DX 時代の仮説検証で使えるビジネスモデルキャンバス演習 研修コースに参加してみた

今回参加したコースは DX 時代の仮説検証で使えるビジネスモデルキャンバス演習 です。
DX という言葉が登場して、しばらくたちました。 DX というと、自分でも気付かなかったようなニーズをうまく発見してイノベーションを起こしたり、これまでの業務プロセスを魔法のように効率化するようなイメージがないでしょうか。私はそうでした。
今回のコースは、そんな DX 時代に必要なデザイン思考や仮説検証を実践する方法を学ぶものです。
単に講義を聞くだけではなく、仮説検証で使えるフレームワーク、ビジネスモデルキャンバスを使ったワークショップ形式のコースで、やってみると既存のビジネスを分析することで新たな問題やアイデアを見つけられそうに感じました!
また、 2 回目の緊急事態宣言の発出を受け、このコースも教室開催からはオンラインに切り替わりました。しかし、まったくオンライン切り替えの不安を感じず、受講者全員で意見をどんどん出して、一緒に考えて、楽しく参加できる内容でした。
では、どのような内容だったのか、レポートします!
もくじ
コース情報
想定している受講者 | 特になし |
---|---|
受講目標 | ビジネスを成功に導く、スピード感をもった「解」を見つけるための手法やマインドセットの醸成を体得する |
講師紹介
このコースで登壇されたのは、このレポートでは初登場となる 今津 美樹 さんです。

IT エンジニアの経験を活かし、デザインアプローチによるビジネスモデル構築の分野で多くの実績とそのノウハウを紹介する著書多数。国内外の数多くの企業および大学でビジネスモデルの研修を手掛け、受講者は延べ 23,000 人を超える。
柔らかな物腰に加えて、巧みなファシリテーションが印象的で、 IT エンジニア出身とは思えない方でした。

なぜデザイン思考が注目されているか
なぜ、いまデザイン思考が注目されているのでしょうか。
- 現在は「計画に時間をかけるのは時代遅れ」
- 日本の企業、特に大企業は、中期計画や長期計画の戦略に時間をかける
- 状況は変化する(たとえばこのコロナ禍の 1 年間)
- 計画しているうちに市場と乖離してしまうという皮肉
そこで登場するのが、デザイン思考です。
-
デザイン思考とは
- Empathize (共感) / define (問題定義) / ideate (アイデア) / prototype (試作) / test (検証) / implement (実装) という 5 つのプロセスに分かれる
- 特に「仮説検証」というプロセスが重要
- 小さく仮説シミュレーションして、状況変化に応じて変えていく
- この仮説検証のサイクルをどれだけ速くできるかが重要
DX が意味するもの
状況変化が激しい現在において、 DX(デジタルトランスフォーメーション)熱が上がり続けています。
- DX は、ともすると、自動化や AI / IoT の活用と考えられがち
- もともとの本質は「企業がデータやデジタル技術を使って組織やビジネスモデルを変化し続け、価値提供の方法を抜本的に変えること」
- 市場が「製造」から「サービス」にシフトしている
- 従来はいいものをたくさん作るというモデル
- クルマが所有からサービスに
- お客様の多様化で、顧客の課題ありきになった
- (そのサービスとは) 1 to 1 マーケティングのようなもの
- 街の魚屋さんが、なじみの人にあわせて商品すすめるようなプレミアムサービスではできている
- それをもっと広範囲に普及させるようなものが今のサービス
デザイン思考を活かしたアプローチ
DX でのポイントは 2 つ。
- 仮説検証のスピード
- 次の打ち手を複数考えておく
- (仮説検証中の) 目標の可視化と共有
- これを組織やチームで共有するのが、以外に難しい
- 一度仮説で作ったものを捨てるのは、とても難しい
この仮説検証で使えるメソッドが、これから演習を行う ビジネスモデルジェネレーション です。これを使うと、仮説が立てやすくなり、検証の結果、ピボットが必要となった場合にも方向修正がしやすくなる、とのことでした。
仮説検証で使えるビジネスモデルジェネレーション BMG とは
- ビジネスモデルとは「儲かる仕組み、および組織が成り立つ仕組み」
- BMG は 2 つのフレームワークでビジネスモデルを可視化する
- ビジネスモデルキャンバス
- VP (バリュープロポジション) キャンバス
- 可視化することでチームとスピーディに共有できる
- 途中で新たなメンバーが加わったときにも履歴を辿ることができる
- BMG は顧客デマンドを起点に考える
- なぜか
- コーヒーショップの差別化要因は、豆の品質 → バリスタなど → 顧客体験に変化
- 一方で「安さ」を重視する顧客もいる
- 顧客からニーズや問題が生まれる
- なぜか
ちなみに、リーンスタートアップで登場するリーンキャンバスもビジネスモデルキャンバスを元にして考案されたそうです。
ビジネスモデルキャンバスで演習する
ここからは先程登場したビジネスモデルキャンバスを使って演習します。本来の教室開催であれば、ここからはグループに分かれて演習になるところ、今回は受講者全員で 1 つのキャンバスで演習します。
- 9 つのブロックがある
- 中でも VP ( Value Propositions = 価値提案) が一番重要
- ブロックに考える順番がある
- 今回のお題は「スターバックスコーヒー」
- 現状の可視化をする練習
- こういった練習から新規事業も考えられるようになる
- 競合分析にも使える
-
考える順番
- CS (Customer Segments): 顧客セグメント
- VP (Value Propositions): 価値提案
- CH (Channels) チャネル: 顧客との接点 (タッチポイント)
- どのように顧客にリーチするか
- 販売チャネルやアフターフォローのチャネルが入る場合もある
- CR (Customer Relationships): 顧客との関係
- 顧客を囲い込む、つなぎとめるための手段
- RS (Revenue Streams): 収入
- KR (Key Resources): ヒト・モノ・カネ・知的財産
- KA (Key Activities): 必要な活動
- KP (Key Partners): チームだけでは提供できない(提供するためには時間やコスト比重が大きくなる場合の回避策も含め)、重要なパートナー
- CS (Cost Structure): コスト構造
ということで、早速、顧客セグメントから考えます。今津さんが受講者に聞きながらブロックを埋めていきます。

