講師インタビュー 城田 比佐子 「受講者の『わかった !!』が何より楽しい」

研修で「何を学ぶのか」も重要ですが、 「誰から学ぶのか」も重視される時代。SEプラスの研修で登壇する講師がどんなことを思いながらコースを実施しているのか、講師にインタビューしています。
今回は情報処理技術者試験対策や、新人向け IT 基礎研修で登壇の多い 城田 比佐子 さんです!
柔らかな物腰からは想像がつかない “負けず嫌い” スピリットで、イヤイヤ受講する人でも「わかった」と楽しませたいと話す城田さんに、「わかった」にこだわる理由や、「わかる」に導くコツを伺いました!

お茶の水女子大学理学部卒。住友商事でシステム企画を担当後、 NEC 教育部、駿台電子専門学校などで情報処理教育に携わる。現在はフリーインストラクタとして IT 全般における教育、コミュニケーション系の教育、書籍執筆、教材作成など幅広く活躍している。プロジェクトマネージャをはじめ、システム監査、データベースなど情報処理技術者試験を多数取得。
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主な著書
- 情報処理教科書 イラストで合格! ITパスポート キーワード図鑑(翔泳社刊)
- 情報処理教科書 出るとこだけ! ITパスポート テキスト&問題集(翔泳社刊)
- 3週間完全マスター 基本情報技術者(共著、日経 BP 社刊)
- 3週間完全マスター 応用情報技術者(共著、日経 BP 社刊)
- 3週間完全マスター プログラミング未経験者のための基本情報技術者 午後 プログラム言語(共著、日経 BP 社刊)など
インタビュアー: SEプラス 寺井 彩香
パソコン黎明期、事務職のはずが IT に!
―― 城田さんは IT に関わる人とは思えないぐらい、とてもソフトな口調が印象的なのですが、 IT でどんな仕事をされてきたのでしょうか?
―― まったく IT に関係のない、しかも … 失礼かも知れませんが、前時代的な仕事だったのですね。驚きです
ただ、入社当時はちょうど企業にパソコンが導入され始めた時代で、入社すると、たまたまシステムを企画したり社内のユーザ教育をする部署に配属されて、仕事でパソコンを使うようになり、社内向けにその使い方を教えることになりました。
―― IT との出会いは配属ガチャの賜物だったとは … 二重に驚きです。また、就職当時から教える仕事だったのですね。ちなみに、パソコンの使い方となると、今の技術寄りの研修とはまた違ったものですね
パソコンの教育というと、今の感覚では Word や Excel を教えるようなイメージかも知れませんが、当時のパソコンは今のものとは程遠く、 BASIC というプログラミング言語で書いたソフトウェアが動くぐらいでした。このため当時のパソコン教育はキーボード入力などだけでなく、実質プログラミングも教えるようなものだったのです。
必然的に、業務が楽になるソフトウェアは少なく、そういうソフトウェアは自分たちで書かないといけないため、「パソコンはあんまり使えない」という評価でした。
―― 今のパソコンとは違いすぎますね …
それが悔しくて、色々工夫しながら 5 年教え続けていると、「パソコン使えるじゃないか」という評価になり、とてもうれしかったですね。一方で、「やりきった」という達成感が強くなってしまい、その商社を退職しました。
負けず嫌いから合格して結婚!?
―― 当時は、どのようにスキルアップしていたのですか?
配属されると、情報処理技術者試験を受験している人がいたので、私もそれで勉強しました。早速、入社 1 年目に試しに基本情報(当時は第二種情報処理技術者)を受験したのですが、ものの見事に不合格でした。やはり落ちると悔しいので、ちゃんと勉強して 2 年目で合格できました。
―― … 城田さん、ひょっとして負けず嫌いですか?
そうかも知れません(笑)。確かに、次の応用情報(当時は第一種情報処理技術者)でもまたまた落ちてしまって、悔しかったことが原動力になっていました。
あとは私が基本情報を合格したときに同じ部署の 1 年先輩だった男性が、たった 1 年の差なのに高度情報処理技術者(当時は特種情報処理技術者)まで合格していて、憧れる一方で、負けてなるものかとも思っていましたから、筋金入りかも知れません(笑)。
―― (笑)
ちなみに、その先輩に追いつけ追い越せと思って 3 年目に応用情報に合格して、そのあと高度にも合格できて追いついた頃には、その先輩と結婚していました(笑)。
―― なっ、なんですか、突然やってきた、その少女漫画のようなエピソード!素敵すぎますね
ありがとうございます(笑)。
―― 私としてはその素敵エピソードこそ掘り下げたいところですが … それはまた別の機会に(笑)。
では、試験対策もその先輩に教えてもらっていたのですか?
いえ、すべて独学で勉強しました。その先輩も含めて、誰も教えてくれませんでした(笑)。 大学での専攻も IT ではなく初めて学んだのですから、わからないものだらけで、あまりにも理解が進まず … 。しょうがないので、丸暗記しました。
―― 丸暗記できるのはすごいのですが、まったく効率的ではありませんね
そうなんです。だから、情報処理技術者試験などの講師をするようになって、理屈で教えようと心がけています。

