講師インタビュー 村上 博 「現場の実例で受講者の脳を刺激する」

研修で「何を学ぶのか」も重要ですが、 「誰から学ぶのか」も重視される時代。SEプラスの研修で登壇する講師がどんなことを思いながらコースを実施しているのか、講師にインタビューしています。
今回は SEカレッジではセキュリティを中心に、 KOUDO では情報処理安全確保支援士対策でも登壇する 村上 博 さんです!
単なる知識を解説する座学ではなく「現場の実例で受講者の脳を刺激する」と話す村上さんに、研修へのこだわりを中心にお話を伺いました!

SI 企業にてネットワーク、セキュリティの構築、設計の業務に携わる。
現在は情報処理安全確保支援士としてセキュリティ監査、脆弱性診断などのセキュリティ支援活動に従事。
著書は「ポケットタイム要点整理 情報セキュリティマネジメント」(翔泳社刊行)他多数。
村上さんがニュースに登場しましたfiber_new
サイバー攻撃を想定の訓練 インフラ業者など100社参加 警視庁:朝日新聞デジタル
インタビュアー: SEプラス 寺井 彩香
高度情報処理技術者を取得したら仕事の幅が広がった
―― SEカレッジでは主にセキュリティ、 KOUDO でも情報処理安全確保支援士の対策研修の講師として登壇されていますが、学生時代からそういった研究をされていたのですか?
―― それは意外です。どういう経緯があって IT 業界に入られたのですか?
就活していた当時はちょうど氷河期だったので、教師の仕事はなく、色々な業界・職種を見ていました。その中でも「何かしら専門性を持ちたい」という気持ちがあって、見ていた中では、この IT 業界だけが経験や知識不問でした。
そこで IT ならゼロから勉強しても技術を身につけられて仕事にできそうと思って就活すると、縁があり、電話交換機のシステム開発を行う企業に入社できました。
―― 電話交換機のシステムですか??
わからないですよね(笑)。今はモバイルが中心なので固定電話機の仕事は少ないと思いますが、ネットワーク同様に、電話機も繋ぐシステムが必要なんですね。そのシステムの開発をしていました。
―― そんなシステムがあるとは知らなかったです(笑)。当時はどういったスキルアップをしていたのですか?
会社に資格取得を支援する制度があって、情報処理技術者試験やベンダー資格を使って知識を身につけていました。その中でも、ネットワークに関連する仕事をしていたこともあって、特に情報処理技術者試験の高度区分 ネットワークスペシャリスト(当時は テクニカルエンジニア[ネットワーク] という呼称)を取得したいと思っていたのですが、これが大変苦労しました。
―― 今では試験対策講師をされる村上さんでも難しかったんですか?
そうですね、 3 回不合格になりました(笑)。年 1 回の試験なので 3 年勉強していたことになりますね。
―― 3 年とは大変ですね。最終的にはどのような勉強をして合格されたのですか?
同じ試験合格を目指す仲間同士で勉強会を開いて、そこにボランティアで教えにきてくれた講師がいたんですね。そこで知識が身につけられたことが大きかったです。
その講師の方は、今でも私の講師のお師匠さんとも言える方で、その方から「下の世代に学んだことを伝えるのが必要だよ」と言われたのが、私が講師になったきっかけの 1 つになっています。
―― なるほど、当たり前ですが、試験合格には知識が必要なんですね
今も対策研修でお伝えしているのですが、高度情報処理技術者になると、実務で仕事をしているだけでは合格できないんですね。一方で、知識だけを勉強しても合格するのは難しくて、私の場合は、勉強会で知識を学びながら、関連する仕事をしていたので、それがとても役に立ちました。
―― そんな難しい高度情報処理技術者を取得して変わったことはあったのですか?
資格取得できると、仕事の幅が広がりました。仕事でも試験対策で得た知識で視野が広がりましたし、社内や社外での評価も変わりました。また、高度情報処理技術者を取得していないとできない仕事があるので、それが今のセキュリティ監査の仕事にも繋がっています。
自分が経験した現場の実例で、受講者の脳を刺激する
―― では、村上さんと言えば「セキュリティ」ですが、取り組まれるようになったきっかけを伺えますか?
インターネットやメールが定着し始めた 2003 年ごろからコンピュータウイルスなどのニュースが新聞に載るようになって、ちょうどその 2003 年には個人情報保護法が施行されたんです。
それで IT の色々な技術の中でも、セキュリティは新しい分野だと興味を持って、 2004 年に新設された情報セキュリティ大学院大学に入学して、仕事をしながら夜間に研究するようになったんです。
―― 仕事をしながら大学院で研究とは、すごい突き詰め方ですね
就職当時から思っていた「専門性を持ちたい」という想いの現れかも知れないですね。