ここでは、その演習中に今津さんから伺ったブロックごとの考えるコツを紹介します。
- CS は顧客の行動動機や課題に注目するとよい
- 「 20 代 女性」のような属性で考えるのは NG
- 「甘いものが好き」とか「カフェで作業したい」など
- 挙がったら同じような動機や課題を持つ人をグルーピング
- VP の考え方
- CS でグルーピングしたものを VP で結びつける
- こうやって見てみると、価値がコーヒーだけでないことに気づく
- CS でグルーピングしたものを VP で結びつける
このあと、今津さんが解説を交え、各ブロッグに入れる項目を埋め、キャンバスが完成しました。
なお、今回はオンライン開催なのでコンピュータ上でしたが、本当にやるときはアナログが推奨とのことです。考えが固まっていないときは、アナログのほうがスピードが速いとのことでした。
ビジネスモデルキャンバスの活用
完成したキャンバスの見方と、その活用方法を紹介いただきました。ここではポイントを絞って紹介します。
- キャンバスの見方
- 儲かる仕組みを可視化している
- 成立条件は簡単で、収入がコストを上回ればいい
- マズい点があれば捨てればよい(キャンバスだけなので抵抗が少ない)
- 右側(収入)はお客様との関係性
- CS → VP → CH → CR → 収入 の流れで売上
- 顧客を理解して価値提案ができていると、お金が入る
- 左側(コスト)はバックオフィス
- KR → KA → KP → コスト
- お金が出て行くコストに関わる活動
- この右側と左側を対比してみる構造
- 儲かる仕組みを可視化している
- ビジネスモデルを変化させるときに使える
- ex. スターバックスコーヒーを B2B 向けに変える
- コンシューマーモデル ( B2C ) の場合には、 KR として挙げられた、ブランドなどの知財や原料のコーヒー豆は、 B2B に変えたとき、顧客にとっての価値 ( VP ) となる
- 新たな仮説検証にも使いやすい
- ex. スターバックスコーヒーを B2B 向けに変える
B2B での注意点
B2B の場合、 CS は顧客を書くのか、エンドユーザーを書くのか、よく迷う点です。
たとえば、自動車メーカー向けの自動運転のコア技術を持っていて、自動車メーカーに売り込む場合を考えます。
- 自分の会社にとって
- 直接の顧客となるのは例えば部品メーカーのデンソー
- エンドユーザーは例えばトヨタ自動車
- デンソーにとって
- 直接の顧客はトヨタ自動車
- エンドユーザーはドライバー
- トヨタ自動車にとって
- 直接の顧客が自動車購入決定権者
- エンドユーザーがドライバー
こう見てきたように、 B2B でも最後はコンシューマービジネスにつながるので、それを丁寧に追うと良いとのアドバイスでした。
また、このキャンバスはその他、組織やチーム、個人にも使えるなど、その活用法とそのときに使える参考書を伺ったところで、このコースは修了しました。
まとめ
DX が求められる時代に、必須となる仮説検証のやり方を、ビジネスモデルキャンバスで学びました。
スターバックスのビジネスモデルキャンバスを作る作業では、今津さんのファシリテーション力もあって、受講者から多様な意見やアイデアが伺え、それにより、これまでにない視点や発見につながり、とても面白い演習でした。
受講者からも経営から現場まで、あるいは企業合併などにおいても共通言語として使えそうという声もあり、皆さん手応えを感じたようです。
新しいアイデアや革新的な業務改善を求められても、スグに出てこないものですが、このように既存のビジネスモデルを分析することで、新たな問題やアイデアを見つけるられるように感じました。
これから DX に取り組む方にはとてもオススメのコースでした!

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