が上位 5 % になる可能性が高いことがわかっています。
―― なぜ EQ の高い人、巻き込み力が高い人が求められるようになったのでしょうか?
一番の変化は、お客様の志向が変わったことです。
昔は、モノ消費の価値観で、「高機能で低価格なモノ」が売れるという、画一的な成功パターンがありました。イノベーションは研究開発室で生まれて、経営陣が決めたことを言われた通りにやれば売り上げは右肩上がりという、そんなモノ消費社会でした。
現在は、従来の「モノ消費」から「コト消費」へと大きく変わってきています。高機能であること(モノ)が重要なのではなくて、高機能から生み出された価値が、自分にとってどんなメリット(コト)を与えてくれるのか。お客様の価値観がシフトしています。
その価値観が複雑でスピード感が速くなり、イノベーションは研究開発室では起きにくく、現場で起きるようになっています。
そうすると、お客様の課題を個人で解決するのではなく、周りの人たちを巻き込んで解決することがイノベーションに繋がると認識も変わってきました。結果、個人で業務遂行力が高い人よりも、実行力とコミュニケーション能力でさまざまな人を巻き込んで課題を解決していく人のほうが、評価されるようになっています。
上位 5 %社員の習慣は「やめることを決める」!?
―― 越川さんは著書で、上位 5 % 社員の 5 つの原則を提示しています。特に原則 4 で、上位 5 % 社員の 73 % は意識変革はしないと書かれています。一般的な通説では、意識が変われば行動が変わる、だと思うのですが、これは違うということなのでしょうか?
僕も「意識が変わらないと行動が変わらない」と思っていた派です(笑)。それが変わったのが、上位 5 % 社員から「意識は変わりますよ、日本人の意識は結構変わりやすいです。でも 行動の変化を待っていたら、 5 年 10 年かかりますよ」と言われたことでした。
そんな悠長に待ってられないので、意識変革の前に行動変革を起こし、それをふりかえり、内省して、良かったと思ったら、それで意識が変わる。こうすると、世の中の変化にも合わせやすいと、上位 5 % 社員の皆さんが言っていました。
―― なるほど、コペルニクス的転回ですね!行動から変革するコツはあるのでしょうか?
「やめること」を決めることです。今の仕事の中から効果、効率が低いものをまずやめる。やめて、時間に余裕を持たせてから新しいことにチャレンジするんです。一般社員の方々は今の仕事が一杯のときに新たな挑戦をするので途中で挫折してしまうんですね。
そのやめることを決めるのに有効なのが「ふりかえり」です。 605 社 17.2 万人の業務を調査したところ、社内会議・資料作成・メールやチャット、この 3 つで 68 % を占めていることがわかり、さらに厄介なことにこれらはふりかえらないと、ムダかどうかがわからないんですね。
そこで上位 5 % 社員はやめることを決めるのに 2 週間に 1 回はふりかえりの時間を持っています。と言っても、ただ単にカレンダーを眺めているだけなんですが(笑)。コーヒーを飲みながら、カレンダーを眺めつつ「この会議のための会議のための会議は必要なかったな」「この Excel のマクロも必要なかったな」とわかります。
このように、かけた時間や苦労で評価されるという考え方ではなく、無駄をせず、成果に向けた最短距離のショートカットを目指す、というのが特徴的です。
この「ふりかえり」の習慣がわかり、行動実験として 28000 人の一般社員にも試してもらったところ、 91 % の方が効果を実感されています。
IT エンジニアが時間を費やしているのは「資料作成やメール・チャットの応答」で 8 割はムダ?
―― 先程の評価制度で、時間や苦労で評価される方も多いと思うのですが、どれぐらいいるのでしょうか?
先程の調査で評価制度を調べたところ、定量的なゴールを持たない方は 62 % もいらっしゃいました。つまり、どの指標を達成すると評価されるのかわからない人がそれだけいらっしゃいます。
―― そういった方に個人でも出来る、評価される方法はあるのでしょうか?
オススメなのが、目標を決める際、「行動目標」を評価者と握ることです。
例えば「経理業務でエクセルでの作業量を 8 % 減らして、昨年と同じ量の業務を行います」など、定量目標を含めて、自ら評価者に提案して、それで合意することです。
目標が決まれば、四半期、月間などのタイミングで、「進捗 ** % 達成しています。」「 ** % 未達なので、 … でリカバリします」と共有できるようになります。ここがポイントで、報告を求められたからではなく、上手く行ってなくても自分からチーム内に共有することが重要です。
これは評価だけでなく「巻き込み力」アップに繋がります。自分から「弱みを見せる」ことで、共有した相手からアドバイスや助けてもらうことが生まれます。
逆に進捗や問題を共有しないと、周りからは何をしているのか見えませんので、そういったアクションも得られません。
ちなみに、自分の進捗や問題を周りに共有することは IT エンジニアの方にも有効で、「進捗どうですか?」と聞かれる煩わしさから開放されます。
―― そういった IT エンジニアにも有効な 上位 5 % 社員の習慣はございますか?