ただ、ネットワークの仕事をしながら、夜間に情報セキュリティを研究するのは本当に大変だったんです。それでもどうにかセキュリティを突き詰めたいと思っていたので、仕事を変えられないか模索するようになりました。
―― 普通は仕事ではなく勉強を犠牲にするのに、それだけセキュリティを究めたかったんですね
セキュリティは次から次へとトピックが出てくるので、突き詰めがいがありました。そうした中、人づてに日本工学院八王子校で非常勤ながらネットワークやセキュリティの講師をする仕事を紹介してもらい、研究を継続できて、大学院を修了できました。
―― そこで講師になられたんですね
そうですね、もともと教師になりたいという気持ちがあったので、その紹介はありがたかったですね。
―― それから講師となられて、今では SEカレッジ、 KOUDO などでも登壇いただいていますが、村上さんが研修を実施する際、こだわってらっしゃることは何かございますか?
「現場での話を伝える」ことにはこだわっています。知識を解説するだけの座学だと、脳に刺激が入らず聞いて終わりになってしまうんですね。そこで、いかに脳に刺激を与えるか、私の場合は自分が現場で体験した事例を伝える、ということを行っています。
例えば、私は仕事で情報セキュリティ監査をしていて、官庁・企業など様々な団体に伺って脆弱性診断をしているのですが、そこで起こったことや実例などを、守秘義務を守った上で、話しているんですね。
―― なかなか緊張感のあるお話が伺えて、受講者にとっては知識が必要な場面がイメージしやすいですね。ちなみに講師の一方でそういったセキュリティ監査もされているんですか?
情報処理安全確保支援士の資格を取得したんですが、そうすると情報セキュリティ監査人になる条件や講習などを一部パスできて、セキュリティ監査業務に携わることが出来るんですね。高度情報処理技術者に合格して仕事の幅が広がったものの 1 つです。
その監査をしていると、ランサムウェアなどサイバー攻撃がどんどん巧妙化していることを感じます。毎年同じことが教えられないぐらい変わっています。
―― それぐらいですか! ということは同じコースでも時期によって内容が異なっているんですか?
そうですね、半年単位でも内容は変わっています。最近ではハッカーやサイバー犯罪集団の心理状態と実際のサイバー攻撃に様々な面で相関が見えるので、心理学を交えたコースも進めています。
―― 心理学とセキュリティ、とてもミステリアスな組み合わせですね
犯罪心理学をイメージするとわかりやすいかも知れません。セキュリティ心理学とも呼ばれる分野ですね。
高度情報処理技術者の攻略をショートカットできるようにするのが講師の役目
―― セキュリティに続き、高度情報処理技術者の対策研修についても伺いたいと思います。試験対策ならではの特徴はありますか?
私も経験しましたが、高度情報処理技術者は仕事しながら資格対策をするのが本当に難しいんですね。高度情報処理技術者を受験する層となると、現場で一定以上の責任を持っている方が多いので、それだけ忙しい。
かといって、試験の 1 ヶ月前から勉強しても合格は難しい。なので、 高度情報処理技術者対策には何より “効率性” と “効果” が求められるんですね。
―― 確かに高度になると現場でバリバリ活躍している IT エンジニアが対象ですものね。どういうことを教えられているのですか?
私が担当する情報処理安全確保支援士では、午前Ⅰ (応用情報レベルの 4 択問題) / 午前Ⅱ (専門分野の 4 択問題) / 午後Ⅰ・午後Ⅱ (専門分野の長文問題) とあるうち、午前Ⅱの対策勉強の効率が悪いんです。
―― 午後かと思いきや午前なんですか?
セキュリティはとにかく範囲が広く、覚えることが多いんです。そこには何かテクニックがある訳ではなく、地道に覚えるという積み重ねが必要なんですね。
なので、いかにスキマで学習するのか、知識を定着させる時期はいつかなど、勉強法を伝えています。
そして実は、その午前Ⅱで覚えた知識がそのまま午後対策にも使えます。
―― 午前の知識がそのまま午後対策でも使えるとは、知りませんでした
繰り返しになりますが、高度情報処理技術者受験される方は普段の仕事で忙しいのですから、私たちのような講師が受験者に代わってショートカットできる対策・勉強法を探り続けなければなりません。
他にも “国語力” など様々な対策がありますので、忙しくされている受験者ほど参加していただきたいですね。
―― 村上さんの研修へのこだわりが伺えますね。今日はありがとうございました!
ありがとうございました


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いえ、大学では文学部・国文学を専攻していた文系中の文系なので、まったく IT に縁はなく、将来は国語を教える教師をやりたかったんです。