イヤイヤ受講していても「わかった !!」と楽しませたい
―― 先程の商社でお勤めのあと、どのような経緯で今のように講師をするようになったのですか?
商社を退職後、しばらくのんびりしていたのですが、当時付き合いのあったベンダー企業に誘われてパソコンのインストラクタをするようになりました。今度は IT も進化していたので、 Office のようなソフトを教える仕事です。でも、 Office のようなソフトだと、教えることは少なく 1 日や長くても 3 日間ぐらいなので、毎日同じことの繰り返しでした。
―― なるほど、確かにバージョンアップはあれど、ユーザがやりたいことはそれほど変わりませんものね
そこで、もう少し長いスパンの教育ができないかと思って、 5 年でその企業も退職して、専門学校の講師になりました。それからは IT の進化と IT エンジニアの人口増加に合わせてプログラミングや情報処理技術者試験も教えるようになりました。やはり、それでも 1 年間固定でマンネリになりがちだったので、もっと色々なことを知りたくて、教えたくてフリーのインストラクタになりました。
―― … 城田さん、ひょっとして飽き性ですか(笑)
好奇心旺盛と言っていただけるとよいかと(笑)。
―― 失礼しました(笑)。
では、情報処理技術者試験対策や新人研修などで登壇するようになった今、城田さんの研修でのこだわりを伺えますか?
私が情報処理の勉強をしたときもそうですが、わからないことが多すぎて、とっても苦労しました。でも、わかり始めると楽しくなって、今でも IT の勉強を継続できています。
実は、私は運動が苦手なのですが、健康のために休みの日に水泳をするようになったんです。もちろん速く泳げるわけでも上手く泳げるわけでもないのですが、やってみると意外と楽しいんですね。
やっぱり楽しいと継続できるものなので、研修でも同じように「わかった !!」で楽しくなってもらいたいと思っています。
―― その「わかった !!」にたどり着けるように、具体的にどのように工夫されているのですか?
情報処理技術者試験対策を例にすると、
- IT パスポート
- 正確でなくても、たとえ話をふんだんに使って「易しく」「理解しやすく」
- 基本情報
- プログラミングで一山あって、一足飛びには問題が解けないため、「教えるステップを細かく刻む」
- 応用情報
- 基本情報までである程度、知識はあるので、わかったつもりで勉強しなくならないよう「飽きない」問題で演習
このように進めています。自分でも経験した、わからなくなりがちなポイントがあるので先回りして進めています。
―― 「わからなくなりがちなポイント」の見つけ方にコツはあるのでしょうか?
自分で「わからない」経験をすることです。
例えば、先にもお話したとおり、私は子どもの頃から運動が苦手で、逆上がりができず苦労しました。でも、教わらなくても最初から逆上がりができる人もいて、その人に聞いても、なぜできないのか、わからないのです。それは研修でも同じです。恐らく私が勉強せずに基本情報に合格できていたなら、「わからない」人には教えられなかったと思います。
幸い、私は IT にド素人で入門して、初めから「わかった」という技術がなかったので、「わからない」人の立場には近づきやすいと思います。
―― なるほど!城田さんの講師のやりがいにも繋がっていそうですね
はい、特に新人研修のような基礎では、受講者が「わからなくなってしまう」定番のポイントがあり、工夫して話をして「わかった !!」というコメントがあると “してやったり” と思います(笑)。
また企業向けに研修をしていると、イヤイヤ受講する人も一部にいるのですが、そういう方の「わかった !!」ときのお顔も大好きですね。
―― 情報処理技術者試験対策の場合はどうですか?
試験対策でも受講者が合格して次の区分に進んでくれたら、とてもうれしいですね。試験で問われたことがわかって、次もやろう、と思った証拠なので。
情報処理技術者試験対策もそうですが、これからも私が行う研修で「わかった!」「楽しい!」「次の技術も学んでみよう!」と思ってもらいたいですね。
―― 城田さんの研修で「自走」できる人が増えそうですね!今日はありがとうございました!
ありがとうございました。


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実は最初から IT の仕事をしようと思っていた訳ではなく、大学卒業後、商社に事務職として就職したんです。当時は雇用機会均等法の制定前だったので、事務職がやることの多くはお茶くみやコピー取りでした。今では信じられないと思いますが(笑)。