上位 5 % 社員の行動調査でわかったことですが、意外にも IT エンジニアは設計やプログラミングの時間が取れず、資料作成や、メール・チャットでの応答に時間が取られていることがわかりました。また、その苦労して作成した資料も評価されていません。
パワーポイントで作成された資料 5 万ファイルを調査したことがあり、このうち上司やお客様に過剰に気遣って作られた資料、私は「忖度資料」と呼んでいるのですが、これが約 24 % を占めることがわかりました。さらに衝撃的だったのが、そのファイルの 8 割以上は上司やお客様に開かれてもいなかったのです。
―― 忖度資料は無駄の塊だったんですね
それでは IT エンジニアの生産性が上がらない、と思って 25 社に提案して実験したのが「フィードフォワード」です。
これは仕様書や設計書などドキュメントを作成するときに、 20 % の完成度に達したら、「ちょっといいですか?」と声をかけて、先に上司やお客様にチェックしてもらいましょう、というものです。
20 % だとドキュメントの骨組みがわかるぐらいですが、それでも「こんなにページ数はいらない」「ここは外して OK 」「そもそもこの資料の元となっているデータがわからない」などフィードバック (作成後の評価) ならぬ、フィードフォワード (作成中の前評価) がもらえます。
これで忖度資料の 7 割以上を無くすことができ、かつ「手戻り」も 74 % も減らすことができ、ドキュメンテーションにかかる時間を格段に減らすことができました。さらに、お客様も納期ギリギリになって意図しない資料がでると感情的になりますが、こういったことも防げました。
―― その「ちょっといいですか?」も著書では重要であると書かれていますね
上位 5 % 社員がいる、もしくは 上位 5 % 社員が率いるチームでは、心理的安全性が高い、ということがわかっています。そのチームでは「ちょっといいですか?」の発言回数が、心理的安全性がないチームの 8 倍に達していることがわかり、この発言回数が心理的安全性を測るデータの 1 つになることがわかりました。
ただし、これは健康診断のように、あくまで結果であって、積極的に「ちょっといいですか?」を言って受け止めよう、という訳ではないので注意です。
行動の選択肢を増やす「小さな行動実験」とは?
―― 最後のテーマ「 2030 年以降も生き残るために何をするとよいのか」について、ご意見を伺えますか?
変化はより一層激しくなると思います。変化が激しい時代を生き抜くには、行動の選択肢を増やすことが最適ではないでしょうか。
例えば、働き方にしても、選択肢を増やしておけば、電車が止まってしまったらリモートワーク、人手不足なら地方のメンバーがリモートで加わる、など柔軟に選べます。
―― 選択肢を増やすにはどうするとよいでしょうか?
行動実験を積み重ねることです。よかったら続ける、ダメだったらやめる。よかったものだけをたくさん蓄えておけば、さまざまな変化が来たときに対応しやすくなります。
行動実験というと大層なものだと思われがちですが、ポイントは 「小さな行動実験」ですね。明日から全部やる必要はなくて、たとえば、月に 1 回だけやってみる、週に 1 回やってみる。小さく試して、よかったなと思ったら続ける。
この行動実験のセットで、これまで話した 上位 5 % 社員の習慣にあったように、週に 15 分 ふりかえり 、内省を設けてください。オススメは金曜日の午後 3 時からやることです。
―― 金曜日の午後 3 時には何か理由があるのでしょうか?
金曜日は週の終わりで疲れている上に、休み前ということもあり、今ある仕事は終わらせたいという気持ちが強い曜日です。このため、やめる勇気が出やすく、翌週以降の予定も見えているので、小さな行動実験を見つけやすくなります。
―― なるほど、金曜の午後 3 時にふりかえしして、止めることを決め、小さな行動実験を見つけるのですね。
今日は貴重なお話、ありがとうございました!
ありがとうございました。
まとめ
今回のウェビナーでは、上位 5 % 社員の習慣から働き方のヒントを紹介いただきました。
その習慣を伺っていると、アジャイルの原点ともなっている、 OSS 開発の進め方をまとめた書籍「伽藍とバザール」( 1999 年発表) に出てきた「 Release Early, Release Often (早めのリリース、しょっちゅうリリース) 」にとても似ています。
「ふりかえり」 ( Retrospective 。アジャイルの文脈では “ひらがな” で書く) はまさしくスクラムのプラクティスの一つです。アジャイルやスクラムは変化に強いソフトウェアを開発するためにあるのですから、ヒトの行動もそれに似通ってくるのかも知れませんね。
アジャイルを働き方や仕事の進め方にも活かすと良いかも知れない、と思ったので、来週からは Todo 管理をやめてバックログに切り替える、小さな行動実験から始めてみたいと思います!
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まず何をもって「出来る」と評価するのかは非常に難しく、感覚や定性的もので「出来る」人を決めるのではなくて、定量的にするため、各社で上位 5 % の人事評価をもらった人 = 「出来る」社員と定義づけました。なお、上位 20 % 社員は「成果を出す人」、上位 5 % 社員は「成果を出し続ける人」と定義しています。